UGUG・GGIのかしこばか日記 

びわ湖畔を彷徨する独居性誇大妄想性イチャモン性前期高齢者の独白

重大ミッション?(その6):ミッションに従い小学生になることを決心するに至るの記(前編) ・・・

2012-12-31 01:07:19 | 日記

GGIは深い眠りからさめ、われに返った、ここはいったいどこだろう?ボクは誰?

目の前に、第二の男の大きな顔が迫っていた

「99号、お目覚めですか、オレが誰か分かるか?」
「・・・誰かって?・・う~ん・・・閻魔さまですか、それとも・・」
「まだ寝ぼけていやがる、バカたれ!オレだよ、オレ、第二の男だ、おい目的地についたぞ、さっさと起きろ、いよいよミッション敢行だ、しっかりしろ」
「ミッション?・・・そんなことより琵琶湖の水、まだ漏れ出ていないか?・・・それにオレ、まだ朝めしも食ってないんだ・・・」
「朝めしには足がない、だから逃げていくわけじゃない、あとにしろ、さっさと起きて車の外に出て指示に従え・・・おい99号、ズボンが濡れてるぞ、怖くてオシッコでもチビッタのとちがうか、みっともないなあ」

GGIはあわててズボンを隠すためにベンチコートを身に着け、車の外に降り立った、ここは目的地の小学校、この湖北の町の最北端にある小学校の校庭だった、校舎の背後には山が迫っている、山ひとつ向こうは福井県敦賀市だ

校庭には第一の男、第二の男、それにモニカも強い風に吹かれながら立っていた、冷え切った肌を切り裂くような外気がベンチコートの裾から全身に入り込み、GGIの眠気を追い払った、ちらついていた小雪はおさまっていた、空はあいかわらず鉛色だった

まったく寒くてやりきれないなあ、オレの人一倍あたたかき思いやりに満ち満ちている心もこれでは凍り付いてしまいそうだと空を見上げた、すると、天空から声がした、GGIが懇意にしているあの神さまの声だった

「これヨッサリアンよ、ではなかった、コードネームが99号であるところのGGIよ、おまえの話は長いんや、いつもみんなに注意されているだろう、あのモニカにも。《GGI、あんたのダラダラした長ったらしい文章なんて誰も読まへんよ、わかってる?GGI、文章はせいぜいA4一枚に収まるようにしなさい、それがデキル男というものよ!》と言われているだろう、だからもう無駄口はぐるぐる巻きに封印して冷凍庫に放り込み、これからすぐに本題、ミッションの話に移りなさい」

この声を耳にして正真正銘純正シティボーイであるとGGIも認める、穏やかなる人物、第一の男が話しはじめた

「みなさん、今日は寒いところごくろうさま、GGIも遠路ありがとうございます、心から感謝申し上げます、では神さまのお声もありましたので、今から本日のミッションに関するブリーフィングを行います、手短に説明いたします。本日のミッションの中心的内容は、この小学校で午前9時半から行われることになっている、この市の教育委員会と市の原子力防災部局による出前授業に際しまして、我らが優秀なるエージェント、99号に小学生として参加してもらうことです、残りの私たち三人はオブザーバーとして授業を参観したします」

「99号はなぜ優秀なる自分が小学生の役目を果たさなければならないのか、オレの知能は小学生程度かと強い不満をお感じになっているものと推察いたしますが、これまでの経過説明をお聞きになれば、納得していただけるものと確信しております、もちろん、99号が納得されなくてもミッションを強行いたす所存です、99号がどうしても命令に従わない場合は、彼が今日メタセコイア街道で恐怖のあまりオシッコをちびったと世間に向けて大宣伝いたします、この点に関しましてはすでにニャーニャの了解を得ております」

「ではこれまでの経過について手短に説明いたします、みなさん、昨夏、私たちがこの市内の小学校や幼稚園のグランドなどで環境放射線の測定を実施したことがあることを御記憶のことと思います、その節は99号にもたいへんお世話になりました、あの測定に際しまして、一校だけ測定することを拒否した学校がありました、それがこの小学校です、文字通りの小さな学校です、校舎はごらんのとおり大きいのですが生徒さんはたったの二十数人しかおりません、過疎化のためです、他の小学校では何ら問題なく測定させてもらうことができたのですが」

