平静最後の日となりましたね。
明日からは、さあいよいよ新天皇イヤー開幕だといわんばかりに世の中いろいろ盛り上がり騒がしくなることでありませう。世の中が騒がしくなる前に今日は静かに平成最後のとても大切な英語の勉強をいたしたいと思います
GGIは英語については受験英語以上のことは何も知らないのですが、今日の先生役は不肖GGIでございます。生徒さんは大学を目指して受験勉強中の数人の高校生さんたちです。
先生:え~、みなさん、明日からは新元号とか世の中何やら浮かれている雰囲気が充満しておりますので、今日の授業は天皇さんにかかわる英語が教材です。
高校生のみなさんが天皇や天皇制についてにどの程度関心があるのかないのかはなかなか興味あるテーマですが・・・えっ、なんですか?天皇家の子供は大学に入るときちゃんと入学試験を受けるのかというのですか?さあ、どうですかねえ・・・入試を受けたけれど落ちたりしたら恥ずかしいだけはなく大騒ぎになるので、大学のほうはどんな点数でも合格したことにしてしまうのじゃないかなあ・・・えっ、私立ならともかく国公立の大学だとそんなことしたら不公平、問題になるじゃないかって・・・もう、そんなヘンなこと聞かないでください。まあその件はともかくとして、3月18日の毎日新聞は以下のようなニュースを報じていましたので、ここでその内容を紹介いたします。
《毎日新聞が16、17日に実施した全国世論調査で、象徴としての天皇の役割について「果たされている」とした回答は9割近くにのぼった。このうち「十分果たされている」との回答は20歳以上の全世代で6割を超え、40代と50代では7割超。支持政党別でみても、党中枢が天皇制に否定的な共産党支持層でも「十分果たされている」が6割を超えた。》
すごいですねえ!国民の9割が「天皇さん、ようやってはる!」ですよ。ところでこの記事に「天皇の役割」という言葉がありますね。何が天皇の役割であるか、人々がどのように考えでているかは様々ではないかと思うのですが、実は天皇の役割は法律的には以下のとおり日本国憲法において明確に規定されているのです。
第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
国事行為の内容については第7条に十の項目が列挙されていますが、天皇の行為に関する規定で最も重要なのは第4条です。第4条の元の英文は以下のとおりです
The Emperor shall perform only such acts in matters of state as are provided for in the Constitution and he shall not have powers related to government.
生徒A君:先生、質問!日本の憲法やなのにどうして「元の英文」というものがあるのですか?
先生:グッドクエスチョンです、でもなあ、その事情を話しだすと長くなる・・・まあ、要するに世界の大国を相手に勝つ見込みゼロのアホな戦争を行って日本はコテンパンに連合国に敗けたので、いままでの憲法を捨てさせられて連合国が認める内容の新しい憲法を作ったということや、マッカーサーという当時天皇よりもずっと偉かった連合軍総司令官閣下のOKが必要なので現憲法の元となった英語の原文が存在しているというわけです
生徒B君:それならば日本は憲法を連合国からは押しつけられことになりませんか?
先生:君の質問もグッドクエスチョンやけれど、これも話すと長くなりすぎる。自分は愛国者やと自称する人たちの間にはそういう意見もあるようですが・・・まあ、簡単にいうと外面的には押し付けに見えるかもしれないけれど、当時日本の国会で圧倒的多数で堂々と可決されているから押しつけと決めつけるのは一面的すぎる、それに当時のマッカーサー大元帥閣下、国会が反対するなら直接国民投票にかけてもよいと自信たっぷりに言っていたぐらいやから、嫌なものを押し付けられたと言うのは誇張し過ぎ・・・でも、この話をしていると英語の授業進まんからこの話は今日はヤンぺということにします。
とにかく今日の英語の授業はこの憲法第4条の英文とその訳文である日本語についてです。ちょっと説明しておくと「国事行為」は英語ではmatters of state、この表現、エライ簡単な英語やなあと先生は拍子抜けしてしまいました。それに日本語で「権能」と記されている部分、英語では単にpowerと表現されているだけ。つまり「権能」などと言われると何やら意味不明のおどろおどろしい感じがするけど、要するに「権力」「権限」といった意味や。ここで君たちに質問、この第4条の条文、日本語の表現を元の英語と比較してみて、何か感じることはないかなあ?気が付いたことを何でもいいから言ってください
生徒A君:はい、先生。日本語の表現は平易であり簡潔に天皇の役割を説明しており、誰にでも理解できるのでとてもよくできていると思います
先生:確かに平易でわかりやすい、でも君はこの日本語の訳文、英語と比べてみて何か変だと感じたりしない?何か気づいた人、いませんか?
