昨日は8月15日、76回目の終戦記念でした。近くのお寺が正午に鐘を鳴らしているのを耳にして気づきました。
そこで、終戦時に御年4歳であったGGI、もう老い先長くはありませんので、殊勝なことに、天皇による敗北宣言、いわゆる玉音放送で知られる終戦の詔書をもう一度読んでみることにしました。「飛ばし読み」なんかせずに、全文に目を通すことを決意しました・・・
かようなしだいで以下に昭和天皇による終戦の詔書の内容を紹介いたします。終戦の詔書については以前に一度この日記で紹介したと思うのですが、今日は現代語訳が付された、西日本新聞の2014年8月15日の記事からの引用です。
原文は修辞に修辞の限りを尽くした空疎な言葉を積み重ねた悪文ともいえる一文でありますので、内容がよく理解できず、玉音放送を聞いても勝ったのか敗けたのか分からなかった人も少なくなく、逆に国民のさらなる戦意を鼓舞する演説だと勘違いした人もいたとのことです。玉音放送を聞いて泣いている大人がいるのを目にして日本は敗けたのだと分って愕然とした軍国少年もいました。GGIは終戦時、岐阜県の大垣あたりにいて米軍の空爆下で逃げ惑っていたことになっているのですが、まったく記憶なし・・・
西日本新聞の記事では現代語訳が付されています。現代語訳は郷学研修所・安岡正篤記念館(埼玉県)の助言を受けて作成したとされています。
<玉音放送の全文>(終戦の詔書)
朕(ちん)、深く世界の大勢と帝国の現状とに鑑み、非常の措置をもって時局を収拾せんと欲し、ここに忠良なるなんじ臣民に告ぐ。
朕は帝国政府をして米英支蘇(べいえいしそ)四国(しこく)に対し、その共同宣言を受諾する旨(むね)通告せしめたり。
そもそも帝国臣民の康寧(こうねい)を図り、万邦共栄の楽(たのしみ)をともにするは、皇祖皇宗(こうそこうそう)の遺範(いはん)にして朕の拳々(けんけん)おかざるところ。さきに米英二国に宣戦せるゆえんもまた、実に帝国の自存と東亜の安定とを庶幾(しょき)するに出で、他国の主権を排し領土を侵すがごときは、もとより朕が志にあらず。
しかるに交戦すでに四歳(しさい)を閲(けみ)し、朕が陸海将兵の勇戦、朕が百僚有司の励精、朕が一億衆庶の奉公、おのおの最善を尽くせるにかかわらず、戦局必ずしも好転せず、世界の大勢また我に利あらず。しかのみならず敵は新たに残虐なる爆弾を使用してしきりに無辜(むこ)を殺傷し、惨害の及ぶところ真(しん)にはかるべからざるに至る。しかもなお交戦を継続せんか、ついにわが民族の滅亡を招来するのみならず、ひいて人類の文明をも破却(はきゃく)すべし。
かくのごとくは朕、何をもってか億兆の赤子を保(ほ)し、皇祖皇宗の神霊に謝せんや。これ朕が帝国政府をして共同宣言に応じせしむるに至れるゆえんなり。
朕は帝国と共に終始東亜の解放に協力せる諸盟邦に対し遺憾の意を表せざるを得ず。
帝国臣民にして戦陣に死し、職域に殉じ、非命にたおれたる者および、その遺族に思いを致せば、五内(ごだい)ために裂く。かつ戦傷を負ひ、災禍をこうむり、家業を失いたる者の厚生に至りては朕の深く軫念(しんねん)するところなり。
おもうに今後、帝国の受くべき苦難はもとより尋常にあらず。なんじ臣民の衷情(ちゅうじょう)も朕よくこれを知る。しかれども朕は時運のおもむくところ、堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、もって万世のために太平を開かんと欲す。
朕はここに国体を護持し得て、忠良なるなんじ臣民の赤誠(せきせい)に信倚(しんい)し、常になんじ臣民と共にあり。
もしそれ、情の激するところみだりに事端をしげくし、あるいは同胞排擠(はいせい)、互いに時局をみだり、ために大道を誤り、信義を世界に失ふがごときは朕最もこれを戒む。
よろしく挙国一家、子孫相(あい)伝え、かたく神州(しんしゅう)の不滅を信じ、任重くして道遠きをおもい、総力を将来の建設に傾け、道義を篤くし、志操(しそう)をかたくし、誓って国体の精華を発揚し、世界の進運に後れざらんことを期すべし。
なんじ臣民それよく朕が意を体(たい)せよ。
いかがでしたか。どこまでお分かりになりましたか?ふりがなが付されてなかったら、もうチンプンカンプン・・・でもですね。意味は分らなくても、この詔書を声に出して重々しくゆっくと読み上げているうちに、不思議なことに、だんだん自分はとっても偉いんだと、気分が高揚してきますよ!ほんとうです、どうか一度試してみてください!
