■ 葛飾区立石のさくら通り、桜が春を託されたことを誇るかのように堂々と咲いていた。この通りから程近い住宅街の一角に既存の住宅の一部を改築したカフェがこの日オープンした。友人の案内で訪れた。
幅広のフローリング、高さを抑えた木巾木、ペンキ仕上げの壁と天井。シンプルな空間構成。天井から吊り下げられた照明はカウンターやテーブルと同色のフレームのキューブ。そのやや和風なデザインがモダンな空間の雰囲気を和らげている。壁際に設えたダウンライトに照らされた壁はウォームホワイトに。道路側の窓外には満開の桜。エントランス正面のドアのスリット状の開口に嵌め込まれたステンドグラスがアイストップとして効いている。
既存の改築には様々な制約が伴う。構造上取り外せない柱、予算上できれば変更しないで計画したい給排水管や開口部の位置等々。計画段階や、現場監理での苦労話を聞いた。手を加えたい課題が無いわけではない。友人はそのことを随分気にしている様子だった。解決案は既に挙がっている。しばらく様子を見てから必要なら実行すればいい。
建築には設計者の知性と感性が反映する。友人の芸術全般にわたる深い知識にはいつも感心するが、この空間に漂う知的な雰囲気はその反映だろう。
次回は夜、ここでワインでも飲みながら文学を語るか・・・。