読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「陽気なギャングは三つ数えろ」伊坂幸太郎

2015-10-31 23:54:51 | 小説
今回ご紹介するのは「陽気なギャングは三つ数えろ」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
陽気なギャング一味の天才スリ久遠は、消えたアイドル宝島沙耶を追う火尻を、暴漢から救う。
だが彼は、事件被害者のプライバシーをもネタにするハイエナ記者だった。
正体に気づかれたギャングたちの身辺で、当たり屋、痴漢冤罪などのトラブルが頻発。
蛇蝎のごとき強敵の不気味な連続攻撃で、人間嘘発見器成瀬ら面々は断崖に追いつめられた!
必死に火尻の急所を探る四人組に、やがて絶対絶命のカウントダウンが!
人気シリーズ、9年ぶりの最新作!

-----感想-----
※「陽気なギャングが地球を回す」のレビューはこちらをどうぞ。
※「陽気なギャングの日常と襲撃」のレビューはこちらをどうぞ。

この作品は陽気なギャングシリーズの9年ぶりとなる新作です。
人間ウソ発見器の成瀬、演説の達人響野、正確な体内時計を持つ雪子、天才スリ久遠の、ルパン三世のような銀行強盗四人組の物語が帰ってきました。

冒頭は主人公たち四人組にとって二年ぶりの銀行強盗から始まりました。
響野、久遠、成瀬の三人が銀行を襲撃。
響野の銀行にいる人達の注意を惹き付ける演説が冴え渡る中、久遠と成瀬が銀行のお金をスムーズに奪い取っていきます。
そしてお金の奪取が終われば正確な体内時計を持つ女・雪子が逃走用車両を乗り付けて全員それに乗って逃走で、いつもどおり上手く行くはずだったのですが…
銀行を去ろうとした時、警備員の一人が警棒を投げつけてきて、それが久遠の左手に命中。
無事に逃走は出来たものの久遠は負傷してしまいます。

逃走から10日経った頃、とあるホテルのラウンジに四人が集合して、久遠が「防犯カメラの性能が向上し、普通の通行人も簡単に写真や動画を撮るようになり、銀行強盗は年々難しくなっている」と言っていたのは印象的でした。
またそれに加えて久遠がワーキングビザを使いオーストラリアに行っていたため、四人組は二年間銀行強盗から遠ざかっていたようです。
このホテルでは慎一という雪子の息子がアルバイトをしています。
シリーズの最初は小学生だった慎一も今や大学生になり、時の流れを感じます。

ちなみにこのホテルでは火尻正嗣(まさつぐ)という週刊誌記者が登場し、久遠とは結構言葉を交わすことになります。
火尻は宝島沙耶というアイドル兼女優のスクープを撮るためにこのホテルに来ていました。
宝島沙耶はしばらく前から雲隠れしていて、なぜ雲隠れしていたのか気になるところでした。
宝島沙耶のことは最初は少ししか登場しませんでしたが、伊坂さんの作品ではこういうのが伏線になるので、後で再登場するのではと思いました。

火尻はホテルで久遠と鉢合わせた時のエピソードから、久遠を銀行強盗犯ではと疑います。
警棒を投げつけてきた警備員がテレビに出演しまくり、「犯人は左手に怪我をしている!」と触れ回っているからです。
その後慎一が誰かに尾行されたり、久遠が当たり屋に因縁をつけられたり、成瀬が痴漢犯に仕立て上げられそうになったりと、四人組の周辺で色々なことが起こります。
火尻が四人に色々仕掛けてきていました。
やがて大桑というカジノのリーダーの存在が浮かび上がります。
どうやら火尻はそこのカジノに借金がたくさんあり、大桑に「あいつらから金を巻き上げて借金の返済に充ててくれ」と言っていたようです。
火尻に銀行強盗犯ではと疑われたことにより、四人組はどんどんトラブルに巻き込まれていくことになります。
火尻は加害者も被害者も関係なく、面白いエピソードがあれば掘り出し、対象を自殺に追い込むような記事を平気で書くハイエナ記者です。
四人組も「お前らが銀行強盗の犯人だと書くぞ」と脅されピンチになっていました。