生徒B君:あの~、先生。この日本語、原文の英語を忠実には訳していないと思います。この訳文、だいたいは正しいかもしれませんが、英語の原文で二度も使われているshallという単語の意味がまったく訳されていません。これはどう考えてもおかしいと思います、誤訳、欠陥翻訳ではありませんか?
先生:君は結構カシコイなあ、ええところに気がついた。でも、これは誰でも英文と日本語をちゃんと比較すれば気がつくことや。じゃあ、君はこのshallの部分はどう訳したら正しいと思う?
生徒B君:ようわからんけど、このshallは何か義務みたいなことを意味しているのじゃないですか?このようにすべきだとか、このようにしなくてはいけないとか・・・
先生:なかなか君はいい線行ってる。shallという単語、簡単な単語のように思えるけれど結構意味が広くて正確に訳すのが難しいことがある。この単語、大きな辞書で調べると最後のほうに以下のような説明が書いてある
《文語》(法令、規則)・・・すべし、せよ、・・・と定める、するものとする。例文:The meetings of the council shall be public, 審議会は公開とする (小学館ランダムハウス英和大辞典)
ここにある「・・・するものとする」は法律や規則における定型的な表現であり、平易に表現すれば「・・・・しなければならない」という言う意味や。だからこの辞書の例文、「・・・公開とする」は「・・・公開しなければならない」と同じ意味。B君、君が憲法の日本語訳が誤訳やというのなら、今説明したことを頭に入れて訳してみてくれないか
B君:そんな難しいこと言わんといてください・・・あのですねえ、まあ・・・「天皇は
この憲法の定める国事に関する行為だけをするようにしなければならない、また彼は国政に
関する権限を有しているべきではない」かなあ
先生:まあ大体はそういう意味や、でも日本語してはなんかコナレが悪いなあ。誰かいまのB君の訳文をもっと自然な日本語に直してくれませんか
C君:ボクがやってみます。国事行為だけをするようにしなければならない、ということは
裏がえして言えば、国事行為以外はやったらあかんということになりますから・・・「天皇はこの憲法の定める国事に関する行為以外のことを行ってはならず、かつ天皇は国政に関する権限を有していてはならない」ということになるのじゃないですか?
先生:正解!「国事行為以外はやったらあかん」の部分は意訳であるから問題というのであればのであれば、たとえば「天皇は国事行為のみを行うべきものとする」でもエエかもしれん。
ところでさっきB君が憲法の訳文、誤訳と違うかと言っていたけど、そのことについてみ
んなどう思う?この英語の原文を訳した人は君たちのような高校生ではない、おそらく法律や法律英語に長けた政府や議会の関係者だろうから、誤訳なんかするはずがないと先生は思うのだけれど・・・・
A君:そうやなあ、ようわからんけれど、そんなプロが訳したのなら二度も使われている
shallという単語を見落とすとは考えられんなあ。だから、何らかの理由でわざとこの単語を無視したのとちがうでしょうか?つまりこれは故意の、恣意的な誤訳というか・・・
B君:なるほど、そうかもしれん。いや、きっとそうや。だって憲法のこの条文の日本語、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」という文章を、たとえば「天皇は、この憲法の定める国事行為以外を行ってはならず(あるいは「国事行為のみを行うべきものとし」)、国政に関する権限を有していてはならない」という訳文と比較すると、受ける印象はかなり異なるからなあ。
先生:どのように印象が異なるのですか?
