読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

上野精養軒 昔ながらのビーフシチュー

2017-07-29 17:21:12 | グルメ


7月15日、上野公園にある「上野精養軒 カフェラン ランドーレ」に寄りました。
精養軒は西洋料理の草分けとして明治5年(1872年)に築地に創業した日本で初めてのフランス料理のお店で、145年の歴史があります。
上野公園にも明治9年にお店ができ、関東大震災で築地のお店が焼失したことにより、上野公園のお店が本店になりました。
カフェラン ランドーレは精養軒創業以来の伝統の味を守り続けています。



明治時代の文豪である夏目漱石や森鴎外の小説にも上野精養軒が出てくるとのことです。
いつも上野公園に行った時に様子を見ると店の外に行列ができているのですが、この日は待たずに済んだので寄ってみました。

私はお店のお勧めの「ビーフシチューセット」を頼みました。
昔ながらのビーフシチュー、サラダ、パン又はライス、デザート、コーヒー又は紅茶のコースになっています。



最初にサラダが運ばれてきました。
レタス、カイワレ大根、ニンジン、パプリカ、紫キャベツのサラダでした。
フレンチドレッシングがかかっていて、まろやかさと少しの酸味が野菜とよく合っていたと思います。



次にライスと、明治5年の創業以来の味を守り続けている「昔ながらのビーフシチュー」が運ばれてきました。



ビーフシチューはビーフ、じゃがいも、にんじん、ブロッコリー、れんこんで作られていました。
ニンジンは紅茶で煮てあるかも知れず良い香りがしていました。
またレンコンは素揚げされています。

ビーフがよく煮込んであって凄く柔らかいです。
大きなビーフがいくつも入っていて、最初に思ったよりも食べごたえがありました。
味付けはハヤシライスと似ていて、ワインで煮込んでありかなり濃厚な味わいでした。
食べるとあっという間にトロトロになる部分と柔らかい中で少し弾力のある部分があります。



次にアイスコーヒーとデザートが運ばれてきました。
精養軒はコーヒーのお店ではありませんがまずまず美味しいアイスコーヒーでした。



デザートはバニラアイスと生クリームと桃のソースとイチゴのソースとミントの葉によって作られていました。
桃のソースは甘さと瑞々しさがあり、小さめにカットされた桃も入っています。
桃の甘酸っぱさがとても爽やかで良かったです。

バニラアイスはシャーベットに近く、さっぱりしています。
バニラの甘さとともに清涼感がありました
そして濃厚なイチゴのソースがかかっています。
この酸味が加わるとさらに爽やかで清涼な味わいになり、夏にピッタリの良いデザートだと思いました

というわけで、上野精養軒に寄って明治5年からの伝統のビーフシチューを食べることができて良かったです。
値段は高いですが深みのある良い味をしていました。
またいつか寄ってみたいと思います
コメント (4)
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靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その4

2017-07-23 14:21:51 | フォトギャラリー
※「靖国神社 みたままつり2017」のフォトギャラリーをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その2」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その3」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

みたままつり2017の「寄せられた言葉・絵画」のフォトギャラリーの最後となります。
言葉も絵画も、最後まで印象的なものがたくさんありました


-------------------- 靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その4 --------------------


「佳き年 佳き日 佳き時 佳き一瞬 時を味方に踏み出す」
鶴川流花押宗家・望月鶴川さん。


紫陽花。
画家・早川春代さん。


画家・池田蓮歩さん。
竹か柳の木だと思います。


「鎌倉の海から」
画家・酒井俊幸さん。


馬。
小笠原教場宗家・小笠原清忠さん。


「我が船の へさき群れとぶ 飛び魚は 翼ふりあって ソロモンの朝」
ニュージーランド治安判事・神谷岱劭さん。
ソロモン諸島には太平洋戦争(大東亜戦争)の激戦地、ガダルカナル島があります。


「みたまのふゆ」
歌手・涼恵さん。
みたまのふゆは御霊の思頼とも書き、英霊の方々のご加護という意味だと思います。


「一つでも多く 涙をこの胸に 未来の命が 笑えるように」
ミュージシャン・キリトさん。
Angeloというロックバンドグループのリーダー兼ヴォーカルで、毎年「懸雪洞(かけぼんぼり」を奉納しています。
これは2つ意味があるように見え、1つはキリトさん自身の歌手としての活動が、時に辛い思いをすることがあっても、その辛さは歌を聴いてくれる人達の未来の笑顔につながるという意味です。
もう1つは私達が社会生活を営んでいく上で、現在が中国や北朝鮮によって平和を脅かされる状況にあっても、その状況と向き合うことは未来の日本人が平和に暮らせることにつながるという意味です。


画家・小濱綸津さん。


富士山。
画家・高橋由さん。


「睦」
画家・市川玉悠さん。
鶏とひよこ達が仲睦まじくしています。


「帰」
プロレスラー・高岩竜一さん。
太平洋戦争(大東亜戦争)において日本に帰ってこられた人もいれば、帰ってこられなかった人もいます。
しかし帰ってこられなかった人もその御霊(みたま)は靖国神社に祀られています。


プロレスラー、第64代横綱・曙太郎さん。
右は「忍」だと思いますが左が達筆が分かりませんでした。
分かる方がいたらご教授をよろしくお願いします。


「夢に立ち向かう力」
ZERO1 プロレスラー・大谷晋二郎さん。


「英霊に神のご加護を」
プロレスラー ザ・グレート・サスケさん。


「愛」
プロレスラー・田中稔さん。


「熊本復興」
プロレスラー・将軍岡本さん。


可愛いらしいカエルたち
グラフィックデザイナー・平松都代子さん。


「先義後利
先ず義を尽くし後に利する者、国は栄える」
書家・荒牧菁峰さん。


「神は鉱物の中で眠り 植物の中で覚め 動物の中で歩き 人間の中で思惟する」
染織家・中村經子さん。
ウパニシャッドという書物にこの言葉があるようです。


威風堂々とした竹。
画家・畑佐祝融さん。


「300万の御霊(みたま)」
画家・市川章三さん。
小さな点をさくさん書いていて、この1枚で15万の点とのことです。
太平洋戦争(大東亜戦争)ではこの20枚分、300万人もの人々が亡くなりました。


菖蒲の花。
画家・田中紀以子さん。


神秘的な雰囲気の獅子。
画家・如月爽人さん。


「般若」
能面アーティスト・柏木裕美さん。


「盛徳」
書家・有山岱泉さん。
立派な徳という意味です。


「星空に ながめて浮かぶ あの人の 姿に願う 国の安泰」
外交・安全保障研究家、鈴木邦子さん。


夕焼け。
染織作家・上村米重さん。


「おちばたき」
画家・喜田川昌之さん。


「不忘敬」
書家・森田正人さん。
英霊への敬を忘れないという意味だと思います。


一式戦闘機「隼」。
イラストレーター・佐竹政夫さん。


「先義後利」
経済評論家・渡邉哲也さん。
再び登場したこの言葉、利益よりもまず道義を優先させるという意味です。
百貨店「大丸」の社是でもあるようです。


画家・山崎堅司さん。


「まことの祈り」
イラストレーター・菅ナオコさん。


朝顔とスズメ。
歯科医師・島本和則さん。


「笑おうよ 楽しいから笑うんじゃないよ 笑うから楽しいんだよ 毎日毎日前向きに 自分を信じて歩こうよ」
画家・杉浦正さん。
とても可愛いらしいお地蔵様たちです


梅の花。
染織作家・梅染晃さん。


辰(たつ)。
染織作家・木戸源生さん。


「10式戦車」
劇画家・小林源文さん。


戦艦。
鉛筆画家・菅野泰紀さん。
鉛筆だけで描いているのが凄いです


相撲で力士が相手力士を土俵の外に押し出したところ。
画家・木村浩之さん。
かなり躍動感があります


ねぷた。
弘前ねぷた絵師・津軽錦絵師、三浦呑龍さん。


かぐや姫。
湯沢七夕絵灯篭絵師・石川巳津子さん。


「大和」
女優・葛城奈海さん。


「夜桜能」
宝生流能楽師・田崎隆三さん。


「太陽の使徒 高らか鬨の声」
講談師・一龍斎貞花さん。


ジャーナリスト・佐波優子さん。
「お父ちゃんの仏様」
今から9年前、ロシアへ遺骨収容に行った時の話です。
ある日、土を深く掘りご遺骨を迎えていると、人間のような形をした骨が見つかりました。
お父さんをシベリア抑留で亡くしたあるご遺族のかたが「死んだお父ちゃんの姿のように見える」と言っていました。
これは首のところの軸椎(じくつい)という骨で、骨の中で一番人の姿に似ているのだそうです。
人が手を合わせて拝んでいるように見えます。
その方は見つかった全てのご遺骨を「お父ちゃん」と呼び、この軸椎も愛おしそうに丁寧に磨いていました。
最初は泥だらけだった軸椎はやがてあたたかい肌色に光りました。
「お父ちゃんの仏様だ」そう言ってご遺族のかたが見せてくれた軸椎は本当の人間の姿に見えました。
今、みたままつりで多くの人が訪れているここ靖国神社には、246万6千余柱の御霊(みたま)が祀られています。
誰かの大切な家族だったこの軸椎のご英霊の御霊も、今この境内に祀られているのです。


イラストレーター・かやなるみさん。


画家・ツバキアンナさん。


「安寧」
書家・斎藤貢さん。
安寧を維持するのはとても大変なことで、日本は中国の尖閣諸島侵略や北朝鮮の核実験、ミサイル発射の脅威に晒されています。
日本の安寧が続くことを願います。

というわけで3年ぶりに訪れた靖国神社みたままつりの「寄せられた言葉・絵画」のフォトギャラリー、これで終了です。
3年ぶりに寄せられた言葉や絵画を見ることができて良かったです
またいずれ「みたままつり」に行きたいです


※フォトギャラリー館を見る方はこちらをどうぞ。

※横浜別館はこちらをどうぞ。

※3号館はこちらをどうぞ。
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靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その3

2017-07-22 19:06:08 | フォトギャラリー
※「靖国神社 みたままつり2017」のフォトギャラリーをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その2」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

