読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「フルタイムライフ」柴崎友香

2014-07-30 23:30:36 | 小説


今回ご紹介するのは「フルタイムライフ」(著:柴崎友香)です。

-----内容-----
この春、美大を出てOLになった喜多川春子。
なれない仕事に奮闘する春子だが、会社が終わると相変わらず大学の友人とデザインを続けたり、男友達にふられたりの日々。
ようやく仕事にもなれた頃、社内にリストラの噂がでて、周囲が変わり始める。
一方、昼休みに時々会う正吉が気になり出した春子にも小さな心の変化が訪れて…
新入社員の10ヶ月を描く傑作長篇。

-----感想-----
柴崎友香さんの作品を読むのは今回が初めてです。
今月17日に「春の庭」で第151回芥川賞を受賞された柴崎友香さん。
先週末に図書館に行った時、ふと柴崎さんの作品が気になったので、どんなものがあるのだろうと思いコーナーを見ていきました。
そして目に留まったのがこの「フルタイムライフ」です。
今日マチ子さんの素朴で温かみのあるカバーイラストと本の裏の内容紹介文を見て、面白そうなので読んでみようと思いました。

主人公は社会人一年目でOLになったばかりの喜多川春子。
春子はエビス包装機器という機械の会社の事務職に就いていて、経営統括部という部署にいます。
会社があるのは大阪の心斎橋なので、登場人物はほとんどの人が大阪弁です。
物語は最初が5月で、その後は2月まで1つの章で1ヶ月ずつ進んでいきます。

冒頭からオフィスでの仕事の様子が描かれていて、春子はシュレッダーで大量の書類を裁断していました。
コピー機でコピーを取ったりするシーンも多く、事務職だけあってオフィス内の事務の仕事を色々やっていました。
会社では次から次へとすごくたくさんの人が登場してきて、みんな苗字だけで「○○さん」という形容で、少ししか登場しない人ばかりなので、なかなか全員を覚えるのは難しいです
これはまさに会社での色々な人が行き来する人の流れだなと思います。
解説の山崎ナオコーラさんが「読み始めたときに、誰が誰だか分からない感覚に陥る」と書いていて、たしかにそうだと思いました。
しかしそれでも特に問題なく読めてしまうのは、それらの人物が主人公にとってものすごく重要な人物というほどではないからだと思います。
業務上あまり関わりのない人であっても話しかけてきたりといったことがあるものです。
そんな時はこの人誰だろうと思いつつも無難に話をしたりもします。

「5月」の章で、午後ずっとシュレッダーで書類を裁断していた春子が「こんなんでいいのかな」と心境を語っていた部分にはちょっと共感しました。
たしかに何も考えずひたすらシュレッダーで書類を裁断するような仕事をしていると、こう思うことがありますね。

春子は事務職で事務全般を扱ってはいますが、もともと求人票に書いてあった仕事内容は「社内報の編集・デザイン」です。
シュレッダーやコピー、パソコンの入力などの合間に、社内報を作成している様子も描かれています。
美術系の大学のデザイン科で学んでいた春子は、漠然とデザイン関係の仕事をしたいと思っていましたがなかなか上手くいかず、このままだとアルバイトになるかと思っていた卒業間近にこの求人を紹介してもらい、縁あって入社となりました。

すごく淡々と日々が過ぎていっていました。
良い意味で淡々としていて、それほど忙しくはない今の職場は春子にも合っているようでした。
プライベートでは大学時代の友達、樹里とよく一緒に行動し、好きな人に振られたり、新たに好きな人ができたりしながら過ぎていっていました。

「11月」の章で「会社が終わる時間に外が暗いと、もう一日が終わったみたいで悲しい」とあって、この気持ちはよく分かりました。
帰る時に既に夜になっているというのは、特に夏場は切なくなります

「わたし、辞めようかなと思ってる」
春子が同じ職場で頼りにしている先輩からこう切り出されて、戸惑う場面がありました。
お昼も一緒に食べるし、おやつも一緒に食べるし、むかつくことがあった時は一緒に愚痴を言っている先輩です。
会社なので退職していく人は必ずいるんですよね。
一緒にお昼を食べているグループの、他の部署の先輩も一人結婚して寿退職することになり、さらには会社もリストラをすることになり、春子は環境の変化に直面していました。
それでも淡々とした語り口の文章を読んでいると、きっとその変化にも淡々と順応していけるんだろうなと思わせてくれるものがありました

