みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

村田エフェンディ滞土録(たいとろく)

2009年04月19日 | 
今から100年ほど前、トルコはイスタンブールに留学し、異国の地で考古学を志す主人公・村田と異国の友との友情の記録。ちなみに「エフェンディ」と言うのは、トルコの言葉で学問を修めた者への敬称とのこと。

傑作だと思う。今、誰かに1冊だけ本を薦めるとしてたら、この本になると思う。(家守綺譚かも?)
とにか広くお勧めできる一冊です。
紹介してくれた知人からは、ラストは涙なしには読めないだろう、と忠告を受けていたけれど、案にたがわず、涙、留めなく流れてしまう・・・。

全編、梨木さんの磨き抜かれた言葉、行間から立ち上がる香気も素晴らしいけど、何より、人生に対する姿勢が、潔く、心地よく、惹きつけられる。
温かくも清涼な風が吹いていた。人生、かくありたし、と思う。(凡人にはなかなか難しいけど・・・。)

京都を舞台にした名作「家守綺譚」とクロスオーバーするあたりも、心憎い演出。
綿貫やゴローと、こんなところで再会とは・・・。

印象的な言葉を、ちょっとメモろうっと。
「私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない。」

「人は過ちを繰り返す。繰り返すことで何度も何度も学ばねばならない。人が繰り返さなくなったとき、それはすべての終焉です。」

「この世で決して見(まみ)えることのなかった人々の、ごくごく個人的な喜びや悲しみ、生活の小さな哀歓が、遥かな時を超え、私の周りで泡のように浮かんでは消えた。」

「またもやあの黒曜石のような瞳で私をじっと見つめた。波立つ漆黒の髪。烏の濡れ羽色とはまさにこのことだろう。くっきりと紅の映える厚みのある唇に、華奢でいながら量感のある肢体。私はこのとき、何故彼女たちがヘジャーブの中に封印されているか、正しく理解したように思った。」

「ディスケ・ガウデーレ!(楽しむことを学べ!)」

「It's enough!(もう十分だ!)」


本編とは関係ないけれど・・・、
個人的、今、盛んにショパンのエチュード1番を練習中。この曲は、古代ギリシャの神殿を彷彿とさせるものがあるのだけど、作中に現れる、古代ギリシャの遺跡と、ニアミスだなあと思う。
あと、スタンブールの街を馬で駆ける場面が出てくるののだけど、この休日、近くを車で運転していたら、乗馬クラブを発見。これは、馬に乗ってみよ!という神のお告げかな?

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)
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家守綺譚 (新潮文庫)
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考古学関連の傑作としては、MASTERキートン は外せない・・・。
MASTERキートン (1) (ビッグコミックス)
勝鹿 北星,浦沢 直樹
小学館

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コメント (2)
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