「寄せられた言葉・絵画」のフォトギャラリーのその3です。
その3は様々な分野の方々の懸雪洞(かけぼんぼり)が登場します。
言葉が単語の懸雪洞も文章になっている懸雪洞も印象的なものが多く、写真の整理をしながら改めてじっくりと読んでみました。


-------------------- 靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その3 --------------------


染織作家・森岡功さん。


太陽と月。
画家・渡辺つぶらさん。


みたままつりの献灯された提灯をつけているところ。
イラストレーター・ジョニ・ウェルズさん。


「歩」
俳優・誠直也さん。


獅子舞の版画。
神職・森重美典さん。


崇敬奉賛会会長・扇千景さん。
「人生きて 尊を」の後が読み解けませんでした。
分かる方がいましたらご教授をよろしくお願いします。


「夏の夜に あまたの明かり かがやきて みたま安めに 人びと集ふ」
崇敬者総代・島津肇子さん。


「鎮魂」
崇敬者総代・阿南惟正さん。


「母親」
漫才師・坂田利夫さん。


「佳きひとと 良き出逢い」
服飾評論家・市田ひろみさん。


「願望は自ら実現する」
実業家・元谷芙美子さん。


「命に感謝」
芸人・友近さん。


「拍手から迸る 鎮魂の祈り あふるる」
音楽家・つのだ☆ひろさん。


「人生に絶望はない どんな人生にも絶望はない」
俳優・浜 木綿子さん。


「時は今 ところ足もと そのことに 打ちこむ命 とわのみ命(みたま)」
落語家・三笑亭笑三さん。


うなぎ。
落語家・三遊亭金馬さん。


「ここにいるよ」
彫刻家・近藤徹山さん。
みたまはここ靖国神社におられます。


「思無邪(しむじゃ)」
歌手・渥美二郎さん。
思うことに邪念がないという意味です。


「青空見てもたのしいし、雨の日もまた、うれしくなる そんな日々を すごしてゆきたい」
歌手 こまどり姉妹・長内敏子さん。


「毎日がんばって 楽しく生きてます みなさんも楽しんでね」
歌手 こまどり姉妹・長内栄子さん。


歌手・菅原都々子さん。


「ここに幸あり」
歌手・大津美子さん。


「とは…言うものの人生は」
歌手・畠山みどりさん。
人生はなかなか簡単にはいかないです。


「夢」
歌手・青山るみさん。
夢は忘れないようにしたいです。


「民謡はふるさとの応援歌」
民謡・原田直之さん。


「人生はうた うたがあるから生きられる 人生は一回 命あるから生きられる 感謝」
歌手・佳山明生さん。


「愛」
歌手・青山和子さん。


「笑」
歌手・黒木千春さん。
姉の黒木美香さんとともに、黒木姉妹として「みやざき大使」をされているようです。
笑いのある日々は大事だと思います。


「日本の礎となられた方々に感謝致します どうか安らかにお眠り下さい」
歌手・黒木美香さん。
現在の日本があるのは、日本のために戦ってくれた英霊の方々のおかげです。
英霊の方々が日本を守ってくれなければ、当時のアジアの国々のように西欧列強の植民地にされ、国自体が滅ぼされるところでした。
感謝しています。


「謹んで英霊に捧ぐ」
歌手・歌川二三子さん。


「思えば遠し 故郷の空 ああ我父母 いかにおわす」
作家、歌手・合田道人さん。


「偲」
歌手・静太郎さん。
偲(しのぶ)という字は「人を思う」と書きます。


「不惜身命」
相撲 親方・貴乃花さん。
不惜身命は貴乃花関(当時)の横綱昇進の際の口上に登場した言葉で、自分の身をかえりみないで物事にあたることという意味です。


「離れ離れに散ろうとも 花の都の靖国神社 同じ梢に咲いて会おうよ」
重要無形文化財保持者、陶芸家・井上萬二さん。


「澄懐(ちょうかい)」
書家・松川玉堂さん。
心を静かに澄ませて胸中にある思いに身を委ねることを意味しているようです。


「此処に眠る英霊方が亜細亜の人々を愛し数百年に及ぶ白人の植民地支配に終止符を打った事を知っていますか?
戦後の誤った教育を受けた人達は立派な先人方とこの日本にもっと誇りを持ちましょう!!」
陶芸家・南雲龍比古さん。
これはそのとおりで、太平洋戦争(大東亜戦争)及び第二次世界大戦の当時、白人至上主義が世界を支配していました。
オランダやイギリス、フランスなどの西欧列強はアジアの国々を植民地にし、植民地にされた国々は滅びへの道を辿っていました。
その時代にアジアで唯一白人達に対抗できたのが日本という国で、もし日本の戦いがなければアジアの国々は植民地にされたまま滅び、世界はそのまま白人至上主義による支配が続いていました。
英霊の方々と日本に誇りを持って良いと思います。


「輝き」
彫刻家・中村晋也さん。


「感謝」
重要無形文化財保持者、金工作家・奥山峰石さん。


「老いては若やぎて 緑の色は 若杉の 常磐木の幾久し 千歳の杉ぞ めでたき」
重要無形文化財保持者、狂言師・野村萬さん。


「美しい」
画家・井上幸子さん。
私は日本は四季折々に良さがありとても美しい国だと思います。


獅子。
画家・北澤一京さん。


「遺言の 胸せまりくる 言の葉を 永遠に忘れじ 國の民なら」
特別縁故・西脇美都絵さん。
太平洋戦争(大東亜戦争)当時、ご家族の方から遺言を託されたのかも知れないです。


「みたまに捧ぐ 心」
声優・カシワクラツトムさん。


「永遠」
アーティスト・C;ONさん。


「いづこに散りゆく魂は この胸の内に生きゆく
小さな祈りを連ねる日々に 想う心 願う気持ちが
どうか咲き誇りますように 平和をもたらしますように」
タレント・奥野麻衣子さん。
これは「その1」の最後に紹介した言葉と対になるかと思います。
まず一人ひとりが平和を祈り、想い、願うのは良いことです。
重要になるのが国としては祈り、想い、願うのみでは中国や北朝鮮のような現実にある脅威から平和な暮らしを守ることはできないという点です。
現実にある脅威にしっかりと目を向け、奥野麻衣子さんのように平和を願う人の日常が破壊されないように、防衛力を強化して平和な暮らしを守れる力を上げていくことが大事だと思います。


バラの花。
画家・永江一博さん。


百合の花。
画家・木村由美さん。


「氣韻生動」
染織作家・田畑喜八さん。
生気が満ち溢れているという意味です。


躍動感のあるイカ
画家・一杉早苗さん。


みたままつりの盆踊り。
画家・畠奈津子さん。
見ていると気持ちが明るくなる、とても良い雰囲気の絵だと思います

というわけで「その3」はここまでで、「その4」へと続きます。
「その4」もどうぞお楽しみに

※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その4」をご覧になる方はこちらをどうぞ。


※フォトギャラリー館を見る方はこちらをどうぞ。

※横浜別館はこちらをどうぞ。

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靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その2

2017-07-20 22:10:33 | フォトギャラリー
※「靖国神社 みたままつり2017」のフォトギャラリーをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

「寄せられた言葉・絵画」のフォトギャラリーのその2です。
その2では絵画が多く登場し、それぞれ伝わってくる雰囲気があります。
印象的な言葉や俳句、短歌などもあり、興味深く読んでいきました。


-------------------- 靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その2 --------------------


「祈る 平和な世界 おもてなし日本 走る三馬」
画家・村越彰さん。


鯛に乗ったえびす様。
画家・中村麻美さん。
七福神の一人です。


「和」。
画家・茂木美津子さん。


金魚。
画家・米澤和子さん。


「愛なき人生は暗黒なり 汗なき社会は堕落す。」
書家・石原草山さん。


雨の降る中で咲く紫陽花。
画家・鶴岡山路さん。


「靖国の社にねむり給う 英雄の霊に捧ぐるの歌
   歌
日本で オリンピックが 出来るのも 靖国にねむる 兵士に感謝」
特別縁故・荒井慧さん。
今までのみたままつりで何度もお見かけした名前で、「特別縁故」は太平洋戦争(大東亜戦争)と深い縁があるということです。
87歳とのことで、まだまだみたままつりに懸雪洞(かけぼんぼり)を奉納してほしいと思います。


「哀しみは 胸の坩堝(るつぼ)に 蝉しぐれ」
俳人・松村昌弘さん。
真夏になり蝉しぐれを聞くようになると、太平洋戦争(大東亜戦争)に思いを馳せ哀しみが胸一杯に広がるという意味かなと思います。


「捕虫網 白きは月日 過ぎやすし」
俳人・宮坂静生さん。


「風失せて 野菊の朝の 来ておろし」
俳人・稲畑 汀子(ていこ)さん。


「誰にしも 華ありしとき 花火見る」
俳人・鈴木貞雄さん。
最後の二文字は合っているか分からないので、違っていたらご教授をよろしくお願いします。


「ありがとうって 今日も素直に 言えたかな 大切な人に」
画家・安並美智子さん。


「ソ連抑留 御霊鎮魂」
特別縁故・富山県慰霊碑奉賛会会長 山田秀三さん。


「大きな大仏さまを見上げると広い空があった 心もかるくなる そんなひととき」
画家・河本みつ子さん。


もう一度大仏。
画家・上坂幸市さん。


神職・吉川正紀さん。


紫陽花。
画家・田中玉弘さん。


花菖蒲。
画家・鈴木斐子(あやこ)さん。


「鮨
一杯飲ンデ 又二杯 つまみと食べし 鮨の味 三杯は夢と 茶ニシテ帰ル!!」
画家・芝岡聡史さん。


「進徳」
書家・大澤逸山さん。


画家・西野和子さん。


「もらったご縁に おかげさま ありがとう」
画家・塩澤烈子さん。
ニワトリが可愛らしいです。


山。
画家・河野未美さん。


桜の花と、白川郷のような雰囲気の藁葺き屋根の家。
画家・産形美智子さん。


画家・新澤淑子さん。


雄々しき対決。
画家・柏木美保子さん。


「清風緑韻」
画家・相澤きよみさん。
菖蒲の花とカエルに和の風格があります。


特別縁故・一杉昭夫さん。


「伊勢倭姫」
佐藤緋呂子さん。
伊勢神宮を創建された倭姫命(やまとひめのみこと)です。


可愛らしい赤ちゃん。
見守る動物たちも可愛らしいです。
画家・坂口芳秋さん。


紫陽花。
画家・小林恒子さん。


「過去に正しかった答えが今も正しいとは限らない 
過去に間違っていた答えが今も間違っているとは限らない
世の中は好いが好いじゃない 悪いが悪いじゃない 
幸福が幸福じゃない どんな人でもやはり人間は人間でそれ相応の安慰と幸福とはある」
書家・鈴木基水さん。


