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堤未果さんの著書『ルポ 貧困大国アメリカ』から見えてきたもの(1)

2008年07月30日 | 国際・政治
堤未果さんといえば、2001年、アメリカの野村証券に勤務中に「9.11同時多発テロ」に遭遇、その瞬間を隣のビルから目撃し、その後、ジャーナリストとなって活躍している方です。現在はニューヨークと東京間を行き来し、アメリカ社会の現実と日本の進路に警鐘を鳴らし続けています。川田龍平参議院議員と結婚したとのニュースも記憶に新しい方です。 その堤未果さんが書いた『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書刊、700円+税)を読みました。

「教育」「いのち」「暮らし」という、国民に責任を負うべき政府の主要業務が「民営化」され、市場の論理で回されるようになった時、果たしてそれは「国家」と呼べるのか?--新自由主義、市場原理主義にもとづいて「教育」「医療」「戦争」まで、極端な「民営化」の果てに、貧困大国と化したアメリカの実態ルポは、政治的にも、経済的にも、そして軍事的にも、アメリカの後を盲目的に追随している日本にとって、決して他人事ではありません。 新自由主義路線は、アメリカでもイギリスでも、そしてアメリカから押しつけられた南米の国々でも、破たんが明らかとなり、世界でこれほどまでに警鐘が鳴らされているのに、なぜ我が日本政府は、このアメリカを後追いするのか……。 『ルポ 貧困大国アメリカ』の中で、堤未果さんは、サブプライムローンに揺れるアメリカの実相として、「食生活」「災害」「医療」「教育」「戦争」と章立てして貧困大国アメリカの告発をしています。 そこで、ここでは何回かに渡って、堤未果さんの指摘から、アメリカの実相のいくつかを見ていきたいと思います。(文責:サイト管理者)


私は、堤未果さんのルポで初めて「マカロニ&チーズ」という食べ物を知りました。ゆでたマカロニに、ミルク、バター、チーズをこってりと混ぜたもので、スーパーマーケットなどで一箱3ドルで売られているそうです。カロリーが高く、味つけも濃いため、子どものランチ用インスタント食品として最も人気が高いといいます。これをおかずに、主食は「ピーナッツ・バター&ジェリー・サンドイッチ」だとか。これはパンにピーナッツ・バターとジャムをぬったものです。 ルポで登場する教師の言葉は、アメリカの現実を言い当てていました--「国はわかっていないんです。あの子たちの肥満の原因が貧困だということを」 そして、貧困児童の教育レベルの低さと肥満度は比例するのだということも。

企業や高額所得者から集めた税金を、教育や医療、福祉制度によって中間層に再分配するそれまでのニクソン大統領による福祉重視政策とは対照的に、レーガン大統領は効率重視の市場主義を基礎とした政策を打ち出した結果、中間層はみるみるうちに貧困層に転落したといいます。さらに、ブッシュ政権ではその貧困層への援助の削減などが進み、貧困層がますます増大していると言います。 そして、そうした貧困層は、政府が発行する「食料配給切符」(貧困ライン以下の家庭に配布される食料交換クーポン=「フードスタンプ」)が頼りですが、この「フードスタンプ」を利用するからには、できるだけ調理器具も調味料も必要がなく、それでいて少ない予算でお腹がいっぱいになるもの、つまり「マカロニ&チーズ」などが自ずと貧困層の食べ物として限られてくるのだと言うのです。 その結果、貧困層を中心に、過度に栄養が不足した肥満児、肥満成人が増えていくという構図です。そして、それから招かれる健康状態の悪化は、必要以上の医療費急騰や学力低下につながり、さらに貧困が進むという悪循環を生み出していくのだと堤さんは指摘しています。 (つづく)

【出典】『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤未果著、岩波新書刊、700円+税)

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