世界最大の共産主義国家中国の動向は常に世界の注目を引き付ける。自由主義国家にとって最大の脅威になっているこの国の共産主義の実態を二人の専門家の問答形式でわかりやすく解説したもの。ほとんどは既知の情報だったが、今改めてわかった事実もあって参考になった。まず中国共産党の領袖毛沢東はマルクスの暴力革命論に乗っかって激しい闘争に明け暮れたが、これは「革命的ロマン主義」というべきもので、そんな危険な人物が共産党のリーダーになったのかというと、それはナショナリズムの育たなかった中国で、中国の人々にナショナリズムとは何かを教えることができたからだと橋爪氏はいう。「自分たちは中国人だ」という意識を植え付けたということで、これは今も共産党を支える重要なテーマとなっている。そして党の重要なものとしてスパイ活動があげられる。今や世界最大のスパイ組織といえるが、毛沢東の側近として仕えた周恩来はスパイマスターだったという。彼は6人のスパイを国民党内に送り込んで、内戦が終わるまで誰がスパイだったかわからないほど国民党を欺き、重要な軍事情報は全部、共産党側に筒抜けだったと峯村氏はいう。毛沢東と周恩来の関係も謎の部分が多い。なぜ周恩来が毛沢東に粛清されずに居れたのか、並みの人間ならばこの独裁者に長年使仕えることは至難の業で、何か周に秘策があったのではとも思うが定かではない。しかし毛は自分が周より先に死ぬと後が心配なので、周がガンに冒されたときも治療を受けさせず死を早めさせたというのは有名な話だ。権力側の人間のすさまじい闘争を目の当たりにした感じがする。
この中国共産党と上海にあった日本軍の特務機関が連携していたという指摘(橋爪)は重要だ。日本軍は、共産党に教えてもらった情報をもとに、軍事作戦を展開していたのだ。日本軍が闘ったのは国民党であり、共産党ではなかった。共産党は適当に逃げ隠れして日本軍と国民党軍の弱体を待って漁夫の利を得たわけだ。延安への長征というがあんな僻地に誰もいかないわけで、日本軍と国民党軍の戦いを高みの見物と決め込んでいたのだ。したがって中国共産党が主権の正当性を主張するためには是非とも国民党の残滓を受け継ぐ台湾を併合するしかない。併合の重要な活動として「統一工作戦線」を峯村氏は挙げる。これはかつて国民党の内部を分裂させたり、友好勢力を増やしたりする伝統的手法で、習近平はこれのプロだという。共産党の幹部は彼を「どん臭くてパッとしない」と侮ってはいけない。「彼は党内で台湾問題に最も精通している傑物だ」と言ったという。福建省に17年間勤務し、台湾相手に「統一工作戦線」を実践してきたのだろう。よって任期中に台湾進攻の可能性は無きにしも非ずということになる。
習近平は毛沢東同様死ぬまで権力の座に座ろうとしていることは明らかで、これはナンバー2を置かないことからも明らかだ。後継者を指名すればその人物に地位を追われる可能性があるので事前に防いでいると思われる。またあれだけ腐敗摘発の名目で政敵を叩いてきたので、今の地位を維持しなければ復讐される危険がある。降りるにおりられないのが実情だろう。国家としては迷惑な話だが、それを許してしまう党の構造に問題がある。峯村氏が「中国共産党とは」と中枢の幹部に尋ねると、「世界最大の黒社会(マフイア組織)だ」と即答したという。都市整備のための立ち退きの手法を見ていると確かにヤクザの地上げと同じという気がする。党の中で地位を得なければ利権をもとに蓄財もできないということで、若いうちは懸命に汚れ仕事も引き受けて働くというのはまさにヤクザと同じだ。幹部になって国家予算を蚕食する、これで果たして革命政党と言えるか。いや、言えないと思う。しかし党員は生殺与奪の権を党にグリップされているので異論を唱えることができない。共産党は共産党のためにあり、権力を持つために権力を持つ。共産党はとっくに革命をやめて政権を維持すること自体が目的になっている。これは資本家や起業家の入党を認めていることからもわかる。これだと革命の課題である資本家を打倒できない。マルクスレーニン主義に反するのだ。
日本はこの辺の事情をよく考えたうえで中国との外交をやっていかなければならない。この本を外務省の人間はしっかり読んで、それを契機に専門家を招いて研究する組織を立ち上げる必要があろう。弱腰な態度を見せると足元を見られるのは明白。このままでは台湾有事に日本が台湾を助けるということはありえないだろう。腰が引けているからだ。
この中国共産党と上海にあった日本軍の特務機関が連携していたという指摘(橋爪)は重要だ。日本軍は、共産党に教えてもらった情報をもとに、軍事作戦を展開していたのだ。日本軍が闘ったのは国民党であり、共産党ではなかった。共産党は適当に逃げ隠れして日本軍と国民党軍の弱体を待って漁夫の利を得たわけだ。延安への長征というがあんな僻地に誰もいかないわけで、日本軍と国民党軍の戦いを高みの見物と決め込んでいたのだ。したがって中国共産党が主権の正当性を主張するためには是非とも国民党の残滓を受け継ぐ台湾を併合するしかない。併合の重要な活動として「統一工作戦線」を峯村氏は挙げる。これはかつて国民党の内部を分裂させたり、友好勢力を増やしたりする伝統的手法で、習近平はこれのプロだという。共産党の幹部は彼を「どん臭くてパッとしない」と侮ってはいけない。「彼は党内で台湾問題に最も精通している傑物だ」と言ったという。福建省に17年間勤務し、台湾相手に「統一工作戦線」を実践してきたのだろう。よって任期中に台湾進攻の可能性は無きにしも非ずということになる。
習近平は毛沢東同様死ぬまで権力の座に座ろうとしていることは明らかで、これはナンバー2を置かないことからも明らかだ。後継者を指名すればその人物に地位を追われる可能性があるので事前に防いでいると思われる。またあれだけ腐敗摘発の名目で政敵を叩いてきたので、今の地位を維持しなければ復讐される危険がある。降りるにおりられないのが実情だろう。国家としては迷惑な話だが、それを許してしまう党の構造に問題がある。峯村氏が「中国共産党とは」と中枢の幹部に尋ねると、「世界最大の黒社会(マフイア組織)だ」と即答したという。都市整備のための立ち退きの手法を見ていると確かにヤクザの地上げと同じという気がする。党の中で地位を得なければ利権をもとに蓄財もできないということで、若いうちは懸命に汚れ仕事も引き受けて働くというのはまさにヤクザと同じだ。幹部になって国家予算を蚕食する、これで果たして革命政党と言えるか。いや、言えないと思う。しかし党員は生殺与奪の権を党にグリップされているので異論を唱えることができない。共産党は共産党のためにあり、権力を持つために権力を持つ。共産党はとっくに革命をやめて政権を維持すること自体が目的になっている。これは資本家や起業家の入党を認めていることからもわかる。これだと革命の課題である資本家を打倒できない。マルクスレーニン主義に反するのだ。
日本はこの辺の事情をよく考えたうえで中国との外交をやっていかなければならない。この本を外務省の人間はしっかり読んで、それを契機に専門家を招いて研究する組織を立ち上げる必要があろう。弱腰な態度を見せると足元を見られるのは明白。このままでは台湾有事に日本が台湾を助けるということはありえないだろう。腰が引けているからだ。