成瀬と久遠が宝島沙耶のサイン会に行って、やはり宝島沙耶再登場となりました。
そして宝島沙耶にとって恩人である近所のお姉さんが自殺して死んだのも火尻のせいだと分かります。
諸悪の根元、火尻の想像以上の最低ぶりが明らかになり、物語が大きく動き出していきます。
ちなみに久遠が火尻に「銀行強盗犯では」と疑われることになった時、なぜか火尻はホテルの部屋で暴漢に襲撃されそうになっていました。
四人組がその時のことを調べていく中で、響野と佐藤二三男(ふみお)という男の次のやり取りは面白かったです。

「カメラの映像をどうやって」
「詳しくは言えないが、私たちにはそういう力があるんだ。とある、情報機関の力のような、CIAやKGBに似た」
「アルファベット三文字の?」
「そう。PTA、NGK、ETC。そういった組織の力でね」


PTAは小学校の保護者&教職員会であり、ETCは高速道路の自動料金支払いシステムですね
伊坂幸太郎さんらしいリズミカルな会話だと思いました。

人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ
響野が引用したチャップリンのこの言葉は印象的でした。
たしかにその時だけで見ると悲劇的なことでも、長い時間で見るとそんなに悪くなかったりもします。

火尻は典型的な嫌な奴で、早く消えてほしいと思いました。
ただこういう嫌な奴に限ってなかなか死なないんですよね。

伊坂さんの作品らしく、ウンチクも出てきました。
シロアリは蟻の仲間ではなくゴキブリの仲間だというのから始まり、カカトアルキという虫の話になりました。
カカトアルキは「88年ぶりに目(もく)が増えた新発見」とのことで、バッタ目、チョウ目、トンボ目のように新たな目が誕生することになりました。
21世紀になって新しい「目」ができるのは驚きのことのようです。
また、網翅目(もうしもく)というゴキブリとカマキリを合わせた分類があり、ゴキブリとカマキリは近縁だともありました。
これはかなり意外でした。

やがて四人組は同じく火尻に激怒している人達にも協力を頼み、火尻討伐に動き出します。
「うまくいくことを祈るしかない。明日からもこの日常が続くように」

そして物語の最初のほうで「凶暴な野良犬がまだ捕まっていない」というニュースがありました。
伊坂さんの作品ではこういうちょっとした伏線が重要な場面で生かされることがよくあります。
なのでこの伏線がどこで生かされるのか興味深く読んでいました。

もうこのシリーズの続編は出ないのだろうと思っていたので、書店でこの作品が平積みされているのを見つけた時はワクワクしました
久しぶりに銀行強盗四人組の活躍を読むことが出来て楽しかったです。
陽気で楽しい人達の物語は読んでいるほうも楽しくなってくるのが良いと思います


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空が白んでから太陽が出るまで

2015-10-24 21:23:24 | ウェブ日記
私は平日は毎朝6時10分に起きています。
毎日同じ時間に起きていると、日の出が遅くなっていくのを日々実感します。

最近は朝起きた時に空が薄暗くなりました。
最初に見た時はてっきり曇り空で雨が降っているのかと思いました。
実際には空が明るくなる少し前の、夜明けと朝の間のような状態でした。
空が明るくなる前にはあんな曇り空のような状態になるんだなと思います。
「空が白む」という状態のようです。
そこから次第に空が明るくなり、朝の青空になっていきます。

朝の青空も太陽が出る前と出た後では全く様子が違っていて興味深いです。
太陽が出る前は控え目で白味がかった青空だったのが、太陽が出ると一気に明るい青空になります。
夜明けの後からここまでの、空の変化が新鮮に感じます。
そんな空の変化を眺めながら朝御飯を食べつつ、朝の時間は過ぎていきます。

暖かくなりながらも秋は進む

2015-10-21 19:07:56 | ウェブ日記
ここ何日か、昼は少し暑いくらいになり夜もそれほど冷えなくなっています。
少しだけ暑さがぶり返しているようです

毎日ほぼ同じくらいの厚さの服を着ていると、朝外に出た時に日々の温度の変化を強く体感します。
ここ何日かは歩いていると少し暑く感じます。
また夜寝る時も、布団に入った時に肌寒く感じたり暑く感じたりの変化があります。
先週がだいぶ寒く感じたので厚い掛布団に変えたのですが、やはりここ何日かはその掛布団だと少し暑いくらいです。

