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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

夢は枯野を

2016-05-13 | g 読書日記



 芭蕉は病んでなお、いや病んだからこそ旅することを強く願った。私が自室の書棚にあった『途中下車の味』宮脇俊三/新潮文庫を手にしたのも、4日も病床にあったからかもしれない・・・。

そういえば松本清張の代表作『点と線』では病床の妻(確か結核を病んでいた)が旅にあこがれて時刻表を見ていて気が付いたことが犯行のトリックに使われていた。

ところで『途中下車の味』には九つの鉄道旅が収録されているが「冬の旅なら北海道」から「デュエット寝台で長崎へ」で、ほぼ列島縦断を果たしている。

宮脇さんと同行の編集者による味の旅のはずが、駅前食堂でうどんを食べて終わりなどということも少なくなかった。例えば「木曾路・飛騨路は本日休業」では木曾福島で途中下車して木曾そばを食べようと、うまいソバの食べられそうな店に行くと「本日休業」。で、**駅寄りの変哲もない小食堂でウドンを食べた。ニンジンのたくさん入った妙なウドンであった。**(118頁)といった具合に。

**ひとがうまいものを食べた話など、読まされるほうは迷惑だからこれ以上は記さないが(後略)**(22頁)って、これはないのでは。書名から食事のことを微に入り細に入り記してあることを期待していた読者は拍子抜けするだろう・・・。

「冬の旅なら北海道」に次のような件がある。**そのホームの一隅に立食ソバ屋が店を開いている。寒いからであろう、湯気がひときわ濛濛と上がっている。私たちは迷わずソバを注文した。**(159頁)

そう、駅の立食ソバ、駅弁、田舎の駅前の大衆食堂の定食、そして宿はホテルではなく寅さんが泊まりそうな安旅館。私はいつかこんな旅がしたい。



 

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