透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

年越し本

2022-12-31 | A 読書日記

 今日は12月31日、大晦日。

29日(木)、今年最後の朝カフェ読書。いつものようにスタバ、略さず書くとスターバックス松本なぎさライフサイト店でおよそ1時間コーヒーを飲みながら読書をして過ごした。

スタバに入る前にTSUTAYA北松本店で本を探した。直木賞作家・今村翔吾の『羽州ぼろ鳶組』は火消が主人公の時代小説で、江戸の消防事情が分かる。現在10巻までと番外編1,2巻が刊行されている。全て読もうと思っている。第5巻まで読んでいるので第6巻を探したが、書棚に並んでいなかった。残念。

ならば、新書だ、と新書のコーナーへ。で、買い求めたのが『城郭考古学の冒険』千田嘉博(幻冬舎新書2021年)。城についてそれ程興味があるわけでは ないが、何でも読んでやろう精神で。国宝松本城もあることだし。



**文字史料からわかることが歴史のすべてではなく、物質資料や風習・慣行を調べることによってはじめてわかる歴史や文化があり、文字史料からの研究と物質資料からの研究は対立するものではなく、お互いを補完し合う関係にある。だから中世や近世のようにたくさんの文字史料がある時代でも、考古学的に城を研究していけば、これまでの文字史料からの研究では見落としてきた歴史を、わたしたちはつかめるに違いない。**(21頁) 著者の千田氏はこのように城郭考古学という学問の意義を説いている。

この本で年越しだ。


拙ブログを閲覧していただいている皆さん、どうぞ良い年をお迎えください。

2022.12.31
透明タペストリー工房 U1


火の見櫓の形の分類

2022-12-31 | A 火の見櫓っておもしろい

 
火の見櫓構成要素とそれらの名称   (左:安曇野市三郷 右:諏訪郡富士見町)

 なぜ火の見櫓に惹かれるのか。その一番の理由は形の多様性にある。

改めて火の見櫓の多様な形の分類について考えてみたい。火の見櫓の形の共通性に注目してなんとなくいくつかのグループに分けてみる、というのではなく、網羅的に、体系的に分類できるようにしたい。どんな形の火の見櫓でも納めることができる引き出しが必ずあるというように、論理的な分類肢によって。そのためには火の見櫓を構成する要素(①左参照)の何に着目すれば良いのだろうか。

分類するのに最も有効な観点(着目点)は柱の本数だ。屋根や見張り台、脚が無くても構造上火の見櫓として成立するけれど、柱無くして火の見櫓は成立しない。柱の本数が1本の火の見柱、2本の火の見梯子も一般的には火の見櫓と呼ばれるが、櫓は立体構造を指すのであり、立体構造は柱が3本以上でないと成立しない。分類上、これらを異なる名称で明確に区別する。

 
 火の見柱(柱1本 上高井郡高山村)      火の見梯子(柱2本 大町市美麻)

立体構造の火の見櫓の分類で注目するのは屋根と見張り台の平面形。仮に屋根と見張り台が①の左のような円形だけしかないとなると、分類の観点として有効ではないが、どちらも三角形、四角形、六角形、八角形、円形、その他、があり、火の見櫓の印象に関わる構成要素でもあるので、分類上の観点として設定したい。

櫓と脚は異なる部位(構成要素)として捉えるのが妥当だと私は考えているが、同一部位と見做して脚と捉えている同好者も居られる。だが、私はどうもこのような捉え方に馴染めない。ヒトの体の胴と脚をまとめて脚と呼ぶようで。

分類肢の名称は簡潔であること、また分類の根拠(着目点)が明確に示されていることが望ましい。このような考え方により、次に例示するように表記することとしている。①左の火の見櫓(安曇野市三郷)は柱が3本で屋根の平面が円形、見張り台も円形で、3柱〇〇型。円形を便宜的に〇(マル)とした。右(諏訪郡富士見町)は柱が4本、屋根と見張り台が4角形で、4柱44型。4柱で6角形の見張り台はあるけれど屋根が無い場合は4柱無6型(柱4本の櫓、屋根無し、6角形の見張り台)。

屋根と見張り台の形を分類の観点としている同好者は少なくない。表記は屋根、見張り台の順と逆の見張り台、屋根の順の両方があるが、私は前者を採っている。

①の2基の火の見櫓の脚の形はかなり違う。しばらく前から脚のタイプ分けを加えているので、上から下の並び順、即ち屋根、見張り台、脚が分かりやすい。脚のタイプ分けについては改めて取り上げたい。脚のタイプを分類する観点がまだ明確に定まってはおらず、名称もまだまだ。

ここで余談。先日観た映画「ラーゲリより愛を込めて」に収容所の監視塔が出てくる。初めの収容所の木造の監視塔のタイプは4柱44型ブレース囲いだった。尚、ブレース(筋交い)は片掛け。後から出てくる別の収容所(主人公を含む何名かは帰還の途中列車から降ろされて、再び収容所行き)の監視塔は確か屋根が片流れだった。火の見櫓にも片流れ屋根のものがあるが、その場合は4柱片流れ4型ブレース囲いとでもするか・・・。

上述したような考え方で、全ての火の見櫓(一般名称)の分類がすんなりできるわけではない。トビウオのように海中から空中に飛び出して進む魚もいるし、ペンギンのように海深く潜る鳥もいる。両者を明確に分類できているのは、このような行動に迷うことなく分類する観点がきちんと定まっていて、明確な定義付けがされているから。

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山梨県北杜市

これの分類どうする? 火の見柱?火の見櫓? 単純に柱が3本だから火の見櫓とすることには抵抗がある。海中を泳ぐからといって全てが魚ではないのと同じように・・・。尚、これは今のところ「火の見梯子控え柱付き」としている。

火の見櫓を明確に分類するためにはまだまだ、知識も足りないし観察も足りない。あれこれ考えることが楽しい。