読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

平和記念公園の折鶴から見る戦争と平和

2016-05-30 22:00:05 | 政治


写真は平和記念公園の「原爆の子の像」の場所にある折り鶴の展示コーナーです。
ここには全国から寄せられた平和を願う折り鶴が展示されています。



「平和を愛し、守り続けます」



「世界が平和であるように」

良い言葉だと思います。
私は未成年の子供、選挙権が18歳に引き下げられることを考えると満18歳になるまではこれで良いと思います。
毎年高校生が平和を願うスピーチをしているのをテレビのニュースで見る時の瑞々しさを思い出しました。
しかし大人の場合は「平和を願う」で終わってしまってはいけないと思います。
この平和を願う子供達が安心して折り鶴を折れるような社会、つまり平和な社会を守っていくにはどうすべきか、具体的な方策を考える必要があります。

日本の場合、中国が現在進行形で尖閣諸島という日本固有の領土を侵略しようとしています。
尖閣諸島について「中国のものだ」と言い、武力で奪い取ることも辞さない構えを見せています。
明らかに中国によって日本の平和が脅かされています。

中国の場合、「今が侵略の好機だ」と見れば必ず動きます。
元はチベットという国だったチベット自治区、東トルキスタンという国だったウィグル自治区が中国によって領土を侵略され、中国の一部にされてしまった歴史を見ても明らかです。
また、南シナ海では現在進行形で南沙諸島を侵略してフィリピンら東南アジアの国々と激しく対立し、陸でもインドやブータンの領土を侵略してやはり対立しています。
平和を乱し、武力によって他国の領土を侵略する中国という国がすぐ隣にあるのです。
この状況で平和を守るためにはどうするかを考える必要があります。

私は中国の脅威から日本の平和を守るには「抑止力」をしっかり整えておくことが大事だと思います。
「この国を侵略したらこちらもただでは済まない。迂闊には動けない」と思わせることで侵略を思い止まらせることができ、これを抑止力と言います。
自衛隊、在日アメリカ軍、集団的自衛権、憲法九条の改正などが抑止力に該当します。
昨年の秋に集団的自衛権の行使が可能になったことで従来より抑止力を向上させることができました。
しかしまだ万全ではなく、憲法九条の改正という長きに渡って注目されてきた問題が残っています。

よく「戦争反対。憲法九条を守れ」と言う人がいます。
これについて、「東京新聞5月4日の一面」という記事に、憲法九条と平和について書いています。
「戦争反対。憲法九条を守れ」と言う人達には特徴があり、文字通り゛戦争゛も辞さない態度で日本を始めとする他国の領土を侵略しようとする中国については一切を見ないようにして何も言わず、日本が抑止力を整えて中国の侵略から国家国民を守ろうとする時だけ「戦争反対」と言います。
何もせずに憲法九条を信じてさえいれば平和だという主張ですが、何もしなかった国がどうなったかは、現在のチベット自治区やウィグル自治区を見れば明らかです。
また、かつてフィリピンは在フィリピンアメリカ軍を「出ていけ」と言って追い出しましたが、アメリカ軍がいなくなり抑止力が低下したその途端に中国艦隊がやってきて南沙諸島を侵略し、現在の領土問題になっています。
これらのことから、こちらがいくら憲法九条を信じても中国は尖閣諸島の侵略を止めてはくれないことは明らかです。
憲法九条の平和の理想は世界中の全ての国が善良で他国の領土を侵略する国が一つもない場合にしか成り立たないことを受け止める必要があります。

現実の一切から目を逸らし憲法九条に縋り付くのではなく、領土を侵略してくる国がいるという目の前に迫っている危機に対応できる憲法にしてほしいです。
抑止力を強化し、日本の平和を守れる可能性を高めるため、私は憲法九条の改正を希望します。

※「平和記念公園を散策」のフォトギャラリーをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「オバマ大統領訪問翌日の平和記念公園」のフォトギャラリーをご覧になる方はこちらをどうぞ。
コメント (4)
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「水族館ガール2」木宮条太郎

2016-05-29 16:20:51 | 小説
今回ご紹介するのは「水族館ガール2」(著:木宮条太郎)です。

-----内容-----
水族館〈アクアパーク〉の飼育員の先輩と後輩という立場から、恋人の関係になった由香と梶。
しかし、梶は関西の老舗水族館へ出向。
離ればなれの職場でそれぞれが失敗を繰り返す日々。
そしてある日、傷を負った野生イルカが海岸に漂着したとの知らせが…
女子イルカ飼育員の奮闘を描く感動のお仕事ノベル。
イルカやアシカ、ペンギンたち人気者も登場!

-----感想-----
※「水族館ガール」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。

新年度になり梶良平が関西にある海遊ミュージアムに出向します。
館長室に挨拶に来た梶はそこに居た女性レスラーのような雰囲気の鬼塚館長代行の態度に面食らいます。
梶が「よろしくお願いします」と言うと、「よろしく?そらあ、無理やろうな」と言い、さらに次のような会話をしていました。

