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読売新聞「よみうり寸評」2023

2024-03-18 22:09:35 | 雑記

 読売新聞朝刊1面「編集手帳」、夕刊1面「よみうり寸評」読んで感服させられることがあります。それは、どれだけ大きな「情報の倉庫」を持っているのか。そこから、その日の時事と、どう結びつけるのか。

 2023.04.06
 ロック史に残る名曲だろう。プロコル・ハルムの『青い影』は、荘重に響くオルガンの旋律が印象深い◆1967年に発表されて、本拠地の英国で大ヒットを記録し、日本のテレビ
 番組でも紹介された。耳を傾けていたのが、中学時代の松任谷由実さんである。クラシックの彩りを帯びた曲調が、ピアノを習っていた少女を魅了した◆「このバンドに出会っ
 て、自分でも曲をつくりたくなった」。以前そう振り返っているから、プロコル・ハルムなくしてユーミンの歌の数々は生まれなかったのかもしれない◆入学式の季節を迎えて
 いる。期待と不安に揺れながら一歩を踏み出す子供たちには、どんな出会いが待っているのだろう。なかなか友達ができなくても焦る必要はない。ときに一冊の本、一つの歌が
 道標となることもある。若い感性を全開にして、日々を過ごしてほしい◆ユーミンに『花紀行』という歌がある。♪見知らぬ町を ひとり歩いたら 風は空から 花びら散らす
 …散りゆく花も君たちの未来を祝福している。

 2023.04.15
 京セラ創業者の稲盛和夫さんは、通信事業への参入にあたって、国鉄総裁や建設大臣を訪ねた◆そこで、新幹線や高速道路沿いに光ファイバーを引かせてほしいと頼み込んだが
 、対応はけんもほろろ。「国の資産なので貸せない」と一蹴(いっしゅう)された。「国と言うな。国民の資産だろう」。しばらく怒りが収まらなかったそうだ◆鉄道、空港、電力
 …生活や経済活動に欠かせないインフラは国民共有の財産であり政治家や官僚の私物ではない――。稲盛さんはこう言いたかったのではないか。それから約40年。「官から民へ」
 の流れは加速し「官尊民卑」の振る舞いはなりをひそめた。そう思っていたが、どこ吹く風の 御仁 がまだいたようだ◆国土交通省の元次官が羽田空港の施設を運営する民間企業
 の人事に介入した問題である。「国の空港なので貸した社長職を返せ」と言ってはいまいが、省出身の副社長の社長昇格を求めたらしい◆現社長は日本航空出身。稲盛さんと共に
 再建に携わった生え抜きの一人と聞けば因縁めいてくる。                                                
                                                                                        
  2023.07.18
 半世紀余り前、ローマ教皇を激怒させた歌がある。フランスの『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』というポップスである◆女優で歌手のジェーン・バーキンさんが最愛の人
 とデュエットしたその歌は、愛の囁(ささや)きと吐息が妖しく艶(なま)めかしい。非難と賛美が渦巻き、相手の音楽家セルジュ・ゲンズブールさんともども、スキャンダルに彩ら
 れたカップルとして世界に知られた◆印象が変わったのは1991年にゲンズブールさんを亡くしてからだろうか。慈善活動に参加して戦火のサラエボを訪れ、喪失を乗り越えて生
 きる意味をみつけたらしい◆紛争地の人道支援に心を砕き、苦境にあるアウン・サン・スー・チーさんを支える歌も作った。東日本大震災の直後に来日して敢行した復興支援コ
 ンサートを世界各地で開いたのも忘れがたい。飾り気ないファッションでもファンを魅了したバーキンさんが76歳で旅立った◆♪そうよ、炎のようなわたしたちに残るのは灰だ
 け…代表曲の一つ『コワ』の歌声が、胸に残って消えない。

 2023.12.11
 事件は1968年12月10日に起きている。東京都府中市で銀行の現金輸送車が白バイ警官を装った男に呼び止められ、3億円が奪われた◆当時の感覚では現実離れしていた被害額か
 ら捜査の進展に空前の関心が寄せられた。小学2年生だった当欄の筆者にも、特徴が報じられた逃走車両を目で探しながら通学した記憶がある◆10年で1015億円――事件からち
 ょうど55年のきのう(日本時間)、米大リーグの大谷翔平選手がスポーツ史上最高額の契約でドジャースに移籍するとの速報が列島を駆け巡った◆日付の一致は単なる偶然だが、
 往時の喧噪(けんそう)を僅(わず)かながらも知る身としては、3億円の約340倍もの契約額に言葉を失う。物価からみた貨幣価値に4倍ほどの差があるにしても、である◆事件当時
 の少年誌の連載漫画『巨人の星』では主人公の魔球を大リーグボールと命名していた。時間を遡り、二刀流成功と本塁打王獲得、そして今回の契約のことを原作者の梶原一騎さ
 んに告げてみたい。たぶん信じてくれないだろう。  


 


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