(前回からの続き)
前回、「アベノミクス」(円安誘導)が、価値の世界基準であるドル建てでみたときのわが国のGDPをわずか2年で23%も激減させ、ついこの間までGDPランキング世界第2位の座を競っていた中国の半分以下にまであっという間に圧縮させたようすを確認しました。これでは自らの意志で(?)小さくなった日本人の目から中国がでっかく見えるのも無理はない、経済面でも、そして軍事面でも・・・
それにしても、アベノミクスの最大の「売り」は子どもでも知っている「経済成長」―――で、個人的にはこれは当然「プラス成長」のことだと思い込んでいましたが、「ど」が付くくらいのマイナス成長のことだったなんて、知らなかったのはわたしだけ!?
アベノミクスの意図的な円安を通じた日本窮乏化政策ですが、次に取り上げるのは資産面への影響です。ここではわたしたち国民の金融資産を例にみてみることにしましょう。
上の表は2012年(アベノミクス開始前)から2014年までの3年間の家計金融資産の円建て額およびドル建て額の推移を示したものです(日銀のデータより、金額は各年末時)。
まずは円建て資産額のほうですが、対前年比較で2013年は率で5.9%、額で92.2兆円、そして2014年は率で3.0%、額で50.0兆円、それぞれ増えています。ここで注目すべきは増加率で、両年の値ともに前回ご紹介した円建て名目GDP成長率2013年1.1%、2014年1.6%のいずれをも上回っています。この資産額の伸びの理由は、外貨建て資産(外債や外国株等)の円建て評価額および日本株の双方の評価額が上がったためで、このあたりは日銀「異次元緩和」を通じたアベノミクスの資産プラス効果が現れた、といえそうです。まあそれはそれで喜ばしいことではありますが・・・
しかし・・・前回と同様、これをドル換算すると、2013年16.85兆ドル、2014年15.99兆ドルとなり、対前年比較で2013年は率でマイナス13.4%、額でマイナス2.6兆ドル、2014年は率でマイナス5.1%、額でマイナス0.86兆ドルと、どれも大幅なマイナスとなってしまいました(ということは、上記プラス効果なんて微々たるものだったということになります)・・・。こちらの理由は上記と逆で、当然ですが円建て資産(円の預貯金等)のドル評価額が大きく(25%程度も)下がったから。
アベノミクスのわずか2年間でこの国の家計資産は3.46兆ドルも吹き飛んだ・・・これを足元の為替レート1ドル123円で計算すると426兆円(2014年GDPの約87%)! それだけ日本人は資産を失い、貧しくなった、と捉えるべきでしょう、国際的見地からは・・・。その痛みを日本人はアベノミクスが続く限り(!?)生活費インフレとクオリティー・オブ・ライフの悪化というかたちでたっぷり味わうことになるでしょう(もちろん海外旅行もブランド品も高嶺の花に)・・・
・・・「そんなのは嫌だ!」ということで、わたしたちとしてはこの失われたマネーを取り戻したいところですが、いったいどうやって?マトモな手段、つまり預貯金では無理なことは明白ですから、株式とかジャンク債など、ハイリスク・ハイリターンな投資に賭けるしかありませんが、厳しいゼロサムゲームのなか、それで日本国民がトータルで426兆円も勝ち取るなんて、絶対に不可能・・・。
それにしても・・・無理矢理「円」(の預貯金つまり日本国債)の価値を落とすようなことをして(実質マイナス金利で円預貯金の目減りを促して)、人々を苦し紛れの(?)リスク資産投資に追い込もうなんて・・・自らの目的を「物価と金融システムの安定」と謳う日銀がそんなことをするもんじゃないよ!って感じるのは、これまたわたしだけ!?