読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「田舎の紳士服店のモデルの妻」宮下奈都

2014-04-29 22:15:03 | 小説


今回ご紹介するのは「田舎の紳士服店のモデルの妻」(著:宮下奈都)です。

-----内容-----
東京から夫の故郷に移り住むことになった梨々子。
田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、恋に胸を騒がせ、変わってゆく子供たちの成長に驚き―
三十歳から四十歳、「何者でもない」等身大の女性の十年間を二年刻みの定点観測のように丁寧に描き出す。
じんわりと胸にしみてゆく、いとおしい「普通の私」の物語。

-----感想-----
主人公は竜胆梨々子(りんどうりりこ)。
夫の達郎がうつ病になり、会社を辞めて夫の実家のある福井県で療養することになりました。
ずっと東京で暮らしていくものだと思っていたのに突然福井に行くことになって戸惑う梨々子。
梨々子は田舎に行くことを「島流し」「左遷」などと表現していて、否定的に捉えているようでした。
その田舎で過ごす10年間が、この物語です

物語は梨々子の一人称で、梨々子が心境を吐露する形で書かれています。
会話よりも心境吐露のほうが多いくらいで、これは明らかに梨々子の物語なのだと思いました。
すごく色々なことを考えていて、悩んでいるなということが見て取れました。
一つ一つの出来事について、それは私のせいなのか?どうしたらいいのか?という感じであれこれ思い悩んでいました。

P24に出てきた「運の月」という表現は初めて聞きました
梨々子によると、「運には月のように満ち欠けがあって、たまたま今は欠けている、あるいは新月かもしれないけれど、そのうちにまたまるく満たされると、つまり運命とは大雑把に言えばそういうものではないか」と考えているとのことです。
福井行きを「運の尽き」ではなく「運の月」にしてくれたのはちょっと良かったなと思います。
さすがに「運の尽き」では夫の達郎がいたたまれないですからね。。。

妻としての夫のうつ病に対する不安以上に、母親としての息子二人への不安、心配が尽きないようでした。
例えばP67、「潤が感情を出さないことに悩み、歩人(あると)が泣きすぎるのはどこかおかしいのではと不安になり、その責任が自分にあるのではないかと考えてしまう」とありました。
梨々子には潤(兄)、歩人(弟)の三歳差の息子がいるのですが、「この子がこんななのは私のせいなのではないか」と思い悩む場面が何度もありました。
母親とはこんなに悩むものなのかと思います。

舞台が福井県なので福井弁で話す人が多く、何だか漫画「ちはやふる」の綿谷新が思い浮かびました。
独特の温かみがあって良いですね、福井弁^^

梨々子の心境吐露にはたまに笑える表現がありました。
P183の「自慢ではないが、人にやさしくするより、こちらがかまわれたいほうなのだ」など、自身の性格について結構赤裸々に語っていました。
P92の「こんな田舎の小学校の運動場で誰かに色気を感じるなどというのは、気高い竜胆梨々子にあるまじきことなのだ」などは結構ウケました(笑)
時折プライドの高さを垣間見せていて、福井に来てから数年、なかなか現状に納得できないものもあったのだろうと思います。

ただ終盤は色々なものを受け入れ、人間として妻として母親として、一回りも二回りも大きくなっていました。
完璧な人などいないのだし、梨々子のように色々なことに悩む人のほうが圧倒的に多いと思います。
そこを乗り越え自分なりの答えを出し成長した梨々子であれば、よい未来を引き寄せられるに違いないと思いました


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掃除の重要性

2014-04-28 22:25:01 | ウェブ日記
最近、週末に部屋の掃除をするように心がけています。
先週末も日曜日に掃除をしました。
そして掃除をしていて思ったのですが、やはり部屋を掃除して綺麗にしておくのは大事だと思います。
この前読んでいた「スコーレNo.4」(著:宮下奈都)「居場所をきれいに整えることは、居心地をよくしてその場所を味方につけるようなものだ」とあって、これは確かにそのとおりだと思います。

実際掃除機をかけ、雑巾をかけ、掃除が終わって部屋を見渡すと、心なしか居心地が良く感じます
逆に掃除をサボっていると部屋が埃っぽくなり、何だか気持ちもすさんでいくんですよね
これは良くないです。
デフレスパイラルみたいな感じで悪い循環になってしまうので、疲れていても毎週末の掃除の習慣は維持するようにしたいと思います。
よい生活はよい掃除から、なのかも知れません。

明日は火曜日ですが祝日で休みなので、午前中に少し掃除をしようと思います。
こまめな掃除で居場所を綺麗に整えて居心地を良くして、我が部屋を味方でいてもらえるようにします
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「キケン」有川浩