リストラに揺れる社内で、みんな辞めたいと思わないのかという話になった時、「私は会社なくなるまでおる」と言っている先輩がいて、すごく印象的でした。
「なんていうか、この仕事、好きみたいなんですよね。おもしろいでしょ?」とも言っていて、こんなふうに仕事をはっきりと好きと言えるくらい充実しているのは素晴らしいと思います。

春子が語っていた心境の中で、すごく良いと思ったのが以下の言葉です。
必要なのは、なにかするべきことがあるときに、それをすることができる自分になることだと思う。
するべきことが来た時、それをする決断をすることもそうでしょうし、するべきことができるように、力を付けておくこともそうだと思います。

そして同じページで
明日の朝起きて会社に行っても同じように思ってるかどうかはわからない
とも言っていて、これはウケました(笑)
人の心は常に揺れ動いていますから、これはほんとにそのとおりだと思います。
色々考えながら、進んでいければそれで良いのではないでしょうか。
そうしているうちに春子も、もうじき頼りにしている先輩がいなくなってしまう職場で、リストラによる組織改編に揺れる会社で、自分の働き方を確かなものにしていけるのではと思います


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「憎悪のパレード」石田衣良

2014-07-27 23:36:17 | 小説
今回ご紹介するのは「憎悪のパレード」(著:石田衣良)です。

-----内容-----
死ね!殺せ!人を刺す言葉のナイフはもう捨てよう。
池袋チャイナタウンに吹き荒れる、ヘイトスピーチの嵐。
本当の敵は、一体どこにいる?
日本の今がここにある。
3年半ぶりの、シリーズ第11弾。

-----感想-----
3年半ぶりとなる、池袋ウエストゲートパークシリーズの第11弾です。
池袋西一番街にある果物屋の息子で、トラブルシューターでもある真島誠の日常で起こる様々なトラブルを綴った物語。
今作は以下の四編で構成されています。

北口スモークタワー
ギャンブラーズ・ゴールド
西池袋ノマドトラップ
憎悪のパレード

今作では石田衣良さん、「憎悪のパレード」という作品で随分と強力に政治主張を出してきたなと思います。
ひとまず順番に各作品について触れていきます。

「北口スモークタワー」は、脱法ドラッグを巡る話。
池袋駅の北口に「スモークタワー」と呼ばれる、脱法ドラッグ(今月22日に名称が「危険ドラッグ」に変更)の総合百貨店となっているペンシルビルがあります。
倉科魅音という12歳の子がそのビルに放火。
そこをGボーイズのメンバーがたまたま通りかかったので火を消し、魅音をGボーイズのキング・安藤崇のところに連れていき、崇が魅音を連れて誠のところにやってきます。
この子の話を聞いてやれとのことでした。
話を聞くと、魅音は脱法ハーブを吸って暴走運転をしていた車によって祖母が重症を負い、脱法ドラッグの巣窟たるスモークタワーに強い恨みを持っていました。
止めてもまた火をつけにいくと魅音は言います。

そしてGボーイズからの正式な依頼として、スモークタワーを街から追い出すことになります。
「教授」と呼ばれる脱法ドラッグに詳しい人物とともに、誠はスモークタワーに潜入。
当然のように脱法ドラッグを売っているすごい光景に衝撃を受けていました。

「どうして麻薬を堂々と売っているのに、警察も手をだせないんだ」
「ITと同じだ。あまりに新しくて、法律が追いつかない。脱法ハーブというのは麻薬じゃない麻薬で、これまでの法律のカテゴリーにないんだ。法律にない犯罪は裁けない」

この会話が印象的でした。
ちなみに脱法ドラッグの中では脱法ハーブが一番有名らしく、たしかにニュースでもその名をよく聞くなと思います。
脱法ドラッグの巣窟と化したスモークタワーを壊滅させるべく、誠は策を練ります。


