(前回からの続き)
前回ご紹介の、アベノミクス前後(2012年12月末と今年6月末)の家計金融資産額の比較を示す上の2つのグラフ(円額・ドル額)で分かることは、各資産項目のうちで「株式・投資信託等」だけが両方ともに大幅な増加率(円65%、ドル26%)を達成していることでした。本ブログで「アベノミクス」は「カブノミクス」(私的造語:取り柄は「株のみ」)としばしば言っていることがここに表れているわけです。そんなことで、上記グラフでは株のところを目立つ濃いピンクに、いっぽうで本当に大事な金融資産総額部分(世界の目線[ドル]からみれば日本の家計はアベノミクスで10%近くも減らしていることが分かる)は・・・カブノミクス関係者は誰も気づいていない(?)だろうな~という憶測を反映させて、あえて印象の薄いグレーにしてみた、という次第。
で、先述「株セールスマン」(≒市場関係者:国内外の金融機関等に所属し、レポ-トや講演等を通じて投資家に株をはじめとするリスク資産を売り込むことを本業とする人々)は当然ながらこれを高く評価することになります。そして各位は、今宵もTVのビジネスニュースに降臨し、アベノミクスの株高・・・とこれに必然的に伴う円安(がもたらす輸入インフレ)を、じつにポジティブに(その逆の場合は「円高リスク」などといったワードを使ってネガティブに)語るわけです、〇〇証券の「シニア・エコノミスト」とか、△△投資銀行の「チーフ・アナリスト」みたいな、何ともクールかつ経済専門家チックな(?)肩書で・・・って、その内容は多くの場合、マクロ経済分析などとは程遠く、各位の本性「株セールスマン」としてのセールストークだったりしますが・・・(?)
で、これらを聞くお茶の間の視聴者の大半は、天邪鬼なわたしと違って素直に、そうか、「エコノミスト」を名乗る方々がこうしてアベノミクスを好意的に捉えているのだから、日本の経済状態はいいんだな、みんなリッチになっているんだな、よってアベノミクスや日銀の政策を支持していいんだな、なんて思うのかもしれません(?)。それと同時に・・・それにしては、自分はちっとも豊かになった実感が持てないな~・・・って、それはそうでしょう、上記ドル換算グラフの薄グレー部分こそがわたしたちの真の資産状況なのだから・・・
本来、メディアの経済コメンテーター、そして政府や中銀の政策担当者、すなわち上記セールスマンとは違う本当の意味でのエコノミスト等ならば、経済政策の成否はマクロ経済指標で判断するべき。つまりそれはGDPであり、実質賃金であり・・・本稿でいえば株のみならず預貯金等を含めた金融資産の総額がグロス/ネットで増えたのかどうか、といったあたりになるでしょう。けれどアベノミクスはカブノミクスです。したがってファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)なんぞはどうでもよく(?)、上記のように株、そして外貨建て資産等の価格が上がりさえすればOK、たとえそれらが円が安くなったことで価値が増えたように錯覚しているに過ぎない(ドル評価額は変わらない、あるいは下落した)ものであっても・・・となるわけです・・・