2014-04-27 23:09:47 | 小説


かなり楽しい小説でした。
今回ご紹介するのは「キケン」(著:有川浩)です。

-----内容-----
ごく一般的な工科大学である成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」、略称【キケン】。
部長・上野、副部長・大神の二人に率いられたこの集団は、日々繰り広げられる、人間の所業とは思えない事件、犯罪スレスレの実験や破壊的行為から、キケン=危険として周囲から忌み畏れられていた。
これは、理系男子たちの爆発的熱量と共に駆け抜けた、その黄金時代を描く青春物語である。

-----感想-----
これは楽しく読めそうだと思い手に取った一冊。
期待どおり、最初から最後までかなりの面白さでした

新入生の元山高彦と池谷悟の二人が勧誘されたのは、機械制御研究部、略称「機研(キケン)」というクラブサークル。
部長は二回生の上野直也。
渾名は「成南のユナ・ボマー」で、ユナ・ボマーとは世界一有名な爆弾魔の名前とのことです。
何やらやばそうな渾名ですね

副部長は同じく二回生の大神宏明。
こちらの渾名は「大魔神」。
めちゃめちゃ怖い雰囲気を醸し出している人で、ただその場に居るだけで威圧感があります。

この二人がキケンを引っ張っていくわけですが、まあとにかく部長の上野のハチャメチャぶりが最初から最後まで半端ではなかったです(笑)
特に自分の家からも出入り禁止を食らっているというエピソードがウケました。
火薬の燃焼実験やらロケット花火の発射やら、部屋で危険なことばかりしているので母屋から隔離されてプレハブ小屋で暮らすようになったとのことで、なかなかぶっ飛んだ人だなと思いました
突っ込みが役どころとなった元山は盛大に突っ込みまくっていました(笑)

上野と上野の天敵・曽我部教授のやり取りは何だか「こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)」の両津勘吉と大原部長のような関係でした。
「げっ部長」「こおら両津!」のような感じで、上野が危険極まりないアホなことをすると竹刀を持って追いかけていました(笑)

第一話のラストに書かれていた、「この年から上野・大神体制による【機械制御研究部】―通称【機研】の三年にわたる黄金時代が始まる」というナレーションはワクワクしました。
どんな黄金時代を見せてくれるのか、第二話以降も楽しみになりました

大神の失恋の話もまたかなりウケました。
大魔神と呼ばれ圧倒的な威厳と威圧感を持つ大神の恋愛話、面白かったです。

学園祭の話はかなり盛り上がりました。
「成南祭」という名前で、11月の上旬に開催されます。
準備の1日を入れると6日間ぶっ通しで行われる怒涛のような学園祭で、キケンは伝統的に毎年ラーメンの屋台を出しています。
これが半端ではない全力投球で、毎年売り上げは90万円にも上っています
特にこの年は元山が料理が得意なこともあって、例年とは比較にならないほどラーメンの味もアップ
前後編の二話に渡って展開された学園祭編はこの作品の中でも一番面白かったです。
キケン史上最高のラーメンを作るための元山の試行錯誤、学園祭での後に伝説として語り継がれることになる大奮戦、さらにはキケンに嫌がらせばかりしてくる因縁の敵・PC研(たぶんパソコン研究部)との対決もあったりで、読んでいてかなり盛り上がりました。

終始笑って読んでいられる小説で、最初から最後まで楽しかったです。
まさに馬鹿ばかりやっている青春時代を地で行く物語でした。
たまにはこんな小説を読むのも良いなと思います


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「サクラ咲く」辻村深月

2014-04-23 23:47:49 | 小説


本が呼んでいる気がして、気になって手に取ってみた一冊。
今回ご紹介するのは「サクラ咲く」(著:辻村深月)です。

-----内容-----
塚原マチは本好きで気弱な中学一年生。
ある日、図書館で本をめくっていると一枚の便せんが落ちた。
そこには『サクラチル』という文字が。
一体誰がこれを?
やがて始まった顔の見えない相手との便せん越しの交流は、二人の距離を近付けていく。(「サクラ咲く」)
輝きに満ちた喜びや、声にならない叫びが織りなす青春のシーンをみずみずしく描き出す。
表題作含む三編の傑作集。

