山口百恵は1973年春に14歳でデビューし、1980年に21歳で引退した。私に関して言えば、1973年は21歳、1980年は28歳だった。気楽な学生生活を経て、新設高校の教員生活二年目で、トホホの毎日。到底定年まで続けられそうにないと思っていたが、不思議なことにその後32年間勤めあげて退職金をもらった。人生のダイナミズムを実感した次第である。百恵に関して言えば、一般人がさあこれからという時に引退して、結婚して専業主婦になったのである。現在52歳で、息子が歌手としてデビューしている。この32年、私は食べるために宮仕えに専念し、百恵は三浦友和夫人として、マスコミをシャットアウトして生きてきた。百恵も偉いが、三浦友和も偉い。芸能人の格から言えば、明らかに百恵の方が上で、三浦は逆玉と言われても反論できない状態だった。
結婚後、心ないマスコミが百恵にアプローチをかけようとした時、妻と子供を守るために必死の形相で怒っていたのを思い出す。曰く、「引退して何年経っていると思ってるんだ。いい加減にしろよ」。三浦の苛立ちがストレートに出ていた。実は、私は三浦と同年齢で、なんとなく感情移入してしまうのだ。その三浦もここ10年は役者としても成熟し、人気俳優の域に入っている。喜ばしいことだ。
本書は百恵のデビューから引退までを膨大な資料を渉猟して、年代記として非常にうまくまとめている。特に三浦との出会いから結婚まで、会話の再現という手法を駆使して、小説風に仕立てているのがうまい。百恵論としては、平岡正明の『山口百恵は菩薩である』(講談社 1979年)が先駆的な作品で、当時私もこれを読んで、平岡はすごいなと思ったが、本書もこの作品に触れているのはさすがである。スーパースターの座をさらりと捨てて、格下の役者と結婚して引退した百恵。逆に言えば、三浦は余程素敵な男だったのだろう。カネよりも愛を選んだ百恵。幸せになりたいという願いを実現させた百恵。52歳の近況をテレビで見ることはむりだろうなあ。残念。
結婚後、心ないマスコミが百恵にアプローチをかけようとした時、妻と子供を守るために必死の形相で怒っていたのを思い出す。曰く、「引退して何年経っていると思ってるんだ。いい加減にしろよ」。三浦の苛立ちがストレートに出ていた。実は、私は三浦と同年齢で、なんとなく感情移入してしまうのだ。その三浦もここ10年は役者としても成熟し、人気俳優の域に入っている。喜ばしいことだ。
本書は百恵のデビューから引退までを膨大な資料を渉猟して、年代記として非常にうまくまとめている。特に三浦との出会いから結婚まで、会話の再現という手法を駆使して、小説風に仕立てているのがうまい。百恵論としては、平岡正明の『山口百恵は菩薩である』(講談社 1979年)が先駆的な作品で、当時私もこれを読んで、平岡はすごいなと思ったが、本書もこの作品に触れているのはさすがである。スーパースターの座をさらりと捨てて、格下の役者と結婚して引退した百恵。逆に言えば、三浦は余程素敵な男だったのだろう。カネよりも愛を選んだ百恵。幸せになりたいという願いを実現させた百恵。52歳の近況をテレビで見ることはむりだろうなあ。残念。