ただし季節は秋です。
あと何日温かい日が続くか分かりませんが、それが終わると今度は寒くなると思います。
温度の上下を繰返しながらも段々と秋は深まっていきます
朝の気温が10度を下回るようになると紅葉も始まります。
山陽も先週はかなり朝晩冷え込むようになっていましたし、山のほうでは既に紅葉が始まっているのではと思います。
私もぜひこの秋紅葉を楽しめればと思います

尾道浪漫珈琲のミックスピザ

2015-10-19 22:24:50 | グルメ


写真は「尾道浪漫珈琲」のミックスピザです。
具材はサラミ、チーズ、ピーマン、トマト、マッシュルームとオーソドックスな組み合わせです。
そしてこのオーソドックスな組み合わせが美味しいです
色々なピザが登場している中、この組み合わせには昔ながらの変わらぬ美味しさがあります。
学生時代によく食べたピザトーストもこんな組み合わせをしていて懐かしくもあります。

ピザはたまに食べたくなることがあります。
チーズにピーマンといった、いかにもピザ的な組み合わせに心が惹かれるようです。

チーズとピーマンの相性も良いし、チーズとトマトの相性も良いし、ミックスピザの具材はどれもチーズと相性抜群です。
これらの具材がピザ生地の上で焼かれ、とろけたチーズに包まれて美味しくなります。
こんなピザを食べながらのんびり過ごすのもたまには良いのではと思います。


関連記事
尾道浪漫珈琲 ホットコーヒー


「居酒屋ぼったくり4 」秋川滝美

2015-10-18 16:26:33 | 小説
今回ご紹介するのは「居酒屋ぼったくり4」(著:秋川滝美)です。

-----内容-----
東京下町にひっそりとある、居酒屋「ぼったくり」。
名に似合わずお得なその店には、旨い酒と美味しい料理、そして今時珍しい義理人情がある―
旨いものと人々のふれあいを描いた短編連作小説、待望の第4巻!

-----感想-----
※「居酒屋ぼったくり」のレビューはこちら
※「居酒屋ぼったくり2」のレビューはこちら
※「居酒屋ぼったくり3」のレビューはこちら

今作は次の六編で構成されています。

意地っ張りなサヨリ
柔らかく包み込むもの
移ろいゆくものたち
茶がゆの甘さ
心地よい香り
辿ってきた道

「意地っ張りなサヨリ」
季節は春。
前作で閉鎖が決まり近々取り壊されると言われていた鉄鋼会社の社宅は取り壊しが始まっていました。
美音が「スーパー呉竹」に向かう途中工事現場を見ていると、「ぼったくり」常連客のリョウが声をかけてきて、ここを買ったのが大手のチェーンストアで跡地にはショッピングセンターが建設される可能性が高いことを教えてくれました。
大きなスーパーが入れば美音たちの商店街も影響を免れず、商店街存続の危機というわけです。
ちなみに建設関係の仕事をしている要もこのショッピングセンター建設に関わっています。
「ぼったくり」店主の美音に好意を寄せている要の胸中は気になるところです。
商店街存続の危機で、今作は冒頭から波乱含みの雰囲気でした。

「ぼったくり」の常連、シンゾウにはモモコという娘がいます。
モモコは美音よりも10歳ほど年上ですが、小さい頃から美音を妹のように可愛がってくれました。
結婚して町を出て、忙しくて滅多に実家に来ることもないモモコが実家に来てしかもしばらく滞在することになりました。
モモコにはどうやら悩みがあり、その悩みを聞いてやってくれないかと美音はシンゾウに頼まれます。

モモコは夫とトラブルになって帰ってきました。
夫の一族は皆医者で一つの病院に勤務していて、夫とモモコもそこで薬剤師をしています。
ただし夫は医学部を目指したものの叶わずに薬学部に転進していて、医者である一族への劣等感が強いようです。
こんなことなら何浪してでも医学部に行くべきだったと薬剤師を後悔しているようなことを言う夫に、同じ薬剤師でもあるモモコは激怒。
そして喧嘩になってモモコは実家に帰ってきました。

