読書日和

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アドラー心理学とフォースの暗黒面

2017-01-11 20:05:30 | ブラック企業問題
アドラー心理学は現在、流行の最先端を行く心理学としてかなり有名です。
自己啓発にも向いていることから次々とアドラー心理学を扱った実用書が出版され、書店でも一大勢力になっています。
そんなアドラー心理学の本をこれまでに4冊ほど読みました。

「マンガでやさしくわかるアドラー心理学 人間関係編」岩井俊憲
「嫌われる勇気」岸見一郎 古賀史健
「幸せになる勇気」岸見一郎 古賀史健
「面白くてよくわかる!アドラー心理学」星一郎

アドラー心理学の良い面については、とても良いと思います。
ただし悪い面に取り込まれると、たちまちスターウォーズで言うフォースの暗黒面に堕ちると思います。
書かれていることが具体的なだけに解釈の仕方が重要な心理学で、妙な解釈をして悪用しようと思えば簡単に悪用できてしまいます。
「嫌われる勇気」(著:岸見一郎 古賀史健)の感想記事を書いた時、次のように書きました。

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アドラー心理学の本では「勇気」という言葉が何度も出てきます。
そしてこの「勇気を持て」という考えは企業が社員への研修で好むであろうと思います。
手っ取り早く「変わるためには勇気を持て。心理学三大巨頭のアドラーもそう言っている」と言うことができるからで、何だかアドラー心理学が研修で都合よく使われるのではという懸念を持ちました。
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そうしたら次の「幸せになる勇気」(著:岸見一郎 古賀史健)を読んだ時、著者の岸見一郎さんがあとがきに次のように書いていて驚きました。

かねてよりアドラーは、誤解されやすい思想家でした。
特にその「勇気づけ」というアプローチは、子育てや学校教育、また企業などの人材育成の現場において、「他社を支配し、操作する」というアドラーの本意からもっともかけ離れた意図を持って紹介され、悪用ともいえる扱われ方をされる事例が後を絶ちませんでした。


これを見てやはりそうだったのか…と思いました。
アドラー心理学の「勇気を持て」は体育会的な面があるため、企業などがそのまま体育会的な解釈をして「変わるためには勇気を持て。心理学三大巨頭のアドラーもそう言っている。変われないのなら、それはお前に勇気がないからだ」と言うことができてしまうのです。
なので都合よく社員への研修に「勇気を持て」を使うのではと思ったら、やはり悪用されていたようです。
アドラーという心理学三大巨頭の名のもとに「勇気を持て」だけ言って無理やり都合の良い方向に変わることを迫るのは、もはや心理学ではなく単なる体育会論です。
そして都合よく変わらない人には「お前には勇気がない」と言うこともでき、「勇気を持て」は企業にとってとても便利な言葉だと思います。

企業の経営者や管理職の人にはこのタイプの体育会的な考え方の人が結構いると思います。
最悪の展開は元々長時間残業やパワーハラスメントが横行するようなブラック企業が社を挙げてアドラー心理学を悪用した場合です。
「このくらいの長時間残業が何だ。それが企業というものだ。我々は常に前向きでなくてはならない。意識を変えろ。変わるためには勇気を持て。心理学三大巨頭のアドラーもそう言っている。変われないのなら、それはお前に勇気がないからだ」となります。
これは元々長時間残業やパワーハラスメントで精神的にまいっている社員がこのような言葉を浴びせられたら、より一層追い詰められて心身症を患って休職するか、場合によっては自殺に追い込まれるのではと思います。

特に最近は大手広告代理店の株式会社電通に代表されるように、体育会的な考えのブラック企業が過労死事件や労災事件を起こす例が目につくようになっています。
今日は新たに大手電機メーカーの三菱電機株式会社が社員に違法なブラック労働をさせていたため労働基準法違反で書類送検されたというニュースがありました。
そういった元々体育会的な企業がアドラー心理学の「勇気を持て」を都合よく解釈し、魅せられた場合が一番危険だと思います。

上手に使えば人生を生きやすくするのに役立ちますが、悪く使えば人を心理的に追い詰めるのがアドラー心理学だと思います。
悪い企業がフォースの暗黒面に堕ちアドラー心理学を悪用しないことを願います。
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電通がブラック企業大賞受賞、書類送検、さらに社長が辞任

2017-01-05 21:32:07 | ブラック企業問題

2015年12月17日、自殺する8日前のツイート(つぶやき)。

※この記事は「電通の高橋まつりさん過労自殺事件について」からの続きとなります。

昨年末の12月23日、大手広告代理店の株式会社電通が「ブラック企業大賞2016」を受賞しました。
ブラック企業大賞とは過酷な長時間残業やサービス残業、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどが横行する「ブラック企業」の頂点を決め、その存在を社会に広く伝えるための賞です。
参考までに歴代の大賞受賞企業は次のとおりです。

