タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

つわりとウェルニッケ

2015-07-21 22:01:20 | 産科
滋賀県甲賀市の日菜美(ひなみ)ちゃん、6月17日生まれ。
「明るく穏やかで、人の気持ちの分かる子に育ってください。
とても良かったです。アットホームな感じで、またここで産みたいと思いました。」

滋賀県の甲賀ですね。
忍者屋敷なんかも有るのですよ。
私自身は大津市出身ですからね。
ですが既に丹波に来て20年以上経ちますよ。

いつだったか、丹波新聞に産婦人科医の減少の記事が載っていて、
丹波は産婦人科の医師5人のうち、3人が丹波だからいいのダ、みたいに書いてあったのですよ。
もちろん私は丹波の3人には入れてもらっていませんでしたが。
そして丹波出身と言われる先生も、今では1人しか残られていませんよ。

さらに篠山市長さんへのインタビュー記事で、人口減対策に答えられて、
「Uターンはいいけれど、Iターンでは住民とうまくやっていけないだろう」
と言われていました。

まあ、これでは地方創生とは言っても、まだまだだな、と感じている次第ですよ。
実際、篠山の医師会などは、2世、3世、あるいはもっとでしょうか、
でないとお仲間に入れてもらえませんしね。
これ以上嘆いていてはいけませんね。

もし世界中の人が、人類一家族、という思想を持てたなら、
どうぞ、若者たちよ、地方に来てごらんなさい、
一緒に未来を作っていきましょう、ということになる。
もちろん日本人ならば、世界の人に対してもそういうことになればいいのでしょうね。

さて、本題でしたね。
ウェルニッケ脳症という病気を知っておられますか?
もちろん知りませんよね。
私が医師になった頃もそんなことは習ったこともありませんでした。
つわりがひどくなると、入院して点滴をするのですが、
この点滴の中にビタミン剤を入れておかないと、
ビタミンB1の不足から、脳に障害が残ることが有るのです。
ビタミンというくらいだから、毎日摂らないといけないでしょう。

日本でそれが知られたのは、昭和63年からなのです。
ウェルニッケ脳症という言葉さえ知られていない時代だったのですが、
つわりで大学病院に紹介したにも関わらず、
脳障害が残ったのです。幸い生命は助かったのです。
この病気は今では死ぬことも有る病気だということは誰でも知っているのですが。

私の患者さんんでも、今までにひどいつわりの方が1人だけ居られました。
まるで妊娠高血圧症候群の時の子癇発作(しかんほっさ)のような発作を起こします。
もちろんビタミン剤は投与していますよ。
その時も3次施設にすぐに転院してもらいました。
だから、つわりと言えども怖いのですね。

ところで、先ほどの話ですが、
昭和63年当時に、脳障害が残った女性の主治医は、
9千万円の賠償になったそうです。
なんと理不尽な話でしょうか。
この見せしめの一件から、世間では治療が始まったのはいいことなのですが。
どんな時も、「人柱」が必要らしいのですよ。