馬。
画家・横山了平さん。


山。
画家・木本重利さん。


「第七十二代横綱 稀勢の里寛関
 日本開山
あがるや軍配 えがおでうける 櫓おとしの 勝ち名のり」
画家・柴田貢代さん。
日本開山は大相撲の最高位である横綱の別名「日下開山(ひのしたかいざん)」のことかなと思います。
日下開山は天下無双の強さという意味です。


「硫黄島 散りて散らさぬ もののふの 心の桜 咲き匂う島」
音楽家・小宮佐地子さん。
日本軍に余力のなくなっていた太平洋戦争(大東亜戦争)後期の島への上陸戦でアメリカ軍の戦死・戦傷者数の合計が日本軍の戦死・戦傷者数の合計を上回った稀有な例である最激戦地、硫黄島を題材にした短歌です(短歌は飯塚羚児さん作)。
この短歌に音符を付け、歌にしています。


画家・網本幸子さん。
風入れる 小袖 の後が読めなかったです。
分かる方がいたらご教授をよろしくお願いします。


画家・桜井圭子さん。


「小さきいのち」
画家・水上玲さん。


「梅雨の花 あじさい」
画家・保井梅香さん。


「人生なにごとも一生県命が一番」
画家・三引良一さん。


「入母屋(いりもや)の 家紋がわらや 小鳥来る」
画家・遠井雨耕さん。


画家・亀井三千代さん。
花のように見えます。
そして強く訴えてくるものがあります。


「yasukuni(靖国)」
画家・岩山義重さん。


画家・青木孝さん。

右上「呼べど還らぬ遺骸を 囲みて今宵 夜とすがら 尽きぬ名残を惜しむかな 眠れわが友 安らかに ああ戦は勝ちにけり
吾が益荒男(ますらお)は今ぞ今 焔は天に輝きて 功勲も高き 亡き友の 英魂天に帰る夜か 月下の陣に音絶えぬ 「眠れ戦友」より」

真ん中下「一番乗りをやるんだと 力んで死んだ戦友の 遺骨を抱いていま入る シンガポールの街の朝 「戦友の遺骨を抱いて」より」

左下「思えば悲し 昨日まで 真先駈けて突進し 敵を散々懲したる 勇士は此處 (ここ)に眠れるか
戦いすんで日が暮れて 探しに戻る心では どうぞ生きていてくれと 物など言えと願うたに 「戦友」より」

 
蓮の花。
画家・南雲正井さん。


おかめさん。
画家・寺岡多佳さん。


「ゆく川の 水さながらに 執着の 想いを流し みこころのまま」
特別縁故・鮫島純子さん。
執着の想いを流し、自然体の心で過ごせたらとても良いと思います。


「みたまに捧ぐ。」
画家・土屋淑子さん。


「ありがとう」
書家・今野桃壽さん。
感謝の言葉が、靖国神社に眠る英霊への供養になると思います。

というわけで「その2」はここまでで、「その3」へと続きます。
「その3」もどうぞお楽しみに

※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その3」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その4」をご覧になる方はこちらをどうぞ。


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靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その1

2017-07-18 21:37:36 | フォトギャラリー
※「靖国神社 みたままつり2017」のフォトギャラリーをご覧になる方はこちらをどうぞ。

3年ぶりに訪れた「靖国神社みたままつり」では今回もたくさんの「懸雪洞(かけぼんぼり)」が奉納されていました。
この懸雪洞にはそれぞれの人がみたままつりに寄せた言葉や絵画、書道書きなどが書かれています。
今回も一つ一つの懸雪洞を興味深く見て行きました


-------------------- 靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その1 --------------------


真夏の日差しが靖国神社の桜によって木漏れ日になって降り注ぐ中を、懸雪洞を見ながらゆっくり歩いていきました。


「志」
俳優・的場浩司さん。


「雲の通ひ路」
俳優・伊藤つかささん。


「紺碧の」
俳優・勝野洋さん。


「感謝 兵隊さんありがとうございました」
ジャーナリスト・井上和彦さん。


「感謝の志Forever! 末広平和」
ナポレオンズ・ボナ植木さん。


「安らぎを求めて思う故郷の朝」
落語家・林家三平さん。


「幸せや 哀しみ深き 人生を 今日も生きよう あなたとともに」
タレント・泰葉さん。


「さらさらさらと さくら舞う 天に召されしみたまへ 平和の祈りを捧げます」
作家・海老名香葉子さん。


「薫風に 舞うは祈りの 紙一葉」
漫画家・佐々木あつしさん。


「五穀豊穣」
漫画家・久松文雄さん。
中央に天照大御神(あまてらすおおみかみ)がおられます。


「鎮魂」
漫画家・平松伸二さん。


「感謝」
漫画家・ちばてつやさん。
英霊の方々が日本のために戦ってくれたおかげで日本は植民地にされずに済み消滅せずに済みました。
感謝です。


イラストレーター・わたせせいぞうさん。
浴衣に団扇に風鈴の夏らしい雰囲気です


「心は命」
漫画家・松本零士さん。


「言葉は国の防波堤 敷島の大和の国は言霊の幸はふ国ぞ 世界一、豊かで麗わしい日本語を大切に致しましょう」
脚本家・井沢満さん。
敷島とは日本の古い国号の一つです。
私も日本語の表現の奥深さ、きめ細やかさは凄く良いと思います。
自国の言葉は見失わないようにしていきたいです。


「芸道一筋」
俳優・浅香光代さん。


「元気ハツラツ」
俳優・大村崑さん。


「東京は世界の大都市と比べても緑が多いそうです。皇居 神社 お寺の緑のおかげですね。たくさんの「酸素」を有難うございます。」
俳優・伊東四朗さん。
東京駅の近くでは皇居外苑、原宿駅の近くでは明治神宮など、大都市の中にも緑の多い場所があります。
そしてそこに行くと落ち着いた気持ちになれます


「離朱之明 不能視睫上之塵」
俳優・石坂浩二さん。
いくら目のよい人でも、自分の睫(まつげ)の上の塵を見ることはできないという意味で、賢明な人にも考えの及ばないことがあるということです。


万葉集より。
学者・小堀桂一郎さん。
海原に霞が棚引き、鶴の鳴く声が悲しく聞こえる夜は、故郷の国が偲ばれる、というような意味です。


「脱  英霊がたった今、なにを望まれているか、ぼくらは一緒に考えてみませんか。
すべての拉致被害者を救出すること、そして国民を護らない憲法だからこそ拉致事件も起きたという事実から脱すること、それに尽きるのではありませんか。」
参議院議員・青山繁晴さん。


「靖国の みたままつりに 集い来る 老若男女 天は見守る」
元内閣総理大臣・小泉純一郎さん。


「平和を語りつぐ」
崇敬者総代・水落敏栄さん。


「悠久の大義」
崇敬者総代・寺島泰三さん。


「人生意気に感ず」
崇敬者総代・葛西敬之さん。
字の雰囲気がこの言葉とよく合っていると思います。


「和敬清寂
茶は服の良きように点て 炭は湯のわくように置き 冬は暖かに 夏は涼しく 花は野の花のように生け 刻限は早めに 降らずとも雨の用意 相究に心せよ」
特別縁故・青木寛子さん。


「靖国神社にまつられる多くの御魂(みたま)に深謝し 日本の将来に幸あれとお祈りする」
画家・阿部風木子さん。


「感謝」
書家・淺沼一道さん。


桜の花
画家・後藤真由美さん。


ゆず。
画家・阿部毬子さん。


「酔芙蓉 朝白く 昼うすべに色に 夕赤く」
画家・酒井友子さん。
一日のうちにこんなに色の変わる花は珍しいです。


鵜飼。
画家・矢形嵐酔さん。


チューリップ。
画家・鎌島純子さん。


フランスにあるシュノンソー城。
画家・服部正子さん。


「夕日に感謝と祈りを 姉弟二人幸せ願う ひと時」
画家・高橋幸子さん。


「靖国の さくらとなりし わが友と 逢わむと云いつ 父の逝く」
書家・平井俊子さん。
靖国神社に眠る友に会うと言い父君が旅立たれたようです。


鯉。
画家・井上真澄さん。


「残雪の妙高山」
画家・小島光春さん。


書家・高砂京子さん。
これはどんな意味が込められているのか気になります。


紅葉と清流。
画家・岡田和子さん。


こけし。
画家・荒井美代子さん。


白百合。
画家・彦坂美保子さん。


花菖蒲。
画家・井上明敏さん。


「世界の平和を願い努力している日本 あとは強い日本になることである」
アナウンサー・鈴木史朗さん。
これは深い言葉で、まず平和を願うのはとても良いことです。
ところが「願う」だけでは平和な暮らしを守ることはできず、守るためには国としての強さ(防衛力)が必要になります。
力のない国がどんなに「平和が良い」と願っても、悪意のある強い国が例えば領土を侵略してきた場合、平和への願いはあっという間に打ち砕かれてしまいます。
日本固有の領土である尖閣諸島を侵略しようとしている中国がまさに「悪意のある強い国」で、日本がこの先も侵略されずに暮らしていくためには「強い日本」になり防衛力、抑止力を高め、相手に侵略を思い止まらせることが必要だと思います。

というわけで「その1」はここまでで、「その2」へと続きます。
「その2」もどうぞお楽しみに

※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その2」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その3」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その4」をご覧になる方はこちらをどうぞ。


