タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

HTLV-1キャリアは母乳禁止?

2017-08-18 20:44:02 | 産科
写真の赤ちゃんは、もうすぐ退院ですよ。
あっという間の1週間でしたね。
今日は雷の激しい1日でした。

今日のネットを騒がせている産婦人科のニュースと言えば、HTLVー1というウィルスの話題です。
どうも出どころは、富山大学教授の斎藤先生のようですね。
福知山に岡本産婦人科さんが有って、その岡本先生とむかし、学会でバトルを繰り広げられていましたよ。
岡本先生とは研究室も同じで、息子同士も同級生なのですよね。
娘同士もでした。

どうもこういう科学的な話というのは、非科学的に改変されたりすることが有ります。
前回は2009年に、このHTLV-1というウィルスの母子感染対策が発表されました。
その時はちゃんとした本になって、すべての産婦人科に配られたものです。
その内容をお話しましょう。

もともとこのウィルスは九州の人にキャリアが多いのです。
九州の人は大阪や尼崎に出て来られますから、兵庫と大阪もキャリアが多いのです。
どれくらい多いかと言えば、日本では108万人くらいです。日本人には多いのです。
ただしね、このウィルスを持っていたからといって、白血病を発症する率はたったの5%ほどなのですけれど。

主な感染経路は、母乳を介して赤ちゃんにウィルスが移行するものです。
夫婦間では性行為や、あと輸血なども有りますが、
1986年以降は輸血の血液はスクリーニングされていますから心配要りません。
それで母乳さえやめれば、この母子感染を減らすことができると考えられていました。
もしくは3ヶ月以内なら母乳をあげても良いとか、母乳をいったん凍結すれば良いという、
オプションも用意されていたのです。

ところが人の寿命も延びているので、思ったほどキャリアが減らなかったので、今回の発表となったのでしょう。
ですが前回の改定とは違って今回は、寝耳に水で、報道により知りましたよ。
それで今回は、オプション無しの、全面的に母乳禁止令が出たのですよ。
ミルクで育てなさいとね。

ただちょっと、個人的にはどうかな、という発令ですけれどね。
というのは、母乳をあげ続けると、525人の調査では17.7%に母子感染が起こりました。
母乳を中止すると、1,563人の調査で3.3%しか母子感染は起こらなかったのです。
それで母乳を中止するのもやむを得ないというところでしょう。

でもね、短期母乳栄養でも、162人だけの調査ですが、1.9%しか母子感染は起こらなかったのです。
むしろ母乳中止組より低い陽性率ではないですか。
凍結母乳の群では、64人中、3.1%しか母子感染は起こらなかったのです。
これなら良いような気もしますね。
なのに今回は、ちょっと非科学的に、むしろ感情的にとも思えるのですが、
母乳中止の裁定となったのですよね。少し気にはなるのですよね。
もう少し調査した方が良いようですけれど。

ところでみなさんの母子手帳には、2010年11月から、検査するようになって、検査欄ができたのですよ。
なんだ、つい最近のことなのですよ。
ただしこの検査もくせものなのですよね。
スクリーニング検査で陽性でも、すぐに陽性と判断してはいけません。
陽性の人は、次にウエスタンブロットという方法で再度検査をしないといけないのです。
両方とも陽性ならキャリアと判断されます。
でもね、ウエスタンブロット法では不明、いわゆる判定不能例が10%ほど有るのですよ。
タマル産でも判定不能が2例続きましたよ。

そういう場合は仕方なく、PCR法という、さらに精密検査をします。
ところがこの検査、今までは保険が効かなかったので、数万円したと思います。
だからしなかったのですが、2016年4月から保険適応になったらしいのです。
だから判定不能例にはした方が良いのでしょう。
ですが、さらにこのPCR法もまた、カットオフ値がクリアカットではないのですよね。
ということで、検査自体の問題ものこされているということですよ。

難しい解説でしたが、今回のニュースは、一般の人に広告するのはどうかな、という類のものですね。
聞かなかったことにした方がよさそうですよ。