竹取翁と万葉集のお勉強

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後撰和歌集 巻12 歌番号840から844まで

2024年01月22日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻12
歌番号八四〇
詞書 以止志乃比天加多良不飛止乃遠呂可奈留左万尓三衣个礼者
読下 いと忍びて語らふ人のおろかなるさまに見えければ

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 者奈春々幾保尓以川留己止毛奈幾毛乃遠満多幾布幾奴留安幾乃風可奈
和歌 はなすすき ほにいつることも なきものを またきふきぬる あきのかせかな
読下 花薄穂に出づる事もなき物をまだき吹きぬる秋の風かな
解釈 花薄の穂が出て人目に付くような、そのような出来事もないはずなのに、たびたび、逢う約束を違える様を見せる貴方には、もう、すでに吹いたのでしょうか、秋の風のような言葉の響きを持つ、飽きの風が。

歌番号八四一
詞書 己々呂左之遠呂可尓三衣个留飛止尓川可八之个留
読下 心ざしおろかに見えける人につかはしける

詠人 奈可幾可武寸女
読下 なかきかむすめ(平中興女)

原文 満多佐利之阿幾者幾奴礼止三之飛止乃己々呂者与曽尓奈利毛由久可奈
和歌 またさりし あきはきぬれと みしひとの こころはよそに なりもゆくかな
読下 待たざりし秋は来ぬれど見し人の心はよそになりも行くかな
解釈 待ってもいなかった秋はやって来ましたが、私に飽きが来たのでしょうか、私を抱いたその人の気持ちは他の女へと向いて行くものですね。

歌番号八四二
詞書 可部之
読下 返し

詠人 美奈毛堂乃己礼之計乃安曾无
読下 源是茂朝臣

原文 幾美遠於毛不己々呂奈可佐者安幾乃与尓以川礼万左留止曽良尓之良奈无
和歌 きみをおもふ こころなかさは あきのよに いつれまさると そらにしらなむ
読下 君を思ふ心長さは秋の夜にいづれまさると空に知らなん
解釈 私が貴女を恋慕う気持ちの変わらぬ長さと、長いという秋の夜と、どちらが勝っているでしょう、空、その言葉の響きのように、何も言わなくても、貴女は判るでしょ。

歌番号八四三
詞書 安留止己呂尓安不美止以不飛止遠以止志乃日天加多良比
者部利个留遠与安个天加部利个留遠飛止三天
左々也幾个礼者曽乃於无奈乃毛止尓川加者之个留
読下 ある所に近江といふ人をいと忍びて語らひ
侍りけるを、夜明けて帰りけるを、人見て
ささやきければ、その女のもとにつかはしける

詠人 左加乃宇部乃川祢可計
読下 坂上つねかけ(坂上常景)

原文 加々美也万安个天幾川礼者安幾々利乃計左也多川良无安不美天不奈者
和歌 かかみやま あけてきつれは あききりの けさやたつらむ あふみてふなは
読下 鏡山明けて来つれば秋霧の今朝や立つらん近江てふ名は
解釈 近江の鏡山、鏡を納める箱を開けるという言葉ではないが、朝が明けて帰って来ると、秋霧が今朝に立つ、その立つの言葉のように、私が近江という名の女性の許から後朝の別れをしたとの噂は立ったでしょうか。(ねぇ、近江。)

歌番号八四四
詞書 安比之利天者部留於无奈乃飛止尓安多奈多知者部利个留尓
川可者之个留
読下 あひ知りて侍る女の、人にあだ名立ち侍りけるに
つかはしける

詠人 多比良乃万礼与乃安曾无
読下 平まれよの朝臣(平希世)

原文 衣多毛奈久飛止尓於良留々遠美奈部之祢遠多尓乃己世宇部之和可多女
和歌 えたもなく ひとにをらるる をみなへし ねをたにのこせ うゑしわかため
読下 枝もなく人に折らるる女郎花根をだに残せ植ゑし我がため
解釈 枝も残すことなくすっかり人に手折られた女郎花よ、せめて、思い出として根だけは残して欲しい。植えて大切に花が咲くまでに育てた私のために。

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