一方、要は仕事でだいぶストレスが溜まっているようで、「ぼったくり」に来てそのことを美音に言っていました。
要によると、相手のやり方に憤懣やるかたなく悪口を言いたくなっているとのことで、相手が一体どんなことをしたのか気になるところでした。
要はお腹の中が真っ黒(腹黒)で自分も「サヨリ」みたいだと言っていました。
魚の「サヨリ」は本当にお腹の中が真っ黒らしく、これは知りませんでした。


「柔らかく包み込むもの」
話の冒頭で「スーパー呉竹」がなくなるという衝撃のニュースが入ってきます。
美音の妹、馨(かおる)が八百源店主のヒロシとシンゾウが話しているのを聞き付けたのでした。
「スーパー呉竹」は美音もよく買い出しに行っていて、「ぼったくり」への影響は免れません。
シンゾウは「スーパー呉竹」の経営者は新しいショッピングセンターに大手スーパーが入ることを知って、この町に見切りをつけたのではと言っていました。
馨は商店街のお店も同じように閉店になってしまうのではと心配します。
商店街に危機が迫ります。
そんな時、初めて見る客が「ぼったくり」にやってきます。
見た目は普通ですが不審な雰囲気を持つ20代後半~30歳くらいの男でした。
男はやけに商店街にある加藤精肉店のことを聞き出したがっていて、店内に居た常連のシンゾウとウメは男の正体は「聞き合わせ」ではないかと言っていました。
「聞き合わせ」とは結婚や就職にあたって、近所にその人の評判を聞きに行くことです。
加藤精肉店の店主、ヨシノリの長男ユキヒロが近々結婚するため、相手の親族がユキヒロの評判と店の評判を聞きに来ているのだろうとのことでした。

ユキヒロの彼女の名前はリカといい、大人しい子とのことです。
それで両親が忙しく立ち働く肉屋に嫁ぐことを心配し、リカの兄が聞き合わせに来たのでした。
そこまで探偵じみたことをする心境は分からなくはないです。


「移ろいゆくものたち」
この話ではショッピングセンターのオープンが延期になったとありました。
今作はどの話でもショッピングセンターの話題が出てきます。
オープンが延期とのことで、何が起きたのか気になるところでした。

人も町も着実に変わりつつあるのだ。恐れてばかりいても仕方がない。変化を受け入れ、自分にとっていいものにしていこう。この町の人たちと一緒ならきっとそれができる。

美音は胸中でこう言っていました。
大手流通グループによってショッピングセンターが建設され、町は転換点を迎えています。
そんな中、美音のこの考えはとても良いと思いました。
町が変わっていくことを受け止め、その変わっていく町を自分にとって暮らしやすいものにしていくのはとても前向きだと思います。


「茶がゆの甘さ」
「移ろいゆくものたち」の話の中でお店のオーブントースターが壊れてしまったため、美音は新しいものを買いに電器屋に出掛けます。
美音は駅から出ているバスに乗り遅れてしまうのですが、何と要も電器屋に行こうとして車で駅まで来ていて、美音も一緒に電器屋まで乗せていってもらうことになります。
偶然にしてはタイミングが良すぎて、要は美音が来るのを期待して待っていたのではと思いました。

その後、要の母親が具合が悪くなったらしく、慌てて家に戻ることになった要に美音も付いて行くことになります。
要が母親を連れて病院に行っている間留守番をしていた美音は台所に出ていたものから母親が「茶がゆ」を作ろうとしていたことに気付き、代わりに作ってあげます。
米の研ぎは旨味が失せてしまわないために少し濁りが残るくらいが良いとあり、これは知りませんでした。
また、茶がゆを作るのは西の人とあり、たしかに私は食べたことがないなと思いました。
和歌山、京都、奈良は有名な茶がゆどころとのことです。


「心地よい香り」
美音はタミというおばあさんがやっているクリーニング屋に行きます。
タミはこのシリーズで初登場でした。
後日、タミとウメがぼったくりに来ます。
タミは夏バテしてしまったようで、ウメはタミに体力の付くものを食べさせようと考えました。
タミが食べたがっているのは「ビーフステーキ」で、さすがの美音も「うわーここはステーキハウスじゃない!」と白旗を上げそうになっていました(笑)
しかし実際に作ってあげるのが美音の凄いところです。
バターの香りが立ち上るビーフステーキはかなり美味しそうで、読んでいて凄く食べたくなりました。