「拒否した理由は定かではありません、この小学校は市内で一番敦賀原発の近くに位置しています、敦賀原発から30キロ圏内にあり、また大飯や美浜の原発からも20~30キロの圏内に位置しています、父兄などから何か心配する声があったとか、あらぬ憶測が飛び交ったり、おかしな風評が立っては困るという声があったのかもしれません、でもなぜ断ったのか真相は不明です」

GGIが第一の男の話に一心に耳を傾けていると、となりにいたモニカの左手がさっと伸びた、手にはティッシュが一枚握られていた

「99号、鼻水!」

「どうしたんですかモニカ?静かに話を聞いてください、すぐすみますから、えっと、どこまでお話ししましったけ、ああ、そうです、それで
これだけであれば、たいして問題ではなかったのですが、実はそのあと、昨年、秋に入ってから奇異なことが一つ二つあったのです、その一つは校庭に新たに土を入れたことです、いや入れ替えたのではありません、校庭が荒れていて凸凹だらけになっているので市内の土木業者がサービスで、つまり無償で行ったとのことです、業者はひごろ市内の方々にお世話になっているからと話しているそうですが・・・でもみなさん、これは何かヘンだとは思われませんか、ひょっとしたら小学校側が、私たちが測定を行う以前に、自前で放射線測定を行ったところ、思っていたよりも高い値が出たりしてあわてた、それで・・・などと疑えばきりがないのですが・・・とにかく校庭に新たに土を入れたほんとうの理由はこれまでにところ定かではありません」

「これだけあればあまり問題にすべきではなかったかもしれないのですが、ところが実は、この小学校、昨年10月に入ってから、とつぜん放射線についての出前授業を行っていたのです、このことは教育委員会も市の防災担当者もまったく把握していませんでした、そんな授業が行われたことなんかまったく知らなかったのです、第二の男と私が指摘するまでは・・・私たちはこの小学校区の地域の方からこの話、出前授業が行われていたことを知ったのです」

「形の上では小学校側が自主的にどこかに依頼して出前授業を行ったということになっているのですが、この件に関して第二の男と協力して精力的に諜報活動、すなわち情報収集を行ったところ、驚くべき事実が明らかになりました」

「いえスパイを行ったというのではありません、現代の諜報活動は安物のスパイ映画のように隠し持った超小型カメラで秘密文書を盗撮するといったアホらしいものではありません、最もスマートで知的なものであります。今日、諜報活動の最も強力なツールは公文書の情報公開請求という手段です、私たちはこの合法的な手段により情報を入手したのです、入手した公文書のひとつをこれから紹介します、その一部を読み上げます、出前授業を依頼する申込書です、最初に申込書を用意した者、すなわち出前授業を提供する者にによる文章が記されています」

《「どこまで知ってる?放射線」出前授業:開催趣旨:放射線に関して国民の関心が高まっています。放射線は目に見えない、怖いというイメージがあり、風評被害や食物の出荷制限など、国民生活にも少なからず影響を与えています。そこで放射線に対する知識についてより正確なものを小中高校生に習得させるため、「理科」及び「総合的な学習の時間」等の授業を利用した出前授業を開催します。放射線に対する知識の習得、思考力・判断力を育成するための教育を展開することにより、放射線に対する理解の促進を図ります》

「この文章の下に《エネルギー環境教育情報センター行、FAX:03-3593-0930
》と記されています。このまえがきの文章、何かいちおうもっともらしく思われるのですが、放射線を怖く感じるのはイメージの問題であるかの如く言っているかのようでもあり、何を意図したものでるのか、もうひとつ具体的にはっきりいたしません、それに主催団体の名前もあまり聞きなれないものです。しかしながら、申込書の一番下に記載されている「お申し込み先」を見ますと主催団体の正体がわかります、そこには《東京都港区西新橋 1-8-15:公益財団法人 日本生産性本部・エネルギー環境教育情報センター 担当「どこまで知ってる?放射線」係》と記されています」

