歌番号一四一
原文 多以之良寸
読下 題知らす
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 於之免止毛者留乃可幾利乃个不乃末多由不久礼尓左部奈利尓个留可奈
和歌 をしめとも はるのかきりの けふのまた ゆふくれにさへ なりにけるかな
読下 惜しめども春の限りの今日の又夕暮れにさへなりにけるかな
解釈 季節の移り変わりを惜しんでいたけれど、春の季節の終わりとなる、今日の、その夕暮れ時にまでもなってしまった。
歌番号一四二
原文 多以之良寸
読下 題知らす
原文 美徒祢
読下 みつね(凡河内躬恒)
原文 由久左幾遠々之見之者留乃安寸与利者幾尓之可多尓毛奈利奴部幾可奈
和歌 ゆくさきを をしみしはるの あすよりは きにしかたにも なりぬへきかな
読下 行く先を惜しみし春の明日よりは来にし方にもなりぬべきかな
解釈 季節が移って行く、その先を惜しんでいた春を、明日からは既に来て終わった季節となったと思うような時期になったことよ。
歌番号一四三
原文 也与比乃徒己毛利
読下 弥生のつごもり
原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)
原文 遊久佐幾尓奈利毛也寸留止堂乃三之遠者留乃可幾利者个不尓曽安利个留
和歌 ゆくさきに なりもやすると たのみしを はるのかきりは けふにそありける
読下 行く先になりもやすると頼みしを春の限りは今日にぞありける
解釈 まだまだ、季節はやって来るのではないかと思っていた、その春の季節の区切りは、今日だったのだなぁ。
歌番号一四四
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす
原文 者奈之安良波奈尓可者々留乃於之可良无久留止毛遣不者奈个可左良万之
和歌 はなしあらは なにかははるの をしからむ くるともけふは なけかさらまし
読下 花しあらば何かは春の惜しからん来るとも今日は嘆かざらまし
解釈 もしも卯の花さえがあれば、どうして、春の季節が過ぎて行くのを残念に思うでしょうか。その季節としての終わりとなる今日が来ても、残念に思って嘆くことはありません。
歌番号一四五
原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)
原文 久礼天末多安寸止多尓奈幾者累乃日遠者奈乃可个尓天个不者久良左武
和歌 くれてまた あすとたになき はるのひを はなのかけにて けふはくらさむ
読下 暮れて又明日とだになき春の日を花の影にて今日は暮らさむ
解釈 日が暮れて、また、明日というべき日が無い、その春の季節の終わりの日を、卯の花咲く木のたもとで今日は一日、暮らしましょう。
歌番号一四六
原文 也与飛乃徒己毛利乃比飛佐之宇万宇天己奴
与之以飛天者部留布美乃於久尓加幾川个
者部利个留
読下 弥生のつごもりの日、久しうまうで来ぬよし
言ひて侍る文の奥に書きつけ
侍りける
原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)
原文 末多毛己武止幾曽止於毛部止堂乃万礼奴和可三尓之安礼者於之幾者留可奈
和歌 またもこむ ときそとおもへと たのまれぬ わかみにしあれは をしきはるかな
読下 又も来む時ぞと思へど頼まれぬ我が身にしあれば惜しき春かな
解釈 貴方にとっては、また、来年もやって来るでしょう季節と思われているでしょうが、己が寿命に頼りない我が身にとっては、実に、名残り惜しいこの春です。
原文 徒良由幾加久天於奈之止之尓奈无三万可利尓个留
読下 貫之かくて同じ年になん身まかりにける
原文 多以之良寸
読下 題知らす
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 於之免止毛者留乃可幾利乃个不乃末多由不久礼尓左部奈利尓个留可奈
和歌 をしめとも はるのかきりの けふのまた ゆふくれにさへ なりにけるかな
読下 惜しめども春の限りの今日の又夕暮れにさへなりにけるかな
解釈 季節の移り変わりを惜しんでいたけれど、春の季節の終わりとなる、今日の、その夕暮れ時にまでもなってしまった。
歌番号一四二
原文 多以之良寸
読下 題知らす
原文 美徒祢
読下 みつね(凡河内躬恒)
原文 由久左幾遠々之見之者留乃安寸与利者幾尓之可多尓毛奈利奴部幾可奈
和歌 ゆくさきを をしみしはるの あすよりは きにしかたにも なりぬへきかな
読下 行く先を惜しみし春の明日よりは来にし方にもなりぬべきかな
解釈 季節が移って行く、その先を惜しんでいた春を、明日からは既に来て終わった季節となったと思うような時期になったことよ。
歌番号一四三
原文 也与比乃徒己毛利
読下 弥生のつごもり
原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)
原文 遊久佐幾尓奈利毛也寸留止堂乃三之遠者留乃可幾利者个不尓曽安利个留
和歌 ゆくさきに なりもやすると たのみしを はるのかきりは けふにそありける
読下 行く先になりもやすると頼みしを春の限りは今日にぞありける
解釈 まだまだ、季節はやって来るのではないかと思っていた、その春の季節の区切りは、今日だったのだなぁ。
歌番号一四四
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす
原文 者奈之安良波奈尓可者々留乃於之可良无久留止毛遣不者奈个可左良万之
和歌 はなしあらは なにかははるの をしからむ くるともけふは なけかさらまし
読下 花しあらば何かは春の惜しからん来るとも今日は嘆かざらまし
解釈 もしも卯の花さえがあれば、どうして、春の季節が過ぎて行くのを残念に思うでしょうか。その季節としての終わりとなる今日が来ても、残念に思って嘆くことはありません。
歌番号一四五
原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)
原文 久礼天末多安寸止多尓奈幾者累乃日遠者奈乃可个尓天个不者久良左武
和歌 くれてまた あすとたになき はるのひを はなのかけにて けふはくらさむ
読下 暮れて又明日とだになき春の日を花の影にて今日は暮らさむ
解釈 日が暮れて、また、明日というべき日が無い、その春の季節の終わりの日を、卯の花咲く木のたもとで今日は一日、暮らしましょう。
歌番号一四六
原文 也与飛乃徒己毛利乃比飛佐之宇万宇天己奴
与之以飛天者部留布美乃於久尓加幾川个
者部利个留
読下 弥生のつごもりの日、久しうまうで来ぬよし
言ひて侍る文の奥に書きつけ
侍りける
原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)
原文 末多毛己武止幾曽止於毛部止堂乃万礼奴和可三尓之安礼者於之幾者留可奈
和歌 またもこむ ときそとおもへと たのまれぬ わかみにしあれは をしきはるかな
読下 又も来む時ぞと思へど頼まれぬ我が身にしあれば惜しき春かな
解釈 貴方にとっては、また、来年もやって来るでしょう季節と思われているでしょうが、己が寿命に頼りない我が身にとっては、実に、名残り惜しいこの春です。
原文 徒良由幾加久天於奈之止之尓奈无三万可利尓个留
読下 貫之かくて同じ年になん身まかりにける