某日の昼下がり、
湖岸の城址公園の向かいにある某スーパーに買い物にでかけ、
そのついでに近くにある「生涯学習センター」という結構なお名前の、
中身は生涯お稽古ごとセンターというか生涯趣味教室センターとでもいうべき、
公共施設の中にあるカフェに立ち寄りました
このカフェ、半円形、総ガラス張り、
はなはだ眺めがよろしい、GGI、愛用しております
お店は空いておりました
三つばかりのテーブルに客がいるだけ、
コーヒーを頼んで待っております間に、二組の客が立ち去り、
客は一つ隔てたテーブルについている男性とGGIの二人だけになりました
外は快晴、真澄の空、
ウェイトレスさんがもってきてくれたコーヒーを一口すすり
一本目のシガレットに火をつけます
おセンチな秋をこよなく愛するGGI、ああ九月も終わるなぁ
セプテンバーソングの季節やなぁ
「真澄の空に木々は燃え、暮れやすきこの九月・・・」
歌詞を心に浮かべならが、
ふと向こうのテーブルの男性に目をやりました
この人物、どうやらGGIと同年配、
もうコーヒーを飲み終わったのか
テーブルの上には水が入ったガラスのコップだけ
じっとGGIの斜め後ろ、壁の方に視線を向けております
はじめはGGI、誰かをまっているのだろうと思ったのですが
どうやらそうではなさそう・・・
GGI、視線が合わないようにしながら観察しておりました
ただただ前方を見つめたままじっと座っているだけであります
みじんも動きません、
そのうち、この老人の全身から何か灰色の霧のようなものが漂いはじめました
孤独の影であります、濃き深き影であります
その影がゆっくりと周囲に広がりはじめました
どんどん影は勢いを増し、GGIの方に迫ってきます
GGIは独居老人でありますので、
つねに若干の孤独の影を引き連れているのではありますが、
この人物の孤独の影の勢いには太刀打ちできそうもありません
孤独が孤独を呼ぶのではなく、
孤独が孤独を吞み込もうとしているのであります・・・
戦慄がGGIの全身を貫きました
寒気が背中に走り、恐怖が身を包みます
GGI、思わず心の中で叫びました
「寒いよお~、ヨッサリアン、寒いよお~」
それでGGI、一本目のシガレットを吸い終わると、さっさと席を立つことにしました
出口のレジには人影がありません
あわてたGGI、大きな声で、「コーヒー代、ここに置いとくでぇ」と叫んでカフェを足早に去ろうとしましたら、
奥からウェイトレスがのっそりと姿を現しました
ウエィトレスとは申しましたが、お婆さんとまではいきませぬが
まあ、おばさんウェイトレスさんであります
半年ほどまえからこのお店に姿を見せるようになったウェイレスさんです
GGIの姿を目にして、このおばさんウェイトレスさん、のんびりとのたまひました
「早いなあ、今日は、どうしたん? 早いやん」
これはいつもより帰るのが早い、すなわちカフェでの滞在時間がいつもより短い、という意味であります
この言葉にはGGI、びっくりしてしまいました、まさかそんなことを言われるとは・・
GGI、困惑して「いや、オレ、気まぐれなんや」と言い訳して急いで立ち去ることに相成りました
このおばさんウェイトレスさん、
時おり立ち寄るだけの客の滞在時間まで頭に入っているのであります!
確かに、おばさんウェイトレスさんの言葉はアタリなのです
いつもであれば、GGI、
まずはコーヒーを飲みながら紫煙をくゆらせること10分、
飲み終わってから二本目のシガレットに火をつけ、さらに10分、
さらに、二本目を吸い終わってから
沈思黙考ならぬ沈思愚考すること10分、
合計およそ半時間ばかりカフェに滞在するのでありますが
この日は一本目のシガレットを吸い終わって、早々と席を立ったのでありました
このおばさんウェイトレスさん、客の滞在時間だけではりません
客の習慣や癖などもしっかり記憶しております
いつだったか、このおばさんウェイトレスさんと最初に遭遇したとき、
テーブルに灰皿がありませんでした、
それでGGI、少々不機嫌な口調で
「ここ、いつから禁煙になったんや」と厳かにつぶやきましたら、
すぐに灰皿を持ってきてくれました
それ以来、灰皿を忘れることはまったくありません
また、GGIはコーヒーにミルクを添加するなどという、
女々しい邪道とも言うべきことは決していたさぬ主義でありますので、
このおばさんウェイトレスが最初にコーヒーを持ってきてくれたときに厳かに言い渡しました、
「不肖GGI、コーヒーにミルクを加えるなどという恥知らずなことはいたさぬ主義である、
男ならコーヒーにミルクなどというたわけたことはするな!」
それ以来、このウェイトレスおばさん、ミルクも持ってくるというアホなことは決していたしませぬ
まことにアッパレ、近来にない、ほんどうのサービス精神を身に着けている有能なおばさんウェイトレスさんであります、表彰状モノであります、それ故、GGI、今後もこのカフェを愛用するでありませう
(おばさんウエィトレスの陰の声)
「あのジジイ、おれはジジイではなくGGIやなんて気取りやがって、ええ年してるくせに、まだ若いシティボーイのつもりでエラそうなことばっかり言う、ほんまに近頃の年寄はやっかいやなあ、長生きすればええと言うもんやないで、わかってるかジジイ!肺ガンでもなってさっさと死んでまえ!」
写真はカフェの光景です、おひまでしたらクリックして孤独の影に浸ってくださいませ
グッドナイト・グッドラック!