「あの、こちらは館長室では?」
「館長室やで」
「では、その、館長は?」
「おらんで」
「じゃあ、お戻りは?」
「知るかいな。こっちが知りたいわ」

この対応にはさすがの梶も面食らっていました。
同じく館長室に居た和服姿で坊主頭の初老の男が事情を説明してくれて、母体である市のほうで色々あって館長は現在休職扱い、代わりに飼育部門の総責任者の鬼塚が館長代行を務めていて周りからはオニ代行と呼ばれているとのことです。
そして梶に説明してくれたこの男は「栄誉館長」であり、その正体は上方落語の噺家、桂亭遊楽(かつらていゆうらく)師匠です。
鬼塚によると海遊ミュージアムは出向者を受け入れられる状態ではなく、任せられる仕事もないとのことですが、そんな時に咲子(さきこ)という企画室の女性が助け船を出してくれます。
梶はまず学生さんへの教育業務として咲子とともに女子高に行って「相利共生」の説明をすることになります。

その頃嶋由香のほうは兵藤という18歳の専門学校生が後輩として入ってきました。
背は高いがヒョロっとしているためあだ名はヒョロになります。
そしてヒョロは由香が新人の時よりとても優秀で、由香は複雑な心境になっていました。
ただ一年経ち由香もかなり成長しています。

由香は事情通の吉崎姉さんから海遊ミュージアムの岬館長が不在となった顛末を聞きます。
梶を海遊ミュージアムに呼んでくれたのは岬館長でした。
二年前に市本体から海遊ミュージアムの経営建て直しのためにやってきた岬館長はかなりのやり手で建て直しも上手く行っていたのですが、建て直し計画仕上げの年となる今年、急に市の都合で市本体に引き戻されることになりました。
市は別の館長を送ろうとしましたが、計画建て直しの途中で館長がすげ替えられることに現場は猛反発し、新たな館長は迎えずに鬼塚館長代行、遊楽栄誉館長の体制で業務を行うことになりました。
そんな状況なので梶は鬱陶しい邪魔な存在として煙たがられていました。

梶は鬼塚から「トンネル水槽構想」の議論の叩き台を作るように頼まれます。
海遊ミュージアムには最近流行の透明なトンネル通路を歩くトンネル水槽がなく、その案を作ってくれとのことです。
ゴールデンウィークを間近に控え本来なら現場は猫の手も借りたいほど忙しいのですが、鬼塚は「悪いけどな、来たばかりのあんたに割く時間は、今、誰にもないんや」と言い現場とは関係ないこの仕事を振っていました。
鬼塚の言葉は一年前に自分が由香に言ったのと同じ言葉だということを梶は思い出しました。
今度は自分が由香の立場になったのです。

梶は遊楽とともに奈良の奥大和にある水族館の水槽を作っている久間(くま)製作所を訪れ、作成したトンネル水槽案の説明をしますが、梶の案は猛反対に遭います。
梶がこうもつまずくのを初めて見ました。
また、未だに海遊ミュージアムの職員と打ち解けられずに梶は悩みます。
吉崎と由香は梶の無愛想な性格では周囲と合わないのではと心配しますがまさにその通りになっていました。

ちなみに由香は梶のアパートを訪れますが、色々とあって激怒しすぐに帰ってしまいます。
梶は咲子と浮気しているのではと疑いを持たれてしまいます。
この展開は予想どおりで結構ウケました。
激怒していた由香がファストフード店に居ると瀬戸内海洋大学の沖田という男に遭遇します。
沖田はイルカトレーナーとしての由香のことを知っていました。
沖田は由香にアクアパーク生まれのイルカ「ニッコリー」と野生のイルカの違いを説明していました。
遠く離れた地で暮らすことになった梶と由香それぞれに新たな人との出会いがあり、二人の関係がどうなるのか気になるところでした。

感情で突っ走ることがある由香は梶への腹いせに海遊ミュージアムでトラブルを起こし、そのせいでアクアパークと海遊ミュージアムという水族館同士の揉め事になりかねない状況になります。
そこは岩田チーフがフォローしてくれていました。

ある日岩田と由香はストランディング(座礁)したイルカを助けることになります。
その時岩田チーフは本来なら獣医の磯川がやるべきな作業まで由香の前でしていました。
磯川によると岩田チーフは市からの出向という形から水族館に転籍した由香の決断に応えるため、色々なことを見せてあげようとしているとのことでした。
保護されたイルカは野生のため人間を警戒していて餌を食べてくれません。
由香はこのイルカと向き合うことになります。
「保護個体」と呼ばれ名前はないですが由香とヒョロは密かに保護個体を省略形にした「ホコ」という愛称で呼んでいました。
またこのイルカは野生なので海に返すことになりますが、感情移入しやすい由香はアクアパークで飼育したがっていました。
その時に岩田チーフが印象的なことを言っていました。

「いいか。この仕事をやってると、時々、自分が何をやったらいいのか、分からなくなる時がある。そういう時はよ、目の前の水族だけを見るんだ。で、『その水族にとってベストは何か』だけを考える。人間側の余計な感情を絡ませねえようにな」

「水族館ガール」の時にも問題となった「飼育技術者は感情移入してはいけない」というテーマについて丁寧に由香に説いていました。

梶のほうはアシカの仲間のオタリアという、極めて飼育が難しい怪獣への給餌を押し付けられていました。
咲子によると「新入りいびりの仕打ち」とのことですが梶はオタリアに向かっていきます。
そして明らかに咲子は梶に好意を持っていて、これは咲子が梶に想いを伝える展開もあるのかなと思いました。

一つひとつの業務と真摯に向き合ったことでやがて鬼塚も梶のことを認めてくれるようになります。
そんな時、梶は海遊ミュージアムを不在にしている岬館長と待ち合わせをして話すことになりました。
その時の岬館長の「水族館が変わろうとしていること」の話は興味深かったです。

