竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻3 歌番号141から146まで

2023年07月07日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻3
歌番号一四一
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 於之免止毛者留乃可幾利乃个不乃末多由不久礼尓左部奈利尓个留可奈
和歌 をしめとも はるのかきりの けふのまた ゆふくれにさへ なりにけるかな
読下 惜しめども春の限りの今日の又夕暮れにさへなりにけるかな
解釈 季節の移り変わりを惜しんでいたけれど、春の季節の終わりとなる、今日の、その夕暮れ時にまでもなってしまった。

歌番号一四二
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 美徒祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 由久左幾遠々之見之者留乃安寸与利者幾尓之可多尓毛奈利奴部幾可奈
和歌 ゆくさきを をしみしはるの あすよりは きにしかたにも なりぬへきかな
読下 行く先を惜しみし春の明日よりは来にし方にもなりぬべきかな
解釈 季節が移って行く、その先を惜しんでいた春を、明日からは既に来て終わった季節となったと思うような時期になったことよ。

歌番号一四三
原文 也与比乃徒己毛利
読下 弥生のつごもり

原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 遊久佐幾尓奈利毛也寸留止堂乃三之遠者留乃可幾利者个不尓曽安利个留
和歌 ゆくさきに なりもやすると たのみしを はるのかきりは けふにそありける
読下 行く先になりもやすると頼みしを春の限りは今日にぞありける
解釈 まだまだ、季節はやって来るのではないかと思っていた、その春の季節の区切りは、今日だったのだなぁ。

歌番号一四四
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 者奈之安良波奈尓可者々留乃於之可良无久留止毛遣不者奈个可左良万之
和歌 はなしあらは なにかははるの をしからむ くるともけふは なけかさらまし
読下 花しあらば何かは春の惜しからん来るとも今日は嘆かざらまし
解釈 もしも卯の花さえがあれば、どうして、春の季節が過ぎて行くのを残念に思うでしょうか。その季節としての終わりとなる今日が来ても、残念に思って嘆くことはありません。

歌番号一四五
原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 久礼天末多安寸止多尓奈幾者累乃日遠者奈乃可个尓天个不者久良左武
和歌 くれてまた あすとたになき はるのひを はなのかけにて けふはくらさむ
読下 暮れて又明日とだになき春の日を花の影にて今日は暮らさむ
解釈 日が暮れて、また、明日というべき日が無い、その春の季節の終わりの日を、卯の花咲く木のたもとで今日は一日、暮らしましょう。

歌番号一四六
原文 也与飛乃徒己毛利乃比飛佐之宇万宇天己奴
与之以飛天者部留布美乃於久尓加幾川个
者部利个留
読下 弥生のつごもりの日、久しうまうで来ぬよし
言ひて侍る文の奥に書きつけ
侍りける

原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 末多毛己武止幾曽止於毛部止堂乃万礼奴和可三尓之安礼者於之幾者留可奈
和歌 またもこむ ときそとおもへと たのまれぬ わかみにしあれは をしきはるかな
読下 又も来む時ぞと思へど頼まれぬ我が身にしあれば惜しき春かな
解釈 貴方にとっては、また、来年もやって来るでしょう季節と思われているでしょうが、己が寿命に頼りない我が身にとっては、実に、名残り惜しいこの春です。

原文 徒良由幾加久天於奈之止之尓奈无三万可利尓个留
読下 貫之かくて同じ年になん身まかりにける

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後撰和歌集 巻3 歌番号136から140まで

2023年07月06日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻3
歌番号一三六
原文 可部之
読下 返し

原文 飛多利乃於保以末宇知幾美
読下 左大臣

原文 徒祢与利毛乃止遣可留部幾者留奈礼者飛可利尓比止乃安者佐良女也者
和歌 つねよりも のとけかるへき はるなれは ひかりにひとの あはさらめやは
読下 常よりものどけかるべき春なれば光に人のあはざらめやは
解釈 春に閏月があって例年よりも一層に心のどかな春なので、「春」の光(=綬位での処遇)に貴方は出会うのではないでしょうしょうか。

