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伊福部昭の芸術2 交響楽の世界/広上&日本PSO

2006年02月10日 23時43分08秒 | クラシック(20世紀~)
 第2巻は「交響楽の世界」という副題が付いていて、先生が作った唯一の交響曲ともいえる「シンフォニア・タプカーラ」と先生の処女作「ピアノ組曲」を1991年になって管弦楽化した作品「管弦楽のための日本組曲」が収録されています。演奏は第1巻と同じく広上淳一指揮による日本フィルハーモニー交響楽団で、録音は1995年となっています。それではさっそく聴いてみたいと思います。

 前述のとおり「シンフォニア・タプカーラ」 は、三楽章で構成された交響曲というべき内容です。昨日レビュウした「交響譚詩」もいってしまえば通常の交響曲の前半部分のみで構成されたような曲でしたが、こちらは三楽章とはいえ、急緩急のというオーソドックスで簡潔で古典的な楽章構成をとっていて、「日本狂詩曲」から十数年、先生もいよいよ交響曲というフォーマットで勝負をかけた....といった意気込みがあったと思われます。第1楽章は主要主題をモチーフにした雄大な序奏部から始まります。資料によれば51年の初演の時はこれがなく、いきなりアレグロで始まったそうですが、後年こうした序奏をつけたところから、やはり先生としてはこの曲は交響曲なのだから、それに相応しい偉容を感じさせる序奏が必要だと感じたのでしょうね。本編ですが、荒れ狂うようなダイナミズムと壮麗な広がりを併せ持つ、まさに伊福部的な律動音楽を両端に置き、中間部にやや鄙びた趣きをもち、北国の峻厳な自然を思い起こさせる音楽をもつ構成。

 第2楽章はもちろん緩徐楽章にあたるなだらかな起伏をもった音楽で、おそらく先生が作った最も美しい音楽のひとつでしょう。ハープの寡黙だか美しいアルペジオにのって、各種楽器群が様々に表情を変えつつ、あえていえば非常にロマンティック旋律を奏でていくあたりは絶品です。最終楽章は民族的で野卑なリズムが縦横無尽に発揮された、エキサイティングなヴィヴァーチェです。ちょっとバルトークの「オケコン」の最終楽章を思わせる華々しさもあります。一旦静まり、徐々に加熱していきながら最後には狂熱のハイライトを築くあたりの素晴らしさはまさに筆舌に尽くしがたいスリリングさがあります。いや、やっぱ最高です。

 フィルアップされた「管弦楽のための日本組曲」は4つの曲からなる組曲で、原曲である「ピアノ組曲」が割とインティメートなムードで、いってしまえば絵はがきに描かれた日本の風景だったとすると、こちらは大管弦楽を用いて大きなキャンバスに描かれた4つの風景という気がします。第1曲は「盆踊り」で、盆踊りというの昔からある日常風景を題材に、その背後にある太古の歴史を拡大したかのような音楽です。また、無窮動なリズムやエンディングがちょっとラベルの「ボレロ」を思わせたりする音楽でもあります。第「七夕」はレスピーギやファリアを思わせるオーケスレーションで表現された七夕の幻想的風景です。第3曲の「ながし」は、これはもう日本的としかいいようがないリズムと旋律で構成された、聴いていて切なくなるくらいに懐かしい音楽ですが、中間部では「シンフォニア・タプカーラ」を思わせる律動が聴こえてきます。第4曲の「ねぶた」はねぶた祭りのねぶたのことでしょうか....って、私はねぶた祭り自体よく知らないので、音楽的な相関はよくわからないのですが、ともあれマーチのリズムにのってダイナミックに展開する、これまた伊福部的メルクマールに満ちたダイナミックな音楽になっています。
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