※フォトギャラリー館を見る方はこちらをどうぞ。

※横浜別館はこちらをどうぞ。

※3号館はこちらをどうぞ。
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靖国神社 みたままつり2017

2017-07-17 17:08:55 | フォトギャラリー
3年ぶりに「靖国神社みたままつり」に行きました。
靖国神社みたままつりは第二次世界大戦における213万余柱に上る英霊をお盆に合わせて慰霊するお祭りで、毎年7月13日から16日まで行われます。
今年は15日に東京に用事があったのでその帰りにみたままつりに行きました。
真夏の日差しが降り注ぐ中、靖国神社の厳かな雰囲気とお祭りの華やいだ雰囲気の合わさったみたままつりならではの雰囲気を楽しみながら歩きました


-------------------- 靖国神社 みたままつり2017 --------------------


靖国神社にやってきました
夕方から本格的になるお祭りに向けて、大鳥居のところで神輿が搬入されていました。


真夏の日差しが降り注いでいて凄く暑いためまだ人はまばらです


今年もたくさんの提灯が献灯されていました。


昭和天皇が靖国神社の臨時大祭に行幸された際の写真が展示されていました。
現在は中国と韓国が因縁をつけてくるため天皇陛下が靖国神社をご参拝しずらくなっています。
日本国民の象徴の天皇陛下が、日本のために戦ってくれた英霊の慰霊に靖国神社をご参拝するのは、他国に干渉されるようなことではないです。
天皇陛下がお気兼ねなく靖国神社をご参拝できるようにするには、国民がこのことをしっかりと認識し、因縁をつけてくる国に毅然とした態度を示すことが大事かと思います。


大村益次郎銅像前の広場。
ここでは毎年13日から16日まで4日連続で夜に盆踊り大会が行われています。




献灯は誰でもすることができます。


毎年膨大な数の提灯が献灯されるのは凄いことだと思います。
夜になるとこの提灯に明かりが灯り、和の幻想的な雰囲気になります


後ろを振り向くとこのようになっています。


太陽が背中側になり逆光ではなくなるのでこちらのほうが写真は撮りやすいです。


外苑休憩所。
昨年からみたままつりでは露店が出店できなくなったため、ここは貴重な食べ物と飲み物のある場所です。
マナーの悪い人がいるため露店が禁止になったとのことでこれは残念です。
またいつか露店が復活することを期待します。


二つ目の鳥居までやってきました。


神門。


宮城県護国神社から奉納された七夕飾り。




私はこの七夕飾りが好きで、みたままつりに行く際には見るのを楽しみにしています。


菊花の紋章、いわゆる「菊の御紋」です。


いよいよ靖国神社拝殿が見えてきました。
左手にずらりと並んでいる雪洞(ぼんぼり)には、みたままつりに寄せられた言葉や絵画、書道書きなどが書かれています。
私はこれを見るのが好きでよくフォトギャラリーを作っていて、今年も作ろうと思います。
3年前に作ったフォトギャラリーをご覧になる方は次のリンクからどうぞ。

※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その2」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その3」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その4」をご覧になる方はこちらをどうぞ。




小型献灯の案内所もあります。


向かって右手に行くと能楽堂があります。


ちょうど神楽が行われていました。


三つ目の鳥居まで来ました。


靖国神社拝殿です。


靖国神社に参拝するととても厳粛な気持ちになります。


小型の提灯もたくさん献灯されています。


通常の提灯と小型の提灯合わせてかなりの数の人がみたままつりに気持ちを寄せてくれていることが分かります。




参拝を終え、またこの場所を訪れたいと思いました。

というわけで、3年ぶりにみたままつりの雰囲気を楽しむことができました。
そして今回も靖国神社に寄せられた言葉や絵画の雪洞を見て回ったので、次はそのフォトギャラリーを作ろうと思います。
印象的な言葉や可愛らしい絵画などもあり興味深かったです

※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その2」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その3」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2017 寄せられた言葉・絵画 その4」をご覧になる方はこちらをどうぞ。


※フォトギャラリー館を見る方はこちらをどうぞ。

※横浜別館はこちらをどうぞ。

※3号館はこちらをどうぞ。
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「あと少し、もう少し」瀬尾まいこ

2017-07-16 16:21:16 | 小説


今回ご紹介するのは「あと少し、もう少し」(著:瀬尾まいこ)です。

-----内容-----
陸上部の名物顧問が異動となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。
部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが……。
元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。
寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。
あと少し、もう少し、みんなと走りたい。
涙が止まらない、傑作青春小説。

-----感想-----
田舎にある市野中学校が舞台で、冒頭の語り手は三年生で陸上部部長の桝井日向(ひなた)です。
市野中学校の陸上部には満田先生という名物顧問がいたのですがこの春に離任してしまいます。
そして始業式の日、美術担当の上原先生が陸上部顧問になることが明らかになります。
上原先生は20代後半の女性教師で、桝井の語りによると「どんくさそうでとろそうでひょろひょろしていて……。とにかく、陸上部を受け持つのに一番不適な教師」とのことです。
桝井は中学最後の駅伝を今までで一番のものにするはずだったのですが顧問が頼りないためがっかりとした気持ちになります。


「1区」
1区の語り手は三年生の陸上部員、設楽亀吉(かめきち)です。
秋の駅伝大会で設楽がスタートするところから物語が始まります。
6位までに入ると県大会に行くことができます。
この作品は時間が進んだり戻ったりし、どの区間も冒頭に駅伝大会で走り出す場面が書かれていて、そこから1区から6区までの6人がどんな気持ちで駅伝大会当日まで進んできたかが書かれています。
6人とも内に秘めた思いがあります。

設楽は気が小さく名前が亀吉なこともあり、小学校低学年からランクが常に最下層だったとありました。
桝井とは小学校も一緒でした。
小学校6年の時の駅伝大会で、同じく小学校が一緒だった大田が急に出場を放棄したために、設楽は周りから押し付けられる形で駅伝を走りました。

中学校に進学した設楽は桝井に誘われ陸上部に入ります。
設楽は桝井の良いところについて次のように語っていました。
僕の意見なんか聞かなくていいのに、いちいち確認してくれる。桝井のいいところだ。
先輩だろうと女の子だろうと不良だろうと、誰とでもかまえず話せる。それが、桝井が好かれる理由だと思っていた。でも、きっと逆だ。桝井は後輩にだって僕みたいなやつにだって、態度を変えなかった。

この中で「でも、きっと逆だ。」という言葉が印象的でした。
桝井のほうが周りの人全てを好いている、好こうとしているということかなと思います。

桝井は上原先生にがっかりしていますが上原先生を無視して練習を進めることはしませんでした。
そこも桝井の良いところだと思います。

駅伝のメンバーをどうするか桝井と設楽が話している時、桝井が大田に走ってもらおうと言います。
不良の大田をメンバーに入れることに躊躇う設楽に対し、桝井はかなり乗り気になっています。
躊躇う設楽が空を仰いだ時の次の描写は印象的でした。
五月も真ん中。空の色が静かに淡くなっていく。一年で一番夕方がきれいな時期だ。
これはまさにそのとおりだと思います。
5月の真ん中頃は気候も安定していて明るく心地よく晴れることが多く、夕方もとても綺麗です

設楽はここのところ良い記録が出なくなっています。
普段の設楽は3000mを9分台で走れるのですが最近は10分台になってしまっていて、どうして良い記録が出ないのか自身にも分からないようです。

梅雨が明けて真夏になった頃、ついに大田が駅伝練習に参加します。
態度は大きいですがみんなに礼を言われてまんざらでもなさそうです。
夏休みになって二週間くらいすると大田に続いて吹奏楽部の渡部も練習に参加するようになります。
さらにみんなからジローと呼ばれている仲田も練習に参加するようになります。
ジローは生徒会書記でバスケ部部長をしていて他にも色々なことをしているお調子者で、桝井はジローがいると場が楽しくなると言っていました。
設楽も6人揃った駅伝メンバーの中ではジローが一番気兼ねなく話せるようです。

二学期になってすぐ桝井からまず1区と2区のメンバーが発表されます。
1区が設楽、2区が大田になり、大田が苦手な設楽は「百歩譲って僕の1区はしかたがないにしても、その先に待つのが大田だなんて恐怖だ」と胸中で語っていました。

駅伝大会まで10日に迫った日、大田が設楽に話しかけてきます。
大田は常に「うぜえ」「だりい」などと言っていて周りと打ち解けようとはしないのでこれは意外でした。
そして大田が「お前こんなもんじゃねえだろ。小学校二年からお前は俺の何倍も速かったはずだ」と設楽に言い、設楽のことを凄く速い人だと思っているその気持ちを言葉にして伝えたのも意外でした。
単に「うぜえ」「だりい」と言っているだけではなく周りをよく見ているのだと思います。


「2区」
2区の語りは大田です。
1区の最後で襷を渡す時に設楽が怖いと思った大田の表情は、大田としては笑っているつもりでした。
大田が他人のためにそんな気遣いをするとは驚きました。

大田が小学校時代に全教科の勉強を投げ出し何もしなくなる様子が描かれていました。
また小学校6年の時に駅伝を投げ出したのは足を捻挫していたからでした。
そして駅伝を投げ出したのを機に運動も投げ出すようになり、中学に入学する時には何もやろうとしなくなっていました。

中学三年になってからの大田はテニスコートのベンチに寝て昼を過ごし午後の授業もさぼっているのですが、桝井が駅伝を一緒に走ろうと勧誘しに来るようになります。
受験の話題になった時、桝井の言葉に大田が驚きます。
「教師は受験受験って言うけど、そんなのただの脅しってみんなわかってるし。焦らなくたって、世の中少子化なんだよ。それなりにやれば高校くらい受かるじゃん」
大田は「そ、そうなのか」と驚いていて、この反応は普段の態度の大きい大田とは違っていて面白かったです。

大田は心の中では桝井の勧誘に乗っても良いと思っていますが素直になれないでいます。
駅伝は嫌いじゃないし、小学生の時みたいに走ってみたいという気持ちが心の奥底にはある。でも、素直に乗れない。馬鹿でくだらなくて惨めなプライドが俺を邪魔するのだ。
「馬鹿でくだらなくて惨めなプライド」という言葉が印象的で、やはり大田は単に悪ぶっているだけの子ではなく、自分自身の気持ちを客観的に見ることができるのだと思います。