「ギャンブラーズ・ゴールド」は、パチンコの話。
冒頭で
「そいつはギャンブルではないギャンブルだ」
「一年間に20兆円を超える売上を記録するグレイゾーンの王さまだ」
「トヨタ自動車の売上も、同じく20兆円くらい。この遊技は日本最大規模の産業のひとつといって間違いない」
と紹介されていたのが印象的でした。
グレイゾーンの王さまというのがポイントで、その存在は非常にきな臭くもあります。
ちなみに私はパチンコがあまり好きではありません。

Gボーイズは池袋巣鴨大塚で12軒のパチンコチェーンを展開するジャルディーノ・エンターテインメントから「ゴト師」探しの依頼を受けていました。
ゴト師とはイカサマをして大当たりを連発させる人のことで、ジャルディーノ池袋北口店がゴト師の被害に遭っているようでした。
安藤崇率いるGボーイズが16名で客を装って池袋北口店に張り込み、崇から頼まれて誠も客のふりをして一緒にパチンコを打っていました。

この店で知り合ったのが、三橋行矢(ゆきや)というパチンコ好きの人物。
子どもの頃からギャンブルと一緒に育ったという行矢のパチンコ好きは尋常ではなく、家族よりパチンコのほうが重要という状態で、完全にパチンコ依存症でした。
この物語は前半はゴト師探しがメインで、中盤からは行矢のパチンコ依存症がメインになります。
あと、この物語では
春の数日がひねもすのたりとすぎていった。
という表現がありました。
「ひねもすのたりと」とはどういう意味なのだろうと思い調べてみたら、「終日、ゆったりと」という意味のようです。
それから「北口スモークタワー」と「ギャンブラーズ・ゴールド」の二話続けて誠は子どもから「お父さんみたい」と言われていて、シリーズ最初の頃は10代だった誠も今作では20代後半になり、段々そういう雰囲気になってきたのかなと思いました。


「西池袋ノマドトラップ」は、ノマド(遊牧民)を巡る話。
ノマドとはオフィスがなく、会社に籍も置かない、遊牧民のように移動しながら働く自由なデジタル労働者のことです。
「コワーキング・スペース」というノマドワーカーのための働き場所が池袋にできていて、共同オフィス的なカフェのような店でした。
コワーキング・スペースとは「一緒に働く空間」という意味です。

樋口玲音(れおん)というノマドワーカーが、トラブルを起こしてしまいます。
そのトラブルを起こした相手が非常にまずく、「ツインデビル」と呼ばれる、高梨裕康と友康の凶悪な高梨兄弟です。
池袋ウエストゲートパークの過去の作品にも出てきました。
弟の友康によってコワーキング・スペースが襲撃され、青ざめる玲音。
誠は玲音から話を聞き、Gボーイズとともに高梨兄弟を叩き潰す作戦を考えます。
Gボーイズのキング・安藤崇も池袋で好き勝手暴れている高梨兄弟には怒っていたようで、二度と池袋に近付いてこないように叩き潰そうとやる気満々でした。


「憎悪のパレード」は、ヘイトスピーチを巡る話。
ヘイトスピーチとは憎悪表現のことで、デモなどで「死ね!殺せ!」と過激な言葉で罵倒中傷するようなことを指します。
私が知る限り最もこのヘイトスピーチという言葉が合うのは韓国が行っている凄まじい反日デモで、あれは狂気の沙汰だと思います。
中国もしばしば反日デモを行っていて、現地にある日本のお店が襲撃されることもあり、ヘイトスピーチどころか露骨に犯罪に及んでいましたね。

「憎悪のパレード」の作中、池袋の西口と北口のチャイナタウンは反中デモに揺れていました。
「中国人を祖国日本から徹底排除する市民の会」(略称「中排会」)という団体が池袋のチャイナタウンに来て、反中デモを行っています。
この「中排会」は、現実世界での「在日特権を許さない市民の会」(略称「在特会」)をモデルにしていると思われます。
「在日特権を許さない市民の会(在特会)」も何度か池袋で反中デモを行っているので、石田衣良さんはこれを小説の題材にしたようです。

