タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

TORCHのT

2015-07-08 21:58:44 | 産科


上の写真は丹波師氷上町の希一(きいち)くん、6月3日生まれ。
「希望に向かって真っ直ぐ進めるような子に育ってください。
お産は初めてですが、意外と楽でした。
産後の後陣痛や母乳をあげる時の方がたいへんでした。」

安産な妊婦さんも居られるのですよ。
何もお産は苦痛ばかりとは限らないのです。
ましてや2人、3人ともなれば、気持ち良かったという方も居られます。

さあ、それでは今日は、トーチ症候群の中の1つ、トキソプラズマ感染症について、です。
トーチは、TORCHの略でしたね。
"C"のサイトメガロウィルスのお話は、最近しましたね。
普段問題になるのは、"R"のRubella、風疹ですよ。
そして、今日お話するのは"T"のトキソプラズマです。

トキソプラズマは妊婦健診の検査項目には入っていません。
希望者のみする検査です。
ですが現実は説明もしないので、希望する方も殆ど居られません。

よくネコを飼っている家庭で、トキソプラズマを心配して来られます。
サイトメガロは小さなウィルスでしたが、トキソの方は大きな原虫なのです。
どちらも胎児に感染すると、精神運動発達遅滞や脳性麻痺などになるので、
同じ病気と勘違いされていた時代も有るくらいです。

感染するのは、ネコのウンチを処理することや、井戸水を生のまま飲んだり、
生ハムや馬刺し、ユッケなんかを食べることでも起こります。
大人が感染しても無症状のことが多いのですが、
知らない間に母親を経由して胎児が感染してしまうと、
目の障害や脳の障害が、生直後でなくても徐々に出てきたりするのです。

検査方法はこれもサイトメガロウィルスの時と似ているのですが、
以前はIgG抗体とIgM抗体を同時に測定する方法だったのですが、
最近はこれらが陽性の場合はさらに、IgG avidity検査というのを行います。
これによりごく最近の感染かどうかが分かります。
要するにIgG avidityが低ければ、妊娠中の感染が疑われるのです。
ただし、妊娠中に感染しても、すべての胎児が感染するわけでもないのです。

風疹なら妊娠初期の感染の方が怖いのですが、
トキソプラズマの方は後期の方が母子感染率が高いのです。
ただし重症度という面では、初期の感染の方が重症度が高いのですが。

こちらはウィルスではないので、抗生物質が効果を表します。
特異的にアセチルスピラマイシンという抗生物質を内服します。
新生児にも検査で感染が疑われた場合は、
ピリメタミン、スルファジアジン、ロイコボリン、プレドニンという薬を1年間投薬します。

まとめとして、妊婦健診にこれから取り入れられてきそうな検査だということですよ。
なぜなら治療が有るからです。
ちなみに、ヨーロッパなど、生にくを食べる国々では、
日本よりずっと赤ちゃんへの感染率が高いのですよ。