(前回からの続き)
日銀、追加緩和を決定! 本稿の文脈に照らせば、そのココロは、こちらの記事に書いたとおり・・・
「異次元緩和が日本に与えるダメージなんてこの際どうでもいい(!?)。とにかくアメリカ第一! 『バブル輸出』でQE後のアメリカ様を支えよ!」
ということなのでしょう。何せ米FRBのQE3終了とドンピシャのタイミングですからね・・・。まあこのあたりについて感じることはいつか綴ることにして、先日の続きから始めます。
米FRBのQE(超過剰流動性供給策)によって、あまりに巨大で危険な株&債券の「双子のバブル」を作り上げてしまったアメリカは、QE終了後の金融マーケットにFRBにかわって日銀とECB(欧州中央銀行)にQE4の実行―――低利マネーを供給してもらうことで、両者の崩壊を食い止めたい。けれど、日銀と違ってQE=「国債の購入」ができないECBは、アメリカのこの希望に応じられないし、応じる気もなさそう―――前回、そんなことを記しました。
ECBのこのアメリカにつれない姿勢の背後にはEUの盟主・ドイツとドイツ連銀の固い意志があるのは間違いのないところ。ECBのQEが実質的に(財政再建サボり中の)PIIGS諸国の国債買い入れを意味する以上、これが際限のない財政ファイナンス(中銀による国債の直接引き受け)につながって最終的には通貨ユーロの価値の毀損(激しいインフレ)を引き起こしかねない―――インフレファイターとしての伝統を持つドイツ(連銀)としては、そんなことは絶対に受け入れられない。したがってそのドイツの強い影響下にあるECBはQEをしない、というわけです。
ということで、アメリカそしてFRBはさぞかしECBそしてドイツに対してイラついているだろうな~と想像しています。だからアメリカがドイツをスパイしたくなる気持ちも分かるというもの?
もっとも、欧州の金融情勢がここへきて不安定になってきたのもまた事実。とりわけ警戒が必要なのはギリシャを筆頭とするPIIGS諸国の国債でしょう。
上記「債券バブル」にはぱんぱんにマネーが仕込まれているわけですが、米QE終了でこれがしぼみ出すと、真っ先に高リスク債券からマネーが流出します。その代表格がこれらのソブリン債。実際、PIIGS諸国債の価格が急落しています。9月中旬の「リスクオン」最盛期からわずか1か月余りでギリシャ国債(10年物)の利回りは5%台か(危険ラインとされる)7%を大きく超えるレベルへと急上昇。スペインやポルトガルの国債の利回りも上がってきています。
一方でドイツ国債の利回りが急降下(国債価格は上昇)した結果、ドイツと他のEU各国の国債利回りの差が拡大してきました。このあたり、2010年前後の欧州ソブリン危機と同じ構図が再現されつつある感じです。で、さすがのドイツも危機感を強めたか、先月初旬に開催されたドイツ再統一記念式典で同国のメルケル首相は、欧州への信頼が揺らいでいるとして、EU圏の各国政府に対し、債務・財政赤字の規制遵守を引き続き強く求めていくと述べています。
まあドイツがこのようにけっこう「頑固」なのと、EU内のコンセンサスつくりがたいへんだと想定されることから、ECBのQE実施はまずムリだし、万一QEすることになってもかなり先となるでしょう。ということは今月以降、つまり米QEマネーの市場への供給が止まったら、EU内の支払い能力の脆弱な国々のなかには国債利回りが上昇して市場からの資金調達ができなくなり、資金繰りに窮してリスケとか、最悪の場合はデフォルトに追い込まれるところも出てくるかも・・・。そうなったら当然、欧州経済は大ダメージを被ることでしょう。
そして・・・これにともなう「超リスクオフ」モードへの転換により、株式・債券の暴落や大規模なデリバティブ決済などが生じて、アメリカの金融界もまた(へたをすれば欧州以上の)壊滅的な打撃を受けるだろうと予想しています。