「『オラが町にも水族館、どこかで見た同じ光景を』では、もう通用せんのです。ある内陸部の水族館は海洋生物の展示をやめました。地元の渓流をアピールし、淡水専門館になったんです。ある水族館はクラゲ専門館に、ある水族館は漁協と協力して体験型のスクール館に。皆、悩みつつ変わろうとしとる」

たしかに90年代半ばくらいから水族館の経営はどんどん厳しくなっています。
単に海の生物を展示するのではなかなかお客さんは来てくれないので、色々な水族館が個性をアピールして変わろうとしています。
また、岬館長の「もの珍しいという感情は長持ちしない。面白くてためになるが必要」という言葉も印象的でした。
珍しいだけでは1回見れば満足して終わってしまいますが、面白くてためになれば「また来ようか」と思ってもらえるとあり、その工夫は大事だと思いました。
現在の海遊ミュージアムはアカデミック(学究的)な雰囲気であり、そこから「新しい海遊ミュージアム」を形作るため、梶は大役を頼まれることになります。

「水族館ガール2」では一年前の由香と似た立場になった梶が戸惑いながらも海遊ミュージアムで奮戦する姿が印象的でした。
トラブルを起こしながらも時に鋭い指摘をする由香もこの先のさらなる成長が楽しみです。
物語的にはもしかすると続編が出るかも知れないので、出た場合は読んでみたいと思います。


※「水族館ガール3」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「水族館ガール4」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。

※図書レビュー館(レビュー記事の作家ごとの一覧)を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。
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オバマ大統領訪問翌日の平和記念公園

2016-05-28 23:11:20 | フォトギャラリー
2016年5月27日、アメリカのオバマ大統領が広島の平和記念公園を訪問しました。
史上初めて現職のアメリカ大統領が広島を訪れる歴史的な日になりました。
その翌日の今日、平和記念公園に行ってみました。
小学生、中学生、高校生の団体客がたくさんいて、さらに大人たちの姿も普段よりかなり多く、非常に活気がありました
※写真はクリックで拡大されます。


----- オバマ大統領訪問翌日の平和記念公園 -----


平和記念公園に到着。
さっそく中学生と思われる修学旅行の団体がいました。


広島平和記念資料館(原爆資料館)のほうにも修学旅行生達がいました。
オバマ大統領も昨日原爆資料館の中を見ています。


社会化見学と思われる小学生達。




昨日オバマ大統領と安倍晋三首相が献花をしたモニュメントの前はかなりの人だかりになっていました。
国際色も豊かでした。


(画像はネットより)


(画像はネットより)


(画像はネットより)






テレビの中継も来ていました。
女性アナウンサーがディレクター的な人と打ち合わせをし、カメラと音声の人が待機していました。


モニュメントの中には原爆死没者慰霊碑があり、奥には原爆ドームが見えます。
原爆死没者慰霊碑に書かれた「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という言葉については、以前「平和記念公園を散策」のフォトギャラリーの12枚目にて思ったことを書いています。


「原爆の子の像」。
修学旅行の中学生と社会科見学の小学生が通っていきました。
小学生は平和学習用の資料のようなものを持っていました。


小学生達が鐘を鳴らしていました。




原爆ドーム。
世界文化遺産です。






動員学徒慰霊塔。


学生さんまで動員されたところに戦争の恐ろしさが表れています。
そして私は武力で他国の領土を侵略しようとする中国のような国が実際にある以上、そういった国に戦争を仕掛けられずに済むためには抑止力が重要だと考えます。
日米同盟の強化、安倍晋三首相が進めているインドやASEANらアジア各国との連携強化、集団的自衛権など段々と抑止力が強化されつつあるので、何とか今の平和を維持してほしいと思います。




「平和の鐘」。
小学生達が順番に鳴らしていました。




「原爆供養塔」。
原子爆弾の犠牲者のうち数万柱の遺骨がここに納められています。


平和を感じる光景。


木々の向こうに原爆ドームが見えるこの場所は、


オバマ大統領と安倍首相が原爆ドームを臨み、岸田外務大臣が原爆ドームの説明をしていた場所です。
(画像はネットより)




お昼の時間帯なので修学旅行の中学生達がお好み焼きを食べていました。
今日は本当にどこを見ても学生さんの姿がありました。


「平和の灯(ともしび)」。
ずっと消えずに燃え続けているとのことです。




オバマ大統領、安倍首相と話しているのは被爆者の方です。
謝罪を要求するのではなくアメリカ大統領を未来志向で温かく迎えたところが凄く良いと思いました
(画像はネットより)


こちらも被爆者の方。
被爆者の方が感極まって、オバマ大統領が抱擁していました。
現職アメリカ大統領が平和記念公園に来て原爆死没者慰霊碑の前で追悼をするのは本当に歴史的なことです。
(画像はネットより)


最後はモニュメントの端から撮影した一枚。
原爆で亡くなられた方々の冥福を祈るとともに、平和記念公園に来てくれたオバマ大統領と訪問に尽力してくれた方々に感謝します。
歴史的な一日になりました。

※「平和記念公園を散策」のフォトギャラリーをご覧になる方はこちらをどうぞ。


※フォトギャラリー館を見る方はこちらをどうぞ。

※横浜別館はこちらをどうぞ。

※3号館はこちらをどうぞ。
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新緑の縮景園を散歩

2016-05-26 20:06:35 | ウェブ日記


先週末、広島の縮景園に行きました。
昨年の初夏にも行っていて、その時のフォトギャラリーをご覧になる方はこちらをどうぞ。

この時期の縮景園は新緑が美しく、とても歩きがいがあります。
桜の時期は見に行けませんでしたが新緑に誘われて今回久しぶりに見に行きました。
この日は晴れてくれたので青空に新緑がよく映えていました。

