読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

大晦日

2016-12-31 23:00:31 | ウェブ日記
今日は大晦日、今年最後の日です。
そしてその大晦日もあと少しで終わろうとしていて年越しが目前に迫ってきました。
「年の瀬」「暮れも押し迫った」という言葉を使えるのもあとわずかで、間もなく「新年」という言葉に変わろうとしています。
今年は年初に実家の祖母が亡くなったので、年が明けてのブログでの新年の挨拶は簡略化したものにしようと思います。

今年は29日に実家に帰省しました。
滞在三日目の今日は夕飯に年越しそばを食べました。
他の方のブログで「毎日三食にありつけることに感謝」という言葉を見たことがあり、今年も毎年恒例の年越しそばを食べられるのはありがたいことなのだと思いました。
そして今年も無事に年越しを迎えることができて良かったです

今年は小説を46冊読みました。
また心理学系の実用書を13冊読みました。
両方合わせると59冊で、今年は結構たくさんの本を読むことができて良かったです。

というわけで皆さん良いお年をお迎えください
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「細雪(下)」谷崎潤一郎

2016-12-31 19:51:12 | 小説


今年最後の小説レビューです。
今回ご紹介するのは「細雪(下)」(著:谷崎潤一郎)です。

-----内容-----
全面開戦の気配が忍び寄るなか、雪子と貴族出の男性との縁談がまとまり、蒔岡家には安堵の空気が満ちる。
一方、金銭問題が露見し絶縁された妙子は満身創痍の身に新たな命を宿すーー。

生んで欲しい云うねん。
……そないせえへなんだら、啓ちゃんが諦めてくれへんねんわ。

「源氏物語」完訳後、当局の圧力を拒み、描きあげた現代の王朝風絵巻物。
絢爛たる谷崎の記念碑的大作。

-----感想-----
※「細雪(上)」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「細雪(中)」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

冒頭、雪子に沢崎という名古屋の富豪とのお見合いの話が来ます。
辰雄の姉の菅野という現在は未亡人になっている人がお見合いの話を持ってきました。
この時幸子は37歳、雪子は33歳、妙子は29歳です。
お見合いのため、幸子、悦子、雪子、妙子の四人は菅野未亡人の家を訪れます。
幸子が菅野未亡人に相手の沢崎という男のことを聞いてみると、このお見合いは幸子の想像を絶するほどずさんで、菅野未亡人は沢崎のことを何も調べていませんでした。
愕然とする幸子ですが、次の日に控えたお見合いに向けて気持ちを切り替えます。
明日は明日の風が吹く。
幸子のこの言葉は良いと思いました。
戦後すぐの頃の、昭和前半に出版された昔の小説でもこの言葉が使われているのかと驚きました。
お見合いの場において幸子は沢崎が菅野未亡人と話しながらもしきりに雪子の容貌を見ているのを見逃さなかったとあり、流石に鋭いと思いました。

このお見合いの後、蘆屋に帰る幸子達と別れ雪子は一人で電車に乗って東京の本家に行きます。
その車内で雪子はかつて義兄の辰雄が持ってきたお見合いの話を、既に結婚目前まで話が進んでから土壇場で断った時のことを思い出していました。
辰雄が義兄の権力で無理に縁談を押し付けてきたことに雪子だけでなく幸子と妙子も反発し、辰雄に意地悪をして困らせるために三人で同盟を組んで縁談を断ったとのことです。
単にお見合い相手が気に入らないというだけでなく辰雄に意地悪をして困らせてやろうというのが陰湿だなと思います。

雪子のお見合いがどうにも上手くいかないことから、幸子はこれまでとはお見合いに対する気持ちが違うものになります。
今までは雪子を「どこへ出しても恥ずかしくない妹」として人に見せびらかすくらいの優越的態度で臨んでいたのですが、沢崎とのお見合いを境に「また駄目なのでは」とすっかりビクビクするようになってしまいます。

幸子は同じ妹でも妙子よりも雪子のほうをより愛しています。
雪子には37歳の若さで結核で亡くなった母の面影があるとのことです。
下巻でもなかなか良い縁に恵まれない雪子を不憫に思い涙を流す場面が何度か出てきます。

幸子は妙子の変化に気づきます。
妙子と奥畑啓三郎が一緒にタクシーに乗って移動しているのを目撃したこともあり、奥畑との復縁を悟ります。
一時期質素にしていた妙子はまた身だしなみにお金をかけるようになっていました。
貞之助は妙子と奥畑の関係に不快感を示し、本家に伝えるべきだと言います。
そして「僕はこいさんが僕のほんとうの妹か娘やったら、云うことを聴かん場合には此方も勘当してしまうけど、……」と言い、妙子の奔放過ぎる振る舞いに大分嫌気が差しているようでした。
幸子のほうは「夫は少しあの妹を悪く思い過ぎている。あれでこいさんは、何と云ってもお嬢さん育ちのところがあって、芯は気の弱い、人の好い女なのである。」と胸中で語っていました。
「芯は気の弱い人の好い女」という見方が興味深く、奔放過ぎる振る舞いをして周りに迷惑をかけ続けている妙子は果たして人の好いところがあるのか気になるところでした。

本家の鶴子が大阪に来た時、「西下」という言葉が使われていました。
「東上」は競馬で関西の馬が関東のレースに乗り込む時によく聞くのですが「西下」はあまり聞いたことがなかったです。

