UGUG・GGIのかしこばか日記 

びわ湖畔を彷徨する独居性誇大妄想性イチャモン性前期高齢者の独白

夏の終わりに:それがどうした!ではすまない短歌・・・

2018-08-29 01:59:56 | 日記
この夏のはじめに読書家の某知人から、なかなかの作品だよと勧められてある小説を読みました。「キジムナーkids」という本(2017、現代書館)です。GGI、昔は少しは小説を読んだのですが、文学ともあまり縁なき衆生でありますので、高齢者になってからは最近著された小説はほとんど読みませぬ。でも、知人が勧めてくれただけあって、なかなかの作品でありました。この小説、最近になって坪田譲二文学賞を受賞しています。

今日の写真はこの本の表紙を撮ったものです。よろしければクリックしてご覧くださいませ

題名にある「キジムナー」というのは沖縄でガジュマルなどの大きな樹に棲んでいるといわれる妖精(あるいは妖怪?)のことです。著者は「ウルトラマン」などのかつての人気テレビ番組の脚本を数多く手掛けた沖縄出身の上原正三氏(80歳)。

敗戦の翌年に疎開先の熊本から沖縄に帰ったという上原氏の自伝小説です。沖縄戦を奇跡的に生きぬき、法律もなし、政府もなし、日本軍は壊滅、戦火で荒廃した沖縄の島にいるのは米軍だけという敗戦直後の混乱期をいつも空腹に悩ませられながらも元気いっぱい、たくましく生きる五人の少年たちを主人公にした物語。食べ物などを求めて米軍にもチャレンジする裸足の少年たちの明るくたくましいヤンチャぶりだけではなく、「鉄の暴風」といわれた米軍の凄まじい艦砲射撃、「ひめゆり学徒隊」や傷病兵たちの悲惨な最後など、「ウチナーイクサ」(沖縄戦)の実相も描かれています。

「ひめゆり学徒隊」というのは、ご存知の方が多いと思いますが、沖縄戦の最中、米軍上陸を目前に控えて1945年3月末に軍の命令により編成された女生徒(沖縄師範学校女子部の生徒と沖縄県立第一高女の生徒)による傷病兵看護のための学徒隊です。両校生徒222人と教師18人が軍と行動を共にしました。

しかし、敗色濃厚となった6月18日に突然解散命令が出され、女生徒たちは先生に引率されて銃火の飛び交う危険な戦場をあてもなく彷徨うことになります。解散命令から約一週間の間に多数の犠牲者が出ており、最終的には教師・学徒240人のうち半数以上の136人が命を失い、このうちの十人(教師一人と生徒9人)は荒崎海岸で集団自決したとされています。

その最後を上原氏は次のように描いています。

「陸も海もアメリカ軍に包囲されている・・・火炎放射器を装備した戦車を先頭に戦車隊が轟音を立てて迫る。掃討の輪は刻々と迫る。逃げ切れないことを悟った少女たちのなかには配られた手投げ弾を抱いて自爆する者がいた。手投げ弾のない者は崖の上から切り立った岩場に飛び降りた。難民たちもまた同じ運命を選択した。摩文仁の海浜にはそんな死体が積み重なり、満ち潮にあおられ藻のように揺れた」

この本を勧めてくれた知人、7月の末に、京都新聞(7月27日)のある新聞記事のコピーをくれて、

「GGIよ、ここを見てごらん、この記事の中で引用されているこの短歌・・・」

《沖縄文学への道しるべ④:「詩の島」の短歌と俳句》と題されたコラムです。この記事にいくつか短歌が紹介されているのですが、知人がGGIの注意を喚起してくれた短歌は・・・

『先生! もういいですかと手榴弾を握りしめたる乙女らの顔』

作者は仲宗根政善という人物。言語学者として高名な方とのことですが、この人物、沖縄戦で「ひめゆり学徒」を引率して戦場を彷徨った、と記事に書かれていました。「蚊帳のホタル」という歌集に収められている作品です。

GGIは8月13日の日記に、俳句や短歌には、読み終わって「それがどうした!」で済ませることができる作品と「それがどうした!」では済ますことができない作品があると、まことに勝手な俳句・短歌鑑賞法を記しましたが、この仲宗根氏の短歌、まさに「それがどうした!」なとど軽口をたたくことなど許されない作品というべきでありませう

ところで、わがマザーの姉の夫は、徴兵されて満州へ、次いで沖縄に「転戦」、五人の子どもを遺して沖縄戦で命を落としています。戦死したということになっているようですが、遺骨はありません。沖縄海洋博のときGGIは沖縄出身の友人の案内で沖縄を旅しました。そのおり摩文仁の丘の平和記念公園で、熊本県出身の戦死者の名前が刻まれた石碑にこの人物の名前が刻まれていることを確かめました。

また、もう一人、わがマザーの弟はビルマで戦病死したということになっています。しかし、詳しいことは不明、敗戦から数年後、戦友が届けてくれたわずかな遺品のみ、遺骨はありません。ひょっとしたら。あの「白骨街道」で亡くなったのでせうか・・・

二人の叔父、いったいどのような最後であったのだろう、どのような思いで死んで逝ったのだろうと、思いを巡らす夏の終わりです。

なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ・・・

グッドナイト・グッドラック!