竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻9 歌番号597から600まで

2023年11月14日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻9
歌番号五九七
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 寸三与之乃和可三奈利世八止之布止毛末川与利保可乃以呂遠三万之也
和歌 すみよしの わかみなりせは としふとも まつよりほかの いろをみましや
読下 住吉の我が身なりせば年経とも松より外の色を見ましや
解釈 貴方にとって住み吉しのような、都合の良い、住吉の私の身の上でしたなら年を経ても待つ、それ以外の様子をしましょうか。(でも、私は貴方の都合の良い、住吉の女ではありませんよ。)

歌番号五九八
原文 於止己尓川可者之个留
読下 をとこにつかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 宇川々尓毛者可奈幾己止乃安也之幾者祢奈久尓由女乃三由留奈利个利
和歌 うつつにも はかなきことの あやしきは ねなくにゆめの みゆるなりけり
読下 うつつにもはかなきことのあやしきは寝なくに夢の見ゆるなりけり
解釈 確かに、昨夜、貴方にしっかり愛されたのですが、その貴方の愛の行いが不思議なことに、今、寝てもいないのに夢を見ているような実感の無い気持ちです。

歌番号五九九
原文 於无奈乃安者春者部利个留尓
読下 女の逢はず侍りけるに

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 之良奈美乃与留/\幾志尓太川与利天祢毛三之毛乃遠寸三与之乃末川
和歌 しらなみの よるよるきしに たちよりて ねもみしものを すみよしのまつ
読下 白浪の寄る寄る岸に立寄りて寝も見し物を住吉の松
解釈 白波が寄る、その言葉の響きのような、夜、夜ごとに、貴女と言う寄る岸に立ち寄って、共に寝て愛し合った仲なのに、住吉、その言葉のような、再び、私が貴女の許での、住み良しとの、貴女の返事を待ちます。

歌番号六〇〇
原文 於止己尓川可者之个留
読下 男につかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 奈可良部天安良奴万天尓毛己止乃者乃布可幾者以可尓安者礼奈利个利
和歌 なからへて あらぬまてにも ことのはの ふかきはいかに あはれなりけり
読下 ながらへてあらぬまでにも言の葉の深きはいかにあはれなりけり
解釈 いついつまでもと、二人の仲が続くと言うことは無いとしても、貴方からの言葉でのいたわり深さは、どれほどにもしみじみとした気持ちになります。

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後撰和歌集 巻9 歌番号592から596まで

2023年11月13日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻9
歌番号五九二
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 徒良可良者於奈之己々呂尓川良可良无川礼奈幾比止遠己比武止毛世寸
和歌 つらからは おなしこころに つらからむ つれなきひとを こひむともせす
読下 つらからば同じ心につらからんつれなき人を恋ひむともせず
解釈 素っ気ない振る舞いなら、同じ心持で、素っ気なくするでしょうね、だから、素っ気ない素振りをする人を私から恋することはしませんよ。

歌番号五九三
原文 於无奈女尓川可八之个留
読下 女につかはしける

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 比止之礼寸於毛不己々呂者於本之万乃奈留止者奈之尓奈計久己呂可奈
和歌 ひとしれす おもふこころは おほしまの なるとはなしに なけくころかな
読下 人知れず思ふ心は大島のなるとはなしに嘆くころかな
解釈 貴女に気が付かれずに恋い慕う私の気持ちの、周防大島の鳴門、その言葉の響きのような、恋が成ることも無く、ただ、実らぬ恋に嘆くこのころです。

歌番号五九四
原文 於止己乃毛止尓川可者之遣流
読下 をとこのもとにつかはしける

原文 奈可川可佐
読下 中務

原文 者可奈久天於奈之己々呂尓奈利尓之遠於毛不可己止八於毛不良无也曽
和歌 はかなくて おなしこころに なりにしを おもふかことは おもふらむやそ
読下 はかなくて同じ心になりにしを思ふがごとは思ふらんやぞ
解釈 当てにならないままに貴方と同じ恋慕う様になりましたが、私が貴方を恋慕うほどに、貴方は私のことを恋慕っているでしょうか。

歌番号五九五
原文 可部之
読下 返し

原文 美奈毛堂乃左祢安幾良
読下 源信明

原文 和飛之左遠於奈之己々呂止幾久可良尓和可三遠寸天々幾美曽加奈之幾
和歌 わひしさを おなしこころと きくからに わかみをすてて きみそかなしき
読下 わびしさを同じ心と聞くからに我が身を捨てて君ぞかなしき
解釈 相手の気持ちが確かめられずに不安との思いは、貴女と私とが同じ気持ちと聞いたからには、我が身を棄て置いても、貴女のことが愛おしく感じます。

