京都市美術館で開催の、『ボストン美術館華麗なるジャポニズム展ー印象派を魅了した日本の美』(9/30~11/30)を見てきました。
今回は、アメリカのボストン美術館所蔵の印象派や、
日本美術のコレクションの展示です。
この展示会の作品は、日曜美術館アートシーンでも取り上げられました。
放送された画像をもとに展示内容の一部を紹介します。
「インクスタンド」
約100年前にフランスで作られたものです。
真ん中がペン立て、両側にインク壺が並び、
筆記用具を全て納めることができるようになっています。
模様の全てが日本的、和風です。
富士山も描かれていますが、北斎の浮世絵にそっくりです。
北斎冨嶽三十六景 「武利千佳」
富士山と魚釣りをする景色は一緒です。
ペン立てに描かれている蝶々もそうです。
日本の作品を見て、非常に感化されたのがわかります。
平田就亮 虫図七宝鐔(つば)
日本の浮世絵に感化された画家、ゴッホです。
「子守唄、ゆりかごを揺らす オーギュステイーヌ・ルーラン夫人」
この絵は、ゴッホが世話になった郵便配達人の妻を描いたものです。
ゴッホは自ら浮世絵を収集するなど、日本美術に深く傾倒します。
このゴッホの絵に非常によく似た浮世絵があります。
歌川国貞(三代豊国) 当世十花撰 夏菊
ゴッホの絵にも菊の花が描かれています。
カミューユ・ピサロも影響を受けた画家です。
「雪に映える朝日、エラニー=シュル=エプト」
雪の景色を描いた絵画ですが、これも浮世絵の影響を受けています。
歌川広重
「名所江戸百景 愛宕下藪小路」
白一色で影のない雪景色を描いています。
森徹山「蝶々」
こういう絵柄がヨーロッパに伝わり、影響を受けたヨーロッパの職人が、
自分達の作品の図柄などに反映させたのです。
イギリス製のテイーセット、水差し
明らかにジャポニズムの世界が描かれています。
日本の型紙 寄せ模様
こういうものも、文具にも影響を与えています。
アメリカで作られた、葡萄蔦のデスクセット
今回の展示会の最大の目玉、修復後世界初公開となる、
モネの『ラ・ジャポネーゼ』(着物をまとうカミーユ・モネ)1876
等身大の大きな作品です。
日本趣味を描いた代表的な作品でもあります。
ゴザを敷き詰めた床に、鮮やかな打ち掛けを着て立つ、パリジェンヌ。
その手には扇子、壁には一面に団扇が飾られています。
実際、モネの自宅の壁にも団扇が飾られていました。
カミーユはモネの奥さんです。
パリ万博の2年前の作品です。
打ち掛けの素晴らしさ、絵の素晴らしさにも圧倒される作品です。
同じく、クロード・モネ「睡蓮」です。
『ラ・ジャポネーゼ』以降も、日本文化の影響を受けた作品を作り続けます。
モネは自宅の庭に池をつくり、睡蓮を育てました。
モネの作品で、浮世絵の構図とよく似た作品があります。
対比した画像を見てみると、そっくりです。
左が広重「東海道五十三次内 四日市三重川」1833頃
右がモネ「トルーヴィルの海岸」1881
カサットも浮世絵に大きな影響を受けた一人です。
左が喜多川歌麿「母子たらい遊」1803頃
右がカサット「湯浴み」1891頃
ムンクも同様です。
左が広重「名所江戸百景 神田明神曙之景」1857
右がムンク「夏の夜の夢(声)」1893
いかがでしたでしょうか。
ヨーロッパの画家たちがいかに浮世絵などに影響されたのか、
よくわかる展示会になっています。
印象派絵画を見る機会がありましたら、浮世絵と比較されても、
面白いと思います。
蛇足ですが、今回は浮世絵の作品も多くありました。
美術館の展示方法によっては、作品の劣化を抑えるとして、
過度に照明を下げるところもあります。
そうすると浮世絵は小品が多いので、作品の良さが半減されてしまいます。
現物を見に来ているのに、作品集を見ているほうがマシといった、
残念なこともたびたびあります。
でも今回の京都市美術館のは、そんな心配はありませんでした。