歌番号一三七
原文 徒祢尓満宇天幾加与比遣留止己呂尓佐者留己止者部利天
飛佐之久万天幾安者寸之天止之加部利尓个里
安久留者留也与比乃川己毛利尓徒可者之个留
読下 常にまうで来かよひける所に、障る事侍りて、
久しくまで来逢はずして年かへりにけり。
あくる春弥生のつごもりにつかはしける

原文 布知八良乃万佐多々
読下 藤原雅正

原文 幾美己春天止之者久礼尓幾多知加部利者留佐部个不尓奈利尓个留可奈
和歌 きみこすて としはくれにき たちかへり はるさへけふに なりにけるかな
読下 君来ずて年は暮れにき立かへり春さへ今日になりにけるかな
解釈 約束したのに、貴方がやって来ないままに年は暮れてしまい、さらに立ち代わりの春さえも終わりの晦日(つごもり)の今日になってしまいました。

歌番号一三八
原文 止毛尓己曽者奈遠毛三女止満川比止乃己奴毛乃由部尓於之幾者留可那
和歌 ともにこそ はなをもみめと まつひとの こぬものゆゑに をしきはるかな
読下 ともにこそ花をも見めと待つ人の来ぬものゆゑに惜しき春かな
解釈 共に見てこその藤の花をも、さぁ見てくださいと、見せたく待つ、その待つ人のやって来ないものだから、実に残念な春でした。

歌番号一三九
原文 可部之
読下 返し

原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 幾美尓多仁止者礼天布礼者布知乃者奈多曽可礼止幾毛志良春曽安利个留
和歌 きみにたに とはれてふれは ふちのはな たそかれときも しらすそありける
読下 君にだに訪はれでふれば藤の花たそがれ時も知らずぞありける
解釈 心を許した貴方だからこそ訪れることも無いままで、それで藤の花が終わりになる時期も気が付かないままで居ました。

歌番号一四〇
原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 也部武久良己々呂乃宇知尓布可遣礼者々奈三尓由可武以天多知毛世春
和歌 やへむくら こころのうちに ふかけれは はなみにゆかむ いてたちもせす
読下 八重葎心の内に深ければ花見に行かむ出で立ちもせず
解釈 手入れをないままに生えた八重葎が、庭だけでなく、私の心の中にも深く生えているので、貴方と共に風流の藤の花を見たいと貴方の処へと行こうと思ったのですが、出立もしませんでした。

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後撰和歌集 巻3 歌番号131から135まで

2023年07月05日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻3
歌番号一三一
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 宇久比春乃以止尓与累天不多末也奈幾布幾奈美多利曽者留乃也万可世
和歌 うくひすの いとによるてふ たまやなき ふきなみたりそ はるのやまかせ
読下 鴬の糸に撚るてふ玉柳吹きな乱りそ春の山風
解釈 鶯が糸を撚ったと言う美しい柳の枝、その枝を吹き乱すな、春の山嵐よ。

歌番号一三二
原文 佐久良乃者奈乃知留遠三天
読下 桜の花の散るを見て

原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 伊川乃満尓知利者天奴覧佐久良者奈於毛加个尓乃美以呂遠三世川々
和歌 いつのまに ちりはてぬらむ さくらはな おもかけにのみ いろをみせつつ
読下 いつのまに散りはてぬらん桜花おもかげにのみ色を見せつつつ
解釈 いつの間にかに散ってしまったのだろうか、桜の花よ。思い出の中だけにその花色を見せながら。

歌番号一三三
原文 安徒美乃美己乃花見侍个留所尓天
読下 敦実の親王の花見侍りける所にて

原文 美奈毛堂乃奈可乃布安曾无
読下 源仲宣朝臣

原文 知累己止乃宇幾毛和春礼天安者礼天不己止遠佐久良尓也止之川留可奈
和歌 ちることの うきもわすれて あはれてふ ことをさくらに やとしつるかな
読下 散ることの憂きも忘れてあはれてふ言を桜に宿しつるかな
解釈 後に散ることへの辛さも忘れて、ああ、美しいという言葉を桜に花に宿してしまったことだ。