B君:憲法の条文の日本語は単に天皇の役割についての簡潔な説明という印象しか受けませんが、shallの意味をしっかり捉えた訳文を読むと、憲法は天皇の行為に対しては非常に大きな制約を課している、がんじがらめといってもいいぐらい天皇の行為は制約されているという印象を受けます。いやこれは印象ではなく、英文を見る限り、天皇は事実として非常な制約を課されていることになります。だって、天皇よ、君は国事行為だけしかやったらあかん、ほかの余計なことはやらんとじっとしていろ、まして政治にかかわるようなことはしたらあかん、ということでしょう・・・
C君:僕もそう思います。だから、天皇制を命と思っている日本政府の関係者は知恵を絞って、天皇の行為は憲法によりがんじがらめに制約されているという事実をできるだけ曖昧にするために、このようなshall抜きの訳文を考え出したのではないでしょうか・・・したがって、これは恣意的な、本来の意味をねじ曲げた姑息きわまる誤訳ではないでせうか、先生、こんな悪質な誤訳を放置しておいていいのですか?
先生:う~ん、B君、君はほんまに賢い、おそらくその通りや、オレより賢い。でもなあ、彼らはなかなか悪賢いというか巧妙なな逃げ道を用意してるのや。
B君:どんな逃げ道ですか
先生:あのなあ、こんな意図的な大誤訳をしてケシカランとねじ込んだとするでしょう。そ
うすると開き直ってこういうのに決まってるのです。「オッサン、なにアホなこと言うてる
のや、法律の条文というものはすべからく、わざわざこれは義務ですなどと記さないでも、書かれていることはすべて義務か、あるいは権利を前提としたものや。だから、shallと書いてあるからといって、いちいち「・・・・しなければなりません」などとバカていねいに訳す必要はないのや。そんなことも知らずにド素人が何エラソーなこれは悪質な誤訳などと見当違いのこと言うてるのや」。
B君:役人と言うのはなかなかチエが回るのやなあ、ボクよりカシコイなあ・・・
先生:そのとおり。高級役人の原産地である東大法学部なんかにいくと、みんなチエが回るようになる。それにチエのある役人さんならば「あのですね、オッサン。憲法の元となった英文は確かに存在してはいるけれど英文のほうは憲法そのものではありませ~ん。日本国憲法の正規の条文はあくまでも日本語で記されたものだけなので~す。だから英語の原文は資料的価値を有していても法的には何の意味も価値もないので~す。だから恣意的な誤訳がどうのこうのいうのはまったくお門違いの話に過ぎませ~ん」などと言いださないとも限らん。
しかし、役人がどのようにヘリクツをこねようともこの憲法第4条の日本語は英文からの翻訳であることは事実や。だから、この誤訳もどきの訳文、誤訳でないとしても、少なくとも条文の日本語がきわめて不正確不適切な翻訳の結果であることは動かせない事実。これが英語の入試、英文和訳の問題の解答であったら間違いなく大幅な減点や!わかったか諸君!
C君:ワカリマシタ!ところで先生、天皇は被災地や戦跡の地などあっちこっちを訪問して評判がとても良いようですが、天皇のこのような行為は憲法4条に規定には含まれていないのではありませんか?憲法第4条に定められているもの以外の行為を行うことは果たして許されるのですか?
先生:あ~・・・その話は結構ややこしく厄介な問題を含んでいるので大切なことであるこ
とは分るのですが、今日は英語の授業なので、その話は回避いたしたい・・・
A君:先生、もう一つ質問!天皇はどうして憲法第4条により自分の行為に厳しい制約を課せられているのですか?
先生:それはなあ、きわめて重要な・・・まさに天皇制の核心を突く問題や。だけど、私は今日は英語の先生役でありますので答えを回避させていただきます・・・
A君、B君、C君:こらあ~センコー、回避ばっかりするなあ!卑怯者!クソッタレ、クタバレ!
なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ・・・・
今日の写真は懐かしきマッカーサー元帥閣下とわが元大元帥閣下の写真です。よろしければ
クリックしてご覧くださいませ
グッドナイト・グッドラック!