桝井が「大田を駅伝メンバーに入れる」と言った時の
上原先生の反応は面白かったです。
「だって、大田君どうせすぐ辞めるって言いそうだし、練習だって来ないだろうし、何よりこんな金髪じゃ大会なんか出られないでしょう」
「うわ、眉毛もないじゃん。だめだよ。絶対言うこと聞かなそうだし、記録会とか行ったら、他の学校の先生に注意されるしなあ」
上原先生は本人がいるのに好き放題言っていて大田も「なんだ、この教師」と面食らっていました。

桝井に何度も勧誘され大田の気持ちも変わっていきます。
俺なんかが必要とされるのは、これが最後かも知れない。こんな俺を立て直そうと誰かがてこを入れてくれるのも、これで終わりかもしれない。
ついに大田が駅伝の練習に参加するようになります。

夏休みに駅伝の試走に行く時、屁理屈ばかり言っている渡部が大田に嫌味を言ってきて大田が怒る場面があります。
その時桝井にたしなめられた大田は胸中で次のように語っていました。
「そうだ。走る前にあんまり桝井に気を遣わせちゃいけない。桝井だって走るのだ。」
本当に大田はよく他人を気遣っていて、普段のぞんざいさとは裏腹に良い感性を持っているのだと思います。

2区の大田の話は凄く面白く、笑ってしまう場面が何度もあります。
特に上原先生との話が面白かったです。

そして胸が熱くなる場面もあります。
若き熱血教師の小野田先生が大田のことを気にかけていて駅伝大会でも応援に駆けつけます。
「お前は本当にやれるやつなんだからな!走れ!」
この言葉に大田が思ったことは興味深かったです。
「一つ覚えみたいに教師が口にする言葉。だけど、小野田のは少しだけ違う。本当はやれるやつじゃなくて、本当にやれるやつ。」
「本当はやれるやつ」が「その時は舞台に立たず何もしていないが本来はできるはずだ」という歯がゆさのある意味合いなのに対し、「本当にやれるやつ」は舞台に立っている人が周りの人が信じていたとおりの力を発揮するという意味合いで、一文字違うだけでかなり躍動感のある言葉になっています。


「3区」
3区の語りはジローで本名は仲田真二郎と言います。
ジローは「頼まれたら断るな」が母親の教えで何でも引き受けています。

駅伝は学校をあげて取り組んでいて、毎年県大会に進出しています。
ジローは当初は「速くもない俺が走って上に進めないとなると大問題だ。放課後や夏休みに練習するのが面倒でもある。」と考えていて駅伝の勧誘に乗り気ではなかったですが、やがて練習に参加するようになります。

ジローが唯一苦手とするのが渡部で、渡部が駅伝メンバーにいるのを見てぎょっとします。
渡部は何かとジローにつっかかってきて、ジローは「渡部は俺のことを嫌っている」と見ています。

記録会で桝井がジローに声をかける場面があります。
桝井は本来の力が出ずに不本意な結果だったのですがにこやかにジローに声をかけていました。
それを見たジローは桝井の胸中が気になります。
「桝井にとって納得いく結果じゃなかったはずだ。それなのに、今、どんな気持ちで俺を励ましているのだろう。」
桝井は常ににこやかで爽やかな態度で他人に接するのですが、本当はどんなことを思っているのかが気になります。

この作品は前の区間の人の語りで描かれていた場面が後の区間の人の語りでも登場します。
ある場面を他の人はどう見ていたかが書かれているので興味深いです。

珍しく渡部がジローをかばう場面があります。
渡部はジローが周りに都合よく使われることにイライラしています。
これは渡部自身が周りに都合よく使われたりすることのない孤高の存在になりたいと思っていて、それとは真逆のジローを見ると自分自身がなりたくない存在が目の前にいることになるのでイラつくのだと思います。

ジローは大田がこの駅伝を拠りどころにしているのを知っています。
駅伝大会で大田から襷を受け取った時、ジローは次のように語っていました。
いい加減なことばかりやってきた大田にとって、この駅伝の持つ意味は大きい。駅伝にかかわっていた時間は、大田にとって唯一中学生でいられた時間だったにちがいない。いや、まだこの時間は続く。上の大会に進んで、あと少し大田にこういう思いをさせてやりたい。
小説の題名にもなっている「あと少し」という言葉が出てきました。
ジローも他人を思いやれる人で、この思いはとても良いと思います。


「4区」
渡部孝一が語り手で、桝井が一番勧誘に苦戦した相手です。
渡部は駅伝には汗や涙や努力が付きまとっていると思っていて、そういったものを好まないため勧誘も断り続けています。
難攻不落の渡部に対し、やがて上原先生が勧誘に行きます。
桝井に頼まれてやってきた裏事情をペラペラ喋ってしまう上原先生に渡部はあきれかけますが、上原先生の真の狙いに気づきます。
「こいつ、確信犯だ。自分の手の内をオープンにしておいて、俺の心も開かせようという魂胆だ。」

上原先生は渡部の自分を作っている特徴を見抜いて次のように言っていました。
「じゃあ、渡部君って、何のために芸術が好きな感じにしてるの?」
「は?」
「どうして必死で知的な雰囲気を出そうとしてるのかなって」

上原先生はぼんやりしているように見えてかなり鋭いです。
能天気に見えるしゃべり方をしながら、巧みに相手の様子を見て性格の特徴を捉えています。
そして重要な場面では必ず事態を打開する言葉を相手にかけています。

渡部は祖母との二人暮らしで、周りの人達に「ばあちゃん」と二人暮らしなのを知られたくないと思っています。
また駅伝の練習に参加するようになってから渡部はどんなふうに自分を作っていたのか時々分からなくなることがあると語っていました。
本来の自分とは違う姿を無理に作ったとしても何かきっかけがあってその姿に亀裂が入ると、今までどおりその姿を維持していくのはとても苦しくなると思います。

渡部も桝井の不調に気づいています。
そんな中、桝井から3区から6区の区間配置について驚きの発表があります。
3区がジロー、4区が渡部、5区が桝井でアンカーの6区は俊介です。
誰もが6区は桝井だと思っていたためみんな言葉を失います。
そしてこの配置に上原先生が珍しく何度も食い下がって強硬に反対します。
上原先生の反対にイライラした桝井はかなりひどい言葉を言ってしまい渡部も絶句していました。
「桝井はほかにこの場を収める方法が思いつかなかっただけかもしれない。だけどだ。こんなにすべてを否定してしまう言葉はない。」
これはそのとおりだと思います。
言ってはいけない言葉というのがあります。
常ににこやかで爽やかだった桝井の初めて見る普段とは違う姿でした。
この時渡部は次のように思います。
つくろっているのは、俺だけじゃないんだ。誰だって、本当の部分なんて見せられるわけがない。生きていくってそういうことだし、集団の中でありのままでいられるやつなんていない。
これもそのとおりだと思います。
他の人と接している中でどんな場面でも全く繕わずにありのままでいる人はそうはいないと思います。

駅伝大会を二週間後に控えた最後の試走の時に渡部と俊介が話していました。
渡部は両親が離婚して小学二年生の時から祖母と二人で暮らしているとありました。
親友についての話になり、俊介が次のように言っていました。
「どういうのが親友かって難しいけど、自分の中を見せてもいいと思える相手は親友って呼んでもいい気がするんです」
心の中の本当の気持ちは誰にでも話せるようなものではなく、たしかにそれを話せる相手は親友と呼べると思います。


「5区」
二年生の陸上部員、河合俊介が語り手です。
保育園の頃からの友達の修平に誘われて陸上部の見学に行った時、桝井の走る姿に衝撃を受け入部します。

俊介は桝井について「いつだって桝井先輩はすっきりしている。悔しさやねたみなんて持ち合わせてないみたいにさわやかだ。」と語っていました。
ただし最近の桝井は不調になっていて爽やかではない表情を見せることがたまにあります。
俊介は桝井のことを凄くよく見ていて、次のようにも語っていました。
「最近は考えこんだり、不安そうにしたりする姿を見せることもあった。もちろん、桝井先輩はそれに誰かが気付く前に、にこやかに笑ってみせる。けれど、そのふとした瞬間が僕には気になってしかたがなかった。」

桝井から発表された駅伝大会での区間配置に俊介は驚きます。
その後桝井と二人で話す場面があるのですが桝井の言葉は俊介の心をまるで分かっていなくて俊介は愕然としていました。
常ににこやかで爽やかでも周りの人の気持ちまでは分からないようです。

俊介は修平と話している時に自身が心の中で抱えているものを打ち明けるべきか迷います。
「自分の中を開けられる人がいたら、抱えているものは軽くなる。それも知っている。でも、友達にそこまで開いていいのだろうか。」
これは渡部と親友について話していた時に俊介が言っていた言葉ともつながっています。
誰かに心の中に抱えていることを打ち明けるのは勇気が要ることですが、それだけではなく打ち明けた場合に相手がどう思うかも考える必要があります。
俊介が抱えているのはかなり重大な問題で、不用意に打ち明けると修平が離れていってしまう可能性があります。
渡部との話では「そこを打ち明けても良いと思える相手が親友」としていて、修平には打ち明けるのを躊躇ったのに対し、渡部には断片的にですが打ち明けていました。
これは修平と渡部が俊介が抱えていることを察知した時に、修平は「打ち明けてほしくない」、渡部は「打ち明けて良いよ」という空気を出していたという違いがありました。
抱えていることを打ち明けられる相手は普段から仲が良い友達とは限らないということです。
そして渡部には抱えているものを打ち明けても良いと思ったので、普段はあまり話さなくても悩みを打ち明けられる相手としての「親友」になるのかも知れないです。


「6区」
桝井日向が語り手です。
もう少しだけ、みんなと走っていられる時間を延ばしたい。おれにそれができるだろうか。今のおれに、それをかなえる力があるだろうか。
「もう少し」も小説の題名になっている言葉です。
俊介の襷を待っている時桝井はこのように思っていて悲壮感が漂っていました。