歌番号五九六
原文 満可良寸奈利尓个留於无奈乃比止尓奈多知个礼八川可八之个留
読下 まからずなりにける女の、人に名立ちければつかはしける

原文 美奈毛堂乃左祢安幾良
読下 源信明

原文 左堂女奈久安多尓知利奴留者奈与利者止幾者乃末川乃以呂遠也者三奴
和歌 さためなく あたにちりぬる はなよりは ときはのまつの いろをやはみぬ
読下 定めなくあだに散りぬる花よりは常盤の松の色をやは見ぬ
解釈 常盤の命との定めがなく、いたずらに散ってしまう花(他の男との恋花)よりも、常盤の松の色を、今少し、待って、その常なる色(私)と逢いませんか。

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後撰和歌集 巻9 歌番号587から591まで

2023年11月10日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻9
歌番号五八七
原文 多以布尓川可者之遣流
読下 大輔につかはしける

原文 美幾乃於保伊萬宇智岐美
読下 右大臣

原文 以呂不可久曽女之多毛止乃以止々之久奈美多尓佐部毛己佐万左留可奈
和歌 いろふかく そめしたもとの いととしく なみたにさへも こさまさるかな
読下 色深く染めし袂のいとどしく涙にさへも濃さまさるかな
解釈 色深く染めた私の袂が、貴女を恋慕って流すたくさんの血の涙によってさらに色濃くなっていくことです。

歌番号五八八
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 三留止幾者己止曽止毛奈久三奴止幾者己止安利加本尓己比之幾也奈曽
和歌 みるときは ことそともなく みぬときは ことありかほに こひしきやなそ
読下 見る時は事ぞともなく見ぬ時はこと有り顔に恋しきやなぞ
解釈 逢う時はなにごとも無いと感じるのですが、逢わないときは何事があるかのように恋焦がれるのはどうしてでしょうか。

歌番号五八九
原文 於止己乃己武止天己左利个礼者
読下 男の来むとて来ざりければ

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 也末左止乃万幾乃以多止毛佐々左里幾堂乃女之日止遠万知之与比与里
和歌 やまさとの まきのいたとも さささりき たのめしひとを まちしよひより
読下 山里の真木の板戸も鎖さざりき頼めし人を待ちし宵より
解釈 あの山里の真木で作った、声も通さないような、重く分厚い板戸も閉ざしてはいません、心を寄せて信頼する貴方の訪れを待つ宵からは。

歌番号五九〇
原文 者之免天於无奈乃毛止尓川可者之遣留
読下 初めて女のもとにつかはしける

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 由久方毛奈久世可礼多留也末三従乃以者万本之久毛於毛本由留可奈
和歌 ゆくかたも なくせかれたる やまみつの いはまほしくも おもほゆるかな
読下 行く方もなく塞かれたる山水のいはまほしくも思ほゆるかな
解釈 流れ行く方向もな無く、塞がれている山水の岩、その言葉の響きのような、貴女の気持ちが欲しいと言いたいと願う、そのような気持ちです。

歌番号五九一
原文 於无奈女尓川可八之个留
読下 女につかはしける

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 比止乃宇部乃己止々之以部者志良奴可奈幾美毛己比寸留遠利毛己曽安礼
和歌 ひとのうへの こととしいへは しらぬかな きみもこひする をりもこそあれ
読下 人の上の事とし言へば知らぬかな君も恋する折もこそあれ
解釈 他の人のことのように言っているので、貴女は気が付かいないでしょうね、もし、貴女が貴女から人を恋慕う機会があれば、(きっと、今の私の気持ちが判るでしょうね。)

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後撰和歌集 巻9 歌番号582から586まで

2023年11月09日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻9
歌番号五八二
原文 比止尓川可者之个留
読下 人につかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 安飛毛三寸奈計幾毛曽女寸安利之止幾於毛不己止己曽三尓奈可利之可
和歌 あひもみす なけきもそめす ありしとき おもふことこそ みになかりしか
読下 あひも見ず嘆きもそめず有りし時思ふ事こそ身になかりしか
解釈 貴女に出逢うことも無く、逢えない悲しみに嘆くこともすることがなかった時、貴女を恋焦がれることすら、私の身の上にはありませんでした。

歌番号五八三
原文 比止尓川可者之个留
読下 人につかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 己比乃己止和利奈幾毛乃者奈可利个利加川武川礼川々加徒曽己比之幾
和歌 こひのこと わりなきものは なかりけり かつむつれつつ かつそこひしき
読下 恋のごとわりなき物はなかりけりかつむつれつつかつぞ恋しき
解釈 恋のような理屈に合わないものはありません、一方では仲睦ましくしながら、同時に相手に恋焦がれていますから。

