なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

臨床微生物学会

2016年01月29日 | Weblog

 臨床微生物学会のICD講習会に申し込んでいて、それだけに行くのもあったが、せっかくなので学会にも参加することにした。

 「臨床における適正な抗菌薬治療とは」 感染症専門医を含むICTチームがかかわると、耐性菌が減少して最適な抗菌薬治療の比率が増加するが、ちょっと間が空いたりすると、少し後退してしまうそうだ。ICTといえども、主治医(治療医)に気を使って介入しているというのが印象的だった。治療の責任は主治医がとるのだから当然ではあるが。

 「新型インフルエンザと危機管理」 A型とB型は季節性に変異する。C型は数年おきに変異するが臨床的にそれほど問題にならない。パンデミックを引き起こすのはA型。(H)16×(N)9の亜型がある。インフルエンザの本来の宿主はトリ。種に固有のインフルエンザがあり、本来は他種にうつらないが、新型インフルエンザはトリ・ブタからヒトにうつり、それがヒトからヒトへうつるようになってパンデミックとなる。2009年の新型インフルエンザである、インフルエンザA(H1N1)pandemic2009は、トリ・ブタ・ヒトの混じった複雑なウイルスだった。幸い、それは病原性が低かったが(高齢者が免疫を持っていた)、新型インフルエンザに対する危機意識を低下させた。新型インフルエンザのパンデミックは歴史上繰り返し起きている。いつ起きるか、どんなタイプかはわからない。スペイン風邪は致死率2%だった。これを基準にして、インフルエンザ対策でどれだけ下げられるか。基本戦略は、1)ワクチン2)公衆衛生3)医療体制4)個人防御。新型には多くの人が免疫がない。免疫を得るには、ワクチンを接種するか、実際に感染するかしかない。ワクチンは製造に6カ月かかり、できたころにはインフルエンザのピークが過ぎている。抗インフルよエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)の効果は、重症化阻害にある程度はある。インフルエンザの病原性が高ければ対策を講じても効果は低い。

 「生物学的製剤投与で増えている結核・NTM症」 関節リウマチなどの免疫性炎症性疾患に対する生物学的製剤の投与が増加している。特にTNFα阻害薬はTNFαが結核免疫のキーとなるものなので、潜在性結核からの二次性結核症を引き起こす。数100万年前からNTM症はあった。それは土壌からヒトに感染するが、ヒトからヒトへは感染しない。3万年前にその中からヒトからヒトにうつる結核が誕生したそうだ。マクロファージは結核菌を死滅させようとするが、完全にはできない。マクロファージはアポトーシスにより結核菌を肉芽腫の中に閉じ込める。これにもTNFαが作用する。インフリキシマブ(レミケード)を投与する前に、問診・胸部X線・胸部CT・IGRand/orツ反を行う。活動性結核があれば当然結核の治療をする。結核の既感染があれば結核薬INHを予防投与する。予防効果は70%くらい。生物学的製剤による結核の再燃での死亡率は4%(通常の結核の死亡率は10%)。結核が発症して、生物学的製剤を中止して結核の治療した時に、結核自体は改善しても、急激に病状が悪化することがある。これは免疫再構築症候群で、ステロイド投与例では2~3倍に増量して、ダメなら生物学的製剤を再投与する。生物学的製剤によりNTM症も起きるが、発症しても予後不良ではない。

 ICD講習会はハンコをもらうのが目的なので、内容は問わない(すっかり休んでいる)。聖マリアンナ大総合診療科の國島先生は、相変わらずよく通る声で(DJの赤坂さんそっくり)講演していた。國島先生には以前当院でCDIの講演をしてもらったことがある。

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