やがて本家の鶴子から幸子に手紙が来て、妙子の不良ぶりに愕然としているという内容でした。
そして妙子と奥畑の交際をやめさせるため、妙子をしばらく本家に来させるように言ってきます。
さらに、辰雄は妙子が本家に来るのを嫌がるようなら幸子の家にも置かないようにし蒔岡家と絶縁させるように言っていて、鶴子もそれに賛成とのことです。
妙子は本家の辰雄が大嫌いで「本家と一緒に暮らすぐらいなら死んだ方がまし」とまで言っていて、ついに絶縁を突きつけられることになります。

幸子は今までも本家と妙子の間に立って苦労していました。
幸子によるともし幸子が見ていなかったら妙子はもっと不良になっていただろうとのことです。

久しぶりに丹生(にう)夫人が登場し、美容院の井谷とともに、雪子に新たなお見合いの話を持ってきます。
丹生夫人も井谷も江戸っ子気質でせっかちな性格のため、このお見合い話は凄い勢いで進んでいきます。
お見合い相手は橋寺福三郎という薬剤会社の重役をしている男で、丹生夫人はこの男をお見合いの場に「恐らく異議もないでしょうし、あっても私が否応なしに引っ張り出します」と言っていました。
やがて橋寺側も雪子側も強引に引っ張り出される形でお見合いになります。
このお見合いの頃、「もうその時分、街でタクシーを拾うのは難しくなって来ていた」とありました。
支那事変(現在で言う日中戦争のこと)から刻一刻と事態が緊迫して大平洋戦争が近づく中で、次第に街を走るタクシーも減っていたようです。

雪子はとても内向的な性格をしていて、ある時橋寺に無愛想な対応をしてしまいます。
そんな雪子を幸子はもどかしく思い、いらついていました。

妙子が食中毒で重症になってしまいます。
絶縁されてアパートを借りて一人暮らししている妙子は相変わらず奥畑との交際を続けていて、この時は最初奥畑の家で寝込んでいて、その後病院に移ります。
奥畑が寝込む妙子の傍でタバコを吸う場面があり、病人の傍でタバコを吸うのはマナーとして最悪だと思いました。

奥畑の家には「婆や」という、奥畑を赤子の時から育ててきた人が一緒に住んで身の回りの世話をしています。
そして一人暮らしをする妙子には幸子の家の女中、お春が行って身の回りの世話をしています。
この婆やがお春に奥畑と妙子について今まで見てきたことを語ったことから、幸子達にも妙子の酷さが明らかになります。
幸子達から見た奥畑と、婆やから見た奥畑が全然違っていて面白かったです。
また幸子達から見た妙子と、婆やが語る妙子も全然違っていて、どちらの側にも身内贔屓があるなと思いました。
ちなみに妙子は奥畑を金づるのように考えて、他の男と付き合う傍ら、奥畑にもそれなりに気のある素振りを見せて、せいぜい利用するだけして捨てようという腹です。
幸子が妙子の酷さに愕然として考え込む場面で、「妙子の暗黒面」という言葉が出てきました。
暗黒面という言葉を聞くと自然とスターウォーズが思い浮かびます。
そして「細雪」はスターウォーズより前に出ているので、オリジナルで暗黒面という言葉を使ったということです。
谷崎潤一郎さんの言葉のセンスに驚かされました。

春になり、貞之助、幸子、悦子、雪子で毎年恒例のお花見をしに京都に出掛けます。
その際、「今年は時局への遠慮で花見酒に浮かれる客が少ない」とあり、花見にも遠慮が出ていました。
また妙子が回復した時に「花と云う花は一重も八重も残らず散り」という表現があるのが目に留りました。
これは桜の花のことで、一重はソメイヨシノのことで八重は八重桜のことだと思います。
八重桜はソメイヨシノが散ってから咲き始めます。
妙子が寝込んでいた期間を「花と云う花は一重も八重も残らず散り」と表すのが良い表現の仕方だと思いました。

普段は内気で思っていることをあまり語らない雪子ですが、ごく稀に沢山語ることがあります。
雪子が普段とは打って変わり理路整然と妙子に奥畑への酷い仕打ちを批判する場面がありました。
私も妙子の奥畑を利用するだけして捨てようとする考えは酷いと思います。

やがて雪子に、公卿(くげ)華族で子爵(ししゃく)の位を持つ人を父に持つ、御牧(みまき)実という人とのお見合いの話が来ます。
藤原氏の血を引く名門の出とありました。
その頃妙子がやけに疲れやすくなっていて、やがて妊娠が発覚します。
この昭和初期の時代では結婚もしていないのに妊娠するのは今とは比べ物にならないくらい世間から批判される行為だったようで、雪子の新たなお見合いにも影響が出かねない情勢でした。
妊娠の事実を前に、幸子の10ページにも及ぶ心境吐露は印象的でした。
こいさんは、あたしや、あたしの夫や、雪子ちゃんたちが、本家の厳しい云い付けに背き、数々の犠牲を払って迄も庇ってやった好意を無にして、あたし等を何処へも顔向け出来ないような羽目に追い込んだら、痛快だとでも云うのだろうか。

どこまでも自分のことしか考えない妙子に、幸子は今までで一番気持ちがまいってしまっていました。
それでもこの現実を前に、どうにかして説得して堕胎させるか、それとも雪子のお見合いがまとまるまで人里離れた場所に隔離して極秘で出産させるか、策を考えていました。
雪子のほうは御牧実とのお見合いがついに上手く行くお見合いになっていたので、そのまま無事に結婚してほしいと思いました。