「辿ってきた道」
「魚辰(うおたつ)」の三代目店主ミチヤにはコウイチという高校三年生の息子がいます。
父と息子が進路を巡って対立。
「大学に行け」というミチヤに対し、「魚屋を継ぐのに、大学の勉強なんて必要ないだろ!」と猛反発します。
美音はコウイチの母のセイコにコウイチの相談に乗ってほしいと頼まれます。
コウイチが小さかった頃よく遊んでくれていた美音の話ならコウイチも聞くかも知れないとのことでした。
そしてそれはコウイチが大学に行くように話を持って行ってほしいという意味でもありました。

美音自身は、人づきあいを知るために父によって大学に送り込まれました。
居酒屋にやってくるたくさんの客を相手にするために、知識と人づきあいの術を身に付けてこいとのことでした。
これからは料理人も大学ぐらい出ておかないと通用しない。なぜなら、客の大半が大卒になってくるからだ。お前は、料理をするのに大学の勉強なんていらないと思っているだろう。だが、客が見てきた世界をまったく知らないというのは、接客の上ではハンデだ。
美音の父のこの言葉は印象的でした。
こんな考え方もあるのかと思いました。
たしかに同じ世界を知っていればお客さんの話もより親身に聞けると思います。

シリーズも第4巻になり、美音と要は果たして恋人になるのか、ショッピングセンターがオープンしたらどうなるのか、気になるところです。
第5巻を楽しみに待ちたいと思います。


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シャープな三日月

2015-10-17 06:49:39 | ウェブ日記
昨日は会社からの帰り道、すごく綺麗な三日月に遭遇しました
とてもシャープな三日月で、まだ三日月の一歩手前、新月から二日目くらいの月なのではと思いました。
そこで帰宅してから2015年10月の新月を調べてみると、13日とありました。
昨日は16日なので新月から三日目、暦的には紛れもない「三日月」でした。
普段「三日月」と捉えている月は実際には四日月や五日月なのだと思います。

月の綺麗な秋らしく、とても綺麗な月でした。
9月の十五夜、10月の十三夜と、秋の月に着目した昔の人は良い感性をしていると思います。

そして昨日の三日月は月が大きかったのが印象的です。
このまま大きな月でいてくれれば、十三夜~満月にかけて素晴らしい月が見られると思います。
月が満ちていくのが楽しみです

キンモクセイの香り

2015-10-14 19:35:19 | ウェブ日記
10月に入って少し経った先週ごろから、外を歩くとキンモクセイの香りがするようになりました。
平日の通勤時も休日に外を歩く時も香ってきます。

私はキンモクセイの香りが好きです。
外を歩いて見かける花の中で最も香りを主張してくる印象がありますが、花自体はそれほど目立つものではありません。
しかし香りがすればすぐにキンモクセイと分かり、気分的にも明るくなります
すぐ近くにキンモクセイの木があるとは限らず、「この香りはどこから来ているのだろう」と周囲に意識を巡らすのもこの時期ならではで楽しいです。

キンモクセイが香るようになるといよいよ中秋だなと思います。
気候的にすごく爽やかになる時期でもあります
晴れた日の昼間は暑すぎず寒すぎず、爽やかで過ごしやすい陽気になります
もともと「爽やか」という言葉は秋の季語で、私も数年前から春は「心地よい陽気」、秋は「爽やかな陽気」と使い分けるようにしています。

そんな爽やかな秋の日、キンモクセイの香りを楽しみながら外を散歩するのも良いものです。
気が付けばトンボの姿をあまり見なくなり、虫の鳴き声も最盛期ほどではなくなってきて、本当に秋が進んでいると思います。

沖縄県の扇長知事が辺野古の埋め立て承認を取り消し

2015-10-13 22:47:00 | 政治
今日、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸部への移設に向けた仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認を正式に取り消しました。

