(前回からの続き)
これまで論じてきたような、政策的な超低金利環境で利ザヤを稼げなくなった金融機関の経営状態が厳しくなっていることについては、日銀の金融政策「異次元緩和」(現在の正式名称「長短金利操作付き量的質的金融緩和」)の「副作用」という言われ方をされることが多いように感じられます。ですが個人的には、前述のとおり金融システムに多大な影響を及ぼしているという意味で、これこそ同政策の「本来の作用」とみるべきだと考えています・・・っても、同システムの「安定」を図ることが中央銀行としての日銀の目的のはずなのに、逆に「不安定」化させているところが現政策の「異次元」なところであるわけですが・・・(?)
で、このように日銀が自身の使命に背いてまで―――金融システムを動揺させてまで―――異次元緩和にこだわり続ける理由ですが、本ブログで何度も書いているとおり、大きく分けて以下の2点だと思っています。
1点目は、株高を維持したいということ。実質的には異次元緩和と同義のアベノミクスとは「カブノミクス(私的造語:取り柄は「株のみ」)」であり、株高がすべて、といってもよいくらいです。実際、アベノミクスの前後で円そしてドル(価値の世界共通基準)の双方の換算で価値等が上がったのは株価(日経平均、TOPIX等)くらいですからね。
で、この株高、こちらの記事に詳述したように、外国人投資家の円キャリートレードを上昇エンジンにしているわけで、それには超低金利が必須であり、ゆえに人為的にこれを演出するために異次元緩和が不可欠になる、という次第です(って、キャリトレにともなって円安が必然的に喚起されるので、株価は上がっても輸入インフレが高まって個人消費等が下押しされる結果、わが国の実体経済はむしろ低迷するっていう状況がアベノミクス日本では延々と続いているわけですが・・・)。
2点目は、何としても長期金利の上昇を食い止めたい・・・ってもアメリカの、ということ。これはこちらの記事に綴ったとおりで、日銀は「6:4」くらいの比率でアメリカへの配慮を邦銀よりも優先し、同国の金利が上がり過ぎないような政策運営を意識する、という意味です。アメリカの長期金利はいま「3%」を越えていこうかという非常にビミョ~な水準にあるため、日銀は以前にもまして日本側の緩和モードを強化するスタンスに立たざるを得ないでしょう・・・
本邦金融機関サイドから見て上記2点が示唆することは・・・どのみち、日銀の日本国債の超高値による買い占めが続くので自分たちは国債投資で利ザヤを稼げることはできない、ということ。このままでは利益がいっそう減少し、各社の株価も低迷し、ついにはこれ以上の預金の受け入れを拒否、あるいは口座管理料を徴収せざるを得ないところも出てくるでしょう(?)。これ、もうこれ以上は金融仲介機能を果たせません、と白旗を掲げるに等しいわけです。別の見地からすれば、そのときこそ真に、日銀政策が限界に達した、ということになり・・・事実、その時が迫っているのかもしれませんが・・・