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読書日記

いろいろな本のレビュー

四字熟語物語  

2008-04-25 22:02:02 | Weblog


四字熟語物語  田部井文雄  大修館書店
 温故知新、四面楚歌、明眸皓歯など有名な四字熟語の出典を説明したもので、前著「四字熟語辞典」の要約版のようなもの。著者は前千葉大学教授で中国文学の研究者である。六朝から唐代までの詩文を専門にしている。この出典を読むだけでも漢文のエッセンスが勉強できて非常に有益だ。漢文は大学入試でも出題されなくなっている。ほとんどの私立大学では古典を入試科目にしていても「漢文は除く」となっているのが普通。関西では関大と立命が漢文を出題しているが、関学、同志社はやっていない。漢文を課すと受験生が敬遠して応募者が少なくなるという計算が働いているようだ。全くけしからん話である。漢文の論語、史記、唐詩などは中国の古典というよりもはや日本の古典なのである。そこらへんのことがわかっていない人間が多すぎる。国立大学でも京大は漢文を出題しない。吉川幸次郎以来の伝統を誇る大学がなぜ漢文をださないのか。その理由を説明して欲しいものだ。
 一つだけコメントすると、「山紫水明」は「山が日に映えて紫色に見え、川の水が澄んで透き通って見えること」の意だが、これは江戸時代後期の漢学者、頼山陽の造語である。「題自画山水詩」の「黄葉青林 小欄に対す 最も佳し 山紫水明の間」が出典で、これを京都の草堂でものし、その草堂に「山紫水明処」と名づけたと田部井先生は説明されている。この「山紫水明」は見延典子氏の「頼山陽」によると唐代の詩人、王勃の「煙光凝而暮山紫」(煙光凝りて暮山紫なり)と杜甫の「残夜水明楼」(残夜水楼を明らかにす)を出典にしているということだが、私自身は出典の詩に直接当たっていないので、この説について云々できないのは残念だ。でもこの小説は「激情の人、頼山陽」を余す処なく描いた佳作である。是非一読されたい。  



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