桝井は小学生の時に野球のリトルリーグのチームに所属していました。
しかし楽しく真面目にやっているはずだったのに周りとの付き合いが上手くいかずチームを退会することになります。
野球を失った苦い経験から桝井は陸上まで失いたくないと思っています。

桝井はいつもにこやかに爽やかにしていますが、心の中はかなりイライラしていて、本人が語り手のこの話ではそのことがよく分かりました。
梅雨が近づいた頃、桝井は小さなことでイラつくようになっていて「この苛立ちを作るおおもとは不安だ。」とありました。
満田先生がいなくなり代わりに顧問になった上原先生は陸上のことを何も知らず、駅伝チームをどうするか桝井は思い悩んでいました。

桝井はここ最近体の調子がおかしくなっています。
桝井のことを常によく見ている俊介はいち早く異変に気づきますが、桝井は心配されないように精一杯取り繕っていました。

桝井が大田、渡部、ジローを勧誘した時の心境も書かれていました。
大田と渡部の勧誘に苦戦したため、桝井は「ジローに断られたらきっとおれは立ち直れない。」と胸中で語っていました。
周りは桝井は常ににこやかで爽やかで全くめげないと見ていますが本人の心は疲れきっていました。

夏休みになると桝井の体調はさらに崩れます。
「病院に行ったほうがいい。それは明確だった。」とありました。

区間配置を発表して上原先生が反対した時に桝井はひどいことを言ってしまいます。
その言葉について「自分の口から出た言葉にぞっとした。」と語っていて、自身の言葉に後悔していました。

部長になってから、一度だって自分の不満も不安ももらしたことはない。それなのに、 みんなは気楽になるどころか、気を遣うばかりだった。
これは桝井自身の不満や不安を話したほうが駅伝メンバーはほっとすると思います。
自身の体調の悪さについても打ち明け「こんな状態だが何としても6位以内に入って県大会に行きたいんだ。みんなよろしく頼む」と言ったほうがまとまりが出ると思います。

駅伝大会当日、会場に向かうバスの中で大田が桝井に良いことを言います。
「そんな深刻にならずに走れよ」
「え?」
「俺だってそこそこ走るし、しんどいならしんどいで走ればいい」
これこそ一人だけで走るのとは違う団体戦の醍醐味だと思います。
大黒柱の体調が悪かったとしても他の5人でカバーすれば県大会進出に望みをつなぐことができます。

上原先生も良いことを言います。
「走れなくてもいい。私が、ううん、私たちが望んでるのはそんなことじゃないから。でも、6区を走るのは桝井君だよ」
これは戦術重視の人の場合は桝井が言っていた5区桝井、6区俊介のほうを支持するかも知れないです。
しかし顧問の上原先生も他の5人の選手も、全員が桝井の6区を望んでいるのなら、そのほうがチームとしての力も出ると思います。
調子の良し悪しは関係なくアンカーの6区は桝井に走ってほしいと全員が思っているところに、桝井のこれまでの歩みへのみんなの気持ちが現れていると思いました。
桝井もその気持ちを受け止めて6区に臨みます。


素晴らしい青春小説で、一つの区間の話が終わるたびに次の区間はどんな話になるのか気になりました。
読んでいるうちに題名にもあるようにもう少しだけこのチームでの活動が長く続いてほしいと思いました。
爽やかで面白くさらに胸の熱くなる小説を読むことができて良かったです


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「襷を、君に。」蓮見恭子

2017-07-09 18:32:50 | 小説


今回ご紹介するのは「襷を、君に。」(著:蓮見恭子)です。

-----内容-----
全国中学校駅伝大会ー中学3年生の庄野瑞希は大会記録を更新する走りでチームを逆転優勝に導く。
しかし、周囲の期待に押し潰され、走る意味を見失った瑞希は、陸上をやめるつもりでいた。
一方、福岡・門司港(もじこう)で、倉本歩(あゆむ)はテレビの中の瑞希の美しく力強い走りに魅せられる。
「あの子のように走りたい」その一心で新進気鋭の港ヶ丘高校陸上部に入部するが、部員は歩よりはるかに速い選手ばかりでー。
二人の奇跡的な出会いが、新たな風を紡ぎだす!
スポーツ小説を多く手掛けてきた著者が少女たちの葛藤と成長を描く、胸を熱くさせる青春小説!

-----感想-----
11月上旬に行われる福岡県中学校駅伝大会で中学三年生の歩が走っているところから物語が始まります。
歩はソフトボール部ですが走るのが早いので陸上部の女子駅伝に助っ人で参加していました。

次の年の春、歩は福岡県の港ヶ丘高校に入学し陸上部に入ろうとします。
意気揚々と陸上部に入部しようとする歩に担任の岩田先生が「入部は無理」と言います。
納得いかない歩が陸上部に行ってみると、二年生の畑谷和水(はたやなごみ)が声をかけてくれます。
そして後藤田先生という女性コーチに引き合わせてくれました。
後藤田先生は「うちはもう何年も前から、入学前に部員をセレクトしているの。ここにいるのは、中学時代に800m以上の距離で実績をあげた子ばかり。入部は諦めてちょうだい」と言います。
陸上部に入るという歩の願いがいきなりついえそうになります。

港ヶ丘高校に入学する3ヶ月前、歩は山口県で行われている全国中学校駅伝大会がテレビで放送されているのを見ます。
各チームのアンカーに襷が渡る場面で兵庫県の姫路中学校の庄野瑞希という選手が登場します。
瑞希は全国区の選手で将来を嘱望されていて、テレビでも大きく扱われていました。
父親が播磨学院高校の陸上部監督をしていてそこに進学するのではと言われています。

歩が弟の勝男と話している時に福岡の強豪の名前が登場します。
博多の城南女子学園が一番強く、その次に強いのが北九州第一高校です。
そしてもう一校名前が出たのが港ヶ丘高校で、勝男によると港ヶ丘高校には新しい指導者が入って女子駅伝に力を入れているとのことでした。
他の二校より陸上部に入部しやすそうでさらに通える距離なので港ヶ丘高校に入学したのですが、まさかの後藤田先生による部員選別が待ち構えていました。

福岡が舞台なので九州の方言が出てきます。
最初「なん、はぶてとーん?」という方言が出てきて、調べてみたら「なに腹を立ててるの?」という意味のようです。
「差し馬のごとあるよ」という言葉は「差し馬(レースの後半で追い上げるタイプの馬)みたいだ」という意味です。
そして「しゃーしい」という言葉は「うるさい、騒々しい」という意味で、どれも聞いたことのない言葉だったので新鮮でした。

陸上部に入れず意気消沈している歩に畑谷和水が現在の陸上部のことを教えてくれます。
三年前に後藤田コーチが来てから陸上部は大きく変わりました。
監督の高瀬先生は数年前から女子駅伝に力を入れていてさらに後藤田先生も来て、港ヶ丘高校陸上部は今、初の「全国高等学校駅伝競技大会」への出場を目指しています。

陸上部のキャプテンは南原理沙という三年生で、南原は福岡県で一番速い中学生でした。
当初は城南女子学園高校への入学を考えていましたが高瀬先生の熱意で港ヶ丘高校に入学しました。
副キャプテンは二年生の畑谷で、駅伝の新チームが始動する秋にはそのままキャプテンになる予定です。
畑谷がコーチの後藤田先生がいない日の練習に歩を誘ってくれます。
畑谷は歩に自主的に練習に参加するのを続けていくことで入部を認めてもらおうという案を出してきます。

自主的に参加した練習では高田栞という子が気さくに話しかけてくれて仲良くなります。
そして栞には稔(みのり)という双子の姉がいて、こちらはかなり高飛車な話し方をします。
やがて歩は熱意が通じて入部が認められます。

庄野瑞希も語り手として登場します。
歩がテレビで見ていた全国中学校駅伝大会で優勝した時、瑞希は周りの大人にうんざりしていました。
そしてこの大会を最後にしてもう駅伝は走らないという決意を固めていました。

瑞希も港ヶ丘高校に入学していて、「頭の中に次々と浮かんでくるのは、嫌なことばかり」とありました。
瑞希は父親と母親のことで憂鬱になっています。

歩には同じクラスに工藤ちゃんという友達がいます。
工藤ちゃんは情報処理部に入部して、「調べて欲しい事があったら言って!」と心強いことを言っていました。

新入生の中では稔の力が抜けています。
港ヶ丘高校では南原と畑谷の二人が全国クラスの実力者なのですが、駅伝で全国大会出場を狙うには全国クラスの実力者が二人では心許ないようです。
高瀬先生は新入生に期待をかけていて稔はその代表的存在です。
本郷さんと大村さんという子も一年生で、一年生は全部で6人です。
ただし稔を上回る全国クラスの実力者の瑞希はなぜか練習に全く姿を現さないてす。

栞と稔は双子ですが稔のほうが実力は上で、ずっと比べられてきた栞は人前に出たくないと考えています。
稔は別の高校からも入学の誘いがあったのですが両親が二人とも一緒の学校に行けと言ったため、栞に付き合う形で港ヶ丘高校に入学しました。
そして栞は同じ高校に入学してくれた稔への付き合いのために陸上を続けているとのことです。
あまり情熱がないのに速いタイムを持ってはいるので真に情熱的になればまだまだ伸びる選手なのだと思います。

歩は3000mの記録会で10分55秒2という11分を切るタイムを出し、高瀬先生に誉められます。
この記録会では稔が10分18秒という港ヶ丘高校の一年生ではダントツで速いタイムを出していました。
南原と畑谷は常に9分台で走ることができます。

ある日歩は廊下で瑞希に遭遇します。
歩がテレビで見ていた時は「庄野瑞希」だったのが今は「蒲池瑞希」になっていて、歩が庄野瑞希かと聞くと瑞希は逃げていってしまいました。
歩は追いかけますが瑞希の足は物凄く速く、歩は「この子、もしかしたら南原先輩より速い」と驚いていました。
瑞希は苗字が変わり、父親が陸上部監督をしている播磨学院高校には行かずに兵庫から遠く離れた港ヶ丘高校に入学しました。
しかも陸上推薦ではなく一般入試で入学していて、高校では陸上を続ける気はありませんでした。
ところが全国クラスの選手のため苗字が変わっていても学校側にその正体を気付かれ、陸上部に入部させられてしまいました。
畑谷は「高瀬先生も後藤田コーチも、南原さんも、私も瑞希の立ち直りを待っている」と言っていました。
全国クラスの選手なのに走ることに本気になれなくなっているのは「一瞬の風になれ」の一ノ瀬連と似たところがあると思いました。

