今回の日曜美術館は、 『どこまでも新しい絵を作りたい~菱田春草』です。
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明治の西洋化の荒波の中で、新たな日本画を創造するために、
実験に次ぐ実験を 重ね、問題作を世に問い続けた画家、
菱田春草(1874~1911)が取り上げられました。
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長野県飯田に生まれた 菱田春草は、明治23年、16歳にとき、画家を志し、
東京美術学校に入学します。
ここで生涯の師、岡倉天心に出会います。
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岡倉天心は、校長として新たな日本画を産み出そうとしていました。
天心の指導のもと、生涯絵画の実験に邁進しました。
実験の最初の成果
「寡婦と孤児」
美術学校の卒業作品として描いた作品です。
わが子を抱き、嘆き悲しむ母親、
その前に鎧と刀が置かれ、夫が亡くなったことがわかります。
当時、日清戦争の勝利の影で、多くの戦死者が出ていました。
春草は、古典的な題材を用い、戦争の悲劇を暗示する作品を描いたのです。
この絵の評価をめぐり、大きな論争になりましたが、岡倉天心の裁断で、首席となった作品です。
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「寒林」
西洋の写実的な手法を日本画に取り込もうとした作品です。
林の中に大きな岩がいくつも転がり、真ん中の岩の上に、
二匹の猿がくつろいでいます。
伝統的な水墨画と全く異なる雰囲気です。
木々の遠近間、陰影を帯びた岩の立体間、白黒写真のようです。
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「菊慈童」
風景の中に漂う空気感を表現した作品です。
山奥深くに追いやられた童が、菊の葉の露を飲み、
その霊力で仙人になったという伝承を描いています。
空気間を出すため、一切、輪郭線を使っていません。
この描方は朦朧体(もうろうたい)と呼ばれました。
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春草は岡倉天心が作った日本美術院の中心メンバーとして活躍します。
「躑躅(つつじ)」
新緑に覆われた山の光景です。
緑の山肌に赤く咲き乱れるつつじを描いています。
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「夕の森」
もやがかかった夕暮れの森の景色です。
朦朧体の手法ですが、鮮やかな青色が使われれいます。
この青色は、従来の日本の絵の具ではなく、西洋絵の具だそうです。
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「賢首菩」 重要文化財
朦朧体を脱却した作品で、春草の代表作の一つです。
高い椅子に座った高僧が、華厳の教えを述べる場面です。
この絵にも西洋絵の具が使用されています。
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この頃、春草は目の病に冒され、治療のために、
東京に帰り、療養に専念します。
その頃に描かれた絵です。
「落葉」重要文化財
朝靄が漂い、無数の枯葉が散っている晩秋の雑木林
まるで、林の中を散策しているようです。
紅葉したトチの葉は実に細密に描かれています。
現代日本画の最高傑作の一つとされています。
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俵屋宗理「楓図屏風」
「落葉」を描くにあたり、
春草が注目した江戸時代琳派の絵です。
奥行きのある空間を生かし、琳派のような絵を目指したのです。
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「黒き猫」重要文化財
紅葉した柏、その幹に黒猫がうずくまっています。
背景は琳派の絵のようです。
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この作品の翌年、病のため36歳の若さで亡くなります。
私は春草の後年、晩年の作品を見てみたい思いにかられます。