園内を歩いていると新緑が太陽の光に照らされてとても鮮やかに輝いて見えます。
やはり新緑と太陽は素晴らしい組み合わせだと思います

そしてその中を歩くと辺り一帯に陽の気が満ちていて良い気分転換になります
太陽の光に照らされた明るい新緑を見ていると明るく清々しい気分になります。

縮景園は新緑の木々がたくさんあり日光浴と森林浴が両方楽しめます。
時間の流れも緩やかに感じ、しばらく新緑の中にある木のベンチに座って太陽と新緑による陽の空気を楽しんだりしていました。
縮景園のような緑豊かな場所を歩くのは気分転換に最適だと思います
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頑なになる

2016-05-25 20:20:26 | ウェブ日記
特に家族のような親しい間柄で、答えようがないような問いを何度もされた時、その問いに対して頑なになることがあります。
例えば聞かれても答えようがないので「分からないよ」と返すのですが、しばらくするとまた同じことを聞いてくるのでこちらも同じく「分からないよ」と返します。
そんなことが何度か繰り返されるとさすがにうんざりとしてきて、聞かれた際には条件反射的に「分からないよ」と返すようになります。
私はうんざりしても余程のことがない限り怒鳴り出したり汚い言葉を使ったりはしないのですが、このように返し方がシンプルになることはあります。

この場合、分からなくとも「俺も分からないや。分かれば良いんだけどね」と返し方を工夫して一言添えることもできるのですが、条件反射的になってくるとそこまでの気遣いはできなくなってきます。
徹底して「分からないよ」とだけ返すようになり、これが頑なになるという状態です。

近年、自分自身を客観的に見る意識を持つようにしているので、「ああ、今は頑なになってきているな」と認識することがあります。
そんな時には一呼吸置くようにすると良いと思います。
深めの呼吸をしてみたり、水でも飲んでみたり、ちょっとした間を置くことで頑なになった自分自身を客観的に見られるようになるかと思います。
そして冷静に頑なさを和らげ、「分からないよ」に一言添えてあげるようにする意識を持つようにしています。
頑なになった時ほど一呼吸置く意識は大切にしていきたいです。
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大相撲夏場所 稀勢の里は13勝2敗

2016-05-23 21:47:01 | スポーツ
昨日千秋楽を迎えた大相撲夏場所は横綱白鵬が15戦全勝で史上最多を更新する37回目の優勝を果たしました。
綱取りがかかった大関稀勢の里は13勝2敗で準優勝という成績でした。
先場所13勝を挙げて準優勝していた稀勢の里の横綱昇進の目安は「14勝以上での優勝」だったため、夏場所後の横綱昇進はなりませんでした。
しかし二場所連続での13勝は立派な成績で、日本相撲協会から名古屋場所も綱取りの場所になることが明言されました。
今度の綱取りの目安は日本相撲協会によると「星数は関係なく優勝すること」ですが、横綱審議委員会は「14勝以上での優勝が良い」と言っていて、現時点で両者には差があります。
私的には白鵬がいる中で優勝ラインが下がるとは考えずらく、やはり最低でも13勝、できれば14勝以上して優勝を手にしてほしいです。

今場所の稀勢の里は初日から12連勝して大いに場所を盛り上げましたが、13日目に同じく12連勝していた横綱白鵬との直接対決に敗れ、この敗戦でショックを受けたのか14日目の横綱鶴竜戦では全くなすすべなく完敗してしまいました。
これで12勝2敗となり今場所後の横綱昇進はなくなり、さらに白鵬の優勝が決まりました。
この時ツイッターでは稀勢の里の勝負弱さに落胆する意見が多かったです。

もし千秋楽で負けてしまうと12勝3敗となり、綱取りのチャンスから一転して来場所に綱取りをつなぐこともできなくなるかも知れないピンチになりました。
しかし千秋楽、稀勢の里は横綱日馬富士に勝って13勝目を挙げました。
精神面(メンタル)が弱いという意見が多い稀勢の里ですが、従来ならこのまま崩れて12勝3敗になってもおかしくないのを勝ったところに意味を感じます。
千秋楽は「勝てば綱取り継続」となる一番で、稀勢の里はこういう場面で負けてしまうことが多いです。
精神面が弱くても綱取りの場所で13勝を挙げたところに手応えを感じました。
稀勢の里なりに精神面の弱さと向き合いつつあるのではないかと思います。
生来の図太さがある人ならともかく、そうではない人が精神的に図太くなろうとしたら大変な労力が要ります。
少なくとも今場所の12日までは落ち着いていましたし、後は13日目のような全勝対決になった時に「気負い過ぎないこと」、そして万が一その一番に負けてしまった時に「引きずらないこと」、この二つだと思います。
綱取りのプレッシャーの中でも勝ち星を伸ばすことは出来ていて、あと一歩のところまで来ています。
再び綱取りとなる名古屋場所に期待します。
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「ちはやふる 下の句」

2016-05-22 15:01:33 | 音楽・映画


今回ご紹介するのは映画「ちはやふる 下の句」です。

-----内容-----
高校で再会した幼なじみの太一(野村周平)と一緒に競技かるた部を作った千早(広瀬すず)は、創部1年にして東京都大会優勝を果たす。
自分をかるたに導いてくれた新(真剣佑)に優勝報告をした際、新の衝撃的な告白に動揺する千早だったが、全国大会のために仲間たちと練習に打ちこむ。
そんな折、千早は同い年で日本一となった若宮詩暢(松岡茉優)のことを知り……。