「みなさん、もうお分かりでしょう、主催者は実は日本生産性本部なのです、財界系のシンクタンクと言ってよいでしょう、この団体、公益財団法人と称しながらも、あのビレッジの活動を強力に後押ししている大きな組織というか、いやむしろあのビレッジの中核組織のひとつであると言った方が適切であるかもしれません、ちなみに、この団体、2006年~2010年の5年間に国による原子力広報事業を約8億円受注しています」」

「このことから3・11以後、ビレッジの動きは素早いものであるということがよくおわかりになると思います、油断大敵なのです、私たちが、普通の市民が、何も知らないうちに、このような小中高校生を対象とした「出前授業」に名を借りて、ビレッジはその活動を全国的に展開しているのです」

「ついでに申しあげれば、別の情報によりますと・・・これも合法的に入手したものですが、この小学校で行われた出前授業の講師は、なんとあの敦賀原発に二十年以上勤務しているという人物であったことが明らかになりました。講師の他にこの主催団体の職員一人が同行していました」

「このことをお聞きになればみなさん、いったいどのような内容の出前授業が行われたの、容易に想像がつくことでしょう、このため第二の男と私は、ニャーニャにこのたびのミッションを最終目標とする計画を企画し実行に移すよう進言したのです、すなわち、この小学校において市の教育委員会や市の原子力防災部局の協力のもとに適性かつ公正な内容を有する《やり直し出前授業》を実施させることがこのミッションの核心なのです、ニャーニャもことの重大性をすぐに理解し、賛成してくれました」

「えっ?99号、何かおっしゃいましたか、話が長い・・・あんたにだけは言われたくないなあ・・・いや独り言です・・・そうですか、それならこの続きは《重大ミッション?その7》でお話しすることにいたしませう」

(よろしければ写真をクリックしてご覧くださいませ。ミッションの目的地である小学校の校舎の写真です)

グッドナイト・グッドラック!




重大ミッション?(その5):メタセコイア街道の死闘・・・

2012-12-30 00:41:58 | 日記

何て卑怯な連中なんだ、ビレッジの奴らは
メタセコイアを切り倒して行く手をふさぐなんて
環境破壊もいいとこだぞ!
ああっ、それに後ろも倒れた木でふさがれている!
これじゃ、オレたち、袋のネズミだ
どうしよう、どうしたらいいんだ、モニカ、モニカ・・・
モニカ・・大丈夫か・・・
モニカの額から血が流れている・・・

あっ、倒れた木の陰からビレッジの連中が撃ってくる・・・
そうだ、水鉄砲だ、どこだ・・・あの水鉄砲は、モニカ・・水鉄砲は・・・
チクショウ!どこなんだ?
うわっ!ビレッジの奴らも水鉄砲を構えている・・・

ややッ、あのCIAのおとぼけスパイ、スマートまでいるぞ・・
それにハバナな男や第三の男まで銃をかまえている
寒い国から帰ってきたスパイもいる、
おおっ、それに伝説の名雇われスナイパー、
唯一の失敗はドゴール狙撃だというあのカルロスまで!
カルロス、おまえ捕まってしまって牢屋にいるはずじゃなかったのか?
おまけに、007まで加わっている、なんていうことなんだ

おい、007のヤロウ、オマエまで卑怯な襲撃に加わるなんて、
恥ずかしくないのか、あのビレッジの連中に味方するなんて、
ちょっとこっちに来てオレたちを助けたらどうなんだ
あれは映画の中だけのことだっていうのか?
ノーギャラでは助けないっていうのか?
この腰抜け!ドケチ!

あれっ、モニカまでオレに銃を向けている!
モニカ、おまえ気でも狂ったのか!
それに悪女の見本、あのミユキまで加わっている、なんていうやつらだ
何?立ち往生の街道で、撃たれて死ぬかいっていうのか?
それとも水鉄砲で自殺するかいっていうのか?
何をぬかしやがる、
オレだってべつに春まで待っているつもりなんかないんだ

それに、オレが撃ちそこなったシゲコも、あの公園近くのへんなカフェのオバサン・ウェイトレスもいる、
おいオバサン・ウエィトレスさんよ、ホットにミルクは不要や、忘れるな

カエルさんもオケラさんもアメンボさんまでいる
確かに、ボクらはみんな生きているさ、
でも、みんなみんな友だちなんかじゃなかったんだ・・・

モニカ・・そんなところで何をしているんだ、よりによっておまえまでとは・・
今日は着物姿でめかしこんだりして、
首を傾げてお澄まし顔で、手毬に隠した拳銃でオレを狙うなんて・・・

あのタイ式ヘラヘラ生活ヤロウまで加わっている
何?、GGI、もうそんなにがんばらんでもええやん、そろそろ楽になったらというのか、バカたれ、このまま楽になったら死んでしまうやないか!