歌番号一三四
原文 佐久良乃知留遠三天
読下 桜の散るを見て

原文 与三比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 佐久良以呂尓幾多留己呂毛乃布可遣礼者寸久留者留比毛於之个久毛奈之
和歌 さくらいろに きたるころもの ふかけれは すくるはるひも をしけくもなし
読下 桜色に着たる衣の深ければ過ぐる春日も惜しけくもなし
解釈 このように桜色に染めた、この着ている衣の色合いが深いので、過ぎてしまった桜の春の日々は残念ではありません。

歌番号一三五
原文 也与比尓宇留不川幾安留止之徒可左女之乃己呂
毛宇之布美尓曽部天飛多利乃於保以末宇知幾美乃
以部尓徒可者之个留
読下 弥生に閏月ある年、司召のころ
申文にそへて、左大臣の
家につかはしける

原文 川良由幾
読下 貫之(紀貫之)

原文 安満里佐部安利天由久部幾止之多尓毛者留尓加奈良寸安不与之毛可奈
和歌 あまりさへ ありてゆくへき としたにも はるにかならす あふよしもかな
読下 あまりさへありて行くべき年だにも春にかならずあふよしもはな
解釈 閏月と言う余りさえあって、季節が過ぎて行く春が多い今年だけでも、その「春」(綬位での処遇)に確実に遇えることがあるといいのですが。

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後撰和歌集 巻3 歌番号126から130まで

2023年07月04日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻3
歌番号一二六
原文 加祢寸个乃安曾无
読下 兼輔朝臣(藤原兼輔朝臣)

原文 以呂布可久尓保比之己止者布知奈美乃堂知毛加部良天幾美止万礼止可
和歌 いろふかく にほひしことは ふちなみの たちもかへらて きみとまれとか
読下 色深く匂ひし事は藤浪の立ちも帰らで君と止まれとか
解釈 色深く咲いて輝いているのは、その藤波が立つ、その言葉の響きではありませんが、貴方様が宴の途中で帰ることなく、まだまだ、私の屋敷に留まって楽しんでください。

歌番号一二七
原文 川良由幾
読下 貫之(紀貫之)

原文 佐本左世止布可佐毛志良奴布知奈礼者以呂遠者比止毛志良之止曽於毛布
和歌 さをさせと ふかさもしらぬ ふちなれは いろをはひとも しらしとそおもふ
読下 棹させど深さも知らぬ淵なれば色をば人も知らじとぞ思ふ
解釈 棹を挿しても届かないほどの深さが判らない程の深い「淵」、その言葉の響きではありませんが、宴の終わる時分を知らない「藤」(藤原)なので、もう、帰りたいとの気持ちをあの人は知らないで引き留めていると思っているでしょう。

歌番号一二八
原文 己止布衣奈止之天安曽比毛乃可多利奈止之者部利
个留本止尓与布遣尓个礼者満可利止万利天
読下 琴笛などして遊び、物語りなどし侍り
けるほどに、夜更けにければ、まかりとまりて

原文 左无天宇乃美幾乃於保以末宇知幾美
読下 三条右大臣

原文 幾乃布三之者奈乃可保止天遣左三礼者祢天己曽佐良尓以呂万佐利个礼
和歌 きのふみし はなのかほとて けさみれは ねてこそさらに いろまさりけれ
読下 昨日見し花の顔とて今朝見れば寝てこそさらに色まさりけれ
解釈 昨日に見た藤の花の顔色だろうと、今朝、見てみると、一夜寝て見ればだからなのか、さらに色が濃くなっていることよ。

歌番号一二九
原文 加祢寸个乃安曾无
読下 兼輔朝臣(藤原兼輔朝臣)

原文 飛止与乃美祢天之加部良者布知乃者奈己々呂止遣多留以呂三世无也波
和歌 ひとよのみ ねてしかへらは ふちのはな こころとけたる いろみせむやは
読下 一夜のみ寝てし帰らば藤の花心とけたる色見せんやは
解釈 一夜だけ泊まって帰ってしまったなら、藤の花は、心をすっかり許した姿を貴方に見せないと思いますよ。まだまだ、留まれたらどうですか。

歌番号一三〇
原文 川良由幾
読下 貫之(紀貫之)