三浦しをんさんの「あの家に暮らす四人の女」、綿矢りささんの「手のひらの京」で、それぞれ本の帯の紹介文にその名前があったことから興味を持った「細雪」。
これら女性姉妹や姉妹的なものを主人公にした作品の代表的作品として引き合いに出されるのも納得な面白い作品でした。
日本文学史に残る名作とのことで、現代文学で名前が出てきたのがきっかけでこういった作品を読んでみるのも時には良いものだと思います。


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山本屋総本家 味噌煮込みうどん

2016-12-30 20:29:57 | グルメ


山本屋本店の味噌煮込みうどんの記事で、似た名前の山本屋総本家というお店があると書きました。
名前は似ていても同じ系列ではなく、全くの別会社とのことです。
先日そちらの山本屋総本家のほうに行ってみました。

私は親子煮込うどんという、鶏肉の名古屋コーチン入りの味噌煮込みうどんを注文してみました。
メニューが運ばれてきた時に土手鍋の中がかなりぐつぐつと煮えたぎっていて、このぐつぐつ具合は凄いなと思いました。
本店も総本家も熱々でぐつぐつ煮えた味噌煮込みうどんですが、総本家のほうがよりぐつぐつ度合いが凄いです。
なので卵はメニューを持ってくる直前に生卵を入れているのですが、少し時間が経つとすっかり火が通るので、黄身を味噌つゆにとろけさせてまろやかにしたい場合はメニューが来てからすぐに溶くようにしたほうが良いです。

食べてみると山本屋本店と比べて味にそれほどの差はないように思いました。
濃さとしては総本家のほうが少し濃いかも知れないです。
ただしこちらも飲みづらくはなく、すいすいと飲める美味しい味噌つゆです。
麺はこちらもかたゆでで、山本屋本店と同じく芯の部分は茹で上がっていなかったです。
すっかりこのかたゆでにも慣れ、味噌煮込みうどんにはかたゆでのほうが合うのだろうと思います。

基本の具はかまぼこ、ごぼう、ねぎ、あぶらあげです。
山本屋本店の基本の具との違いは生卵が入っていないこと、そしてごぼうが入っていることです。
今回は親子煮込うどんを頼んだので鶏肉とともに生卵も入っていました。

鶏肉の名古屋コーチンはやはりプリプリとしていました。
噛むと鶏の旨味がどんどん出てきて美味しかったです。

山本屋本店と山本屋総本家、どちらも美味しかったですが、山本屋本店のほうは漬物が無料で付いてきてしかも食べ放題です。
きゅうり、たくあん、白菜の漬物で、たくあんと白菜はなくなるとお店の人が「もっと食べますか?」と声をかけてきてくれます。
この特典の差で山本屋本店のほうがお得感があるかなと思います。

今は冬の真っ只中なのでぐつぐつと煮えたぎった味噌煮込みうどんは特に美味しいです。
年が明けたらまた食べたいと思います
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ホッとひと息

2016-12-29 20:25:00 | ウェブ日記
今日は実家に帰省するため新幹線に乗りました。
しかし新幹線に乗るまでの電車での道のりが時間的に慌ただしく、さらに名古屋駅では人だらけで歩くのが大変だったため、酷く神経が疲れてしまいました。
座席に着く時には疲労を色濃く感じました。

座席に着いてすぐ、駅のホームの自動販売機で買った温かいカフェラテを飲みました。
これが凄く美味しく、温かな甘味によって疲れていた神経が休まりました。
よく言う「お茶でホッとひと息」はまさに言い得て妙だと思います。
今日のように慌ただしさと混雑で気持ちがうんざりしている時でも、温かく甘いカフェラテを飲むと自然とその気持ちが和らぎ、落ち着いた心境になりました
飲むごとに気持ちがふっと休まり、私的にはゆっくりと飲むのが特に良さそうな気がします。

カフェラテやカフェオレに限らず、緑茶も紅茶も、飲むとホッとひと息つける魅力があると思います。
そして何の変鉄もない普通の水でもそれなりにひと息つけることから、飲み物は飲んでいる時にそれまでの心境と一旦間合いを取ることができるのが良いのだと思います。
私の場合は特に甘い系統の飲み物がリラックス効果が高いです。
慌ただしい心境になっている時は何か飲んでホッとひと息つき、落ち着いた心境になってその後に臨みたいと思います

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クリスマスから年の瀬へ

2016-12-27 21:22:18 | ウェブ日記


写真はクリスマスの少し前に名古屋駅の近くで撮ったものです。
道路沿いにクリスマスイルミネーションがあり、中でもこの写真のイルミネーションは見た目的にもクリスマスツリーっぽくて目を引きました

そのクリスマスも終わり、街には年の瀬の気配が色濃くなってきました。
毎年クリスマスイブとクリスマスが終わると一気に年越しに切り替わるのが忙しないなと思います。
今年の残るイベントは大晦日、そして年越しだけとなりました。
いよいよ2016年もクライマックスです。

年の瀬を感じるものとしては、証券取引所の「大納会」があります。
その年日本で活躍した人が登場して「カーン」と鐘を打ち、さらには「シャシャシャン シャシャシャン シャシャシャンシャン」の手締めとともに年内の取引が終了するあの場面は、まさに今年が間もなく終わろうとしているのを強く感じます。
そして大晦日の紅白歌合戦の時間くらいになると、年の瀬と言うより「年越しカウントダウン」な心境になってきます。

今日は年の瀬であり暮れも押し迫った27日です。
残り4日で今年が終わってしまうため心境的にもやや慌ただしくなってきます。
年内の業務が明日で終わり明後日には帰省しようかと思うので、明日は部屋の掃除をしてすっきりとした気分で帰省したいと思います。
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「猫に名言 フロイト、ユング、アドラーの50の言葉」清田予紀、南幅俊輔

