タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

妊娠中の痛み止めは必要悪かしら

2014-11-07 22:01:28 | 産科
篠山市郡家の結(ゆい)くん、10月5日生まれ。
「健康で、優しい子に育ってください。
1人目に比べ、とても早く出産できて良かったです。ウォーターベッドも気持ち良かったです。
ゆっくりできて、もう一度入院したくらいです。」

皆さん、男の子に願うものは、どうも優しさのようです。
私なんて、質実剛健などと考えてしまうのですが、
今の時代は、ラグビー選手より、スケート選手の方が憧れなのでしょうね。
それだけ平和な世の中なのです。

神戸の神鋼が強かった時代、大八木選手と平尾選手が同志社から入ってきたのですよね。
私と同級生ですよ。え?あの頃の話を知りませんか。
大八木選手は今はうちの子が通う中学の校長先生です。それは関係のない話。

さて、何度かお話したことが有りますが、妊娠と薬の関係について、です。
今日も歯医者さんに行った妊婦さんが、妊娠中期なのにくすりを貰えなかったのです。
薬は産婦人科に行ってもらいなさいと。
何か有ったときに、それが薬のせいではないとしても、文句を言われたくないのでしょう。

薬は妊娠初期と妊娠中後期に分けて考えなくてはいけません。
一番問題になるのは、解熱鎮痛剤かもしれません。
インドメタシンやアスピリン、バッファリンなどのことです。
もっとも、アスピリンは習慣性流産の女性に、敢えて少量ずつ投与することもあるのですが。
むかしは禁忌ではなかったのですが、最近は妊娠中期以降、痛み止めは禁止です。
飲み薬だけではなくて、シップだって、塗る筋肉痛の薬だってダメなのです。
妊娠初期でも流産の確率が増えます。
でも歯が痛いときは辛ですからね。

私の若かりし頃は、インドメタシンは切迫早産の治療薬として使われていました。
天理に居たときに、交感神経の刺激剤とこのインドメタシンを使って、
それでも早産してしまった児が、電解質異常を起こしたことが有ります。
稀に報告されるのが、動脈管の早期閉鎖や、お産の時の出血の増量、それに微弱陣痛です。

痛みのもとは、プロスタグランジンという物質です。
生理痛もこれが原因です。これをブロックするのが、解熱鎮痛剤です。
ですが、お産の時には胎盤からプロスタグランジンが分泌されて、
子宮を収縮させ、陣痛の痛みも起こすわけです。
そのプロスタグランジンの分泌を抑制するのですから、
出血も増えれば、陣痛も長引くわけですね。

あるいは、胎児は子宮の中では呼吸していませんから、
肺に行くはずの血液は身体の方に行く大動脈に一時的に繋がっています。
これを動脈管と言い、生まれてからは肺に血液が流れるので、閉鎖するのです。
これもプロスタグランジンが減るから短絡路の動脈管が閉まるのですが、
鎮痛剤によって、早くにプロスタグランジンを抑制してしまって、
早期に動脈管が閉まってしまって、胎児や新生児に生命の危機が生じることが有るのです。

いやあ、難しい話になりました。
要は妊娠中は痛み止めはなるべく使わないように、というお話でした。
ですが、痛いのだから仕方がないでしょう?
私はよく漢方の鎮痛剤を処方するのですが。西洋薬ほどの切れ味は有りません。

本当は妊娠初期の流産に関わることをお話しようと思っていたのですが、長くなってしまいました。
フェイスブックはこちら。https://www.facebook.com/tamarclinic
たまに間違いを指摘されます。
ご迷惑をおかけしてすみません。この場で陳謝いたします。
今も陣痛を誘発している最中なんです。
前期破水では誘発することも有ります。そして1泊2日ということも多いのです。