2012年 東京電力株式会社
2013年 ワタミフードサービス株式会社
2014年 株式会社ヤマダ電機
2015年 株式会社セブンーイレブン・ジャパン

2016年はディスカウントストアのドン・キホーテ、宅急便の佐川急便、お寺の仁和寺、郵便事業の日本郵便などがノミネートされた中、電通が大賞受賞となりました。
受賞理由を見ると電通は1991年に「電通事件」という、入社2年目の社員が月の残業が140時間を超える過労で自殺する事件を起こしているのに、その教訓が全く生かされずに同じ悲劇が繰り返されていることが重く見られたようです。
「電通の高橋まつりさん過労自殺事件について」の記事を書いた時に「労働基準監督署から正式に労災認定がされ、さらには労働基準法違反の疑いで東京労働局と労働基準監督署による立ち入り調査が入ったということは、既に社会的に「ブラック企業だ」と見られているということです」と書きましたが、この大賞受賞で名実ともにブラック企業の筆頭格として認識されることになりました。

そのすぐ後の12月28日、厚生労働省東京労働局が、社員に違法な残業をさせていたとして、労働基準法違反の疑いで法人としての電通と幹部1人(自殺した高橋まつりさんの上司)を書類送検しました。
電通では違法な長時間労働が常態化していたとみられることから、他の幹部の関与などを含め引き続き刑事責任追及に向けて捜査していくとのことです。
ここで改めて、「電通の高橋まつりさん過労自殺事件について」の記事で紹介した武蔵野大学グローバルビジネス学科教授の長谷川秀夫氏のフェイスブックでの発言を見てみます。



武蔵野大学教授の長谷川秀夫氏はフェイスブックで「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」と言い、なぜか自殺に追い込んだ会社のほうではなく、自殺者のほうを非難していました。
ここで注目なのは厚生労働省東京労働局が「労働基準法違反の疑いで法人としての電通と幹部1人(今後さらに増えるかも知れないです)を書類送検した」という事実から分かるとおり、電通がやっていることは紛れもない「法律違反であり犯罪行為」だということです。
犯罪行為をするから東京労働局による強制捜査が入り、法人としての電通と地獄のようなブラック労働に関与した幹部が書類送検されるという、当たり前の結果になります。
これに目を向けようとせず「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」という体育会的根性論にすり替え、自殺するほうが悪いのだとして片付けようとするのは、いくら何でも酷過ぎると思います。
上に立つ人がこういう認識だから地獄のブラック労働で自殺に追い込まれる事件が後を絶たないのだと思います。
この教授のような認識の経営者は結構いるのではと思いますし、そういった人には「労働基準法違反で書類送検」という言葉の重みを考えてみてほしいです。

法人としての電通と幹部1人が書類送検されたことを受け12月28日、電通の石井直社長が記者会見を開いて辞任を表明しました。
過酷な長時間労働について「経営陣が歯止めをかけられなかった」と述べ、責任を認める発言をしています。
昨年の9月30日に労働基準監督署から正式に労災認定されたことで明るみに出た高橋まつりさん過労自殺事件はついに社長の辞任にまで発展しました。
ブラック労働による自殺は「あいつに根性がないのが悪いんだ」というような体育会的根性論にすり替えられるものではなく、自殺に追い込んだ責任は極めて重いです。
社長の辞任は法人としての電通と幹部1人の書類送検と合わせ、それを如実に示していると思います。

そして労働基準監督署も東京労働局も電通のブラック労働を許しはしませんでした。
これは電通と同じように従業員に対し地獄のブラック労働を強いている企業へのメッセージになっていると思います。
東京労働局の捜査によって電通のブラック労働の実態が詳細に渡って解明され、明らかになることを望みます。
コメント (5)
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電通の高橋まつりさん過労自殺事件について

2016-12-06 22:39:50 | ブラック企業問題


昨年の12月25日、大手広告代理店の株式会社電通に勤務する高橋まつりさん(当時入社1年目で24歳)が自殺する事件がありました。
長時間残業と上司からのパワーハラスメントで精神的に追い詰められての自殺でした。
今年の9月30日、労働基準監督署から正式に労災認定されたことで事件が明るみに出ました。

まず私は電通は朝日新聞などの反日左翼マスコミと同じく極めて悪質な企業だと思っています。
ただ今回は従業員が過労で自殺する事件が起きたので、企業におけるブラック労働の観点から記事を書いてみます。