「中排会」のデモは
「チャイナタウンの中国人を殲滅しにいくぞ」
「いくぞー!」
「ゴキブリとー、シナ人はー、一匹残らずー、駆除しなければー、いけませんー」
「シナ人にー、死をー」
と、非常に過激なもので、道行く人が顔を背けて遠ざかっていっていました。
そしてこの「中排会」と対立する団体もあって、「ヘイトスピーチと民族差別を許さない市民の会」(略称「へ民会」)と言います。
「へ民会」は「中排会」のデモに通りを挟んでピタリと横についていて、「中排会」のシュプレヒコールに合わせて、
「中国人と、ともに生きよう」
「生きようー」
とカウンターのようなシュプレヒコールを上げていました。
なので両者のシュプレヒコールが混ざり合い、
「死ねー」
「生きようー」
「死ねー」
「生きようー」
とわけのわからないことになっていました

さらには「へ民会」から分派した「レッドネックス」という過激派暴力団体も出てきて、「へ民会」と合わせて、これらは現実世界での「レイシストしばき隊」をモデルにしていると思われます。
「レイシストしばき隊」は「在日特権を許さない市民の会(在特会)」のデモにしばしばカウンターとしてぶつかっていっていて、名前のとおり暴力でデモ参加者をしばくことを厭わない過激派集団のため、つい先日も8人もの逮捕者を出して騒ぎになっていました。

作中で誠とGボーイズは「へ民会」の代表である久野俊樹から、「レッドネックスが中排会に暴力を振るうとこちらの印象が悪くなるので、止めてくれ」と依頼を受けます。
誠は市民団体同士の対立に巻き込まれて、守りたくもない「中排会」を守ることになって、うんざりとしていました。
そして物語は単なる市民団体同士の対立には留まらず、池袋北口の再開発、ビルの地上げ、そこに流れ込む中国マネーが絡む複雑な展開を見せます。
「中排会」にもある目的を持って潜り込んで暗躍していた人物がいて、なかなか面白い物語でした。

ちなみに、この物語で違和感を持ったのが、中国の尖閣諸島侵略のことを指して、「岩だらけの小島でもめようが、経済成長の先輩としてもうすこし余裕を持ったほうがいい」という内容のことを誠が語っていたこと。
これはそのまま石田衣良さんの考えでもあると思います。
この認識には驚きました。
岩だらけの小島と大したことではなさそうに言っていますが、万が一尖閣諸島が陥落したら、何が起きるか分かっているのでしょうか。
かの覇権主義の国がそこで止まるとでも思っているのでしょうか。
止まるわけがないですし、次は沖縄本島が危険に晒されることになります。
そしてこの話全体を通して、そういった問題から目を反らし、よくテレビのコメンテーターが言うような偽りの平和主義論(とにかくこちらだけがひたすら我慢して、仲良くしましょう)に持っていこうとしていたのが残念でした。
中国側の暴挙には触れないようにし、無理やり「仲良く」に持っていくのは論理構成に無理があります。
残念ながら中国という国は韓国と同じく常識が通用するような相手ではないですし、こちらだけが無理やり仲良くしようとしても、仲良くできるような相手ではありません。
この部分は「とにかく何をされても文句を言わず仲良く。これに反発する声は全て右傾化とみなす」と考えていそうな石田衣良さんと、「クレーマー相手に無理に仲良くするより、アジアには他に良い国がいくつもあるのだからそちらと付き合い、中国とは距離を置いたほうが良い」と考える私とでは、だいぶ考えが違うだろうなと思います。

石田衣良さんの考えが強く滲み出ている、なかなか興味深い話でした。


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

健康的な食事

2014-07-26 13:50:58 | グルメ


写真は和食料理屋「大戸屋」にて注文した、ご飯、納豆、ほうれん草の胡麻和え、かぼちゃのコロッケです。
大戸屋では各種定食だけでなくバラの品目も充実しているので、自分の好きな組み合わせで注文することができます。
ふと植物性タンパク質を中心にしたものを食べてみようかなと思い、この組み合わせにしました。

植物性タンパク質の代表的なものと言えば納豆です。
納豆は「畑の肉」と呼ばれる大豆から作られた、タンパク質が豊富な食べ物。
これとご飯が組み合わさると栄養バランスも凄く良いらしく、私が子供の頃から好きな「納豆ご飯」はかなり健康的な食べ物だったようです
納豆ご飯、本来は好きなのに普段あまり食べる機会がなくなっているため、これからまた食べる機会を増やしていければと思います