いったいぜんたい、どうしてこうもいろんな連中が勢ぞろいしているんだ、
えっ、なんだって?ニャーニャのミスのせいだというのか
あのニャーニャが、オレに宛てたミッション指令書の自動消滅をさぼったからだって?
それでオレが鼻をかんで捨ててしまったミッション指令書を密かに回収して、
このミッションのことがわかり待ち伏せすることになったというのか・・・
そういうことだったのか、あのノーテンキのニャーニャ野郎、地獄に落ちろ!

ああ、もう終わりだ・・・
誰も助けに来てくれない・・・
お地蔵さま・・・北向き地蔵さま・・・
なんとか私を助けてください・・・
えっ、何ですか、今は忙しい、明日にしてくれっておっしゃるのですか・・・
お地蔵さま、あなたまでそんな冷たいことをおっしゃるのですか
どうか、どうか、そんなことおっしゃらずに、
お地蔵さま~・・・

ああ、神はいない、もうすべての神は死んだ、お地蔵様も死んでしまった・・・
だからオレも死ぬ・・・オレも死ぬんだ・・・

最後の頼みの綱はボゴノンだ
ボゴノンさま、どうか私をこの窮地から救ってください、お願いです

《だれかと思ったら元ヨッサリアンのGGIか、ボゴノンの経典の最初の一行を思い出しなさい
「無害な非真実、すなわち「フォーマ」を生きるよすがとしなさい」と記されている、
だから、何も悩むことはないのだ、この言葉を信じて生きるならば
おまえの今の窮地もいずれは無害な非真実へと転じるであろう

そんなあ・・・ボゴノンさな、殺生でっせ、それは、私は今殺されかかっているのですよ・・・ 

でもオレはドゴール将軍なのだ、あのドゴールなんだ
オシッコなんかチビルわけにはいかない
背筋をシャンと伸ばして・・・
誇り高く、あのドゴール将軍のように・・・
最後までドゴールのように・・・

・・・寒いなあ・・・ここはどこなんだろう・・・いったいどこなんだ・・・モニカ、君はどこに行ってしまったんだ・・・やけに奥深い森だなあ、すっかり道に迷ってしまった・・・そうだ、ここはあのダンテが道に迷って以来、多くの中年男どもがまねして道に迷ってみせたあの森かもしれない・・・でも、へんだなあ、さっき確か三途の川を渡ったはずだし・・・・木々のあいだからは煉獄の火も見える、それにあっちには蓮の花も咲いている・・・いったいどこなんだろう・・・おや?どこからか人の声が聞こえてくる・・・

どこか遠くから声がしてくる、男の声だ、あの声は第二の男だ、誰か別の人物と何か話している、第一の男と話しているのかもしれない、モニカらしき声も聞こえてくる

「それにしても99号のヤツ、よく眠っているなあ、昨晩三時間も寝ていないって言っていたから、よっぽど疲れているのだろう」
「さっきからしきりにうなされていますね、モニカ、モニカって言っていますよ、モニカさんと何かあったんですかね」
「おいモニカ、99号と何かあったのか、喧嘩でもしたのか、それとも誘惑でもしたのか」
「とんでもありません、そんなはしたないこと・・・私にだってヒトを選ぶ権利はありますよ!ただメタセコイア街道に入ってからは、あいかわらず軽口をたたいていたものの、とても緊張しているようでした、それに今日のミッション、オレの役割は何だとしきりに知りたがっていましたので、正直に99号の役目は小学生になることだって言いましたら、急に怒り出して、そのあと気分が落ち込んだようでした、しばらくすると黙り込んで目を閉じました。気がついたら99号は眠りに落ちていたのです・・・なにかしきりに寝言のようなものを言いながら・・・私は決して何もいたしておりません、ほんとうです」
「そうか、まあ、やっぱりミッションの内容を伝えてしまったのがまずかったかな、何しろ99号ってヤツは何もないけれどプライドだけはどっさりという男だからな」
「しかし、第二の男よ、済んでしまったことです、とやかく言うのはやめにしませう、それより時間も迫ってきました、そろそろ彼を起こしたら・・・」
「おや、ちょっと待って・・・99号のズボン、ちょっと濡れているみたい、、ほんとにオシッコでもちびってしまったのかしら?」
「そうじゃないですよ、よくご覧なさい彼の寝姿を、彼のトレードマーク、鼻水とよだれが垂れてズボンに・・・みっともないですね、早く起こしてやりませう」