翁長知事は正気なのでしょうか。
この展開で一番喜ぶのは中国です。
元々普天間飛行場は立地的に危ないということで辺野古への移設が検討されてきました。
自民党政権時に辺野古移設で合意となったのですが、その後誕生した民主党政権がこれを白紙にしてしまいました。
「最低でも県外」「私には腹案がある」と言った鳩山由紀夫元首相の実際には何の案もない迷走により、沖縄県との間には致命的な亀裂が生じてしまいました。
その後、安倍晋三首相率いる自民党政権が誕生し、仲井真弘多前知事と協議を重ね、再び辺野古への移設にこぎつけました。
ところが辺野古移設反対の翁長雄志氏が知事になり状況が一変。
今回の埋め立て承認取り消しになってしまいました。

翁長知事の主張を見ると米軍基地を沖縄県から追い出したいようですが、もしそうなった場合は確実に中国が動きます。
尖閣諸島侵略への好機を逃しはしないでしょう。
中国の侵略をぎりぎり食い止めているのが米軍という抑止力です。
そこに先日国会で成立した集団的自衛権行使容認を含む安全保障法案が加わり抑止力を強化してくれますが、まず実際に軍が沖縄に居る点は大きいです。

尖閣諸島が侵略された場合、現在進行形で南シナ海及び南沙諸島を侵略する「覇権主義国家」である中国がそこで止まるはずもなく、今度は他の沖縄の島々、そして沖縄本島が侵略の危機に晒されます。
私は日本国民として沖縄県が侵略の危機に晒されるのを見過ごすわけにはいかないので、普天間飛行場の辺野古への移設に賛成です。

報道を見ると沖縄県のほとんどの人がアメリカ軍を沖縄から追い出したがっているかのようですが、果たしてそうでしょうか。
テレビと新聞が「一般市民による抗議」と称している辺野古での抗議活動が、実際には反日左翼団体によるものなのは有名な話です。
本土から結構な人数の反日左翼団体の人が抗議活動をしに沖縄に乗り込んでいるとも聞きますし、辺野古で抗議活動をしている人達のうち、「沖縄県民であり、かつ本当の一般人」の割合がどのくらいなのか気になるところです。
「沖縄県民ではあるが、一般人ではなく反日左翼団体の人」「沖縄県民ではなく、かつ反日左翼団体の人」この二つで結構な割合を占めるのではないでしょうか。
沖縄県にもきちんと危機意識を持っている人は相当数いるのではないかと思います。
武力によって他国の領土を侵略する覇権主義国家・中国という「今、目の前に迫っている危機」に最も近い位置に居るのですから。
偏向報道によって「ほとんどの人が米軍基地追い出し派」かのように歪められた情報ではなく、妙なフィルターが掛かっていない本当の沖縄県の声を聞いてみたいものです。

美容室からのメール

2015-10-11 19:52:57 | ウェブ日記
関東に住んでいた頃は横浜の美容室によく行っていました。
2007年の終わり頃から行き始め、2010年秋にそれまでカットしてもらっていた人が独立して新店舗をオープンしてからは、そちらに行くようになりました。
確かなカットの技術があり、他の人に切ってもらうよりその人に切ってもらうほうが仕上がりが良いです。
ただし山陽に行ってからは縁遠くなり、ここ半年ほどは行っていないです。

先日、その美容室からメールが来ました。
どうやら足が遠退いたお客さんにたまにメールを送ってフォローしているようです。
これはなかなか良いのではと思います。
気にかけてもらっているということですし。
ただし露骨に来店してくれアピールのような文面になると逆効果ですし、そこは気を付けないといけないと思います。

メールを貰ったことですし、また行ってみようかという気が少し沸き起こりました。
帰省の時に上手くタイミングが合えば不可能ではないです。
ただ位置関係的には簡単ではないので、よほど上手く行けばだなと思います。
髪はできることなら馴染みのある人に切ってもらいたいものです。
自分にピッタリ合う美容師さんはなかなかいないものなので、縁は大事にしたいところです。

「羊と鋼の森」宮下奈都

2015-10-10 20:06:47 | 小説
今回ご紹介するのは「羊と鋼の森」(著:宮下奈都)です。

-----内容-----
ゆるされている。
世界と調和している。
それがどんなに素晴らしいことか。
言葉で伝えきれないなら、音(ピアノ)で表せるようになればいい。
ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
2016年第13回本屋大賞受賞作。