高橋まつりさんはツイッターをやっていて、苛烈な長時間残業と上司からのパワーハラスメントの様子をツイッターにつぶやいていました。
その一部をご紹介します。











100時間を超える長時間残業に加えて上司からのパワーハラスメント、これは地獄だと思います。
「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」は、100時間を超える長時間残業に苦しむ人がこのような言葉を浴びた時、受ける精神的ダメージが相当激しいものになると思います。
圧倒的な絶望感に苛まれるのではないでしょうか。
また、「髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな」とのことですが、これは上司が一日20時間仕事をさせたり、土日も出勤させたりして休む暇を与えていないのが原因です。
ろくに寝る時間もない地獄のようなブラック労働をさせておいて、「髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな」とブラック労働の現状と相反する表面上の正論を言うのは、聞くほうからするとその人物の酷過ぎるブラックさを目の当たりにし、強い人間不信に陥ると思います。
そしてただでさえ長時間残業で心身ともに疲れ切っているところにこれでは、かなりの確率でうつ病になるのではないでしょうか。
高橋まつりさんのツイッターも、自殺に向かうまでのツイート(つぶやき)を見ていくと、精神に深刻なダメージを負っているのではという雰囲気がありました。


高橋まつりさんの過労自殺事件が明るみになった後、波紋を呼ぶ事件がありました。
武蔵野大学グローバルビジネス学科教授の長谷川秀夫氏が、自身のフェイスブックで次のように発言していました。



「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」と言っています。
なぜか自殺に追い込んだ会社のほうではなく、自殺者のほうを非難しています。
これには猛批判が起こり、ネットが炎上する事件になりました。

まず大前提として、月当たり80時間の残業が、過労死のラインとして定められています。
これを超えるような残業をしていると過労死してもおかしくないということです。
武蔵野大学教授の長谷川秀夫氏は「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」と言っていますが、まずその認識がおかしいのです。
さらにこの発言は、「自分は残業時間が100時間を超えても大丈夫なのだから、周りも大丈夫であるべきだ。それが大丈夫でないとは、全く情けない奴だ」というニュアンスにも聞こえます。
当然人それぞれに個人差があり、過労死の危機に陥るラインがAさんは100時間、Bさんは80時間、Cさんは150時間、Dさんは220時間、というようになります。
残業耐性の極めて高いDさんが「俺は大丈夫なのだから、お前らも200時間の残業くらいで文句を言うな」とAさん、Bさん、Cさんに200時間の残業を強要すれば、この3人は過労死してしまう危険があります。
社会的に定められている過労死のラインを無視して、自分の価値観で長時間残業を押し付けてはいけないのです。
さらにこのフェイスブックの終わりの方では「転職を考えるべき」と言っていますが、うつ病状態になり死ぬことを考えるまでに追い詰められた人に転職活動をする気力が出ると思うのでしょうか。
仮にも大学の教授なのであれば、これらのことくらいは考えられる人であってほしいです。

そして「西一番街ブラックバイト」(著:石田衣良)の記事の最後に書いたように、上に立つ年配の人達がこのような認識だからなかなかブラック企業がなくならないのだと思います。
自殺に追い込んだ会社ではなく自殺するほうを非難する人間性に、私はゾッとしました。
自殺した人を「心が弱い」や「情けない」で片付けるのではなく、悪質なブラック企業が従業員に強いるブラック労働の環境を改善するほうに意識を向けてほしいです。


電通は1991年に「電通事件」という、入社2年目の社員が月の残業が140時間を超える過労で自殺する事件を起こしています。
上司は不調に気づいていたのに対処せず、安全配慮義務違反だったとのことです。
最終的に最高裁で原告と電通が和解したのですが、今回の高橋まつりさんの過労自殺事件は、この時と全く同じことが繰り返されてしまったということです。
ここに電通の自浄能力のなさが表されています。
私は伊藤絵美さんという臨床心理士の方のツイートで電通事件のことを知りました。
ツイートをご覧になる方はこちらをどうぞ。

先日電通は、NHKの取材に対して「うちの会社には自浄能力がない」と言った社員を、「戒告」の懲戒処分にしたとのことです。
これは上層部からの、「うちの会社に都合の悪いことを言ったら、お前らどうなるか分かってるんだろうな」という、他の社員に対する脅しと見せしめだと思います。
この行為から見て、電通は「地獄のようなブラック労働によって社員が自殺に追い込まれた」という事件を真摯に受け止めてはいないようです。
ちなみに労働基準監督署から正式に労災認定がされ、さらには労働基準法違反の疑いで東京労働局と労働基準監督署による立ち入り調査が入ったということは、既に社会的に「ブラック企業だ」と見られているということです。
ブラック企業は淘汰されていくべきだと思います。

※「電通がブラック企業大賞受賞、書類送検、さらに社長が辞任」の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
コメント (2)
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