2016-12-25 23:49:35 | 心理学・実用書


今回ご紹介するのは「猫に名言 フロイト、ユング、アドラーの50の言葉」(著:清田予紀、南幅俊輔)です。

-----内容&感想-----
この本は「主婦と生活社」という出版社から出版されています。
どんな出版社なのかネットで調べてみたら「週刊女性」やファッション誌「JUNON」などの雑誌を扱っているとのことです。
「猫に名言」は内容的にも気楽に読めるので、出版社の名前のごとく主婦をされている方がその合間に軽く何か読みたい時にも良いのではと思います。

猫の写真とともにジークムント・フロイト、カール・グスタフ・ユング、アルフレッド・アドラーの「心理学三大巨頭」の名言が書かれています。
一つの名言ごとに見開き2ページを使い、お悩みインデックス(悩みを一言で表したもの)、名言(その悩みに対応する名言)、名言への解説という構成になっています。
収録されている名言はフロイトが17個、ユングが17個、アドラーが16個で合計50個です。
明確に言葉に出来る悩みがない場合でも三大巨頭の名言に触れるという形で問題なく読み進められる内容です。
どのページから読んでも大丈夫な構成になっていて、私は順番に読んでいきました。

冒頭の「はじめに」のようなページで「猫と過ごす時間は、決して無駄にならない。」というフロイトの言葉が紹介されていました。
猫は人間に寄り添いながらも一歩引いた目で私たちを観察していて、それがフロイトを始めとする精神科医にも必要な資質であることから、フロイトはこの言葉を語ったようです。
このフロイトの言葉から、猫の写真とともに名言を紹介する形になったのかなとも思いました。

またこの「はじめに」的なページでは「心を癒す」という言葉が出てきました。
私がこれまでに読んだ心理学の本では「癒す」という言葉はほとんど出てきていなかったです。
これは心に深刻なダメージを受けた人は心理学を駆使してもそう簡単に癒せるものではないということ、そして「癒す」は軽々しく使える言葉ではないということなのだと思います。
ただし本書は猫の写真とともに名言を紹介するという気楽に読める内容なので、言葉も気楽に「癒す」を使ったのかなと思います。


まずフロイトの名言の中で印象的だったものを紹介していきます。

P24「ほとんどの人間は実のところ自由を欲しがっていない。なぜなら自由には責任が伴うからである。ほとんどの人間は責任を負うことを恐れている。」
自由はただ「自由だ!」と叫んでやりたい放題やって済むものではなく、その行動への責任が伴います。
また自由だけを叫び責任は取らない人達もいて、私はこのフロイトの言葉を見て「報道の自由」や「表現の自由」を叫びながらやりたい放題な報道をし、後で捏造がばれた場合などにもろくに責任を取らないマスコミのことが思い浮かびました。

P28「あなたの脆い部分がいずれ強さとなる。」
解説には「長所と短所は、実は表裏一体」とありました。
例えば「神経質な人」は「細かいことによく気がつく人」というように、短所に見えるものも見方を変えると長所になるということです。
自分自身が「長所になる」と認識してあげると、自然と長所になっていく気がします

P36「いつの日か過去を振り返ったとき、もがき苦しんだあの日が最も美しい日々だったと気づくことだろう。」
これは人生の晩年になったらそう思えるのかも知れないです。
私は昨年の9月にこの名言と似た趣旨の「記憶との付き合い」という記事を書いたことがあります。
私の場合今はまだ「最も美しい日々だった」とは思えないですが、嫌な記憶を受け止められるようにはなりました。

P38「インスピレーションが湧かないときは、こっちから途中まで迎えに行けばいい。」
この名言の解説に「3つのBの場所ではインスピレーションが湧きやすい」とあり、3つのBとは「Bed(ベッド)」、「Bath(お風呂)」、「Bus(バスなどの乗り物)」です。
どれもボーっとしていられる場所であり、ボーっとしているということは意識の力が弱まり無意識の力が活性化するので、何かをひらめいたりすることがあるようです。

P42「心は氷山のようなもの。氷山は、その大きさの7分の1を海面の上に出して漂う。」
心の中で自分が理解できてコントロールできる部分がそのくらいしかないという意味です。
これは私も自分自身の全てを分からなくて当然だと思います。
そして全てを分かるのはなかなかできることではないのを分かった上で、できるだけ分かるようにしていくのが大事かと思います。


ここからユングの名言の中で印象的だったものを紹介していきます。

P56「ある人の足に合った靴がほかの人にも合うとは限らない。すべてのケースに適合するような人生のレシピはないのです。」
人生のマニュアルについての名言です。
解説に「客観性を装った周囲のアドバイスも、その人の主観や偏見が入っているので鵜呑みにはできない」とありました。
たしかにその人にとっては良い方法だったとしても、それがこちらにも合うとは限らないと思います。

P58「私たちがこの世に生を享けている唯一の目的は人生という暗闇に自分で灯をつけること。」
全く何もしないでいれば人生は暗闇のままなので、自分自身の手によって灯をつけ、見える範囲を増やしていきます。
人生を楽しくしていきたいと思わされる名言です。

P63「あなたが向き合わなかった問題は、いずれ運命として出あうことになる。」
これは重い言葉だと思います。
私も運命と出会っても何とかなるように備えをしておこうと思います。