第二の男がプリウスに乗り込み、GGIの肩を乱暴にゆすった

「おい99号、いつまでおねんねしてるんだ、起きろ、ここは地獄の三丁目だ、目的地だ、早く起きろ、おまえのバッチイよだれと鼻水で車を汚すな、モニカが怒るぞ、起きないと悪魔のようなミユキの歌をでっかい音できかせるぞ、こらっ、起きろよ、早く起きろ!」

(よろしければ写真をクリックしてご覧くださいませ、モニカの着物姿でございます)

グッドナイト・グッドラック!

今夜はミッションに疲れましたのでインターミッション

2012-12-29 00:58:40 | 日記

今夜はまことに勝手で申し訳ありませんが
GGIはミッション話に若干疲れましたのでインターミッション(休憩時間)です

寒い日が続きます
寒ければ寒いほどわが鳰の海は透明に澄みわたります

よろしければ写真をクリックしたわが浜辺の散策をお楽しみください

そういえば「浜辺の歌」というのがありましたね

  あした浜辺を さまよえば
  昔のことぞ 忍(しの)ばるる
  風の音よ 雲のさまよ
  寄する波も 貝の色も

むかしGGIが頭のヨイ純情な少年でありましたこと
この歌詞の意味がよくわからず

「なんで明日浜辺をさまようんだよお、
 どうして今日じゃいけないんだよお
 何か都合の悪いことでもあるんかよお」

と悩んでおりました

遠い日の麗しき思いであります

グッドナイト・グッドラック!

重大ミッション?(その4)激走メタセコイア街道・・・

2012-12-28 00:48:00 | 日記

しばらくしてモニカが口をひらいた、

「あれです、あの並木、あれがメタセコイア街道・・・」
「わかりました、でもどうしてメタセコイア街道が危険地帯なのですか?情報を共有しようじゃありませんか」
「まあ、お言葉ですね・・・よろしいですよ、近くからご覧になればわかります、道の両側はメタセコイアの大木の列、スナイパーたちにとってもは絶好の場所と言えるでしょう、まっすぐの見通しがきく道、スナイパーたちは好き勝手な場所で大木の幹に隠れて待ち伏せすることができます・・・たとえ最初の一人が撃ち損じても別の木の陰に隠れている者が続けて撃てばよいというわけ、何人かを別々の場所に配置しておけばよいのです・・・それに狙撃なんかしなくても、突然なにか障害物を路面に放り投げればハンドル操作を誤って、メタセコイアの幹に激突、交通事故死という手も考えられます・・・」

モニカの説明を聞いていてGGIは思いだした、ドゴール将軍のエピソードを

「モニカ、あなたはドコール将軍の暗殺未遂事件のことを知っていますか?」
「よくは知りません・・・彼が植民地アルジェリアを放棄することを宣言してから何度も危険な目にあったと言う話は聞いていますが・・・」
「そうです、アルジェリアを手放すことに強硬に反対して徹底抗戦していた秘密軍事組織OAS(Organisation de l'armée secrète)の連中に何度も狙われています、一度は、このような並木道で、自動車で移動中のところを狙撃されました、真冬の日没時のことです、ドゴールの車がほんのわずか予定より早く現場に通りかかったため、スナイパーたちの手元が狂い、間一髪で難を逃れたのです・・・銃弾が車を貫いたもののドゴールには当たりませんでした、彼を乗せた車はフルスピードで走り去りました、そのときドゴールな何と言ったと思います?」
「さあ・・・私にはわかりかねます、何でしょう・・・エライコッチャとでも言ったのですか?」
「そうではありません、内心ではそう思ったかもしれませんがね、でもそうではないのです、彼は撃ち抜かれて砕け散った窓ガラスの破片を自分の肩から払い落としながら憮然とした面持ちで言ったのです、《ヘタクソ!》・・・どうです、驚くでしょう?」