-----感想-----
本作品は以下の三編で構成されています。

約束の場所、約束の時間
サクラ咲く
世界で一番美しい宝石

三作品はそれぞれ、少しずつリンクしています。
「約束の場所、約束の時間」の登場人物は「若美谷中学」の二年生。
「サクラ咲く」は、同じく「若美谷中学」の一年生。
「サクラ咲く」のほうで、登場人物が「約束の場所、約束の場所」の登場人物と中学校の廊下で会う場面がありました。
「世界で一番美しい宝石」の登場人物は「県立若美谷高校」の二年生。
時間的には「約束の場所、約束の時間」「サクラ咲く」から二十数年後ではないかと思います。
両作品に登場していた人物が「世界で一番美しい宝石」にも出てきて、とある生徒の父親、母親だったり、図書室の司書教諭だったりします。
私的には、図書室の司書「海野先生」が登場した時に、「そうか、結婚したのか」と感慨深くなりました

三編の中で特に面白かったのが「サクラ咲く」。
若美谷中学への入学直後の春から始まり、次の年の3月まで、約一年の物語です。

主人公は塚原マチ。
冒頭から他の生徒に学級委員の書記に推薦され、戸惑っていました。
マチは小学校の頃から自分の意見がはっきり主張できないこと、言いたいことが言えないことに悩んでいました。
その時も自分の意見が言えず、推薦されるまま書記を引き受けていました。

他の主なクラスメイトは、光田琴穂(ことほ)、守口みなみ、長沢恒河(こうが)、海野奏人(かなと)、高坂紙音(しおん)。
何だか洒落た名前の子が多かったです
守口みなみは、マチとは違って自ら学級委員長に立候補した積極的なタイプ。
そんなみなみと、本が好きという共通の趣味もあり、次第に仲良くなっていくマチ。
そしてこの作品では、「本」が重要な役割を果たします。
ある日、マチが図書室でリザ・テツナーの『黒い兄弟』という本を手に取っていると、本から一枚の細長い紙が落ちていきました。
それを拾い上げて見てみると、そこには「サクラチル」という文字が書かれていました。
誰がこれを書いたのか気になり、本の後ろに付いている貸し出しの記録カードを確認してみると、何かが書かれて消された跡があり、よく見てみると1年5組と書かれていたことが分かりました。
ただし名前は書かれていなく、誰なのかは分かりません。
マチと同じ1年5組の人が「サクラチル」という謎の言葉を紙に書いて本に入れたのかも知れないと思い、気にしていました。

その後しばらくして、今度は『続あしながおじさん』を借りようとしたマチ。
しかしページをパラパラめくると、またしても紙がはさまっていました。
今度はそこに、
「みんなが自分を見て、笑っている気がする。どうして、みんなにはっきり自分のことが話せないんだろう」
と書かれていました。
マチの心の声とそっくりな内容で、何だかマチ自身のことを言われているような気がして、一体誰が書いているのかとても気になるマチ。
その後もエンデの『はてしない物語』、『夏への扉』、『ナルニア国ものがたり』一巻の『ライオンと魔女』にも謎のメモがはさまっていました。
どうやら謎のメモをはさんでいる人とマチの「読みたい本の趣味」がとても近いということに気付いたマチ。
マチもメモを書いて本にはさんで、何とかこの謎の人物とコンタクトが取れないかと奮闘し、やがてついに相手からの返事が来ました。
正体は分からないながらも、相手もマチとの本を介してのやりとりは楽しいと思っているようで、しばらくやりとりが続いていきました。

この作品、文章へのふりがなの振り方からして、十代の若い子に読んでほしいという意思が込められていて、謎の人物の正体についても私はすぐに気付いてしまいました。
ただ気付いていてもどんな展開を見せるのか、とても気になる物語でした。
マチがどのタイミングで気付くのか、そしてどんな形で気付くのか、楽しみでした。

謎の人物とのやりとりでは、以下のやりとりが一番印象的でした。
「真面目だ、いい子だ、と言われると、ほめられているはずなのに、なんだか苦しくなる。はっきり言えないことを優しいって言ってくれる人もいるけど、わたしは、本当は自分が人に嫌われたくないからそうしてるんだと思う。わたしは臆病です。」
「断れない、はっきり言えない人は、誰かが傷つくのが嫌で、人の傷まで自分で背負ってしまう強い人だと思う。がんばって。」

何だか私も思うところがあって、背中を押して勇気付けてくれる、良い言葉でした。

以下、印象的だった言葉を二つほどご紹介。

「みなみってさ、しっかりしてるのはいいんだけど、一人でたくさんのことを抱えこんでがんばりすぎるんだよね。そんなんじゃ、いつか参っちゃうよ」

「がんばってれば、見ててくれるかな」
見ててくれるよ。
見ててくれる人は、必ず、どこかにいる。

私はこの作品には、作者の強い意志が込められていると思いました。
微妙な心理について鋭く描き出していたし、読んでいる人をハッとさせるメッセージ性を感じました。
一人でたくさんのことを抱えこんで頑張りすぎてるといつか参っちゃうというのはまさにその通りで、中学生同士の会話の中でこの言葉が出てきて、私はちょっと驚きました。
参ってしまわないためにも、頼ったり相談できたりする家族や友達の存在は大事です。

