(前回からの続き)
「アベノミクス」の唯一の取り柄は「株のみ」、だから「カブノミクス」―――本ブログで何度もこう書いているところですが、本稿の文脈に沿って、アベノミクスがいかにカブノミクスなのかをあらためて以下、表現してみましょう。
このグラフは、わたしたち日本人の家計の円建て金融資産額をアベノミクス前後で比較したものです(出典:日銀資金循環統計、以下同じ)。アベノミクス開始直前の2012年12月末時点の総額は1547兆円だったものが、アベノミクス後の現時点(2018年6月末)では1848兆円と、この5年半で19%あまり増えたことになります(薄いグレーの部分)。ここで注目するべきは、上記の濃いピンクで表示された「株式・投資信託等」です。これはアベノミクス前167兆円→同後276兆円と、上記の総額をはるかに上回る65%もの増加率を示しました。この間、国民の資産のうちの株の評価額がいかに膨らんだのかが分かるというものです。
次のグラフは上記をドル換算して表示したものになります。2012年12月のレートは同月平均レートの1ドル83.65円、2018年6月のレートは同110.03円で計算しています(アベノミクス前後で約24%、円安ドル高になっている)。ここで、株式・投資信託等の額はアベノミクス前2兆ドル→同後2.51兆ドルと、上記の円額には及ばないものの26%ほども大きく増えました。
他方、上記の表のとおり、株以外の現預金、保険等のドル換算額は軒並みアベノミクス後で大きく下がっています。その意味するところは・・・これらが上記の円の対ドル下落率を上回るリターンを達成できなかった、ということ。そんなことで金融資産ドル換算総額は5年半前より9.2%も減ってしまいました。円建てでは上記のように2割近くも増えたのに、価値の国際基準ドルで測った額はこうして下がった・・・ってことは、こちらの記事等でアベノミクス・・・を実質的に推進する日銀の黒田東彦総裁のお名前にちなんだ黒田魔術、略して「黒魔術」と呼んだ、まさにそのこと―――「得した(円建てでは増えた)ように見えて、本当は損(ドル換算額では減少)をしている」が、よりによって、わたしたちの「虎の子」(家計金融資産)において実現していることになるわけです・・・(もっともこの間、円がドルに対して20%以上も安くなったのに、ドル換算の資産総額の減少率はそれよりは上の9%にとどまっているのだから、わたしたちはアベノミクスの逆風の中でも、その差分だけ資産額の減少を食い留めるべく蓄財に頑張った、ともいえそうだが・・・)
このようにまとめると、本当のところ日本人はアベノミクスでけっして豊かになってはいない・・・というよりはむしろ逆に、アベノミクスのもとで資産額の実質的な目減りに苦しめられている、ということが分かります。けれどアベノミクスは「カブノミクス」だからこれでOK。なぜなら上記のように「株のみ」は、アベノミクス前後で円建て・ドル建ての双方で高いプラスのパフォーマンスを演じたためです。したがってカブノミクスとしては成功だし、前述の「株セールスマン」たちは、各メディア等を通じて、これを大いに評価することに・・・って、その肩書「エコノミスト」「アナリスト」などとして・・・