「・・・99号、いったいあなたは何をおっしゃりたいの、あなたもこの並木で狙撃されてドゴールみたいにカッコいいこと言いたいの?」
「いえ・・・そんなことは・・・ただ並木を目にしてちょっと思いだしたことをお話ししただけですよ・・・邪推です、大邪推、邪推の極みです・・・」
「ウソおっしゃい、きっと、そうでしょう、ナルシストのヨッサリアン、じゃなかった99号の考えそうなことよね、でもあなたには無理ね、せいぜいオシッコちびるのが関の山」

メタセコイア街道が急激に迫ってきた、前を行くインサイトはすでにスピードをあげていた、見る見る遠ざかっていく。モニカが少しばかり緊張した面持ちで告げた

「さあ行くわよ、99号、シートベルトをしっかり締めて!」

モニカがアクセルを踏みこむ、大きなメタセコイアの木が一気に両側に広がった、一直線、どこまでも連なるメタセコイア、99号は、思わずミッションのことを忘れて景色に見とれた。モニカが口を開いた

「なかなか素敵な眺めでしょう、雪が積もるともっともっと素晴なの・・・・どう99号、一度、夜明け前にいっしょに散歩でもしましょうか」

「えっ?いま何とおっしゃいました・・・ほんと?ほんとですか?」

微笑みながら答えるモニカ、

「ウソです、ごめんね、ウソ、ウソ、99号って案外信じやすいのね、それでエージェントがよく務まるわね・・・でも、そういえば、ウソです、ゴメンねとかいう歌詞の曲があったわね、そう、こんなのだった、《夜明け前にあなたの住む町へ着くわと告げれば驚くあなたの背中見える》だったかな、そのあと《、ウソです、ゴメンね・・》、とか続くの・・・あなたも同じ、夜明け前に散歩と聞いて驚いたわね・・・これ、中島みゆきだったかしら、カーステレオでお聞かせしようかしら」

モニカの言葉に99号は思わず身震いした

「その歌は止めてください、モニカ、やめてください、お願いです!昨夜、その曲を聞いてから寝たら、よく眠れなかった、今朝の寝覚めが悪くて・・・」
「99号、あなた、今日は何か変ね、ほんとにどこか具合でも悪いんじゃないの?」
「だからさっきも言ったじゃないですか、今日は気分がすぐれない、何もかも具合が悪いって・・・」
「そうだったわね、ごめんなさい、ほんとうに・・・では、別の曲にしましょう・・・山は雪模様、本格的な雪になりそうですからこんな曲はいかがかしら」

モニカがカーステレオにスイッチを入れると、歌声が流れてきた

《吹雪の山を越えていこうよ、あんたの自慢のシャレた車で・・・》

GGIはすぐに分かった、これもみゆきの曲だ、妙にまとわりつくようくせのある声、GGIは気分が悪くなった
「これも悪い曲です、とっても悪い歌、とにかく、やめてください、この曲も・・・」

でもモニカはやめようとはしなかった

《吹雪の山を越えて行こうよ、あんたの自慢のシャレた車で
凍るカーブは鏡のように 気取り忘れた顔を映し出す
立ち往生の吹き溜まり 凍えて死ぬかい
それとも排気ガスで 眠って死ぬかい
待っても春など来るもんか
見捨て歩き出すのか習わしさ・・・》

GGIは力なく言った
「中島みゆき・・・悪い女なんだ、イジワルで冷たい女・・・やめてください・・」

モニカはさげずむような笑みをかすかに浮かべた、

「ためね、99号って案外気が弱いのね、シティボーイってそんなものなの・・・さあ、もっとスピードを上げるわよ、いいこと・・・99号、鼻水が垂れているわよ、みっともない・・・」