-----感想-----
※「ちはやふる 上の句」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「ちはやふる 結び」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。



綿谷新の「俺はもうかるたはやらん」の言葉の真意を確かめるため、福井県にある新の実家を訪れた綾瀬千早と真島太一。
そこには競技かるたの永世名人である祖父の死によりすっかりかるたへの情熱を無くしてしまった新の姿がありました。
自身がかるたの大会に行っている間に祖父の容態が急変して亡くなってしまったことを強く悔やんでいました。
二人はその場でもう一度かるたをやろうと説得するのは不可能と悟り東京に帰ります。
懸命に説得を続けようとする千早に対し太一は冷静で、「今の新に何を言っても無駄だ。帰ろう」と千早を諭していました。
しかし千早のように感情でぶつかっていって次々と言葉を発するタイプではない太一が帰る時に「待ってるからな」と新に一言声をかける場面は良かったです。
太一にとって新は恋敵ですが、小学生の頃に三人で一緒にかるたをやっていた頃の友情がなくなってはいないのだと思いました。



東京都大会を制し全国大会に出場する瑞沢高校は日々練習に励みます。
中でも入部までかるた経験のなかった大江奏(おおえかなで)と駒野勉(こまのつとむ)の実力強化に力を入れていました。
そんな時、全国大会の個人戦に今年史上最年少でクイーン(日本一競技かるたが強い女性に与えられる称号)になった若宮詩暢(わかみやしのぶ)が出場することを知った千早。
若宮詩暢が自分と同じ高校一年生であると知り衝撃を受けるとともに、自分が若宮詩暢に勝てば新がまたかるたをするきっかけになるかも知れないと思った千早は個人戦で若宮詩暢に勝つために猛練習を始めます。
しかし団体戦の練習そっちのけで若宮詩暢対策の練習ばかりする千早はかるた部で浮いた存在になります。
太一は千早に幼馴染として「千早が若宮詩暢に勝ったところで新が戻ってくるわけじゃないぞ」と言い、そしてかるた部部長としては「そんなに個人戦が気になるならもうかるた部から出て行け」と言っていました。
チームのまとまりが大事な団体戦なのにそのまとまりを乱す千早の行動は見過ごせなかったようです。
千早はやがて自分の間違いに気付き、太一もまた大江奏(かなちゃん)、西田優征(肉まんくん)、駒野勉(机くん)という相談できる部員がいるのにチームのことを自分一人で全て抱え込もうとしていたことに気付きます。
高校一年生が5人いて、5人がひとつの思いでまとまったり互いに何でも相談したりするのは簡単ではないというのが描かれていました。
その後チームとしてのまとまりを取り戻した瑞沢高校は全国大会が行われる近江神宮に乗り込みます。



千早達かるた部のメンバーがかるた部顧問の宮内妙子とともに近江神宮に参拝して帰る時、同じく参拝に来た若宮詩暢が現れます。
原作を彷彿とさせる独特なミステリアスな雰囲気が印象的でした。

迎えた全国大会の団体戦は千早が熱を出し倒れてしまうという予想外の事態に見舞われます。
しかしかるた部のメンバーはそれぞれ全力を尽くし悔いのない戦いができたようです。
幸い千早も次の日の個人戦では体調が回復して満足に戦えるようになります。

この個人戦の日、千早の様子を見に来た新が近江神宮本殿前で若宮詩暢と話す場面は印象的でした。
若宮詩暢は新の祖父に結構お世話になっていて、法要の際にも来ていました。
その時に新に「久しぶりにかるたをしよう」と持ちかけ勝負をします。
小学生の時の二人の対決では全て新が勝っていたのですが、法要の日の対決では新の気のない取り口に失望したのか、「やめや。あんたとはもうかるたはせん。所詮あんたのかるたへの気持ちは亡くなったおじいさんのためやったんやな」と言っていました。

しかし近江神宮本殿前での若宮詩暢は新に対し「また勝ち逃げする気か?何で個人戦に出んのや」と言っていました。
新が「えっ、もう俺とはかるたはしないって言ってなかったっけ…」と言うと、若宮詩暢は新にドスッドスッと相撲の張り手をしながら「行間を読めって、国語の時間に習わんかったか?」と言っていて、その様子が面白かったです。
本当は新と戦いたいようです。
ただ若宮詩暢の「やめや。あんたとはもうかるたはせん。所詮あんたのかるたへの気持ちは亡くなったおじいさんのためやったんやな」という言葉から行間を読んで「自分自身の気持ちからかるたをしたいと考えてるなら、またあなたと戦いたい」と解釈するのはかなり難しいと思います。
原作ではこういった若宮詩暢の言い回しは「京女のいけず」と評されていて、松岡茉優さんはこの雰囲気をかなり上手く表現していると思いました。



個人戦で勝ち進んだ千早はついに若宮詩暢と対決の時を迎えます。
若宮詩暢に圧倒的な強さを見せつけられる中、千早は改めてかるたの楽しさを実感することになります。
格上の相手との戦いでも千早がかるたを楽しめていたのが凄く良かったです
戦いは完敗ですがこの戦いで改めてかるたが好きになり、より一層練習に励んでこの先どんどん強くなっていくという希望が持てる終わり方でした。

