読書日和

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「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦

2009-12-21 23:56:39 | 小説
今回ご紹介するのは「夜は短し歩けよ乙女」(著:森見登美彦)です。

-----内容-----
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町(ぽんとちょう)に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。
けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する”偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。
そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。
山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作!

-----感想-----
まず初めに…
この作品は2007年の本屋大賞で第2位に入った強豪です。
このときの第3位が三浦しをんさんの「風が強く吹いている」であったことから、この作品のレベルの高さを窺い知ることができます。
あれの上に来る作品とは一体どんなものなのか。。。
今まで読むのは後回しになっていましたが、今回ついに読んでみました。

そして読み進めていく中で、この作品はセリフの言い回しがとんでもなく面白いなと思いました
若干高慢ちきな語り口調の「先輩」と、ものすごく丁寧な語り口調の「黒髪の乙女」。
この二人が交互に物語を語っていくのですが、それぞれの考え方や人格がこれでもかというくらいに違っていてウケました^^
役回りも対象的で、常にその場の主役になる「黒髪の乙女」と、道端の石ころのような存在に甘んじてしまう「先輩」。
何とかして黒髪の乙女の気を引こうとする先輩の奮闘ぶりが面白かったです。

セリフの言い回しのほかに、登場する人物も曲者揃いでした。
京都を舞台に、わけの分からない人物たちが面白おかしい物語を繰り広げます。
ファンタジー色もあり、この作品のイメージでいくと京都の先斗町(ぽんとちょう)という町は、三階建ての電車型自動車兼自宅に乗った伝説的なおじいさんが夜な夜な跋扈(ばっこ)するやばすぎる町という感じです(笑)

出てくる言葉や物も面白いです。
「おともだちパンチ」やら「偽電気ブラン」やら、聞いたこともないような言葉がたくさん出てきました。
「偽電気ブラン」はものすごく美味いと評判の酒の名前なのですが、偽でしかも電気とは。。。謎ですね
それだけに作品世界は他ではあまり見ない、独特なものになっています

私的には学園祭の話がぶっちぎりで面白かったです
この作品の流れからして当然何の変哲もない学園祭になるはずもなく、ここでも曲者たちが活躍します。
中でも「韋駄天コタツ」が登場したときはウケました。
以下本文より一部抜粋。

「韋駄天コタツにも手を焼いてる」
「韋駄天コタツ!?コタツなのに韋駄天とはこれ如何に?」
「妙な連中がコタツに入って、構内をうろついてんだよ。あんまり神出鬼没だから、韋駄天コタツと呼んでるのさ」

当たり前のように「韋駄天コタツ」などという意味不明な言葉が出てくるのがこの作品の真骨頂です。
この韋駄天コタツは神出鬼没で、学園祭事務局の追撃をかわしながらあらゆる場所に現れます。
そして通りかかる人をコタツに誘い、鍋を振る舞うのです。
学園祭事務局としては、無許可でそういうことをやってもらっては困るということで捕まえようとしていますが、韋駄天の名は伊達ではなくそう簡単には捕まえられません。
これを読んで、実際に学園祭でこういうコタツがあったら面白いかも…と思いました^^
韋駄天の如くあちこちに移動しながら鍋を振舞うコタツ。。。きっと話題を呼ぶのではと思います
事務局(及び学校の風紀を取り締まる方々)には韋駄天どころか怒涛の如く追いかけられると思いますが(笑)

もう一つ、学園祭事務局の手を焼かせるものに「偏屈王事件」というものがあります。
偏屈王は構内の路上で突如上演される断片的な劇の総タイトルで、ゲリラ演劇として話題を呼んでいます。
1回の上演時間は5分にも満たず、あっという間に上演し、あっという間に居なくなります。
それだけに学園祭事務局も捕まえるのに手を焼いています。
劇を上演するだけなら捕まえなくても良い気がしますが、狭い廊下で上演した際に見物に集まった観客が将棋倒しになるなど問題も起きているので、無視するわけにはいかないようです。
そしてここでも、黒髪の乙女は意図せずしてこの学園祭の主役の座に上り詰め、先輩は道端の石ころとして奮闘します。
さらには「パンツ総番長」なる、この学園祭において重要な鍵を握る人物も登場し、色々な人物が入り乱れて面白い恋愛コメディーのような物語が繰り広げられました。
なぜパンツ総番長なのかというと、ある悲願成就のためにパンツを穿き続けて云々、つまりろくなものではないです(笑)
この学園祭の話は本当に面白かったので、いつか映像化されないかなと期待しています

最後に、序盤で登場した世の中の理を表したような面白いセリフをご紹介。
「この広い世の中、聖人君子などはほんの一握り、残るは腐れ外道かド阿呆か、そうでなければ腐れ外道でありかつド阿呆です。ですから、ふるいたくない鉄拳を敢えてふるわねばならぬ時もある。」

これは「おともだちパンチ」伝授時のセリフなのですが、「そうでなければ腐れ外道でありかつド阿呆です」の部分がウケました。
腐れ外道でかつド阿呆って、人間として終わってるんじゃ…と思いました

こんな感じで非常に笑える言い回しや会話の多かったこの作品。
伊達に本屋大賞で2位に入ってないなと感服しました。
気軽に読めて笑える作品なので、年末年始に読書を楽しみたい人にはお勧めだと思います


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コメント (8)
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