-----感想-----
主人公の名前は外村(とむら)で高校二年生。
北海道に住んでいます。
作者の宮下奈都さんは福井県の出身で作品も福井を舞台にしたものが多いのですが、最近は北海道に移住したりもしているので、この作品では北海道が舞台になったようです。
ある日、外村は先生に頼まれて調律師を体育館のピアノに案内します。
調律師の名前は板鳥宗一郎。
板鳥のピアノの調律は外村を魅了するものでした。
この人との出会いで外村はピアノの調律に興味を持ちます。

高校を卒業した外村は北海道を出て調律の専門学校に行きました。
初めて学ぶ調律に苦戦しながらも無事に卒業し、板鳥さんの勤める楽器店「江藤楽器店」に就職しました。
板鳥さんに「焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです」とアドバイスを貰った外村は「こつこつ、どうすればいいんでしょう。どうこつこつするのが正しいんでしょう」と尋ねます。
この時の板鳥の言葉が印象的でした。
「この仕事に、正しいかどうかという基準はありません。正しいという言葉には気をつけたほうがいい」
たしかにどんなこつこつが正しいというのはないのだと思います。
その日なりにできることをやり、身に付けていくしかないですね。

外村はしばらくの間、七年先輩の柳さんに付いてお客さんのところに行き、調律の様子を見ることになります。
お客さんのピアノを調律させてもらえるようになるのは早くて半年後からとのことです。
調律師の仕事には音を揃える調律、ピアノの音色を作る整音があります。
柳さんによると「技術はもちろん大事だけど、まずお客さんとの意志の疎通が大事」とのことでした。
例えばお客さんが「やわらかい音にしてほしい」と言ってきた時、その柔らかさはどの程度の柔らかさなのか、必要なのは本当に柔らかさなのか、お客さんとよく話し、意志を疎通させる必要があるようです。
たしかにそうしないと調律を万全にしたつもりでも、音を聴いたお客さんが「この柔らかさではなく、別の柔らかさが良い」となると思います。

外村が初めて柳とお客さんのところに行ったのは入社して5ヶ月を過ぎた秋の始めの頃でした。
佐倉和音(かずね)と由仁(ゆに)という双子の高校生姉妹がピアノをしている家でした。
和音が姉です。
柳さんが妹の由仁の生き生きとして色彩に溢れていて情熱的なピアノを絶賛していたのに対し、外村は姉の和音の情熱的でありながら静かな音のほうに感銘を受けていました。
この外村の感性が後の展開につながっていました。

秋野さんという40代前半のベテラン社員は変わった人でした。
秋野さんはお客さんからのリクエストについて淡白な考え方をしていて、外村には次のように言っていました。
「明るい音、澄んだ音。華やかな音ってリクエストも多いな。そのたびにいちいち考えて音をつくってたら大変だ。明るい音ならこのメモリ、華やかな音ならこれ、って決めておくんだよ。それで良いんだ」
「形容する型に合わせて、調律の型を選ぶってことですか」
「そう」
「一般家庭に調律に行くんだ。それ以上求められてないし、やっても意味がない。むしろ、へたに精度を上げると…弾きこなせないんだよ」
お客さんごとにベストの調律をしてあげたいと考えている外村にとって、秋野のこの考えは納得がいかないようでした。
ただ「へたに精度を上げると一般家庭の人では弾きこなせない」というのはそのとおりなのではと思います。
程よく調律して程よく弾きこなせるピアノにするか、弾きこなせるかは不明だがベストの状態に調律するか、調律師によって意見が分かれるところだと思います。

柳さんが彼女へのプロポーズのために客先から直帰し、外村一人で店に帰る途中のある日、外村は双子の佐倉姉妹に頼まれてピアノを調律することになります。
本当はまだ一人でピアノの調律をしてはいけない時期だったのですが、魔が差してしまったようです。
ピアノの状態は少しずつおかしくなっていき、外村は焦ります。
次の日に柳さんが見てくれることになったのですが、外村はだいぶ苦しい心境になっていました。