では次に西日本新聞による現代語訳を紹介いたします
<現代語訳>
私は深く世界の大勢と日本の現状に鑑み、非常の措置をもって時局を収拾しようと思い、忠義で善良なあなた方臣民に告げる。
私は帝国政府に米国、英国、中国、ソ連の4カ国に対しその(ポツダム)宣言を受諾することを通告させた。
そもそも帝国臣民の安全を確保し世界の国々と共に栄え、喜びを共にすることは、天皇家の祖先から残された規範であり、私も深く心にとめ、そう努めてきた。
先に、米・英2カ国に宣戦を布告した理由もまた、帝国の自存と東亜の安定を願ってのものであって、他国の主権を侵害したり、領土を侵犯したりするようなことは、もちろん私の心志(意志)ではない。
しかしながら、戦闘状態はすでに4年を経て、わが陸海将兵の勇敢な戦闘や、官僚・公務員たちの励精、一億民衆の奉公は、それぞれ最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は必ずしも好転せず、世界の情勢もわれわれにとって不利に働いている。
それだけでなく、敵は新たに残虐な爆弾(原子爆弾)を使用して、罪のない人々を殺傷し、その被害ははかり知れない。それでもなお交戦を継続すれば、ついにわが民族の滅亡を招くだけでなく、それから引き続いて人類文明をも破壊することになってしまうだろう。
そのような事態になったとしたら、私はどうしてわが子ともいえる多くの国民を守り、皇祖皇宗の神霊に謝罪することができようか。これが私が政府に宣言に応じるようにさせた理由である。
私は帝国とともに終始、東亜の解放に協力してきた友好国に対して、遺憾の意を表さざるを得ない。
帝国臣民であり、戦場で没し、職場で殉職し、悲惨な最期を遂げた者、またその遺族のことを考えると内臓が引き裂かれる思いがする。さらに戦場で負傷し、戦禍に遭い、家や仕事を失った者の厚生については、私が深く心配するところである。
思うに、今後、帝国の受けるであろう苦難は尋常ではない。あなたたち臣民の本心も私はよく知っている。しかし、私はこれからの運命について堪え難いことを堪え、忍び難いことを忍んで将来の万世のために太平の世を切り開こうと願っている。
私は、ここにこうして国体(天皇を中心とする秩序)を護持して、忠良なあなた方臣民の偽りのない心を信じ、常にあなた方臣民と共にある。もし激情にかられてむやみに事をこじらせ、あるいは同胞同士が排斥し合って国家を混乱に陥らせて国家の方針を誤って世界から信用を失うようなことを私はもっとも戒めたい。
国を挙げて一つの家族のように、子孫ともどもかたく神国日本の不滅を信じ、道は遠く責任は重大であることを自覚し、総力を将来の建設のために傾け、道義心と志操(守って変えない志)をかたく持ち、日本の栄光を再び輝かせるよう、世界の動きに遅れないように期すべきだ。あなた方臣民は私のそのような意を体してほしい。
=2014/08/15付 西日本新聞朝刊=
この現代語訳、正確であり分りやすいのはグッドです。しかしながら、原文にある天皇の尊大な口ぶりがあまり再現されてないように感じられ、GGIとしましては少々もの足りませぬ。また、「臣民」と言う言葉が現代語に訳されていないのはいかがなものであろうか、と愚考いたします。これは「天皇の家来であるところの民」といった意味ですが、おそらく明治維新のころの「造語」です。ですから、正確には「わが家来であるところの民よ」とでも訳すべきでありませう・・・・
終戦の詔書の文面において一番問題があるのではないかとGGIが思うのは、「先に米英二国に宣戦せるゆえんもまた、実に帝国の自存と東亜の安定とを庶幾(しょき)するに出で、他国の主権を排し領土を侵すがごときは、もとより朕が志にあらず」(先に、米・英2カ国に宣戦を布告した理由もまた、帝国の自存と東亜の安定を願ってのものであって、他国の主権を侵害したり、領土を侵犯したりするようなことは、もちろん私の心志(意志)ではない)という部分です。
これはイケマセンね。大変イケマセン、これではまったくの責任逃れではないか・・・これでは戦争を仕掛けたことに対する国家の最高責任者としての反省の念は皆無ではないか・・・「もとより朕が志にあらず」と言い訳するとは、まことに往生際がよろしくありませぬ。この期に及んでも、よくぞこのようなことを言ったものだ、君主としてまことにみっともないではないかと慨嘆せざるを得ません。
しかしながら、「朕は時運のおもむくところ、堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、もって万世のために太平を開かんと欲す」という、この一つのフレーズにより、昭和天皇は戦後に備えて、平和を志向する天皇へと一挙にイメージチェンジすることに見事に成功した、ともされております
みなさんの感想はいかがでしょうか。この終戦の詔書と
2014年12月9日の日記に掲載しました「開戦の詔書」とあわせてお読みなると、勉強になり過ぎるぐらい勉強になりますよ・・・
まったくの余談になりますが、終戦後、悪ガキたちは天皇の口真似をして、「朕思わず屁をこいた、汝臣民臭かろう、国家のためじゃ我慢せえ」などとふざけて言ったものでありました。今は昔の話でございます。戦前であれば不敬罪ものでありませう・・・・
今日の写真は76年目の終戦記念日の、まことに平和なる湖岸の風景を撮ったものです。よろしければクリックしてご覧くださいませ。
なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ・・・
グッドナイト・グッドラック!