明日からは、さあいよいよ新天皇イヤー開幕だといわんばかりに世の中いろいろ盛り上がり騒がしくなることでありませう。世の中が騒がしくなる前に今日は静かに平成最後のとても大切な英語の勉強をいたしたいと思います
GGIは英語については受験英語以上のことは何も知らないのですが、今日の先生役は不肖GGIでございます。生徒さんは大学を目指して受験勉強中の数人の高校生さんたちです。
先生:え~、みなさん、明日からは新元号とか世の中何やら浮かれている雰囲気が充満しておりますので、今日の授業は天皇さんにかかわる英語が教材です。
高校生のみなさんが天皇や天皇制についてにどの程度関心があるのかないのかはなかなか興味あるテーマですが・・・えっ、なんですか?天皇家の子供は大学に入るときちゃんと入学試験を受けるのかというのですか?さあ、どうですかねえ・・・入試を受けたけれど落ちたりしたら恥ずかしいだけはなく大騒ぎになるので、大学のほうはどんな点数でも合格したことにしてしまうのじゃないかなあ・・・えっ、私立ならともかく国公立の大学だとそんなことしたら不公平、問題になるじゃないかって・・・もう、そんなヘンなこと聞かないでください。まあその件はともかくとして、3月18日の毎日新聞は以下のようなニュースを報じていましたので、ここでその内容を紹介いたします。
《毎日新聞が16、17日に実施した全国世論調査で、象徴としての天皇の役割について「果たされている」とした回答は9割近くにのぼった。このうち「十分果たされている」との回答は20歳以上の全世代で6割を超え、40代と50代では7割超。支持政党別でみても、党中枢が天皇制に否定的な共産党支持層でも「十分果たされている」が6割を超えた。》
すごいですねえ!国民の9割が「天皇さん、ようやってはる!」ですよ。ところでこの記事に「天皇の役割」という言葉がありますね。何が天皇の役割であるか、人々がどのように考えでているかは様々ではないかと思うのですが、実は天皇の役割は法律的には以下のとおり日本国憲法において明確に規定されているのです。
第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
国事行為の内容については第7条に十の項目が列挙されていますが、天皇の行為に関する規定で最も重要なのは第4条です。第4条の元の英文は以下のとおりです
The Emperor shall perform only such acts in matters of state as are provided for in the Constitution and he shall not have powers related to government.
生徒A君:先生、質問!日本の憲法やなのにどうして「元の英文」というものがあるのですか?
先生:グッドクエスチョンです、でもなあ、その事情を話しだすと長くなる・・・まあ、要するに世界の大国を相手に勝つ見込みゼロのアホな戦争を行って日本はコテンパンに連合国に敗けたので、いままでの憲法を捨てさせられて連合国が認める内容の新しい憲法を作ったということや、マッカーサーという当時天皇よりもずっと偉かった連合軍総司令官閣下のOKが必要なので現憲法の元となった英語の原文が存在しているというわけです
生徒B君:それならば日本は憲法を連合国からは押しつけられことになりませんか?
先生:君の質問もグッドクエスチョンやけれど、これも話すと長くなりすぎる。自分は愛国者やと自称する人たちの間にはそういう意見もあるようですが・・・まあ、簡単にいうと外面的には押し付けに見えるかもしれないけれど、当時日本の国会で圧倒的多数で堂々と可決されているから押しつけと決めつけるのは一面的すぎる、それに当時のマッカーサー大元帥閣下、国会が反対するなら直接国民投票にかけてもよいと自信たっぷりに言っていたぐらいやから、嫌なものを押し付けられたと言うのは誇張し過ぎ・・・でも、この話をしていると英語の授業進まんからこの話は今日はヤンぺということにします。
とにかく今日の英語の授業はこの憲法第4条の英文とその訳文である日本語についてです。ちょっと説明しておくと「国事行為」は英語ではmatters of state、この表現、エライ簡単な英語やなあと先生は拍子抜けしてしまいました。それに日本語で「権能」と記されている部分、英語では単にpowerと表現されているだけ。つまり「権能」などと言われると何やら意味不明のおどろおどろしい感じがするけど、要するに「権力」「権限」といった意味や。ここで君たちに質問、この第4条の条文、日本語の表現を元の英語と比較してみて、何か感じることはないかなあ?気が付いたことを何でもいいから言ってください
生徒A君:はい、先生。日本語の表現は平易であり簡潔に天皇の役割を説明しており、誰にでも理解できるのでとてもよくできていると思います
先生:確かに平易でわかりやすい、でも君はこの日本語の訳文、英語と比べてみて何か変だと感じたりしない?何か気づいた人、いませんか?