ピアノは鍵盤を叩くとハンマーが連動して垂直に張られた弦を打ち、音が鳴る仕組みになっています。
ハンマーは羊毛を固めたフェルトで出来ていて、このハンマーが鋼の弦を叩くということで、「羊と鋼の森」という作品タイトルの由来になっています。
森は外村が高校の体育館で板鳥の調律したピアノから音が出るのを聴いて森を思い浮かべたこと、そして調律師の仕事が漠然とした森の中を進んでいくといった意味があると思います。

双子の姉、和音が店に来て、外村にピアノの発表会のことを相談したことがありました。
和音によると由仁は気持ちが大きくて本番に強く、発表会では常に和音の一回り上の出来になるとのことです。
外村は
「和音さんが本番で力を発揮できなくて、二番手だった由仁さんが繰り上げ当選する、ってことじゃないんでしょう。和音さんはちゃんと和音さんのピアノが弾けている。それなら、かまわないんじゃない?」
と良いアドバイスをしていました。
ただ、外村自身はここ一番の時に良いところを持っていってしまう弟のことを羨んでいます。
その気持ちには蓋をしているらしく、和音にアドバイスしている時に胸中で次のように述懐していました。

運があるとかないとか、持って生まれたものだとか、考えても仕方のないことを考えはじめたら、ほんとうに見なきゃいけないことを見失ってしまいそうだった。

たしかに考えても仕方のないことを考えても栓なきことで、無限ループにはまってしまいます。
「運がない」や「持って生まれたものがない」も、考え出すと卑屈になってしまいます。
「○○がない」よりも「今あるもの」を見つめるほうが良いと思います。

外村は入社二年目になります。
ベテラン社員の秋野は外村に露骨に嫌みを言ってくるようになり、読んでいて嫌な奴だなと思いました。
外村は冷静で、「どこに行ったって感じのよくない人はいる」と胸中で言っていました。
たしかにそのとおりです。
そして秋野も嫌なだけの人物ではなく良いところもあり、物語後半では少し見直しました。
後は嫌みばかり言いたがる性格を改善してほしいところです。

「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
この言葉は板鳥が外村に授けてくれた、作家の原民喜が目指す文体について語った言葉です。
外村が調律師として目指すのもこの形のようで、外村にとって大事な言葉になっていました。

双子の姉妹の妹、由仁がピアノが弾けない病気になります。
ピアノを弾くときだけ指が動かなくなるとのことで、精神的なものに起因するのではと思います。
気が大きく本番に強い由仁がこの病気になったのは意外でした。
由仁はピアノを諦めることになると、秋野が遠回りに外村に教えていました。

しかしこれを境に姉の和音に変化が起きます。
ピアノの音色にこれまではなかった由仁のような生き生きさが加わるようになったのです。

「私、ピアノを始めることにした」
和音のピアノはもう始まっている。
とっくの昔に始まっている。
ピアノから離れることなんて、できるわけがなかった。


外村は初めて見た時から和音のピアノの音色の良さに気付いていました。
その和音が妹の病気を境に覚醒して神がかった演奏をするようになり、外村の優れた感性を目の当たりにしました。
双子の一人はピアノが弾けなくなりましたが、もう一人はピアニストの才が目覚めて羽ばたきました。
この展開は読んでいて涙ぐみました。
ピアノを諦めたくなく、別の道を模索するという由仁に対し、外村は良いことを述懐していました。

ピアノをあきらめることなんて、ないんじゃないか。森の入口はどこにでもある。森の歩き方も、たぶんいくつもある。

ピアニストの道が閉ざされてしまったのは既に済んでしまったことです。
過去よりも今です。
今の自分に最善と思える入口と歩き方で、森の道を進んでいってほしいです。

主人公は外村で、外村の調律師としての成長を描いた物語なのですが、双子姉妹の物語でもあるような気がしました。
そして宮下奈都さんはお仕事小説で主人公が成長していくのを優しく丁寧に描くのが本当に上手いと思います。
宮下奈都さん自身が優しい感性の持ち主なのだと思います。
文章も静かな中に瑞々しさがあり好感度が高く、いつか芥川賞を受賞してほしい作家さんです。


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