タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

男性不妊とタマルという女性

2016-10-28 21:14:54 | 不妊症
宮城県岩沼市の香隠(かのん)ちゃん、9月23日生まれ。
「みんなに優しくできる、穏やかな子になってください。
お産では、一度寝た方がスムーズというアドバイスが効きました。
1人目の時より心に余裕が持てました。みなさんと気軽にお話ができました。感謝しています。」

次は男の子だと嬉しいです、ということでした。
でもこればかりは分かりませんからね。

陣痛が弱い時や、夜から陣痛が始まった時など、
一度寝て、次の日が本番、という姿勢も良いでしょう。
今朝というか丑三つ時に、2人続けて赤ちゃんが生まれましたが、
先の方には一度寝てもらったおかげで、その後陣痛もついてきたのですよ。
あまり緊張して、生まれるまで起きておこうなんてすると、次の日がたいへんですからね。
今朝生まれた赤ちゃんは、了解を得て、フェイスブックに載せていますよ。
https://www.facebook.com/tamarclinic/photos/a.193338350720952.64150.172667016121419/1117707638284014/?type=3&theater

昨日も木曜日で外来はお休みだったので、出かけていたのですが、
お産の入院が有るというので、すぐにお呼び出しとなったわけです。
だいたい木曜日は、私は本屋さんか古本屋さんに出没しているのです。
昨日買ってきたうちの1つが、図説よくわかる臨床不妊症学、という本です。
中古なのにすごく高価でした。

男性不妊症の項目に、近年、男性不妊が増加する背景、というものが有りました。
何か社会的な問題や環境因子の話が書かれているのかと思いきや、
男性不妊の大半を占める特発性造精機能障害に対する根治療法がなく、
対症的に生殖補助医療に依存せざるを得ない現況では、
初診時には女性不妊の方が多くても、残ってくるのは難治性の男性不妊であって、
男性不妊の比率も上がる、という論理でした。

この本も初版が9年前ですからね。
致し方有りませんか。
ここ1年ほどでは、より積極的に男性不妊に対しても、タマル産ではホルモン療法を施行しています。
この1年の手応えとしては、劇的に改善する方も居られれば、
半年ほどの治療では殆ど変化無いという方も居られます。
実際、初診時は殆ど精子が居ないような方でも、
治療後さらに人工授精と組み合わせて妊娠されたカップルも居られます。
もう少し症例数を増やしたいところですね。

そしてもし保存的な方法で改善しないとなれば、次は顕微受精ということになってきます。
ただ顕微授精の場合、卵に注入する精子は、今のところ顕微鏡下に肉眼的に観察するくらいしか方法が無いのです。
ですから自然妊娠や普通の体外受精と比べると、
生まれてきた子の染色体異常の確率は高いとされています。
ここがまだ未解決な部分なのですよ。

先日のニュースで、体外受精の際、ご主人の精子の代わりにご主人のお父さんの精子を使って、
すでに赤ちゃんが生まれているというものが有りましたね。
覚えておられますか?
感情的な問題を考慮しないなら、すごく良い方法だとは思いますけれどね。
遺伝子的にはご主人のものと一番近いわけです。
問題は赤ちゃんのお爺ちゃんとの関係が問題にならないか、ということくらいでしょうか。

タマルという女性の話を復習してみましょうか。
ユダには3人の息子が居たのです。
長男のお嫁さんがタマルです。
ですが長男がすぐに亡くなってしまうのですね。

それで昔は次男と再婚する風習が有り、それに従いました。
ですが次男もまたすぐに亡くなってしまうのです。
ユダおじいさんは、三男も早死にしてしまうのかと思ってしまうのですね。
だから結婚させないのです。

それでもタマルは、ユダの血統を残そうとするのですよ。
それがお嫁さんの使命だと考えているからです。
それで娼婦に化けて、ユダと関係を持つのです。

当時不倫は石打の刑という公開処刑だったのですが、タマルは機転を利かせて無罪となるのです。
結局は、その子孫からイエスキリストが生まれてくるのですよね。
タマルという女性は聖書の中では重要なポジションに居るわけなんですよ。

たとえおじいさんの精子であっても、その血統を残すという意味では許されることだと思いますが。
現代的な感覚では理解し難いでしょうね。

ところで、今日外来に来られた患者さんのお母さん、
14年前にタマル産で赤ちゃんを産まれた方です。
もちろん覚えていますよ。
その赤ちゃんが14歳になって来院される年頃です。
お話だけで済みましたが、大きくなった赤ちゃんを見て居るような気分でしたよ。
おもしろいでしょう?