読書日和

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沈まぬ太陽

2009-12-15 22:26:06 | 音楽・映画


先日「沈まぬ太陽」という映画を観ました。
これは「白い巨塔」や「華麗なる一族」でおなじみの山崎豊子さんの同名小説を映画化したもので、約3時間半に及ぶ大作となっていました。

-----内容-----
昭和30年代―。
巨大企業・国民航空社員の労働組合委員長、恩地元。
組合委員長として職場環境の改善に取り組んだ結果、恩地を待っていたのは会社からの海外赴任命令だった。
恩地はパキスタン、イラン、そして路線の就航もないケニアへと赴任。
会社は帰国をちらつかせ、恩地に組合からの脱退を迫る一方で、露骨に組合の分断を図っていた。
そんな中、共に闘った同期の行天四郎は早々に組合を抜け、エリートコースを歩みはじめる。
同僚でありながら行天の愛人の国際線客室乗務員・三井美樹は、対照的な人生を歩む2人を冷静に見続ける。
行天の裏切り、更に妻・りつ子ら家族との長年にわたる離れ離れの生活―。
焦燥感と孤独とが、恩地を次第に追いつめていく。
十年におよぶ僻地での不遇な海外勤務に耐え、本社へ復帰を果たしたものの、恩地への待遇が変わることはなかった。
逆境の日々のなか、ついに「その日」はおとずれる。
航空史上最大のジャンボ機墜落事故。
想像を絶する犠牲者の数―
遺体の検視、事故原因の究明、補償交渉。
救援隊として現地に赴き、遺族係を命ぜられた恩地は、誰も経験をしたことがない悲劇に直面し、苦悩する。
墜落は、起こるべくして起きた事故だったのか。
政府は組織の建て直しを図るべく、新会長に国見正之の就任を要請。
恩地は新設された会長室の室長に抜擢される。
「きみの力を借りたい」。国見の真摯な説得が恩地を動かした。
しかし、それは終わりなき暗闇の始まりだった・・・・・・。

-----感想-----
企業の不条理。。。序盤はこれに尽きます。
国民航空(モデルは日本航空)の労働組合委員長として、職場の過酷な労働条件を改善すべく戦った恩地元(おんちはじめ)。
しかしその結果彼を待っていたのは、会社からの懲罰人事でした。
上層部からの強い力により、恩地はパキスタンに飛ばされることになってしまいました。



一方、恩地の同期で労働組合副委員長だった行天四郎(ぎょうてんしろう)には、会社から甘い声がかかります。
行天は恩地と違い慎重な性格だったので、そこに付け込まれたようです。
その結果彼は恩地を裏切り、あろうことか労働組合の切り崩し工作に加担することになります。
恩地が海外で不遇の日々を送っている間に今までの労働組合は弱体化し、会社の意のままに動く御用組合(ごようぐみあい)が勢力を増していきました。
恩地はパキスタン勤務の後は日本に帰れるはずだったのですが、ある日会社から電報が来て、今度はイランに飛ばされることになってしまいました。
さらにその後はケニアに飛ばされることになり、前代未聞の海外たらい回し人事が続きます。
一応会社からは、「謝罪文を書いて二度と会社にたて突かないと誓約すれば日本に返してやる」という条件が提示されたりもしましたが、恩地はこれを許しませんでした。
その結果10年近くに渡って海外で暮らすことになってしまったのです。
その間に恩地の母が亡くなってしまって可哀相でした。
お葬式の際、会社からは花が届けられていましたが、何だかなあ…という感じです。
散々ひどい仕打ちをしておいて、儀礼的に花など贈られても、かえって頭にくるような気がします。



何とか本社に復帰したある日、ついに「その日」がやってきます。
国民航空の飛行機が御巣鷹山に墜落したのです。
その飛行機は大阪行きで、小さな子供が客室乗務員に付き添われて乗っていくときの描写が印象的でした。
恩地は遺族係として犠牲者の遺族と向き合っていくことになります。
一人一人と誠実に話していく恩地でしたが、補償交渉を早く進めたい会社側は、遺族の感情を逆撫でするようなことをします。
恩地は憤るものの、一人の力ではどうすることも出来ません。
さらには行天が再び暗躍し、遺族会の切り崩し工作に打って出たりもします。
遺族に団結されるとまずいということで、何としても分裂させたいようでした。
すでに行天は自分の出世にしか興味がなく、そのためにはあらゆるものを利用するようなキャラになってしまっていました。
「デスノート」の夜神月(やがみらいと)と似たような感じで、これは最後には破滅するのでは…という予感もしました。



国民航空の建て直しに政府が動いたことにより、恩地には国見正之という強力な味方が出来ます。
国見が会長に就任し、その直下に会長室を組織し、恩地はその室長に抜擢されます。
これにより一気に国民航空の腐敗が洗い出されるかと思いきや…やはり抵抗勢力というものが存在します。
そう簡単には洗い出させてくれません。
大物政治家も動き出し、いつの間にか国民航空の建て直し問題は、大物政治家+国民航空上層部のダブルの圧力に国見と恩地が立ち向かう構図になっていきます。
政治家は勝手なもので、国民航空を立て直すと言っておきながら、都合が悪くなると事態を自分達に都合が良いように収めようとします。
行天は当然のごとく恩地に圧力をかけてくるしで、映画全体を通して恩地の味方が少ないのが可哀相です。
そんな恩地ですが、たまに家族との心温まる場面があったのは良かったです
息子と牛丼を食べるシーンや、娘の結婚で相手の親の態度に憤るシーンなど、人間味があって好感が持てました。
熾烈な人間ドラマの中にそういった場面があるとホッとします



題名の「沈まぬ太陽」のごとく、恩地の不屈の闘志はどんな仕打ちを受けようと決して沈みません。
一人の男の、30年に渡る企業との戦いの物語。。。素晴らしく見応えがありました。
興味のある方はぜひご覧になってみてください