次男坊たちの江戸時代 松田敬之 吉川弘文館
サブタイトルに公家社会の厄介者とある。お公家さんは階級社会の上位に位置し気楽に過ごせたと思うのだが、次男、三男たちは結構厳しかったようだ。彼らは親や兄に扶養される「厄介」と呼ばれる存在で、そのまま一生を終わる者、幸運にも養子先のあった者、養子先を廃嫡された者、いろいろだったようだ。江戸時代は跡継ぎが優遇された時代、武家の場合はよく話題になるが、公家に関する研究は少なく、話題としては大変におもしろい。まあ次男、三男はスペアみたいなもので、長男が無事成長して家を継げばまさに「厄介者」になるわけで、彼らの処遇には気を遣ったであろう。
本書は彼らの人生を具体的な資料をもとに解説してあり、大変わかりやすい。公家社会における厄介たちも、すべてが悲惨な人生を送ったわけではなく、多種多様。成功者もいれば、失敗者もいる。逆に、長男だからといって安穏な人生を送れたわけでもない。まさに人生いろいろという感じ。人生はそれほど単純ではない。