さっと伸びたモニカの左手にティッシュが一枚握られている
GGIはあわてて受け取り、鼻を拭いた

モニカはさらにアクセルを踏み込んだ、時速は80キロを超して90キロに迫ろうとしている、風切音が激しくなった

GGIは黙り込んでじっと前を見つめていた、なんだか気分が悪くなってきた・・・めまいがする・・

メタセコイアの大木が次々に後ろに吹き飛んでいく
あっ、どうしたんだ
両側のメタセコイアが次々に倒れ込んでくる・・・
モニカ、大丈夫か・・・モニカ・・・ああ・・・

(よろしければ写真をクリックしてメタセコイア街道をお楽しみください)

グッドナイト・グッドラック!



重大ミッション?(その3):メタセコイア街道を全力で疾走せよ

2012-12-27 01:18:52 | 日記

二人を乗せたプリウスは一路北北東へと向かった、小雨がみぞれ交じりになった、モニカはGGIにこれ以上話をさせまいとするかのように無言で運転を続けている

GGIはさきほどバッグから取り出した水鉄砲を手にしてみた、これいったいどうやって使うんだ、こんなものほんとうに役にたつのか、でもいちおう使い方を聞いておかなければと思った、窓の外に目をやったまま、おそるおそる口を開いた

「モニカ、ご多忙なところを邪魔するようで心苦しいのですが、これ、どうやって使うのかですか、お教え願えないでしょうか?」

外はみぞれから雪にかわろうとしている、モニカは前方を見たまま答えた、

「知っておきたいのですか、99号?あなたはお疑いかもしれないけれど、その水鉄砲、とても役に立つのです。使い方は簡単です、ボディの側面に液晶パネルが付いているでしょう、タッチパネルです、スイッチを入れて、画面の指示にしたがい選択していくのです 、そして一段階ごとに《決定》をタッチし次の段階に移ればよいのです」
「選択するって何を?」
「99号、オツムがわるいですね、人生、何事も選択でしょ、選択の連続・・・
ですから、えっ?何ですか、オレは何もできるだけ選択しないようにして生きてきたですって?・・・それも選択のひとつです、非選択という選択・・・」

「そんなこと言ってませんよ、私は。できるかぎり洗濯しないで生きてきたと言っているのですよ」

「まあ、99号、不潔ね、顔色が良くないと思っていたら、あなた顔を洗濯してないだけのことなのね・・・ああ・・またあなたの無駄口に引き連られてしまいそう・・もういや・・・ とにかく、使用法、説明だけはしておきます」

「まずはじめに《標的の種類》から決めます、美男、美女、非美男、非美女、ガキンチョ、ただのアホ、イジワルばあさん、ヤンキー、人間もどき、政治家、政治屋、警察、検察、マル暴、天使、カミさん、神さま、精霊さん、仏さん、不死鳥、ドラゴンズ、ジャイアンツ、カエルさん、オケラさん、アメンボさんなどなどの中から好きなものを選び決定するのです」

「すると次の画面が現れます、今度はたとえば発射する液体の種類が表示されます、ただの水、軽水、重水、化粧水、聖水、ルルドの水、小便小僧のオシッコ、ヨッサリアンの鼻水、トレビの広場の噴水、四万十川の汚水、シャネルN0.5、放射能テンコ盛り原発冷却水、深窓の令嬢の涙雨、お買い得の量り売り安物香水、媚薬入り高級香水、アルコール類全般(酒、焼酎、ビール、ウォッカ、アブサン、ワインなどなどからお好きなものを選んでください:注、水割りも選択可能)、自称高級または低級ミネラルウォーター、創業者の血と汗と涙が入っているコカコーラなどの各種清涼飲料、湖底かる噴き出た汚泥入り琵琶湖の水、一度皮膚についたら最低3年間は臭いがとれないために気が狂ってしまうGIA特性超悪臭水などのなかから選びます、これが終わったら次の画面、球種を選びます、液体が発射されたあと目標物に到達するまでの液体の勢いや形状のことです、ストレート、カーブ、フォーク、シュート、シンカーなどの中から選びます、その次は射程距離、これは30センチから30メートルの範囲で自由に選べます、それに噴射状態、これは液体を霧状にばらまくか、散水するのか、噴水状に噴射するのかといったことの選択です、このようにして最後の段階に至ったら、《ほんとうにこの銃を発射しますか》と聞いてきますので《はい》、《いいえ》、《どちらとも言えない》のいずれか選べば準備完了です、それにひまなときに遊べるようにゲーム機能もついています」