そして映画「ちはやふる」は続編の製作が決定したとのことです。
もう一度かるたと向き合うことになった新と若宮詩暢の対決、瑞沢高校が高校二年生の時に見せる全国大会での快進撃、千早と太一と新の恋模様の行方などが描かれるのではと期待しています。
ぜひ続編も見てみたいと思います
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大相撲夏場所 稀勢の里の綱取り

2016-05-21 12:35:36 | スポーツ
大相撲夏場所は大関稀勢の里にとって綱取りの場所です。
先場所13勝を挙げて準優勝しており、今場所でハイレベルな成績で優勝すれば横綱昇進の可能性があります。
「ハイレベルな成績」とは14勝以上のことかなと思います。

稀勢の里は今場所、初日から連勝を伸ばして12連勝を果たしました。
そして昨日は同じく12連勝の横綱白鵬と直接対決の大一番を迎えました。
しかし敗れてしまいました。
12勝1敗となり綱取りには後がなくなり、白鵬が残り二日で負けない限り自力優勝の可能性もなくなりました。

稀勢の里という力士は勝負弱いのか、肝心なところで負けてしまうことが多いです。
初日から13連勝してこれは初優勝かとなった時はその後に2連敗して優勝を逃したこともありました。
その次の場所が綱取りとなった際には早々に3敗目を喫して綱取り絶望となったもののそこから白星を重ねて11勝3敗とし、「千秋楽で勝てば来場所も綱取りになる」となったらその千秋楽で負けてしまったこともありました。
直近の綱取りでは初日に黒星を喫してそのまま波に乗れずに最終的に負け越してしまったりもしました。
そんなわけで「実力はあるがプレッシャーに弱い力士」 として知られています。

しかし今場所の稀勢の里は奮戦しています。
13日目を終えて12勝1敗の成績は立派です。
横綱戦が続く残り二日、14勝1敗でなおかつ優勝した場合は横綱昇進の可能性あり、14勝1敗で優勝できなかった場合と13勝2敗の場合は来場所も綱取りに挑戦という展開になるのではと思います。
ぜひ残り二日勝って14勝1敗とし、諦めずに優勝を狙っていってほしいと思います。
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「イノセント」島本理生

2016-05-19 00:18:09 | 小説


今回ご紹介するのは「イノセント」(著:島本理生)です。

-----内容-----
やり手経営者と、カソリックの神父。
美しい女性に惹き寄せられる、対照的な二人の男。
儚さと自堕落さ、過去も未来も引き受けられるのはー。
あふれる疾走感。
深く魂に響く、至高の長編小説。

-----感想-----
島本理生さんの作品は以前は読んでいたのですが近年は悲しい雰囲気の恋愛小説を書かれることが多く、近年の私は暗い雰囲気や悲しい雰囲気の小説は好まないため、しばらく島本さんの著書から離れていました。
この作品は4月下旬に広島駅前の福屋10階のジュンク堂書店を訪れた時に見かけました。
島本理生さんによる内容紹介があって、そこには「何度も救おうとしてできなかったものを初めて救えた小説です」とありました。

この言葉が興味を惹きました。
もしかしたら辛く悲しい内容ではないのかも知れないと思い、さらにサイン本が置いてあったため久しぶりに島本さん作品を手に取ってみることにしました。

冒頭の舞台は函館で、「2011年 冬」から物語は始まりました。
最初の1ページ目から文章に島本さんらしい独特の落ち着きがありました。
真田幸弘という男が教会に行くために雪の積もる八幡坂を上っていてふと振り返ると、栗色の長い髪の女が坂を上ってきていて二人は遭遇することになります。
女は徳永比紗也(ひさや)と言い、比紗也は23歳でお腹に子供がいて、妊婦が1月に函館一人旅をしていることに真田は驚きます。
比紗也は本当は彼と来るはずだったが向こうに仕事が入ってしまったため一人旅になったと言っていました。
真田は普段は東京で会社を経営して仕事をしていますが取引先の会社が函館にあり、挨拶に来ていました。
比紗也の「真田さんは言葉が通じる人ですね」という言葉が印象的でした。
これを見て、比紗也は言葉が通じない人と向き合ったことがあるのだと思いました。

二人とも教会に行こうとしていたので一緒に行き、その後は海鮮居酒屋で夕飯を共にしていました。
真田の会社は色々なことをやっていて、日本酒の試飲会などイベントの企画もやっているとのことです。
また比紗也の出身は仙台とありました。
二度と会うことはないと思われた二人ですが年が明けるとまた会うことになります。

年が明けた2012年の春。
如月歓は34歳でキリスト教カソリックの修道院で神父をしています。
ある日病院の回転ドアで手を挟まれそうになったところを黒髪ショートヘアの女性に助けてもらいます。
紡という赤ちゃんを抱いていて、真田と遭遇した時とは雰囲気が違いますがこの女性は比紗也かも知れないと思いました。

その後すぐに比紗也の語りがありこの女性が比紗也だと分かりました。
この小説は真田幸弘、如月歓、徳永比紗也の三人それぞれの語りがあります。

比紗也は何らかの事情で旦那と別れたらしく、シングルマザーになっていました。
現在は都内の西武新宿線沿いの美容室に勤めています。
また、紡が言葉を喋れるようになり保育園にも通っていることから、2012年春からさらにもう何年か月日が経ったことが分かりました。
ある日比紗也はお客の誘いで国産ワインと音楽イベントを掛け合わせた形の婚活イベントに参加することになるのですが、それは真田が手がけていたイベントでした。
そのイベント会場で真田とキリコという大学時代からの友達が話している時、二人は38歳とありました。
やがて真田と比紗也が再会します。
紡はもうじき3歳になるとあり、2012年春から3年経っていること、比紗也は26、7歳になったことが分かりました。