瑞希は心の中で歩となら友達になれそうと思っています。
昔から友達を作るのが下手で、自分から声をかけるのなんて無理。それなのに、彼女とは友達になれそうな予感がする。

夏休みに入ると「青少年自然の家」での合宿が始まります。
幽霊部員のような状態だった瑞希も参加します。
この合宿には福岡県を代表する名門校、城南女子学園も来ていて、三年生でキャプテンの嘉田若菜が登場します。
嘉田は瑞希を知っていて「今回、一緒に練習できるのを楽しみにしています」と気さくに声をかけてきますが、瑞希はこわばっていました。

瑞希の走る姿を見て高瀬先生は「瑞希は南原より速くなる」と言っていました。
練習の最後に3000m走を皆で走った時、瑞希は南原と同時にゴールして9分36秒のタイムを出します。
まともに練習していなかった期間があるのに南原と同じくらいの力があるということで、かなり凄い子だなと思います。

合宿の後、歩は出場した「夏季市民総合スポーツ大会」で初めて優勝します。
そして故障で合宿には参加していなかった三年生の河合穂波(ほなみ)が復帰してきます。
夏休みが終わろうという頃、秋の活動計画が発表されます。

9月27日  九州瀬戸内高等学校駅伝競走大会(大分県国東(くにさき)市)
11月1日  全国高等学校駅伝競走大会福岡県予選(福岡県嘉麻(かま)市・嘉穂(かほ)陸上競技場)
12月20日  全国高等学校駅伝競走大会(京都市・西京極陸上競技場)

12月20日の全国大会に行くためには11月1日の福岡県予選で城南女子学園と北九州第一高校に勝って1位にならなければならず、9月27日の大会はそこに向けた前哨戦です。

一年生の中では本郷さんと大村さんが思うように伸びず、後から入ってきたのに二人より速くなった歩に対して卑屈になりがちです。
歩、本郷さん、大村さんの三人が更衣室で話していて歩が二人を残して外に出た時、「今頃、うちの悪口を言われとるんやろなぁ。」と思っていたのは印象的でした。
歩がいないところでは何を言われているか分からず、この気持ちは分かります。

九州瀬戸内高等学校駅伝競走大会が近づいたある日、毎朝新聞の記者が港ヶ丘高校陸上部の取材に来ます。
記者は瑞希の正体に気づいて馴れ馴れしく話しかけ根掘り葉掘り色々なことを聞き出そうとしていて嫌な奴だなと思いました。
そして毎朝新聞の朝刊の地方面に港ヶ丘高校陸上部の記事が載るのですが、旧キャプテンの南原や新キャプテンの畑谷よりも瑞希のことが大々的に書かれていました。

瑞希は県の新人戦の1500mで優勝し、全九州高校新人陸上への進出を決めます。
畑谷もその大会に3000mで出場します。
9月27日の九州瀬戸内高等学校駅伝競走大会、さらに11月1日の全国高等学校駅伝競走大会福岡県予選に向けて、良い状態になっていました。

迎えた九州瀬戸内高等学校駅伝競走大会で、歩は港ヶ丘高校のメンバーには入れませんでしたが、各チームの補欠選手を混ぜ合わせた選抜チームで走ることになります。
この大会で港ヶ丘高校は城南女子学園とも渡り合い優勝を狙える快走を見せますが、瑞希の精神状態に異変が起き残念な結果になってしまいます。
瑞希の母の蒲池瞳の異変を知らせる電話がかかってきて、瑞希の精神状態がおかしくなってしまいました。

残念な結果になったことについて稔は激怒していました。
「あっちへふらふら、こっちへふらふら。あたしの目から見たら、才能に恵まれた奴が、好き勝手してるだけにしか見えない。何で、あいつ一人に皆が振り回されなきゃいけないんだ?普通、あんな事やったら、誰からも相手にしてもらえなくなる。心配してやる事なんかない」
これもやはり「一瞬の風になれ」の一ノ瀬連と似ているなと思いました。
才能に恵まれた人が順風満帆に競技に向き合えるとは限らず、苦難の道になることもあるのだと思います。

稔と栞の言い争いで、稔が「栞はお黙り」と言う場面があります。
序盤では栞が「稔はお黙り」と言っていた場面があるのを思い出し、やはり双子だなと思いました。

瑞希の母は目を離すと自殺してしまいそうな人が入る病院に入院していて、瑞希の精神状態がおかしくなった時はその母に異変が起きていました。
自身のせいでチームが残念な結果になってしまったことを反省した瑞希は歩や稔に助けてもらいながら上級生に「もう一度チャンスをください」と言いますが、試合を壊してしまった瑞希がチームに戻ることに上級生は冷たいです。

後藤田コーチが瑞希に言った言葉は印象的でした。
「本当に強い選手というのは、速いだけじゃない。態度も行き届いているんだ。練習はもちろんの事、毎日の生活をちゃんとする。自分が走らない時は応援に回り、他の部員達に目を配る。畑谷にあって、お前にないものがそれだ」
試合を壊してしまった一件で瑞希は大きく変わり、まさに後藤田コーチが言っていることができる選手になります。

11月1日の福岡県予選が近づいたある日、歩は記録会で自己ベストを更新する10分19秒のタイムを出します。
瑞希ももう一度チームの一員になることが許され、ついに福岡県予選の日を迎えます。
しかしまさかの出来事が起こり、当初はメンバーに入っていなかった歩が走ることになります。
不安を感じている歩に後藤田コーチがとても良いことを言っていました。

「倉本」
「本当の自信は、どうやって手に入れるか分かるか?」
「練習……、努力でしょうか?」
「違うな。最悪の状態の中でも投げ出さず、ベストを尽くす。そこから抜け出した時に、本当の自信が生まれるんだ」


ついに全国大会出場をかけた駅伝が始まります。
最後は全5区間それぞれの区間の人達が語り手になっていました。
瑞希が走っている時、「夢を運べ。襷に乗せて」という横断幕があり、そして最後、高瀬先生の「蒲池、ありがとう……」という言葉に胸が熱くなりました。


読んでみて、とても面白くて良い青春小説だと思いました
歩や瑞希たちが二年生、三年生になった時の物語も読んでみたいと思いました。
爽やかな気持ちにもなれ、やはり青春小説は好きです


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「ミドリのミ」吉川トリコ

2017-07-08 23:46:46 | 小説


今回ご紹介するのは「ミドリのミ」(著:吉川トリコ)です。

-----内容-----
重田ミドリは小学3年生の女の子。
一緒に暮らすのは父親の広とその恋人、源三である。
母親の貴美子は広の心境の変化についていけず、離婚話もあまり進まない。
だが、進まない理由はそれだけではなくー。
それぞれの理想の”かたち”を追い求め、もがくミドリたち。
彼女たちに訪れるのは、一体どんな結末なのか。

-----感想-----
「ミドリのミ」
季節は秋、語り手は小学三年生の重田ミドリで、ミドリは二学期の初めに転校してきました。
しいねちゃんという子が声をかけてくれてミドリはしいねちゃんのグループに入りますが、このしいねちゃんが意地の悪い子で何かとミドリに意地悪をしていじめていました。

ミドリは平野写真店で父の広と源三という人と暮らしています。
源三は一年前に他界した祖父から平野写真店を継いでいて、広とミドリはそこに転がり込んでいます。
源三は髪が長く着ているものも女物でゲイです。
そして源三は写真店とは別にフリーでカメラマンの仕事もしています。
源三とミドリの掛け合いが面白く、二人の掛け合いはすいすいと読んでいけました。

月の最初の土曜日、ミドリは母の貴美子に会いに行きます。
両親は離婚を前提に別居していて、貴美子に会いに行く時は父の広が車でマンションまで連れて行ってくれます。
ミドリは母親の特徴をよく見ていました。
ママは料理がへたくそだ。そのくせプライドが異常に高いものだから、意地でもインスタントには頼らない。
だからミドリは、ママに腕をふるわせなくて済むようなものばかりをリクエストすることにしている。

まだ小学三年生なのにこれだけママに気を使っていて偉いと思います。
源三は憎まれ口ばかり言っていて言動は酷いですが、ミドリが会いに行く母のために気を使って眼鏡と服を依然母が買ってくれたものに変えたのに気づいていて知らないふりをしてくれていました。
眼鏡はフレームが合わずずり落ちそうで服は既にサイズが小さくなっているので普段の源三ならからかう場面です。
口は悪くても良い心根を持っているのだと思います。

対照的にしいねちゃんは、ミドリが源三に買ってもらった新しい眼鏡と服で登校してクラスの女の子たちに「服可愛いね」「眼鏡も格好良いね」と褒められていた時に冷や水を浴びせることを言っていました。

「ミドリちゃんちのパパとママ、りこんしたの?」
「うちのママが言ってたよ。ミドリちゃんはかわいそうな子だからやさしくしてあげなさいって」
やさしさのかけらもない顔でしいねちゃんは言った。


この性根の悪さ、クラスに大抵一人は居るタイプの子だろうなと思います。
ミドリが周りの子たちに褒められているのが気に食わず、何としても嫌な気持ちにしてやりたいのだと思います。
そしてミドリが褒められるのを素直に受け止められないところにしいねちゃんの度量のなさと弱さが現れています。

源三はミドリに「パパとママに離婚して欲しくないと言ってはいけない」と言っていました。
「特にパパに言ったりしちゃ、ぜったいだめ」と言っていたのが印象的で、最初なぜ特にパパなのかが気になりました。
私は「離婚して欲しくない」と言っても良いと思います。
これは源三が広には貴美子と早く離婚してもらって自分だけを見てほしいと思っていて、ミドリが「離婚して欲しくない」と言うことで広が離婚を思い止まるのを心配しているのではと思います。
「特にパパに言ったりしちゃ、ぜったいだめ」はミドリのことを慮って言った言葉ではなく自分自身のために言った言葉と思われ、自分の願望を叶えるために子どもであるミドリが率直な思いを言葉にするのを制限させるのはどうかと思いました。