P64「他人に対して感じる“いらだち”や“不快感”は、自分がどんな人間なのかを教えてくれる。」
これはユング心理学の本に出てくる「シャドウ(影)」のことです。
例えば「謙虚な人は、傲慢な人の言動に不快感を覚え、それはその人が自分の中にある傲慢さに気づきたくないから」となります。
自分が不快なこととして押さえ込んでいることを相手が平気でやっているため、見ていて不快になるということです。

P72「アドバイスが救いになるかというと、それははなはだ疑わしい。でも、それほど害はないだろう。なぜなら、毒にも薬にもならないからだ」
アドバイスはあくまでその人にとって有効なことなので、それが他の人にも効くとは限りません。
アドバイスを鵜呑みにするのではなく、自分に合う解決法を見つけていくことが大切です。
そしてユングのこの表現はジョークが入っていてなかなか面白いと思いました。


ここからアドラーの名言の中で印象的だったものを紹介していきます。

P95「重要なことは人が何を持って生まれたかではなく、与えられたものをどう使いこなすかである。」
これは過去に読んだアドラー心理学の本にも載っていた言葉で、良い言葉だと思います。
「自分にはあれがない、これがない」とないものにばかり目を向けて悲観したり、持っている人を妬んだりするのではなく、自分が持っているものに目を向けてあげられる人でありたいです。

P105「人生が困難なのではない。あなたが人生を困難にしているのだ。人生はきわめてシンプルである。」
未来について悩み頭を抱えてしまうと、人生は困難になってしまうようです。
「現在」はとても大事なので、未来に思い悩むより、今できることをコツコツやるほうが良いと思います。

P111「あなたを支配しているのは遺伝やトラウマではない。どんな過去であれ、未来はあなたがつくるのだ。」
遺伝やトラウマを理由に過去にこだわる限り、自分を変えていくことはできないという意味です。
アドラーは「あなたは“変われない”のではない。“変わらない”という決断を自分でしているだけだ」と言っています。
過去に読んだアドラー心理学の本では「変わらずにいたいという目的を達成するために、トラウマを作り上げている」とありました。
アドラー心理学の特徴としてトラウマの全否定があり、トラウマなどないと言い切っています。
そしてアドラー心理学の本のレビューで書いたように、これだと女性が男性から酷い目に遭わされて激しいトラウマになり心身症を患っているようなケースでも、「あなたは自分が変わらずにいたいという目的を達成するために、トラウマを作り上げている」と言うことになり、これはいくら何でも酷いと思います。
私はどんな心理学も万全ではないと思っていて、これはアドラー心理学の欠点の一つだと思います(もう一つは体育会系理論になりがちな点です)。

P117「自分が不完全であることを認める勇気が必要だ。人間は不完全だから努力するのである。」
この勇気は大事だと思います。
不完全であることは全然恥ずかしくないですし、むしろ当然のことだと思います。
不完全さを認めた上で理想とするものに向かって完成度を上げていけば良いと思います。

P119「できない自分を責めている限り、永遠に幸せにはなれないだろう。」
これについては小さなことでも良いので、できたことに対して自分自身を誉めてあげるようにすると良いと思います。
誉めることで少しずつ自信が付き、それがやがて幸せにつながっていくと思います。


というわけで、猫の写真とともに心理学三大巨頭の名言をじっくりと読んでいきました。
猫の写真もどことなくそれぞれの名言を連想させるようなものになっていました。
気軽に読める内容なので気になる名言はまた後で読んでみようかなと思います。


心理学三大巨頭をより知りたい方への参考
「面白くてよくわかる!フロイト精神分析」竹田青嗣

「ユング名言集」カール・グスタフ・ユング
「面白くてよくわかる! ユング心理学」福島哲夫
「ユング心理学でわかる8つの性格」福島哲夫
「ユング心理学へのいざない」秋山さと子
「ユング心理学入門」河合隼雄
「イメージの心理学」河合隼雄

「マンガでやさしくわかるアドラー心理学 人間関係編」岩井俊憲
「嫌われる勇気」岸見一郎 古賀史健
「幸せになる勇気」岸見一郎 古賀史健


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「細雪(中)」谷崎潤一郎

2016-12-24 17:55:15 | 小説


今回ご紹介するのは「細雪(中)」(著:谷崎潤一郎)です。

-----内容-----
今年のうちに何とか極まらんと、来年は厄やさかいにな。
良縁への期待も込め、雪子は東京に転居した本家にひととき移るが、内気な娘(とう)さんに気忙しい都会はなじまない。

神戸の大水害で一命をとりとめた妙子は、救命時の思わぬ顚末があきらかになり、幸子夫婦は新たな悩みの種を抱える。
それでも花見や舞の会を重ね、日々は流れていく。

-----感想-----
※「細雪(上)」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

冒頭、妙子が将来的に結婚を考えている奥畑啓三郎に悪い噂があることが明らかになり、幸子と貞之助は結婚に反対する気持ちになっています。
その奥畑が分家を訪問してきて幸子が応対するのですが、幸子は奥畑を見ながら「気のせいか、顔つきや物の云い方にも何処となく真率を欠いたところがある」と心の中で語っていました。
私も奥畑のような調子のいい図々しい話し方をする人に良い印象は持たないです。

冒頭からしばらくは妙子の話が進んでいきます。
人形を作りながら洋裁の学校にも通い、舞も続け、かなり活動しています。
さらにはだらしない奥畑に頼らず、むしろ自分が奥畑を養っていけるだけの職業を持てるよう、洋裁の腕を高めるために洋行(西洋に行くこと)したいと考えています。
結婚を考えている相手のためなら、この時代の主流である「良家の女が職業婦人になるのは恥ずかしいこと」という風潮と対決することも辞さない覚悟、さらには奥畑の駄目さを十分分かった上でそれでも大目に見てあげようという気持ち、これらが凄いなと思いました。

