(前回からの続き)
本稿ではこれまで、たとえ消費税率が引き上げられても、原油・ガスをはじめとする輸入原材料の円建て価格が下がっているのなら、そのぶん増税にともなう物価上昇幅が減殺され、国民の負担感を減らすことができる、といったようなことを書いてきました。要するに、これらの円建て価格の低下をもたらす通貨高(円高ドル安)が消費増税には有利な条件だということです。
これに対し・・・通貨安(円安ドル高)の進行局面における消費税率の引き上げは一転、わが国の経済・社会両面にとって非常に厳しいものになります。考えてみれば当たり前の話です。それによってわたしたちは物価高のWパンチ―――円安インフレと消費増税インフレ―――を食らうわけですから・・・。
これを先述と同じく、1ドル100円のときの一単位当たりの円建て価格が100円の輸入原材料を例にとって表現すると・・・いまの消費税率8%のもとでの税込販売価格は当然108円です。来年10月、予定どおり税率が10%に引き上げられれば110円(2%弱の値上がり)・・・になりそうですが、何やら今後は円安がかなり進みそうな気配。で、とりあえず現在(11月中旬)の為替レートに近い同115円(!)で計算してみると、100×115/100×1.10=126円と、何と!いまの108円から17%もの値上がりということに・・・。
この悲惨なありさまを前回と同じパターンでイメージ化したものが下図になります。円安が進むにつれ、そして消費税率が上がるにつれ、わたしたちが支払う税込み価格はどんどん上昇していきます。ひえーっ!
そのうえ前回のケースでは、たとえ増税されてもそれまでの円高デフレ幅が大きければ差し引きの円建て価格が以前の価格と比べて安くなり、国民の実質的な費用負担が減るという可能性があったわけですが、今回―――円安インフレ&増税インフレのコンビネーションのもとではその可能性は非常に小さくなります。つまり「輸入原材料にかかる将来のコスト」マイナス「同・現在のコスト」がほとんどの場合プラス=コスト増加になるということ。そのぶん、企業にとっては製造等原価が上がって利益が減るし、家計にとっても生活必需品等にかかる出費が増えてレジャーや預貯金に回すおカネが減るわけで・・・。
この国民に過酷な経済・生活環境はけっして不可抗力によって生じたわけではありません。すべては政策によって演出されたものです。で、その政策とは・・・いうまでもなく「アベノミクス」です。