生徒B君:あの~、先生。この日本語、原文の英語を忠実には訳していないと思います。この訳文、だいたいは正しいかもしれませんが、英語の原文で二度も使われているshallという単語の意味がまったく訳されていません。これはどう考えてもおかしいと思います、誤訳、欠陥翻訳ではありませんか?
先生:君は結構カシコイなあ、ええところに気がついた。でも、これは誰でも英文と日本語をちゃんと比較すれば気がつくことや。じゃあ、君はこのshallの部分はどう訳したら正しいと思う?
生徒B君:ようわからんけど、このshallは何か義務みたいなことを意味しているのじゃないですか?このようにすべきだとか、このようにしなくてはいけないとか・・・
先生:なかなか君はいい線行ってる。shallという単語、簡単な単語のように思えるけれど結構意味が広くて正確に訳すのが難しいことがある。この単語、大きな辞書で調べると最後のほうに以下のような説明が書いてある
《文語》(法令、規則)・・・すべし、せよ、・・・と定める、するものとする。例文:The meetings of the council shall be public, 審議会は公開とする (小学館ランダムハウス英和大辞典)
ここにある「・・・するものとする」は法律や規則における定型的な表現であり、平易に表現すれば「・・・・しなければならない」という言う意味や。だからこの辞書の例文、「・・・公開とする」は「・・・公開しなければならない」と同じ意味。B君、君が憲法の日本語訳が誤訳やというのなら、今説明したことを頭に入れて訳してみてくれないか
B君:そんな難しいこと言わんといてください・・・あのですねえ、まあ・・・「天皇は
この憲法の定める国事に関する行為だけをするようにしなければならない、また彼は国政に
関する権限を有しているべきではない」かなあ
先生:まあ大体はそういう意味や、でも日本語してはなんかコナレが悪いなあ。誰かいまのB君の訳文をもっと自然な日本語に直してくれませんか
C君:ボクがやってみます。国事行為だけをするようにしなければならない、ということは
裏がえして言えば、国事行為以外はやったらあかんということになりますから・・・「天皇はこの憲法の定める国事に関する行為以外のことを行ってはならず、かつ天皇は国政に関する権限を有していてはならない」ということになるのじゃないですか?
先生:正解!「国事行為以外はやったらあかん」の部分は意訳であるから問題というのであればのであれば、たとえば「天皇は国事行為のみを行うべきものとする」でもエエかもしれん。
ところでさっきB君が憲法の訳文、誤訳と違うかと言っていたけど、そのことについてみ
んなどう思う?この英語の原文を訳した人は君たちのような高校生ではない、おそらく法律や法律英語に長けた政府や議会の関係者だろうから、誤訳なんかするはずがないと先生は思うのだけれど・・・・
A君:そうやなあ、ようわからんけれど、そんなプロが訳したのなら二度も使われている
shallという単語を見落とすとは考えられんなあ。だから、何らかの理由でわざとこの単語を無視したのとちがうでしょうか?つまりこれは故意の、恣意的な誤訳というか・・・
B君:なるほど、そうかもしれん。いや、きっとそうや。だって憲法のこの条文の日本語、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」という文章を、たとえば「天皇は、この憲法の定める国事行為以外を行ってはならず(あるいは「国事行為のみを行うべきものとし」)、国政に関する権限を有していてはならない」という訳文と比較すると、受ける印象はかなり異なるからなあ。
先生:どのように印象が異なるのですか?
