今夜は前々回の日記、大阪医療刑務所見学記の続編です
写真は医療刑務所の看板です、よろしければクリックしてご覧くださいませ
この医療刑務所、内科、外科、整形外科、精神科、泌尿器科など各科がそろっているという意味では総合病院です
職員数は約150人、そのうち刑務官は男性66人、女性3人
常勤の医師が約20名、看護師が53人、その他若干名
見学後、説明役のお役人さんたちとの質疑応答の時間がありました。そのなかでいくつか気になった点を以下に記しておきます
収容定員は患者である受刑者が約200名(他に、病院の雑務などを行う病人ではない普通の受刑者が約90名)、60歳以上の受刑者が約4分の一、最高年齢は82歳、無期懲役者が3名、病床はいつも満杯状態とのことでした。したがって、おそらく入院したくてもできない受刑者がたくさんいるものと思われます。説明役のお役人さんたちも病床数が不足していることを暗に認めておりました。
ここで少し驚いたのはどのような病状の受刑者を医療刑務所に入院させるのか、はっきりした基準がないように思われたことでした。要するに、医療刑務所側と各刑務所長のあいだでやりとりして決めているようです。
また、これは不明なのですが、普通であれば病院長という人がいるはずなのですが、部屋の看板には所長室はあっても院長室というものが見当たらず、ひょっとしたら院長はいないのではないかとも思ったりいたしました。
ガン患者が一番多いとのことでありましたので、医療に詳しい見学者の一人が
「ガンの手術にさいしては、最近は術中に確認のために(ガン細胞であるか否かの)病理検査を行うのが常識となっているが、この病院では術中検査を行っているのか、それに必要な施設はあるのか」と質問したところ、「術中の病理検査は行っていない、手術前に他から送られてきたデータに基づいて手術を行っている」という答でした。質問者は「そんなことでいいのか」と問いただしておりましたが、明解な答はありませんでした。
受刑者の収容区画にはエアコン(クーラー)は設けられていません(しかし、受刑者が立ち入ることがない職員たちの仕事場である管理区画にはおそらく設置されています)。ですから、病人であっても受刑者であるが故に夏場は汗だくで過ごさなければならないわけです(通常の刑務所ですと、冬場でもろくに暖房は行われておりません、ここは病院ですから暖房施設はある程度設けられているのではないかと思いたいのですが、質問するのを忘れました、ないかもしれません)。何年か前にこの医療刑務所を見学したことのある人物が「以前、改善に努める、と言っていたではないか」と強い口調で咎めましたが、世間にはクーラーのない家もあるし・・・などと弁解にならぬ弁解をいたしておりました。
「刑務官などが診療室などにも立ち入ることがあると聞いているのが、そこまでする必要があるのか、いかがなものか?」という質問に対しては、「ここは病院であると言ってもれっきとした刑務所、すなわち拘禁施設である、したがって我々にとって最も重要な任務は(受刑者の)身柄をまちがいなく確保しておくことであり、必要に応じて立ち入るのは当然のことである」と厳然とした口調の答が返ってきました。
昨年一年間に死亡した受刑者の数は62名とのことでした。患者である受刑者の総数は約200名ですから、死亡率は約30%です。病院での死亡率というのは病院ごとに患者の構成が異なるなど様々な要因があるため、簡単には比較できないで何ともはっきりしたことは言えないのですが、GGIの当てにならぬ直感によれば、一般の民間の病院における死亡率は数パーセントのオーダーではないかと思われるため、いろいろな条件や背景が異なるとはいえ、かなりこの死亡率は高いのではないか、という気がいたしました
そしてこの死亡率の数字よりももっと驚くべきというか、気がめいるのは受刑者の患者は死んだあとどうなるかということです、以下の数字をご覧ください
昨年一年間にこの病院で死亡した62名のうち
遺族などが遺体を引き取りにきた件数:19件
遺骨にされてから遺族や関係者などが引き取りに来た件数:10件
残り、つまり約半数に関しては、誰も引き取り手がなかったことになります
引き取り手のない遺骨は刑務所内(おそらく隣接している大阪刑務所)の墓地に埋葬されるとのことでした
昨年一年間に自殺を企図した受刑者の数についての質問に対しては「保安上の理由から答えることはできない」という答が返ってきました。誰も自殺を試みた者がいなかったならばおそらく「いません」という答になるものと考えられますから、たぶんゼロではないのでしょう。
刑務所で病人になるということは以上のようなことであります
楽しい話ではありませんでしたが、今夜はこれくらいで失礼いたします
グッドナイト・グッドラック