ほうれん草は、代表的な緑黄色野菜です。
淡色野菜は簡単なサラダでわりと食べるのですが、緑黄色野菜はあまり食べていないです。
そこでこの日はほうれん草の胡麻和えを頼んでみました。

時にはヘルシーなものを食べて、健康に気を使っていきたいと思います
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「トリガール!」中村航

2014-07-25 23:59:51 | 小説
今回ご紹介するのは「トリガール!」(著:中村航)です。

-----内容-----
「きっと世界で一番、わたしは飛びたいと願っている」
ひょんなことから人力飛行機サークルに入部した大学1年生・ゆきな。
エンジョイ&ラブリィな学生生活を送るはずが、いつしかパイロットとして鳥人間コンテストの出場をめざすことに。
個性豊かな仲間と過ごす日々には、たった1度のフライトにつながる、かけがえのない青春が詰まっていた。
年に1度の大会で、ゆきなが見る景色とは―。
恋愛小説の旗手が贈る、傑作青春小説。

-----感想-----
鳥人間コンテストにすべてを捧げた大学生の輝かしい日々を描く、”空飛ぶ”青春小説。
文庫本の帯に書かれていたこの言葉と、爽やかな表紙に好印象を持ち、読んでみたこの作品。
期待していた以上の、かなりの面白さでした

主人公は鳥山ゆきな。
一年浪人して、女子では珍しく工業大学の機械工学科に入学しました。
ゆきなは同じく機械工学科に入った和美とともに、人力飛行機サークル「T.S.L(チーム・スカイハイ・ラリアット)」の勧誘イベントに参加。
そこでものすごい熱意の勧誘を受け、最初からノリノリだった和美とともに、ゆきなは成り行きで「T.S.L」に入部することになりました。

ゆきなを熱烈に勧誘したのは高橋圭という二年生で(ゆきなは一年浪人しているため、年齢は同じです)、「T.S.L」では実際に人力飛行機に乗るパイロットをやっています。
「T.S.L」にはプロペラ班、翼班、フェアリング班、電装班、フレーム及び駆動システム班、庶務班、パイロット班と、色々な班があります。
人数も100人くらい居るものすごい大所帯のサークルです。
一つの人力飛行機を作るために一年がかりでこんなに大勢の力を結集させているというのは読んでいて驚きでした。
8月1日に滋賀県彦根市の琵琶湖で行われる「鳥人間コンテスト」を目指すにはそれくらい大規模な準備が必要ということを意味しています。

ゆきなは当初エンジョイでラブリィなキャンパスライフを送るつもりだったのですが、圭に勧められてトレーニングを始め、いつの間にか本気でパイロットになろうとしていました。
実際の人力飛行機では足でペダルを漕いで飛ぶので、来る日も来る日も、自転車を漕いだりトレーニングルームでエアロバイクを漕いだりして体力強化、脚力強化に努めていました。
ちなみに、「T.S.L」の人力飛行機は「二人乗り」を伝統としています。
重量のこともあり普通は一人乗りにするらしく、二人乗りの人力飛行機はかなり珍しいとのことです。

パイロット班には圭とゆきなの他にもう一人居て、それが坂場大志という男です。
その人から強靭な脚力と体力が要求されるパイロットは女には無理だと言われ、ゆきなは激怒。
坂場先輩への怒りからより一層トレーニングに励んでいました。

「T.S.L」が出場するのは「人力プロペラ機ディスタンス部門」で、今年製作している人力飛行機の名前は「アルバトロス」。
縦の長さは10m、翼を開いての横の長さは40mもあるかなり本格的な機体です。
8月1日の本番に向けて、パイロットが実際にアルバトロス号に乗ってのテストフライトがあります。
これも荒川の河川敷にある「ホンダエアポート」を借りての本格的なものです。
そこで各種のデータを取って、改良が必要な場所があれば改良し、完成度を上げていくというわけです。