原文 安佐本良遣志多由久三川者安佐个礼止布可久曽者奈乃以呂者三衣个留
和歌 あさほらけ したゆくみつは あさけれと ふかくそはなのいろはみえける
読下 あさぼらけ下行く水は浅けれど深くぞ花の色は見えける
解釈 ほのぼのと開け行く朝日の中に、遣水の下へと流れ行く水は浅いのですが、その言葉とは違いほとりに咲く藤の花の色は深いと、その花の色は見えたものです。

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後撰和歌集 巻3 歌番号121から125まで 

2023年07月03日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻3
歌番号一二一
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 者奈左可利満多毛寸幾奴尓与之乃可者可个尓宇川呂不幾之乃也万布幾
和歌 はなさかり またもすきぬに よしのかは かけにうつろふ きしのやまふき
読下 花盛りまだも過ぎぬに吉野河影に移ろふ岸の山吹
解釈 花の盛りはまだ過ぎてはいないのに、その「花うつろう」の様子とは違い、この吉野の河では川面にその花影を「うつろう(=映す)」、岸の山吹です。

歌番号一二二
原文 比止乃己々呂堂乃美可多久奈利遣礼者也万布幾乃
知利佐之堂留遠己礼三与止天徒可者之遣流
読下 人の心頼みがたくなりければ、山吹の
散りさしたるを、これ見よとてつかはしける

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 志乃飛加祢奈幾天加者川乃遠之无遠毛志良寸宇川呂不也万布幾乃者奈
和歌 しのひかね なきてかはつの をしむをも しらすうつろふ やまふきのはな
読下 しのびかね鳴きて蛙の惜しむをも知らず移ろふ山吹の花
解釈 散りゆくのを鳴いてカジカカエルが残念に思うのも、全くに気に留めずに花を散らして行く山吹の花、(その姿のような、私の気持ちを全くに気に留めない貴方なのですね。)

歌番号一二三
原文 也与比者可利乃者奈乃佐可利尓美知万可利个留尓
読下 弥生ばかりの花の盛りに、道まかりけるに

原文 曽宇志也宇部无世宇
読下 僧正遍昭

原文 遠利川礼者堂不左尓計可留太天奈可良三与乃保止个尓者奈多天万川留
和歌 をりつれは たふさにけかる たてなから みよのほとけに はなたてまつる
読下 折りつればたぶさにけがる立てながら三世の仏に花たてまつる
解釈 野に咲く花を手折ってしまうと、私の手により穢れてしまうのですが、花瓶に立てながら、弥生の花祭りとして三世の仏(前世、現世、来世の仏)にその花を奉ります。

歌番号一二四
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 美奈曽己乃以呂左部布可幾末川可衣尓知止世遠加祢天左个留布知奈美
和歌 みなそこの いろさへふかき まつかえに ちとせをかねて さけるふちなみ
読下 水底の色さへ深き松が枝に千歳をかねて咲ける藤波
解釈 水底の色までも緑色濃く映す松の枝に、その千歳の長寿の願いを懸ける、その言葉の響きのように、その松の枝に懸けて花咲く藤波です。

歌番号一二五
原文 也与比乃志毛乃曾止乃比者可利尓左无天宇乃美幾乃於保以末宇知幾美
加祢寸个乃安曾无乃以部尓満可利天者部利个留尓布知乃者奈
佐遣累也利三川乃保止利尓天加礼己礼於本美幾堂宇部个留川以天尓
読下 弥生の下の十日ばかりに、三条右大臣、
兼輔朝臣の家にまかりて侍りけるに、藤の花
咲ける遣水のほとりにて、かれこれ大御酒たうべけるついでに

原文 左无天宇乃美幾乃於保以末宇知幾美
読下 三条右大臣

原文 可幾利奈幾奈尓於不々知乃者奈々礼者曽己為毛志良奴以呂乃布可佐可
和歌 かきりなき なにおふふちの はななれは そこひもしらぬ いろのふかさか
読下 限りなき名に負ふ藤の花なれば底ひも知らぬ色の深さか
解釈 「不尽」と、限り無く栄えるとの名に持つ「藤」の花、その言葉の響きのような限り無く栄えると名に持つ藤原の家に咲く花なので、遣水のほとりにあっても、深い淵の水色が色濃いように、花色が濃い藤の花なのですね。

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