謎の人物は「サクラチル」の言葉が示すとおり、一度は散ってしまった人です。
その人物がもう一度希望を持つきっかけを作ったのがマチで、その過程でマチ自身も成長していきました。
サクラは散っても一年後の春にはまた咲きます
成長と再生をテーマにした、素晴らしい作品だと思いました


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「スコーレNo.4」宮下奈都 -再読-

2014-04-19 19:15:15 | 小説


三浦しをんさんの「まほろ駅前多田便利軒」以来の再読レビューとなります。
今回ご紹介するのは「スコーレNo.4」(著:宮下奈都)です。
※前回書いたレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

-----内容-----
自由奔放な妹・七葉(なのは)に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。
そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へと変わっていく。
そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは……。
ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。

-----感想-----
主人公・麻子が中学一年生から社会人3年目(25歳)まで悩みながら成長していく姿を描いた小説。
解説によると「スコーレ」とはスクールの語源となった言葉で、余暇、遊びから転じて、真理探究のための空間的場所を意味するギリシャ語とのことです。
そして解説を書いた北上次郎さんは、このスコーレがヒロインの麻子には家族、恋愛、仕事、結婚の4つあったことが、本書のタイトルの意味だろうと解釈しています。
実際、四部構成となっている物語の「No.1」「No.2」「No.3」「No.4」はそれぞれ家族、恋愛、仕事、結婚をテーマとしていました。
私は特に物語のハイライトとも思える、ずっと自分に自信の持てなかった麻子が初めて自信を持った「No.3」が好きです。
靴屋での仕事に就いて1年、本人の不安とは裏腹に実は着々と成長していて、ついにその力が開花した場面は読んでいるほうも嬉しかったです

前回のレビューでそれぞれのスコーレへの感想は書いているので、今回は特に印象的だった言葉を中心に振り返ってみます。

まず「No.1」に出てきた以下の言葉。
P42
「欲しいものをあれほど欲しいと思える、七葉の心に私は負けている」
これは妹の意思の強さに打ちのめされ、敗北を感じた時の言葉。
これと決めたものに対して妹は絶対に譲らない、そしてそんな妹と取り合いをして一度も勝てたことがないともあり、妹への苦手意識が表されていました。

続いて、槇という従兄の”声”についての描写。
P105
「小学生の頃から涼やかな声だったと母は言うけれど、そういえば今は涼しいのを通り越して冬みたいな声だ。冬の夜、誰もいない公園の中を月に照らされて歩くみたいな感じがする」
これは表現が良いなと思いました。
冬の夜、誰もいない公園の中を月に照らされて歩くみたいな声、何となく分かります

高校時代を描いた「No.2」にて。
P128
「中心線からよろこびに十歩、悲しみに五歩、苛立ちや不安には三、四歩ずつの範囲だけ、感情を表すことに決めているようだった。ぷつぷつ泡立つ感情を微笑でくるみ、私たちは高校の教室で会う」
高校の友達に対しての描写で、どうしてこんなにいつも穏やかでいられるのかと評していました。
中心線からよろこびに十歩、悲しみに五歩、苛立ちや不安には三、四歩ずつの範囲というのが絶妙な表現で、たしかに高校時代は中学時代とは違い感情をフルには出さないで、こんな感じの機械的な対応をしたような気がします

「No.2」のラストに出てきたのが以下の言葉。
P158
「人生は勝ち負けじゃない。だけど私は負けているのだ。七葉のそばにいたら、きっとずっと負け続ける気がした」
これは前回のレビューでも取り上げた言葉で、「No.1」の時と同じく、妹への強い劣等感が現れていました。
妹から離れたいという理由で大学進学を機に家を出たくらいですから、余程コンプレックスになっていたのだと思います。

ここから社会人となる「No.3」。
P180
「居場所をきれいに整えることは、居心地をよくしてその場所を味方につけるようなものだ」
輸入貿易会社に入社した後、靴屋に出向になって、職場で居場所がなくなっていた麻子が朝、職場の掃除をしていた時の言葉。
何となく、つい掃除をさぼりがちな自分の部屋を思い浮かべました(笑)
たしかにきれいに整っていたほうが居心地も良いし、私もなるべくこまめに掃除をしようと思います。

