透明タペストリー

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「ミライの源氏物語」

2023-06-15 | A 読書日記

 『源氏物語』を読むという長年の念願を昨年(2022年)ようやく叶えることができた。 それからは関連本を読んでいる。『ミライの源氏物語』山崎ナオコーラ(淡交社2023年)を注文しようと行きつけの書店へ。すると書店にこの本があって、買い求めた。この数日は晴読雨読だった。


**人を騙して部屋に忍び込んで性暴力を行った加害者である匂宮との関係を、その後もきっぱりと拒否していないからといって、恋人同士と捉えるのは、現代だったら、絶対にあり得ません。**(170頁)現代の社会規範に照らし合わせると、匂宮は著者が指摘する通り性暴力の加害者だ。いや、匂宮だけではない。

作者の手を離れた小説の解釈は読者に委ねられる。だから『源氏物語』をどう読もうと構わないだろう。平安時代の読者が頷きながら読んだ光源氏の行為を、犯罪じゃないか、と読む。そう、山崎さんが現代の社会規範でこの物語を読んで、論評することについて、異を差し挟もうとは思わない。

『源氏物語』を現代に迎え入れて読むのではなく、平安時代の貴族社会に入り込んで読むように努めるというのが大方の読者ではないだろうか(*1)。確かに10歳くらいの少女・若紫(紫の上)を自分のところに引き取って、自分好みに育てた光源氏はロリコンか、と思ってしまう。だが、平安の貴族社会ではあったんだろうな、と、自分を納得させて読む。そうでないと、『源氏物語』は性犯罪オンパレード、さらに山崎さんが指摘するように、ルッキズム(容姿差別)、エイジズム(年齢差別)等々の問題ありあり小説ということになる・・・。

『ミライの源氏物語』を読んで、なるほど、こういう読み方もあるのか、と思った。本の帯(写真上)にあるが、山崎さんと同じ様なスタンスで『源氏物語』を読んだ人が感じたであろう**違和感をときほぐす**のに有効な一冊だと思う。



*1 『平安人の心で「源氏物語」を読む』山本淳子(朝日選書2014年、2021年第8刷)


 


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