7月5日、大水害が起こり、最も被害の激しい地域にある洋裁学院に出かけていた妙子が安否不明になります。
その際、板倉という写真屋に助けられ何とか死なずに済みました。

雪子が二ヶ月半ぶりに東京から戻ってきます。
雪子は東京の環境には馴染めないと感じていて、渋谷の本家から大阪の蘆屋(あしや)にある分家に少しの間でも戻れるのを常に心待ちにしています。
その少し後、妙子が舞を指導してもらっている山村のおさく師匠の容体が悪くなり、亡くなってしまいます。
また、支那事変(現在で言う日中戦争のこと)の影響で隣家のシュトルツ家の主人が行っている商売が上手くいかなくなり、シュトルツ家がドイツに帰ることになります。
9歳になる悦子とローゼマリー、ペータア、フリッツの遊ぶ様子、特に悦子とローゼマリーのほのぼのとして楽しい掛け合いがもう見られなくなるのは寂しいと思いました。
妙子の災難、おさく師匠の死、シュトルツ家のドイツへの帰国と矢継ぎ早に事件を経て、日々は進んでいきます。

横浜港から出るエムプレス・オブ・カナダという客船に乗って日本を発つシュトルツ家を見送るため、雪子と悦子は横浜港に行きます。
その数日後、幸子も久しぶりに本家に会うために上京して雪子たちと合流します。
幸子は東京について、「空気がカサカサひからびていて住みよい土地とは思えない」と胸中で語っていました。
さらに「道行く人の顔つきも冷たく白っちゃけているように見える」と感じていて、東京への心境が3ページに渡って凄く丁寧に描写されていました。
心境を丁寧に描写するのがこの作品の特徴だと思います。

鶴子は今年38歳になり、今まで年齢の分からなかった幸子はどうやら36歳くらいになるようです。
東京に来た幸子は鶴子とも久しぶりにじっくり話す機会がありました。
鶴子は今まで電話や手紙で登場するだけだったので、人物がはっきりと登場したのはこの時が始めてだったと思います。
四姉妹の中で一番昔気質で、さらに一番おっとりしているとのことです。

そんなある日、幸子が渋谷の本家に何日か泊まった後に宿にしている浜屋という旅館に、奥畑から幸子宛の手紙が来ます。
その手紙は写真屋の板倉と妙子が恋仲なのではという手紙で、奥畑は二人が付き合っているのではと疑っていました。
ただし大水害で板倉が助けに来た際の妙子の心境から、「その大水害のさらに前から既に二人は付き合っている」という奥畑の疑念とは食い違っていることが読んでいて分かりました。
手紙の内容に驚いた幸子は悦子を連れて大急ぎで蘆屋に帰ります。
次々と事件が起き、今作はなかなか慌ただしいです。
ちなみに板倉と妙子が付き合っているのではという疑念に怒り心頭の奥畑ですが、自分自身はあちこちで女遊びばかりしています。
つまり奥畑は自分が浮気をするのは良いが妙子が他の男と付き合うのは嫌と考えていて、身勝手な人だなと思いました。

物語の中盤でヨーロッパに戦争が迫りつつあることが書かれていました。
これは第二次世界大戦のことで、昭和初期が舞台なので物語の所々に戦争のことが出てきます。
「時局柄」「時局への遠慮」といった言葉がたまに登場して、戦争で緊張状態にある社会情勢に遠慮し、舞の会などの華やかな催し事が徐々に縮小していっていました。

妙子はこの年で28歳になります。
職業婦人になることにも洋行することにも本家が反対の意思を明確にし、さらには亡き父が「将来妙子のために使ってくれ」と本家に預からせたお金を渡すことにも難色を示したことに対し、妙子は激怒します。
またこの頃、妙子の行儀の悪さが目に余るようになっていて、幸子は心の中で大分不快に思っていました。
幸子の板倉を見る目の鋭さには驚かされました。
奥畑と妙子のことも、板倉と妙子のことも幸子の予想が当たっていて、鋭い人だと思います。

妙子の奔放すぎて身勝手な行動に対し、幸子は怒り心頭になります。
「あたしも今度と云う今度は、あんじょうこいさんに裏切られた云う気イして、考えると腹が立つねんわ」
「いつかの新聞の事件から始めて、どれぐらいあたし等は迷惑してるか」
幸子がこれだけ不快感を露にしているのは初めて見て、妙子の身勝手さがかなり問題視されるようになってきました。

やがて妙子が東京の本家に話をしに行くと言います。
婦人洋服店を出したい(職業婦人になりたい)という思いと亡き父から本家が預かっているお金のことを話すとのことで、どちらも本家は難色を示しているためどんな展開になるのか気になりました。
「細雪(上)」では雪子のお見合いが話の中心にあったのに対し、「細雪(中)」は妙子の身の回りのことが話の中心になっていました。

また今作ではある人物が耳の手術の失敗により亡くなってしまいます。
しかも院長は手術の失敗が気まずく患者が苦しみ出してからは極力患者の前に姿を現さないように逃げ回っていて、これは現代ではあり得ない酷い対応です。
現代なら医療ミスによる裁判になると思いました。

「細雪」の丁寧な心理描写には読んでいて引き込まれる面白さがあります。
時には何ページかにも及ぶ心理描写の中で、最初に考えていたこととは逆のことを途中から考え出したりもしていて、その考えの揺れぶりが人間らしくて良いと思いました。
未だ良縁に恵まれない雪子と奔放すぎて何かと問題を起こす妙子がどうなっていくのか、「細雪(下)」を読むのが楽しみです。