しかしアルバトロス号の最初のテストフライトで事故が発生。
ふわりと浮いた機体に異変が起き、そのままバランスを崩して滑走路に激突。
乗っていた圭が大怪我を負ってしまい、8月1日の「鳥人間コンテスト」への出場が絶望的に…
当初「圭と坂場」がパイロットを務めるはずだったものが、急遽「坂場とゆきな」になります。
しかし坂場は二年前に1stパイロットとして出場した鳥人間コンテストでの大失敗のトラウマがあって、メインのパイロットである1stパイロットはもう絶対やらないと言って、自身がメインパイロットになるのを頑として受け付けません(ゆきなはサポート役の2ndパイロット)。
さらにゆきな自身、坂場のことが大嫌いだったので、こんなギクシャクしたコンビで大丈夫なのかと心配でした。
それでも、ゆきなの「飛ばない先輩は、ただのクソブタ野郎ですよ!」という紅の豚の名言みたいな一言が効いたらしく、坂場もようやく1stパイロットをやる決心をします。
ちなみに以前、二年前の大失敗のショックでしばらくパイロットから離れていた時、圭にも「飛ばない先輩は、ただのブタですよ」と言われてショックを受け、もう一度パイロットとして戻ってきた経緯があり、この紅の豚の名言は結構効き目があるようです(笑)

たった一回のフライトのために、パイロットは血の滲むような努力をしています。
人力飛行機におけるパイロットは「エンジン」であり、どれだけの出力を出せるかが飛行距離に大きく関わってきます。
目標としている出力を出せるようになるために、トレーニング計画を立て、毎日とんでもなくハードなトレーニングの日々です。
鳥人間コンテストはテレビで少し見たことがあるのですが、パイロットはこんなにハードなトレーニングを積んでいたのかと驚きました。
少しでも長く飛ぶために、極限まで努力を重ねています。

そして迎える、滋賀県彦根市、琵琶湖での鳥人間コンテスト。

無駄を削ぎ落とし、空を一度だけ飛ぶために設計された機体は、こんなにも情熱的で、こんなにも力強い。風の結晶を、光の結晶で繋ぎ合わせて生まれた機体は、こんなにも優しくて、美しい。

製作チームが仕上げてくれた渾身の機体を見て、ゆきなも坂場も胸が高鳴ります。

前方に青い空が見えた。こんな日が来るなんて思わなかった。わたしのこれまでは、全部、この日のためにあったんだと心から思えた。限界なんて関係ない。わたしのこれまでは全部、このフライトのためにあったんだ。

みんなの思いが詰まったアルバトロス号で琵琶湖の彼方へと飛んでいくゆきなと坂場のフライト、素晴らしかったです
これぞ青春だと思いました
ちなみに今年2014年の鳥人間コンテストは7月26日、27日にあり、まさにタイムリーな時にこの小説を読みました。
コンテストに出場する方々にはぜひ健闘してほしいと思います


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「予言村の転校生」堀川アサコ

2014-07-24 23:05:29 | 小説
今回ご紹介するのは「予言村の転校生」(著:堀川アサコ)です。

-----内容-----
父・育雄が故郷の村長に当選し、中学二年生の奈央はこよみ村に移り住む。
村には秘密の書「予言暦」があるという。
元アイドルの溝江アンナとその息子・麒麟、<村八分>松浦、父の政敵・十文字など個性的な村民と共に奈央は様々な不思議な体験をする。
村の四季を背景に、ほんのり怖いけれど癒される青春ファンタジー。

-----感想-----
「幻想郵便局」「幻想映画館」「幻想日記店」の幻想シリーズでお馴染みの堀川アサコさん。
先日書店で本を眺めていたらこの作品が平積みされているのが目に留まり、内容紹介を見たら面白そうだったので読んでみることにしました。

主人公は中学二年生の湯木奈央。
冒頭、父の育雄が突如としてこよみ村の村長選挙に立候補すると言い出し、湯木家は騒ぎになっていました。
奈央たちはこよみ村の隣にある竜胆(りんどう)市という市に住んでいて、父の育雄は竜胆市の市役所市民課に務めています。
しかし選挙に立候補するとなると市役所も辞めなければならず、家庭生活が崩壊しかねないため母の多喜子は猛反対しています。

湯木家のルーツはこよみ村にあり、育雄の父(奈央の祖父)の湯木勘助はこよみ村の前村長、さらにはその父も、またその父も、村長あるいは有力者としてこよみ村に君臨してきたとのことです。
前村長の湯木勘助が急死してしまったのですが、自身の死期を悟っていた勘助は遺言状を書いていて、自分が死んだら育雄が後を継ぐようにと書かれていました。
育雄の主張には妙なところがあって、自身が村長になるのは”もう決まっていること”と言っています。
選挙なので対立候補に勝たなくてはならないのですが、もう決まっているとは一体…