「へえ~、ずいぶん手間がかかるんですね、でも、そんな複雑なことしていたら、肝心なときに、敵が突然姿を現したときなんか間に合わないのじゃありませんか?」

「大丈夫、そのようなときは《とつぜんのことであわてふためいているので、すべておまかせ》を選択するだけでよいのです」

「するとどうなるのですか?」

「テキトーな条件で液体が発射されることになります、わかりましたか?」

あまりにも馬鹿馬鹿しくて、GGIは不機嫌になり、黙りこんだ。なった、何が《わかりましたか?》だと、ヒトをからかうのもいいかげんにしろ!どうせ口から出まかせに決まっている、このお澄ましヤロウ、何を考えているんだ・・・・

するとモニカが言った

「おや、どうなさったの?お体のお具合でもお悪いの、お洗濯していないお顔のお色がますますお悪いようよ、大丈夫?それとも琵琶湖が無くなってしまうのがご心配なの」
「・・・今日は天気も悪いし、気分の最悪・・・なんでも《お》をつければいいってもんじゃないでしょう・・・とにかく、今日は99号、何もかも具合が悪いのです、しばらく黙っていてください、無駄口はもう止めてください、お願いです・・今日のミッション、無駄口厳禁とおっしゃったのはあなたじゃないですか」

するとモニカはとつぜん怒りだした

「まあ、無駄口だなんて・・失礼ね!・・・せっかくあなたのことを思って丁寧に説明してあげたのに・・・ひどいわ、ほんとにひどいわ・・・ひどいわ、ヨッサリアン、じゃなかった、99号は・・・もうこんなミッション、ごめんだわ!・・・私のは無駄口ではありません、情報の共有が大切だからご説明したのです、おわかりですか」

「おわかりもクソもないでしょう、近頃は何かというと情報の共有とやらが大流行のようですが、それならお聞きしますがね、それほど大切なことなら、なぜ本日のミッションの内容を誰も私にいつまでたっても教えてくれないのですか?そうおっしゃるなら、いますぐ本日のミッションに関する情報の共有とやらを実行していただきたい」

「・・・困りましたね、実はニャーニャから口止めされているのです・・・でも99号のおっしゃることももっともです・・・・では本日のミッションの核心、すなわち本ミッションにおける99号の果たすべき役割だけお教えしておきましょう・・・ちょっと申し上げにくいことなのですが・・・99号の本ミッションにおける役割は小学生になることなのです・・・小学生になるのです・・・詳しいことは目的地についてから第二の男がちゃんと説明いたします・・・」

「何?小学生!なにをふざけてるんだ、この知性と教養gがあふれすぎて毎日溺れそうになっている99号に小学生になれというのか!いったいどういうつもりなんだ、悪ふざけにもほどがあるぞ、これは悪質なパワーハラスメントだ、あのニャーニャのやろう!」

「ごめんなさい・・・実は最初からミッションの内容を99号に教えると、怒って帰ってしまうかもしれないからと、箝口令が引かれていたのです・・・」

そのとき携帯のベルが鳴った、前を走っているインサイトからだった、第二の男の声がした

「もうすぐ本ミッションの最大の危険地帯、メタセコイア街道に差しかかります、街道に入ったらフルスピードで走行すること、用心のため車間距離を十分にとってください、何があっても決して止まらないこと、路面が凍結しはじめています、注意してください、何かあったら必ずモニカの指示に従ってください、今後、街道を走り抜けるまでは一切連絡いたしません、無事を祈ります、以上」

返事するまもなく電話は切れた、GGIは「もうすぎメタセコイア街道だそうです」と言って第二男の話をモニカに伝えた、モニカは無言だった。

(今夜は、メタセコイア街道にまで行き着く予定でありましが、残念ながら時間切れとなりました、お許しくださいませ)

よろしければ写真をクリックしてご覧ください、プリウスの車窓からの冬景色です

グッドナイト・グッドラック!