※「細雪(下)」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。


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「イメージの心理学」河合隼雄

2016-12-23 20:56:01 | 心理学・実用書


今回ご紹介するのは「イメージの心理学」(著:河合隼雄)です。

-----内容-----
ユング心理学はイメージの心理学である。
人類の意識の深層に生じる神話、昔話、象徴、記号。
それらの生命力を鍵に、夢や幻覚など個人のイメージ体験の根源にひそむ〈人間の心的現実〉を芸術、宗教、セラピーほかさまざまな角度からさぐる。

-----感想-----
「ユング心理学入門」で初めて河合隼雄さんの本を読みました。
かなり抽象的な書き方になっていて言葉の意味を捉えるのが大変でしたが、今回の「イメージの心理学」はその本よりは分かりやすかったです。

心理学には大きく分けて実験心理学と深層心理学があり、主流は実験心理学とのことです。
実験心理学は物理学を駆使して、主観を排除した「自然科学」としての心理学を築こうとしているのが特徴とのことです。
河合隼雄さんは深層心理学(その学派の一つであるユング心理学)を専門にしていた方で、ユング心理学の日本における第一人者です。

冒頭に書いてあった、人間の心の「主観を排除した「自然科学」では解明できない部分」についてのことが興味深かったです。
実験心理学は主観を排除し一切を客観的に見るため、人間を「物」のように扱います。
これは有効な方法であり実際にこの方法によって人間の行動パターンが解明されていったのですが、この物理学を駆使した自然科学の手法は、「人間の心の悩み」を解決するのには役に立たないとありました。
「物」に対しては有効ですが「心」に対しては威力を発揮できないです。
「人間を相手とする場合、それを「客観的対象」とするのではなく、むしろ感情を共有するような態度を取ってこそ、事態が詳しく分かってくる。」
これはそのとおりだと思います。
悩んでいる人から見て、「それならば、こうだ」と杓子定規な理屈だけをこねる冷淡な人には何も話す気にはならないでしょうし、共感しながら聞いてくれる人のほうが色々なことを話しやすいと思います。

この本では客観ではない部分について、カギ括弧付きの「私」という言葉を使っていました。
そして「私」こそ、近代の自然科学が研究対象外として最初に除外したものとありました。
この「私」と向き合うのがユング心理学のような深層心理学となります。
私的には実験心理学こそが自然科学的なのだからそれだけで良いとするのではなく、実験心理学と深層心理学、どちらか片方ではなく両方が揃うことが大事だと思いました。
人間は「物」ではないのですから、深層心理学も必要だと思います。

ユングは「イメージは生命力を持つが明確さに欠け、概念の方は明確ではあるが生命力に欠ける」という意味のことを言っていたとありました。
たしかにイメージには言葉では言い表しきれないものがあり、概念は言葉として明確になっているものの無味乾燥な印象を受けるということだと思います。

モーツァルトについて書かれていたことは興味深かったです。
モーツァルトは彼の交響曲を一瞬のうちに聴くことができたと語っていて、その一瞬のイメージ体験を一般の人々に伝えようとして楽譜に記すと、演奏時間が20分間に渡るような交響曲になったとのことです。
心の中に湧き起こってきたイメージがそのまま交響曲になっています。
そして音楽家や小説家など、芸術分野の人が優れたものを創造する際には、イメージが大きく関わっているとのことです。

無意識について、この本でも「個人的無意識と普遍的無意識(本によっては集合的無意識)」の概念が出てきました。
ユングは無意識には個人の経験と無関係な層があると考え、それを普遍的無意識と名付けました。
人類が共通して持つイメージのことで、これは面白い概念だと思います。
例えば太陽について日本神話でもギリシャ神話でも太陽神が登場したり、秘境の地の部族も太陽を神として崇めていたりするなど、世界的に同じイメージを持っているものが普遍的無意識となります。

男子中学生が不登校になった場合を例に説明されていた周りの人の心境は興味深かったです。
不登校は周りの人にとって困ったことなので何とかしようと思い、「原因」を探し出そうとします。
そんな時本人はなぜ登校できないのか自分でもはっきりと言葉に出来ない場合があり、ただし周りから問いただされて何か原因を言わなくてはと思い、「先生が怖い」や「中間試験で悪い点を取ったから」などと言ったりします。
周りはその怖い先生を改善しようとしたり、試験の結果があなたより悪い人も沢山いると慰めたりして学校に行かせようとするのですが、その原因は本当の原因ではないため、男子中学生は引き続き学校に行くことができないです。
すると周りは原因を本人自身に求め、「怠けている」「精神病だ」「母親が過保護だ」などと言ったりします。
この流れについて「要するに、人々は早く「安心」したいのである。」と言っていたのは核心を突いていると思いました。
原因不明の登校拒否の子供は周囲を不安にするので、その了解できない現象を早く片づけるため、「怠けている」「精神病だ」「母親が過保護だ」などと原因を作り出し、自分自身を安心させているとのことです。
そしてそのようなことをしないのが心理療法家(臨床心理士などのこと)であると筆者の河合隼雄さんは考えているとありました。

人間が寝ている時に見る夢について、マラヤ(東南アジアのマレー半島)のセノイ族のことが書かれていました。
セノイ族は夢を非常に大切にする部族で、年長者は幼少の子たちが語る夢を朝食の時間によく聴いてあげているとのことです。
その夢について問いかけをしたり、励ましてあげたりしています。
「夢を生きている」という表現が印象的でした。
さらに夢を生きているセノイ族は数世紀に渡って警察、監獄、精神病院を必要とせず平和に暮らしてきた極めて珍しい部族とあり、これには驚きました。
そしてフロイトやユングが苦労して確立していった「夢分析」と似たことを毎朝しているのだから数世紀に渡って心を病む人がいないというのも納得です。