歌番号五八四
原文 於无奈乃毛止尓徒可者之个留
読下 女のもとにつかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 和多川宇美尓布可幾己々呂乃奈可利世者奈尓可八幾美遠宇良三之毛世无
和歌 わたつうみに ふかきこころの なかりせは なにかはきみを うらみしもせむ
読下 わたつ海に深き心のなかりせば何かは君を恨みしもせん
解釈 大船を渡す海、そのような深く愛する気持ちが無かったならば、どうして貴女を恨んだりしましょうか。(別れることなく、まだ、慕っています。)

歌番号五八五
原文 於无奈乃毛止尓徒可者之个留
読下 女のもとにつかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 美那加美尓以乃留可比奈久奈三多可者宇幾天毛日止遠与曽尓三留可奈
和歌 みなかみに いのるかひなく なみたかは うきてもひとを よそにみるかな
読下 みな神に祈るかひなく涙河浮きても人をよそに見るかな
解釈 水神と全ての神々に祈る甲斐もなく、涙で出来た河、その涙河を作るような憂きことも辛きことも、それは貴女を他人と感じることです。

歌番号五八六
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 以乃利遣流美那加美左部曽宇良女之幾个不与利保可尓加計乃三衣年八
和歌 いのりける みなかみさへそ うらめしき けふよりほかに かけのみえねは
読下 祈りけるみな神さへぞ恨めしき今日より外に影の見えねば
解釈 貴方が祈ったと言う水神とすべての神々さえも残念に思います、今日以外では、もう、貴方の姿は見えないので。

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後撰和歌集 巻9 歌番号577から581まで

2023年11月08日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻9
歌番号五七七
原文 比止尓川可者之遣留
読下 人につかはしける

原文 美奈毛堂乃比止之乃安曾无
読下 源ひとしの朝臣(源等)

原文 安佐地不乃遠乃々志乃者良之乃不礼止安満利天奈止可日止乃己比之幾
和歌 あさちふの をののしのはら しのふれと あまりてなとか ひとのこひしき
読下 浅茅生の小野の篠原忍ぶれどあまりてなどか人の恋しき
解釈 浅茅の生えている小野の篠原、その言葉の響きのように、偲ぶけれども、それでも偲びきれずに、どうしてこれほどに貴女が恋しいのでしょうか。

歌番号五七八
原文 比止尓川可者之遣留
読下 人につかはしける

原文 加祢毛里
読下 かねもり(兼盛王)

原文 安女也満奴乃幾乃堂満三従加寸之良須己比之幾己止乃万佐留己呂可奈
和歌 あめやまぬ のきのたまみつ かすしらす こひしきことの まさるころかな
読下 雨やまぬ軒の玉水数知らず恋しき事のまさるころかな
解釈 雨が降る止まず軒に滴る玉水が数知れないように、そのような数知れない、貴女への愛しい気持ちが募るこのころです。

歌番号五七九
原文 己々呂美之可幾也宇尓幾己由留比止奈利止以比个礼者
読下 心短きやうに聞こゆる人なりと言ひければ

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 以世乃宇美尓者部天毛安万留堂久奈者乃奈可幾己々呂者和礼曽万佐礼留
和歌 いせのうみに はへてもあまる たくなはの なかきこころは われそまされる
読下 伊勢の海にはへてもあまる栲縄の長き心は我ぞまされる
解釈 伊勢の海に延ばして置いても余りあるほどの栲縄の長さ、それほどの貴女を想う気長い気持ちは、貴女よりも私の方が勝っていますよ。

歌番号五八〇
原文 比止尓川可者之个留
読下 人につかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 以呂尓以天々己比寸天不名曽多知奴部幾奈美多尓曽武留曽天乃己遣礼八
和歌 いろにいてて こひすてふなそ たちぬへき なみたにそむる そてのこけれは
読下 色に出でて恋すてふ名ぞ立ちぬべき涙に染むる袖の濃ければ
解釈 態度や振る舞いに現れて、貴方を恋しているとの評判が立ってしますでしょう、逢えぬ悲しみに流す血の涙で染まってしまった袖の色が濃ければ。

歌番号五八一
原文 比止尓川可者之个留
読下 人につかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 加久己不留毛乃止志利世八与留者遠幾天安久礼者幾由留川由奈良万之遠
和歌 かくこふる ものとしりせは よるはおきて あくれはきゆる つゆならましを
読下 かく恋ふる物と知りせば夜は置きて明くれば消ゆる露ならましを
解釈 このように恋しいものと知っていたなら、夜には置いて夜が明ければ消えて行く儚い命の露であったらよかったのに。

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