「ぼくの王子さま」
父の広が語り手です。
広は35歳で、お正月から源三との仲が冷え込んでいて1月の終わりが近づいています。
広がミドリを連れて貴美子の実家に帰省したのが原因でした。
離婚を前提に別居しているのに貴美子の実家に帰省するのは驚きでしたが、貴美子は離婚することをまだ両親に話しておらず、貴美子の母のたっての希望で帰省することになりました。

源三は広の性格をよく分かっていて、離婚前提で別居しているはずの貴美子の頼みをあっさり聞いて実家に帰省した広に対し、「重田さんみたいに流されやすい人の言うこと、悪いけど俺は信用できない」と言っていました。
「一年後ーへたしたら半年後、このままずるずるいろんなことを引き延ばしているうちに、ぬるっと元通りの生活に戻ってるんじゃないかって気がする。あんたってそういう人だよ」とも言っていました。

広は会社ではイクメンキャラになっています。
ただしミドリの育児で自分は犠牲になっていると思っていて、熱が出て学校を早退するミドリの迎えを源三に頼む時も「ほんとに、ごめん。犠牲にしてしまって」と言っていました。
この犠牲という言葉に源三は怒っていました。
「ミドリのために、いろいろ諦めなきゃいけないことはわかるよ。手放さなきゃならんものだってあるでしょうよ。でもそれを犠牲と言ってしまうのってどうなの?自分が子どものころのこと、重田さん覚えてないの?子どもって意外にそういうとこ敏感だよ。特にミドリなんて、だれに似たんだか知らないけど、異常にカンが鋭い子なんだから気をつけてやらんと」
たしかに犠牲と言ってしまうのはどうかと思います。
その気持ちをミドリが察知してしまったらミドリはいたたまれない気持ちになると思います。

広は貴美子が嫌いで別れたわけではなく、「もし源三と出会っていなければ、おそらくいまも貴美子といっしょにいただろう。」とありました。
広は妻子持ちの身でありながら他の人、しかも男が好きになってしまいました。
私は最初にこれを読んだ時ギョッとしました。
最近は「同性愛は何もおかしなことではない!」というような声がありますが、少なくともギョッとされたり普通ではないと認識されたりするのは避けられないのではないかと思います。
これは生物学として男の人は女の人を、女の人は男の人を好きになるのが「普通」の状態であり、そこから逸脱しているのは明らかに普通ではない特殊な状態だからです。
同性愛への理解を広めたいのであれば、まずは同性愛が普通ではない特殊な状態であることを認め、その上で「特殊な状態の人もいるということを理解してほしい」とするべきだと思います。
ここを無視して「同性愛は何もおかしなことではない!異常なことではない!異常と感じること自体が差別だ!理解しろ!」と高圧的に騒ぎ立てるような人の主張を、私は信用する気にはならないです。


「日曜日はヴィレッジヴァンガードで」
梶原花世(はなよ)という源三の家によく来る大学生が語り手です。
花世はかなり個性的なファッションをしていて、極彩色の造花が縫いつけられた複雑なデザインのセーターを着て、床すれすれまであるロングスカートに見せかけた袴風ズボンをはいていたりします。
花世は幼い頃から感性が他の子たちとは大きく違っていて、図工の時間でも写生大会でも花世の作品は常に独特なものになっていました。
そして幼い頃から「変」と言われ、花世は笑わなくなっていきました。

花世は幼い頃から源三のことが好きだったのですが、小学生の時に源三のことを忌み嫌う花世の兄が両親に「源三はとんでもない変態野郎」と言ったことで、花世は両親から源三の家への出入りを禁止されてしまいます。
花世には現在、上野毛先輩という彼氏がいます。
上野毛先輩は花世の通うN美大の一級上の人です。
ちなみに美大には個性的な人達が勢揃いしていて、子どもの頃から「変」と言われ続けてきた花世は美大でようやく居場所を見つけました。

上野毛先輩とのデートでカフェに寄っていた時、広とミドリがそのカフェにやってきて鉢合わせます。
広はかなり馴れ馴れしく話しかけていました。
「あれれれ、花世ちゃんじゃないのぉ?」
「なになに、あっれー、もしかしてデート?こちら、花世ちゃんの彼氏?」
花世が全身で「とっとと失せろ」と訴えても広は全く察知せずに馴れ馴れしく話しかけていました。
花世は広の空気の読めなさが大嫌いで、源三とミドリとは仲が良いですが広には常に冷淡です。

花世は自分が愛するもの以外はどうでも良いと思っていて、ある時自己嫌悪に陥ります。
この花世の自己嫌悪に対し源三が良いことを言っていました。
「最低でも最悪でもなんでもないよ。だれしもが聖人君子になれるわけじゃないんだから。だれだって自分がいちばんかわいいし、自分の家族や恋人のことをいちばんに考えるのが普通でしょ。なんにも悪いことじゃない」
これはそのとおりだと思います。
宗教でもないのに口だけで「自分や自分の家族のことより人類全体のことを優先しましょう」と主張するような人よりよほどまともだと思います。


「ビロードママ」
貴美子が語り手です。
貴美子は36歳で、夏のある日、源三から広が胃炎になったと電話がきます。
入院手続きに身元引受人が必要で家族か親族でないとダメなため、貴美子が来てくれという電話でした。

仕方なく駆けつけた広の入院先の病院で貴美子は初めて源三に会います。
電話でも直接会った時も貴美子は源三に敵意を露にした話し方をしますが、源三には「うわ、めんどくせー」のように軽くあしらわれる展開が続きます。

この章では貴美子の人生観が語られています。
特に印象的だったのが次の言葉です。
貴美子は子どもが欲しいと思ったことなど一度もなかった。必要なピースのひとつだったから、最初からそうするものだと決まっていたから産んだまでの話だ。
これも広の「犠牲になる」と同じくらい、ミドリが聞いたらいたたまれない気持ちになると思います。
貴美子は徹底して自身が決めた設計図どおりの人生を歩んでいて、ことなかれ主義で流されやすい広は常に貴美子の考えに従っていました。
進学、就職、結婚、出産、マンション購入と全てを手にした人生でしたが、唯一の綻びが源三に広を奪われたことでした。


「ミドリのキ」
再びミドリが語り手になります。
今度の合唱大会でミドリのクラスは「グリーングリーン」を歌うことになったのですが、しいねちゃんがそのピアノの伴奏をミドリがやれと言います。
「だれもミドリちゃんのピアノ聞いたことないんだよね。真里茂ちゃんよりもうまいんでしょ?ねえ、おねがい。伴奏してよ」
一見ミドリのピアノを聞いてみたいという期待を込めた言い方にも見えますが、実際にはミドリが上手くピアノを演奏できずに大勢の前で恥をかくのを期待しています。
ミドリは広とともに源三の家に転がり込んでからはピアノの演奏をしていなくてだいぶ演奏の力が鈍ってしまっています。
しいねちゃんの性根の悪さは徹底していて、嫌な女の子だなと思いました。
そんな窮地に立たされたミドリに同じクラスのユウキくんが「うちにピアノあるから、放課後いっしょに練習しない?」と声をかけてくれました。
ミドリにはユウキ君が王子様に見えました。

しいねちゃんが言いふらし、クラスのほとんどの子がミドリの両親が別居していることを知っています。
さらにしいねちゃんはミドリとユウキくんが仲良くしているのも気に食わないようで、わざわざ他のクラスメイトに聞こえるように広と源三のことを言いふらしてからかっていました。

「ミドリちゃんって男が好きなんだ。知らなかったあ」
「てっきり女が好きなのかと思ってた。だってさ、ミドリちゃんちって普通じゃないもんね」

これは広と源三が同性愛なのでミドリもそうなのではというからかいです。
同性愛が普通の状態でないことは確かだと思いますが、わざわざミドリとユウキくんが仲良く話しているのを邪魔したいがために「お前の父親は同性愛者だ」と馬鹿にしに行くのはかなり醜いと思います。


「セルフポートレイト」
源三が語り手です。
冒頭、源三は新宿二丁目にある「JUNじゅんBar」というゲイバーで香須美という女性と飲んでいました。
香須美は出版社で編集者をしている30歳くらいの人で、「どうしても平野さんにお願いしたい仕事がある」と連絡してきて会っていました。
平野写真店だけでなくフリーのカメラマンの仕事もしている源三とは6、7年前から付き合いがあります。
香須美は多様化する家族の在り方がどうの、セクシュアルマイノリティとの共生がどうの、という趣旨の本を出版しようとしていて、源三に同性愛の人達の写真撮影を頼んでいました。
香須美の企画に対し源三は「彼女の言っていることはとんちんかんで甘っちょろくて、お話にならなかった。」と胸中で語っていました。
さらに香須美の企画に対し源三が反対する次の場面は印象的でした。

「見世物なんて、そんなつもりありません。これがなにかのきっかけになればと思っているだけです。セクシュアルマイノリティだろうとふつうに生活してるんだって、多くの人に知ってもらいたいだけなんです」
だめだ、話が通じない。このとき源三はほとんど香須美を軽蔑した。


香須美の行為は源三のようなゲイ側から見ると、頼んでもいないのに「さあセクシュアルマイノリティ(同性愛者)のことを多くの人に知ってもらいましょう」と一方的に張り切っている典型的な「押し付けの善意」になるのだと思います。
「押し付けの善意」は時としてその対象への偏見を益々増大させかねないことをよく知っておいたほうが良いと思います。


同性愛というテーマを扱っていて、読んでいてギョッとする場面がありました。
ミドリは両親の離婚を前提とした別居だけでなく父親の同性愛という問題にも晒されていて精神的にかなり大変だと思います。
そんな状況でも大人たちに何かと気を使っているミドリは小学校低学年とは思えないくらい大人びていて凄い子だと思います。
ミドリの日々が少しでも平穏になることを願います。


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