この本では自然科学が発達して何事も合理的になった結果、その反作用として心身症になる人が増加したということが何度も書かれていました。
例を挙げると、まず一つ目は古来からの儀式や祭りを非合理なこととして排除した結果現代人は心身症になりやすくなったとのことです。
儀式や祭りには普遍的無意識との対話になるようなものがあり、その機会を排除した影響は大きいようです。
二つ目は宗教のシンボル(キリスト教の十字架など)が自然科学の力によって「ただの物である」とされ、魅力がなくなってしまったとのことです。
これについては「20世紀は、一度棄てられたシンボルの意味を再点検することに大いに力が尽くされた時代である。」とあり、宗教のシンボルの価値がもう一度見直されたようです。
三つ目は現代人は詩的言語を喪失したためにアイデンティティを見失い、多くの人が心理療法家を必要とするようになったとのことです。
変わりに科学的言語という、極めて客観化された言葉をよく使うようになり、それは便利であり強力でもあるのですが、その「心」を感じさせない無味乾燥ぶりが心身症につながっていくようです。
そして私が文学小説が好きなのはそれが詩的言語だからだろうなと思います。

この本も「ユング心理学入門」と同じく抽象的な文章は多いですが神話や昔話や芸術家などを引き合いに出し、人間が抱く「イメージ」について語っているので興味深かったです。
自然科学の力は偉大ですがあまりに何もかもを合理化しようとするとその圧迫感に心が持たなくなると思うので、人間の心は物ではないという考えのもと、自分自身の心が感じていることに注意を向けてあげたいと思います。


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女性の活躍推進について

2016-12-20 20:34:50 | 政治
ちょうど今読んでいる「細雪」(著:谷崎潤一郎)という小説が昭和初期を舞台にしていて、まだ女性の社会進出が一般的ではなかった時代のため、現代との差が凄く印象的です。
そこで女性の社会進出、活躍推進について思ったことを書いてみます。

現在、安倍晋三首相率いる自民党政権は「女性が輝ける未来を」と、女性の活躍推進を重要政策として掲げています。
昨年の8月28日に「女性活躍推進法」が国会で成立し、今年の4月1日に施行されました。
これにより従業員301人以上の企業は、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定などが新たに義務づけられることになりました。
例えば女性社員(女性管理職)が今は○人なので、これを○人まで増やしたいなどの目標になるかと思います。
私は女性の活躍を推進するのは良いことだと思います。

女性の社会進出、活躍推進については、以前から極端な意見がありました。
一つは「三食昼寝付き」などと専業主婦を馬鹿にする意見です。
あたかも物凄く怠けているかのような言い方で、社会に出て働くことのみを正義とし、家事、育児の大変さに目を向ける気はないようです。
もう一つは「女は家庭に居れば良いんだ」という、社会に出て働くことに難色を示す意見です。
こちらは「細雪」の時代のような意見で、一体いつの時代の話をしているのだろうと思います。

ちなみに女性の活躍推進も、一歩間違えると「とにかく女性も一律でみんな働くべき。専業主婦なのは怠けている」というような意見になりかねないため、注意が必要だと思います。
私は「専業主婦は三食昼寝付き(女性もみんな社会に出るべき)」も「女は家庭に居れば良いんだ(女性はみんな社会に出ないべき)」も極端だと思うので、その中間くらいが理想的だと思います。
各家庭の家族構成、経済状態、そして女性自身の人生観から、専業主婦のほうが家族生活が豊かになる場合もあるでしょうし、社会に出て働いたほうが豊かになる場合もあると思います。
女性の活躍を推進するのは大いに良いと思いますが、社会に出て働くことの推進一辺倒にならず、専業主婦として家族を支え家事、育児に励む女性にも目を向けてもらえればと思います。
専業主婦になっても社会に出て働いても、どちらを選んでも女性が輝ける未来になってほしいです。
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スパゲティハウス チャオ

2016-12-18 21:51:15 | グルメ


「spaghetti house ciao(スパゲティハウス チャオ)」という名古屋名物あんかけスパゲティーのお店に行きました。
私は「ミラカン」に目玉焼きをトッピングしたのを頼みました。
ミラカンは「カントリー+ウィンナー」のことで、カントリーはタケノコ、マッシュルーム、オニオン、ピーマン、トマト、コーンという具材です。
なかなか具材の豊富なスパゲティーになりました

サイズはS(スナック)、R(レギュラー)、J(ジャンボ)とあり、Sにしました。
Sが200g、Rが330g、Jが480gです。
Rが「一人前にちょうどいいサイズ」とありましたが、量が比較的多めなCoCo壱番屋のカレーの普通盛りご飯(300g)よりも多く、結構多めな気がします。

さっそくフォークで食べようとすると麺から一気に湯気が立ち上ぼりました。
明らかに茹で立てな物凄く熱々な状態で良かったです

あんかけはややスパイシーですが「マメゾン」のあんかけほどではなかったです。
ウィンナーがあんかけソースとよく合っていました。
あんかけソースは「マメゾン」よりもスパイシーさを減らした分少し濃い目の味になっていました。
「色々な野菜を煮込んでいる」とあったとおり、少しの酸味とともにかなり深みのある味で美味しかったです。
またいずれ食べてみたいと思います
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