そこに出てくるのが、こよみ村の伝説である「予言暦」。
昔からこよみ村では日照りも干ばつも、事件が起こることも事故が起こることも、全部が予言されていて、みんなその予言のとおりに生きているという伝説があります。
村の行政までがその予言によって運営されていて、それは昔から「予言暦」と云い習わされています。
どうやらその予言暦に育雄が次期村長になることが記されているらしく、それで育雄は”もう決まっていること”と言っているようなのです。
実際に育雄は、十文字丈太郎というバリバリの政治手腕を持つ強敵に勝ち、見事村長に当選してしまいました。
ちなみに「予言暦」については、大多数の者はそれがどんなものなのか、またどこにあるのかさえ知らず、それを見ることが出来るのは村の中でもほんのわずかな限られた人しかいないようです。

育雄が村長に当選したため、育雄と奈央はこよみ村に移り住みました。
母の多喜子は怒りが収まらなかったため最初は意地を張って竜胆市にある家に一人で残っていました。
奈央も当初はこよみ村に住む気はなかったのですが、育雄の政敵の十文字丈太郎とある賭けをしていて、その結果育雄についてこよみ村に行くことになりました。

こよみ村には古い因習があって、その一つに<村八分>なる制度があります。
この村での村八分は村中からのけ者にされる村八分とは違って、「頼れる人」「生きたお地蔵さん」のような意味を持っていて、村の困りごとを助ける人間として頼りにされています。
その村八分を務めるのが松浦という青年で、育雄の選挙戦の選挙参謀も務めました。
松浦も「湯木さんは当選します。これは、決まっていることですから」と言っていて、この人も予言暦に育雄が次期村長と記されていることを知っていました。

古い因習と聞くと、私は三浦しをんさんの「白いへび眠る島」が思い浮かびます。
こよみ村はすごく閉鎖的なところがあって、よそ者が「予言暦」に代表されるような、村の核心に触れるものを嗅ぎ回るようなことは許しません。
改革派と呼ばれる十文字丈太郎は
「こよみ村には、むかしから、無知蒙昧(もうまい)なやからを煽動する、良からぬ因習がある。わたしは、それを取り払うつもりでいるのだ」
と言っていました。
十文字丈太郎は予言暦で何もかも決めてしまう現状は嫌なようです。

この作品は堀川アサコさんの作品らしく、ミステリー、ホラー、ファンタジーが融合しています。
今作ではそこに政治的な要素も融合していました。
ファンタジーはあからさまな空想世界ではなく、背筋がひやりとするような、ホラーが入り混じったちょっと怖い雰囲気です。
森見登美彦さんの「宵山万華鏡」の中の「宵山姉妹」という話のように、気が付いたらあの世に連れて行かれそうになっていたのと似ています。
奈央はこよみ村に来てかなり怖い体験をするのですが、めげずにこよみ村に住む溝江麒麟(きりん)、竜胆市での友達・静花とともにこよみ村の謎に挑んでいきます。
予言暦についても、最後はついにその在り処が分かるのですが、そこに記されていた恐るべき予言を目の当たりにし、物語は一気に怒涛のクライマックスへと向かいます。

解説に「堀川さんの文章は読みやすい」とあったのですが、これは私もそう思いました。
サクサク読める文章で、読んでいて途中からかなりのハイスピードで読んでいくことが出来ました。
しかもそれでいて内容は薄くなく、ミステリー、ホラー、ファンタジーが融合した面白い作品世界を見せてくれます。
すごく良い作家さんだと思うので、この先にも期待しています

※「予言村の同窓会」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「三人の大叔母と幽霊屋敷」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「チア男子!!」浅井リョウ