P181
「言われるまま倉庫に靴を探しに行ったり、レジや包装を手伝ったり、仕事らしい仕事もしないうちに勤務時間が終わる」
これはそんなことはないです。
なぜなら倉庫に靴を探しに行ったりレジや包装を手伝ったりといったこと自体が、まぎれもなく”仕事”だからです。
最初は誰しもそんなものなのですが、麻子は自分が駄目だからだと捉えたようで、自分に自信の持てない麻子らしい考え方であると思いました。

P194
「捉えようのなかった靴屋という仕事が初めてこちらを振り返り、次の角あたりで待っていてくれそうな気配がしている」
物語を通して、麻子が初めて自分に自信を持った瞬間。
ここから激変して、仕事に充実感を見出していく麻子。
物語のハイライトの一つではないかと思います。

P229
「たしかに、あなたは人一倍熱心だった。ものすごい勢いで仕事を吸収してくれた」
麻子が働く靴屋の店長の言葉。
自分に自信の持てない麻子とは対照的に、周りは麻子のことを評価していたのが分かる描写でした。

ここから最終章の「No.4」。
P253
「津川さん、気持ちはありがたいけど、あなたはもっと自分に自信を持ちなさい」
靴屋への出向から元の輸入貿易会社に戻ってきて、再び自信がなくなっていた麻子に靴屋の店長がかけた言葉。
「二年一緒に働いて、私たちはあなたの目を信じてる」とも言っていて、麻子への絶大な信頼が現れていました。
自分への自信のなさがテーマになっている麻子にとって、心強い言葉だったと思います

P268
「靴を選びながら、なんと気持ちのいい仕事だろうかと何度もため息を漏らしそうになった」
輸入貿易会社での仕事でイタリアに靴の買い付けに行った時の言葉。
ついに、正真正銘吹っ切れて、自分への自信を確かなものにしたのがこの時でした。
元の輸入貿易会社に戻ってきてからしばらく失敗ばかりしていたのが嘘のように、ものすごい躍動を見せていました
靴に携わるこれこそが麻子の天職なのだなと思いました。

というわけで、1年ぶりに再読したこの作品。
私の10代における代表的な読書が綿矢りささんの「蹴りたい背中」だとすれば、20代における代表的な読書はこの作品かもというくらい、良い作品だと思います。
読むと前に進む力をもらえる貴重な一冊です


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おじさんになりました

2014-04-17 22:23:32 | ウェブ日記
今日は、私の妹の出産がありました。
無事に元気な女の子が生まれました
15時過ぎに母にメールで生まれたか聞いてみたら、赤ちゃんの写真付きで返信が来ました。
というわけで私も今日から「おじさん」になりました(笑)

ちなみに、赤ちゃんから見て母親の兄の場合は「伯父さん」、弟の場合は「叔父さん」となります。
私は母親の兄なので「伯父さん」です。
そして赤ちゃんから見ると私の両親は「おじいちゃん」「おばあちゃん」になるんだなと思うと時代の流れを感じますね。
ゴールデンウィークに実家に帰省した時に赤ちゃんと対面するのが楽しみです
その頃には名前も決まっているのかなと思います。
妹も先月から実家に里帰りして、無事に今日を迎えて何よりです
退院してしばらくは実家に居るでしょうし、子育てのペースを掴んでいってくれればと思います。
そして赤ちゃんには元気ですくすく育っていってほしいと思います
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線香

2014-04-14 19:49:51 | ウェブ日記
この週末は実家に帰省していました
一泊二日の短い滞在でしたが、良い休息になりました。
夕飯のカレーライスが美味く、随分たくさん食べました
ここ最近は寝てから明け方に一度目が覚める日が多かったのですが、実家に帰省した日はぐっすり眠れたらしく、特に目が覚めることもなく寝られました。

しかし、今回の帰省では珍しく祖父の仏壇に線香を上げるのを忘れていました。
東京に戻る電車の中で忘れていたことに気付きました。
忘れたのはかなり久しぶりで、「やっちまったなあ」という心境でした

何となく、やっぱり疲れてるんだなと思わせられる一幕でした。
線香に気が回らなかったようです。
お祖父ちゃんすまん…と思うとともに、次に帰省した時はきちんと線香を上げたいと思います。
そして次に帰省するのはゴールデンウィークなので、そこで何日か滞在してゆっくり休んで、心身ともにリフレッシュしようと思います。
何だかんだで自分の生まれ育った故郷がリフレッシュには最適です
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