歌番号 220 拾遺抄記載
詞書 ちりのこりたるもみちを見侍りて
詠人 僧正遍昭
原文 可良尓之幾 恵多尓飛止武良 乃己礼留者 安幾乃可多美遠 多々奴奈利个利
和歌 からにしき えたにひとむら のこれるは あきのかたみを たたぬなりけり
読下 唐錦枝にひとむらのこれるは秋のかたみをたたぬなりけり
解釈 唐錦のように紅葉した葉が枝に一群れと残っているのは、それは唐錦の布一匹(むれ)を秋の記録として裁つ、その言葉の響きではありませんが、秋の思いを絶たぬからです。
歌番号 221 拾遺抄記載
詞書 延喜の御時、女四のみこの家の屏風に
詠人 つらゆき
原文 奈可礼久累 毛美知者美礼者 加良尓之幾 多幾乃以止毛天 於礼留奈利个利
和歌 なかれくる もみちはみれは からにしき たきのいともて おれるなりけり
読下 流れくるもみち葉見れはからにしきたぎのいともておれるなりけり
解釈 川を流れ来る紅葉した葉を眺めると唐錦の様で、それは急流の白い流れを糸として織った布のようです。
歌番号 222 拾遺抄記載
詞書 屏風に
詠人 平兼盛
原文 止久礼由部 加徒久多毛止遠 与曽比止者 毛美知遠波良不 曾天可止也美无
和歌 しくれゆゑ かつくたもとを よそひとは もみちをはらふ そてかとやみむ
読下 時雨ゆゑかつくたもとをよそ人はもみちをはらふ袖かとや見ん
解釈 秋の季節の時雨のため、頭を覆うために袂を掲げた様を、他の人は散り舞う紅葉の葉を払う袖かと見間違えるでしょうか。
歌番号 223 拾遺抄記載
詞書 百首歌の中に
詠人 源重之
原文 安之乃者尓 加久礼天須美之 川乃久尓乃 己也毛安良波尓 布由者幾尓个利
和歌 あしのはに かくれてすみし つのくにの こやもあらはに ふゆはきにけり
読下 あしのはにかくれてすみしつのくにのこやもあらはに冬はきにけり
解釈 葦の葉に隠れて住む、その津の国の昆陽(こや)に作った小屋も、冬枯れで露わになる冬が来たようです。
歌番号 224 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 つらゆき
原文 遠毛飛可祢 以毛可利由个者 布由乃世乃 可者可世左武美 知止利奈久奈里
和歌 おもひかね いもかりゆけは ふゆのよの かはかせさむみ ちとりなくなり
読下 思ひかねいもかりゆけは冬の夜の河風さむみちとりなくなり
解釈 恋焦がれる思いに耐えかねて恋人を尋ねて行くと、冬の夜の川風は寒く、また、千鳥も寒そうに鳴いている。
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