真田は比紗也に興味を持ち、もう一度会えないかと期待して「子どもの顔も見てみたい」と言いますが、比紗也はそれなら家に来てご飯でもどうかと誘い、三人でご飯を食べることになりました。
ただし真田が高い肉を買っていくことが条件でした。
真田と比紗也の会話の中で比紗也が「もし事件とか事故が起きたら、そのときに私を悪者扱いする人たちがたくさんいるかもしれないから、そうではない姿を見てもらうために真田を呼んだ」と言っていました。
こんな理由で人と親しくなる人は珍しいと思いましたし、比紗也はだいぶ変わったところのある人だと思いました。
真田は比紗也のつかみどころのなさに違和感を抱きます。
また比紗也は「もう一生男の人とは付き合わない」と言っていて何があったのか気になりました。

歓は生れつき脳の形状が変わっていて、それが原因で頭の中で自分に話しかけてくる「声」が聞こえます。
歓はある日ボランティアの美容師に髪を切ってもらいます。
この美容師が比紗也で二人は再会することになりました。

真田と比紗也が道を歩きながら話している時、シングルマザーである比紗也に対し真田が「産んですぐの頃はどうしていたのか」など、色々と聞いていました。
比紗也は「事情のある女の人たちが住める、シェルターにいたから」と言っていて、やはり比紗也にはかなりの事情があるのだと思いました。
また、真田は無神経に余計なことを聞きすぎな気がしました。

歓は「以前助けてもらったお礼がしたい」と言い比紗也と修道院の近所にある蕎麦割烹に行きます。
洒落た雰囲気のお店を選ぶ真田とは対照的なお店選びなのが印象的でした。
その帰り道、聞こえてきた頭の中の「声」に気分が悪くなりしゃがみ込んだ歓に比紗也は音楽を聴かせて落ち着かせます。
そのおかげで頭の中の声は止みました。
「如月さんの事情とは違うかもしれないけど、私もつらいときには、嫌なことを考えないように音楽をずっと聴いていた」という比紗也に歓は「僕が守りたいです」と言います。
「あなたが僕を救ってくれたように、比紗也さんを守りたいです。孤独や苦しみから」
真田と歓という対照的な二人が比紗也と関わっていくことになります。

神父は悩める者の告白を聞きます。
ある日歓の前に女が現れ「告白を聞いてほしい」と言います。
告解室に行き女性の告白を聞いた歓は絶望的な心境になります。
その女性はかつて12歳の時カソリック系の中学校で歓によって酷い目に遭わされた女性だったのです。
歓はその時の後悔から神父になったのですが、女性が目の前に現れたことによって自分がもうすぐ全てを失うことを悟ります。

真田は比紗也との距離が縮まったと思っていますが比紗也は真田に冷めていました。
「女を失望させる言葉」というのが興味深かったです。
比紗也が風邪を引いて会うのが無理になった時、真田が「ちっとも気にしてないから」と言ったのですが、この言葉の響きに女を失望させるものがあるとのことです。
たぶん比紗也的には「ゆっくり休んでね」とだけ言ってほしかったのではと思います。
また比紗也は歓の「僕があなたを守りたい」という言葉を本気には受け止めておらず、歓のほうは本気ですが比紗也には気持ちが届いていなかったです。

真田は色々なことを無神経にずけずけと聞きすぎだと思いました。
誰しも聞いてほしくないことはあるもので、比紗也は露骨に表情が硬くなるなど表に出るのですが真田はあまり気にせずに聞いていました。
見た目は洒落ていても心の機敏には鈍感な印象を受けました。

歓はカソリック系の中学校に通っていた当時、頭の中の「声」に囁かれるがままに色々な悪いことをしていました。
また後輩の一年生、窪鈴菜に恋をし、歓は次第に鈴菜のストーカーになっていきます。
そのストーカー行為がある女子にばれ、その女子こそが告白を聞いてほしいと歓の前に現れ罪を糾弾した女性です。

ユダヤ教とキリスト教の違いは興味深かったです。
旧約聖書を信仰するのがユダヤ教で新約聖書を信仰するのがキリスト教とのことです。

真田の大学時代からの友達のキリコは猪瀬桐子と言い、金融関係の仕事をしています。
そのキリコが比紗也と話した時、真田はやめておけと言っていました。
「真田君はたしかにいいところもあるけど、あなたのことを理解しきれるとは思えない。良くも悪くも女を女としてしか扱えない人だから」
これに対して比紗也は「キリコさんの価値が分からない真田さんは、たしかに女を女としてしか扱えない男だ」と胸中で思い納得していました。
キリコは少なからず真田に好意を持っているのですが真田のほうは友達としてしか見ていません。
またキリコは真田のことを真に理解してくれる貴重な存在なのですが真田にはその良さが見えていませんでした。

キリコは真田にも比紗也はやめておけと忠告します。
比紗也が持つ雰囲気に異様なものを感じていて、「真田君には背負い切れないものがある気がするのよ」と言っていました。
これは友達としてと好意を持っている人に対しての両方の感情から真田の身を案じて忠告したのだと思います。

