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ULTRAVOX / Rage in Eden

2007年12月17日 23時28分55秒 | ROCK-POP
 先日なにげなく聴いたウルトラヴォックスの「ヴィエナ」だが、あの時はフォックス時代に比べ「なんとか楽しく聴ける」などと書いたけれど、実はあれからウォークマンに入れて何度か聴いたところ「なんとか」どころではなく「非常に楽しめる」に変わっていった。私は音楽における通俗味というのは満更きらいな質ではないと自分では思っているが、いかんせんフォックス時代の音楽な孤高ところがあまりにも印象的だったせいで、どうしてもミッジ・ユーロ期に関しては「通俗化したヴォックス」というイメージが強すぎてが辛くなっていたらしい。が、それもこれも初めて聞いてから四半世紀という時期が経過したせいだろう、ある程度独立した音楽として評価できるようになったかもしれない。とにかく、「ヴィエナ」の冷たいシンセの響きとドイツ風なテクノビート、そして全編に漂うにシニカルな哀愁みたいなところが非常に良かったのである。

 そんな訳で、あわてて「ヴィエナ」に続く「エデンの嵐」をネットで購入してきてみた。このアルバムはほぼリアルタイムで購入した記憶があるが、当時の印象としては「ヴィエナ」の出来の悪い続編という感じであまり良好なものではなかったと思う。今回「ヴィエナ」が久々に非常に楽しめたから、こちらもひょっとすると以前より良い感じで聴けるのではないかと思っていたのだが、ほぼ20年振りくらいに聴いたこの作品、やはり「ヴィエナ」には敵わないと思う。確かに1曲目の「Voice」は前作に匹敵する作品だが、全体に、「ヴィエナ」にあったインスト指向やドイツっぽい雰囲気が大分後退させ、「ミッジ・ユーロをフィーチャーしたテクノポップ」を全面に出そうとしたのか、結果的に似たようなリズム、似たような曲のオンパレードになってしまい、曲毎のメリハリがなくなってしまっているように思う。壮麗なシンセが印象的な「Voice」のあと、陰影ある哀愁の雰囲気を漂わせた「We Stand Alone」あたりまではいいのだが、「Rage in Eden」、「I Remember」、シンセベースとビコビコなるシーケンス・パターンがベースになった曲が続くといささか飽きてしまうのだ。

 旧B面に移っても、「Thin Wall」も「Stranger Within」と同様なパターンで続き、「Accent on Youth~Ascent~Your Name」のメドレーは「ヴィエナ」の後半のメドレーを再現したような仕上がりで、途中の「Accent on Youth」のインスト・パートがそのままブリッジとなる「Ascent」のスリリングさはなかなかだが、ドラマチックさ、スケール感、仕掛けの緻密などの点で、「ヴィエナ」のそれには到底及ばないという感じがする。ラストを飾るバラードの「Ascent」も今一歩盛り上がらない。このあたりを推測するに、どうも「ヴィエナ」という作品を傑作にしたのは、ヴォックス自身というよりは、プロデュースとエンジニアを担当したドイツの巨匠コニー・プランクのセンスだったのではないかという気がするのだ。いや、もちろんこの作品でもコニー・プランクは参加しているのだが、どちらかという副プロデューサーというポジションで、あくまでこのアルバムで聴ける音楽の主導権をとったのはバンド自身だったのだろう。どうもこのアルバムで聴けるヴァリエーションの貧弱さというのはバンド自身がブロデュースを兼ねた時の弊害がもろに出ているような気がするのだ。もっとも、それが故にこのアルバムは「ニュー・ウェイブ直後に確立されたテクノ・ポップの典型」として傑作という意見も当然あるだろうけれど....。
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