B君:憲法の条文の日本語は単に天皇の役割についての簡潔な説明という印象しか受けませんが、shallの意味をしっかり捉えた訳文を読むと、憲法は天皇の行為に対しては非常に大きな制約を課している、がんじがらめといってもいいぐらい天皇の行為は制約されているという印象を受けます。いやこれは印象ではなく、英文を見る限り、天皇は事実として非常な制約を課されていることになります。だって、天皇よ、君は国事行為だけしかやったらあかん、ほかの余計なことはやらんとじっとしていろ、まして政治にかかわるようなことはしたらあかん、ということでしょう・・・
C君:僕もそう思います。だから、天皇制を命と思っている日本政府の関係者は知恵を絞って、天皇の行為は憲法によりがんじがらめに制約されているという事実をできるだけ曖昧にするために、このようなshall抜きの訳文を考え出したのではないでしょうか・・・したがって、これは恣意的な、本来の意味をねじ曲げた姑息きわまる誤訳ではないでせうか、先生、こんな悪質な誤訳を放置しておいていいのですか?
先生:う~ん、B君、君はほんまに賢い、おそらくその通りや、オレより賢い。でもなあ、彼らはなかなか悪賢いというか巧妙なな逃げ道を用意してるのや。
B君:どんな逃げ道ですか
先生:あのなあ、こんな意図的な大誤訳をしてケシカランとねじ込んだとするでしょう。そ
うすると開き直ってこういうのに決まってるのです。「オッサン、なにアホなこと言うてる
のや、法律の条文というものはすべからく、わざわざこれは義務ですなどと記さないでも、書かれていることはすべて義務か、あるいは権利を前提としたものや。だから、shallと書いてあるからといって、いちいち「・・・・しなければなりません」などとバカていねいに訳す必要はないのや。そんなことも知らずにド素人が何エラソーなこれは悪質な誤訳などと見当違いのこと言うてるのや」。
B君:役人と言うのはなかなかチエが回るのやなあ、ボクよりカシコイなあ・・・
先生:そのとおり。高級役人の原産地である東大法学部なんかにいくと、みんなチエが回るようになる。それにチエのある役人さんならば「あのですね、オッサン。憲法の元となった英文は確かに存在してはいるけれど英文のほうは憲法そのものではありませ~ん。日本国憲法の正規の条文はあくまでも日本語で記されたものだけなので~す。だから英語の原文は資料的価値を有していても法的には何の意味も価値もないので~す。だから恣意的な誤訳がどうのこうのいうのはまったくお門違いの話に過ぎませ~ん」などと言いださないとも限らん。
しかし、役人がどのようにヘリクツをこねようともこの憲法第4条の日本語は英文からの翻訳であることは事実や。だから、この誤訳もどきの訳文、誤訳でないとしても、少なくとも条文の日本語がきわめて不正確不適切な翻訳の結果であることは動かせない事実。これが英語の入試、英文和訳の問題の解答であったら間違いなく大幅な減点や!わかったか諸君!
C君:ワカリマシタ!ところで先生、天皇は被災地や戦跡の地などあっちこっちを訪問して評判がとても良いようですが、天皇のこのような行為は憲法4条に規定には含まれていないのではありませんか?憲法第4条に定められているもの以外の行為を行うことは果たして許されるのですか?
先生:あ~・・・その話は結構ややこしく厄介な問題を含んでいるので大切なことであるこ
とは分るのですが、今日は英語の授業なので、その話は回避いたしたい・・・
A君:先生、もう一つ質問!天皇はどうして憲法第4条により自分の行為に厳しい制約を課せられているのですか?
先生:それはなあ、きわめて重要な・・・まさに天皇制の核心を突く問題や。だけど、私は今日は英語の先生役でありますので答えを回避させていただきます・・・
A君、B君、C君:こらあ~センコー、回避ばっかりするなあ!卑怯者!クソッタレ、クタバレ!
なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ・・・・
今日の写真は懐かしきマッカーサー元帥閣下とわが元大元帥閣下の写真です。よろしければ
クリックしてご覧くださいませ
グッドナイト・グッドラック!