歓の「僕があなたを守りたい」という言葉を本気には受け止めていない比紗也ですが、実は心の奥底では歓に救ってほしいと思っています。
そんなことを考えながら真田と話していた時、「こんなふうに言ってくれないか」と期待を込めて言った言葉に対し真田が見当違いな言葉を返してきたのを見て、やはり真田は心の機敏に鈍感だと思いました。
比紗也と活発に関わっているのは真田ですが最後に一緒になるのは歓のほうなのではと思いました。
この二人の差について、比紗也は胸中で次のように語っていました。

如月さんが相手なら、と比紗也は考えた。性別を超えて同じ重さを共有できたかもしれない。でも真田とはどこまでいっても男と女で、内面をさらけ出すことはいっそう傷つくかもしれない危険をはらんでいる。

やはり重い内容のことを話せるとしたら歓のほうなのだな思いました。

物語が進むと比紗也の父親が出てくるのですが、この父親が最悪でした。
間違いなく比紗也の重い悩みごとの一端はこの父親だと思いました。
比紗也のメールを見た歓が比紗也を助けに来てくれます。
比紗也の父親が現れたことによって起きた騒動に真田も巻き込まれるのですが、その姿を見たキリコが真田にかけた言葉は印象的でした。
「自分に関係ないと思えば、人間はどこまでも無責任に優しくなれるの。真田君はね、究極、負う気がない……じゃないね。負うっていうことがどういうことか本質的に分かってないんだと思う」
生半可な覚悟で比紗也と関わり結果騒動に巻き込まれたことへの苦言であり、真田の身を案じた言葉でもありました。
キリコは凄く真剣に真田のことを考えてくれていて、真田にはキリコのような友達のありがたさを実感してほしいと思いました。

騒動によって苦境に立たされた比紗也と紡の全てを歓が引き受けます。
歓は二人を女子修道院にかくまってあげました。
二ノ宮シスターの雰囲気についての、「正しさという緊張感を纏いながらも優しさがこもっていた」という表現が良いと思いました。

もうひとつ、歓と比紗也が話している時の次の言葉も印象的でした。
乾いた地面を擦るように葉が転がっていく。かさついた音が響いた。秋の音ですね、と彼女が漏らした。
この「秋の音」というのも良い表現だと思いました。
芥川賞に数回ノミネートされている作家さんなので文章に純文学の雰囲気があります。

歓と比紗也はお互いのことを打ち明けて行きます。
比紗也には内面にかなり空虚になっている部分があり、歓も戸惑っていました。
比紗也の内面の空虚さには東日本大震災が少なからず関わっていました。

キリコは真田と比紗也を「似たところがある」と評していました。
どちらも素直ではないところがあり、「素直になることは、べつに負けることじゃないのにね」という言葉は印象的でした。
真田も歓と同じく比紗也を助けに飛んでいく場面がありました。
真田も比紗也も行動が高校生のようで、たしかにそういう部分は似ていると思いました。
また真田と比紗也と紡がディズニーランドに行って帰る時、「ゲートへと向かう人々は、夢を見終えた後というよりは、夢が叶った後のように高揚している」という描写が凄く良いと思いました。

まだ比紗也の父親のことが解決していないのに物語が良い形になるのかと思ったら、やはり父親が絡んできました。
まさかの展開があり余談を許さない状況になります。
最悪な父親と話している時の歓の胸中での言葉は印象的でした。

人の心は弱く、うつろいやすい。真田だって、比紗也だって、自分だって。完璧な平穏も完璧な人間もこの世にはない。悪魔が用意した誘惑に引っかかり続けるのだ。いつまでも人間に期待してくれる神を裏切って。それでも許してくれる神に甘えてすがりながら。

たしかに人の心は弱くうつろいやすいです。
比紗也にもどうしてそこでそっちに行ってしまうんだと思う場面がありました。
それでもその弱さと向き合いながら最後にはまた前を向いてくれていたのは良かったです。
何より島本理生さんの作品で最後が明るく終わってくれたのが良かったと思います。
「何度も救おうとしてできなかったものを初めて救えた小説です」とあったように救いのある明るい終わり方でした。
久しぶりに島本理生さんの作品を読んでみてやはり良い文章を書く人だと思いました。
ほかの暗くない作品を機会があれば読んでみたいと思います。


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身の回りへの興味

2016-05-17 22:35:40 | ウェブ日記
ゴールデンウィークに実家に帰省した時、妹と妹の子供(姪っ子)も実家に来ました。
そして実家の家族と妹と姪っ子で近くにある比較的大きな公園に出かけました。
その公園に到着して歩き出した時、姪っ子が地面にしゃがみ込んで蟻の行列を見ていました。
そのしゃがみ込んだ時の表情が凄くワクワクしていたのが印象的でした。
いかにも楽しいものを見るように目を輝かせながらガバッとしゃがみ込んで熱心に蟻を見ていました。

この純真さと好奇心旺盛さが良いと思いました。
大人にとってはどうということもない蟻の行列でも、2歳の子供にとっては凄く興味を惹かれるようです。
大人になると何とはなしに毎日を過ごしてしまいがちですが、身の回りへの興味は持つようにしたいと思います。

また、2月に会ってからの2ヶ月半くらいの間に話せる言葉が一気に増えていて、公園を歩きながら色々なものの名前を言っていました。
「ちょうちょ」、「はっぱ」、「「はな」などの言葉を言っていました。
すべり台を「すー(すーっと滑るから)」と言っていたのが面白かったです。
好奇心旺盛な姪っ子が次に会う時にどんな成長を見せてくれるのか楽しみにしています。
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