読書日和

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「チェルシー」桜井亜美

2009-12-01 20:15:52 | 小説
今回ご紹介するのは「チェルシー」(著:桜井亜美)です。

-----内容-----
ネット掲示板「メビウス・ゼロ」に書き込む、“チェルシー”というハンドルネームを持つ少女。
その掲示板では、集団自殺旅行『フェアウェル・ツアー』が計画されていた。
死への旅に向かったチェルシーたち四人の男女が、行き着いた場所は?
若者たちの心の闇をリアルに描き、生きることの意味を問う衝撃作。

-----感想-----
この作品はネットの自殺サイトが大きな意味を持ちます。
そこで知り合った四人の男女が、富士の樹海へと旅立ちます。
目的は、集団自殺。
現実世界でもよくあることなだけに、とてもリアリティーがありました。
四人はどうやって死ぬかも綿密に計画していて、練炭を焚いて死ぬというものでした。
数年前によくこの類いの集団自殺のニュースを見た記憶があります。
最近はそれほどニュースにならなくなったので、一時期に比べれば減ったのかも知れません。
自殺サイトも警察によって潰されていったでしょうし。
しかしそれでもまだ、たまに集団自殺のニュースを見ることがあります。
やはりどれだけ警察が目を光らせていても、ネットの世界は途方もなく広いので、全ての自殺サイトを捜し出すのは極めて困難な気がします。

作品名の「チェルシー」とは裏腹に、自殺という怖い響きのテーマを扱っているのが印象的でした。
私はどうしてもイングランドのサッカーチーム「チェルシー」が思い浮かんでしまいます^^;
意外と物語自体は淡々としていてそれほど重くなかったのが救いかなと思います。
チェルシーたちがなぜ生きることに絶望してしまったのか、理由は様々のようです。
一つ確かなのは、彼女らは「死んだほうがマシ」という結論に至り、富士の樹海を目指したということです。
物語が後半に行くにつれて、予期せぬトラブルが発生したりして、当初の計画通りに行くか微妙な情勢になっていきます。
わずかに「生きる」ことへの気持ちが復活する人もいて、私は何とか思いとどまってくれないかな…と思いながら読みました。
およそ明るい話ではありませんが、結末が気になるので、読み手を引き付ける話ではあったと思います。

ところで。。。作者はこの小説を書くにあたり、富士の樹海に取材しに行ったらしいです。
私は樹海には行ったことがないのですが、よく行くなあと感心しました。
何しろ怖いイメージがあり、迷ったら出てこられなくなる気もしますし。
実際に行くところが、さすがプロの作家と思いました。


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