2014-07-22 23:42:17 | 小説
今回ご紹介するのは「チア男子!!」(著:浅井リョウ)です。

-----内容-----
柔道の道場主の長男・晴希は大学1年生。
姉や幼馴染の一馬と共に、幼い頃から柔道に打ち込んできた。
しかし、無敗の姉と比べて自分の限界を察していた晴希は、怪我をきっかけに柔道部を退部。
同じころ、一馬もまた柔道をやめる。
一馬はある理由から、大学チアリーディング界初の男子のみのチーム結成を決意したのだ。
それぞれに事情を抱える超個性的なメンバーが集まり、チームは学園祭での初舞台、さらには全国選手権を目指すが…。

-----感想-----
浅井リョウさんの作品を読むのは「桐島、部活やめるってよ」以来2冊目となります。
ネットのレビューで『三浦しをんさんの「風が強く吹いている」を楽しめた人はこの作品も楽しめるはず』とあって、興味を持ったので読んでみることにしました。

主人公は坂東晴希、命志院大学に入学して三ヶ月の大学一年生です。
最初、晴希は柔道部で活動していました。
しかしエースとして勝ちまくる姉の春子に比べ晴希はあまり強くなく、本人も自分は姉のようにはなれないことを自覚していました。
しかし晴希は「応援」では誰よりも熱く、いつも立ち上がって応援してしまい、他のメンバーに座らされるくらい熱くなります。
この熱い応援ぶりがチアリーディングへと繋がっていきました。

チアリーディングと聞くと、大抵の人は女子を思い浮かべると思います。
チアガールとも言いますし。
しかしこの作品では男子のみによるチアリーディングという、かなり珍しいものを題材にしています。
作者の浅井リョウさんが当時通っていた早稲田大学に実在する男子チアリーディング・チーム「SHOCKERS」に取材して、物語を作っていったようです。

肩を怪我していた晴希は、それを機に柔道を辞めることを決意します。
坂東道場という、命志院大学の練習場にもなっている道場の跡取り息子で、そのコネでスポーツ推薦枠で大学に入っていた晴希。
柔道を辞めることに、むなしい心境になっているようでした。
また晴希が柔道を辞めることにショックを受けた姉の晴子との関係もギクシャクし気まずくなってしまいました。
その頃時を同じくして、晴希の幼馴染の橋本一馬も柔道部を辞めることを決意。
ずっと辞めるタイミングを図っていたらしく、晴希が辞める今、一緒に辞めることにしました。
そして一馬は春希と新たに始めたいことがあって、それがチアリーディングでした。
「一発おもしろいことしようぜ」
昔からの、一馬が晴希と何かを始める時の誘い文句です。

メンバーも二人のほかに溝口渉、遠野浩司(トン)、総一郎(イチロー)、弦、徳川翔と、一馬が最初の目標としていた7人になります。
この7人で学園祭に出てそこから羽ばたいていこうとなり、張り切って練習していきます。

チアリーダーとは、観客も選手も関係なくすべての人を応援し、励まし、笑顔にする人のこと。そして、そのために自らの努力を惜しまない人のこと。
これはすごく良い言葉でした
素晴らしい競技、そして素晴らしい存在だなと思いました
作中にほぼ同じ言葉が何度か出てきました。

ちなみに徳川翔はチアリーディングの経験者であり、相当な技量を持っています。
しかしそんな翔にも悩みがあります。
登場人物7人全員が何らかの悩みを持っていて、一人ずつ心の悩みを綴る形で物語が進んでいきました。
一馬は自身の中にある葛藤も、晴希の背負っている姉への罪悪感も、溝口が名言で隠している本音も、トンの自分に自信がなさすぎるところも、翔が誰にも言えないで抱えてることも、色々なものを壊したいと考えていて、そこからチーム名は「BREAKERS」になりました。

その「BREAKERS」が学園祭でそれなりの成功を収めて、物語は新たな局面を迎えます。
「BREAKERS」のチアリーディングを見て自分もやりたいという人達が集まり、チームは7人から16人に。
さらには翔の過去を知る高城(たかぎ)さんという女の人が「BREAKERS」の専属コーチになります。
そして1月30、31日の神奈川予選から3月27、28日に千葉県の幕張メッセで行われるチアリーディング全国選手権への出場を目指すことになります。
もともと高城さんは「DREAMS」という晴希達と同じ大学にある全国屈指の強豪チアリーディングチームのOGで、コーチの経験もあり、腕は確かです。
スパルタ指導のもと、全国大会を目指すというバリバリの青春スポーツ物語になりました
最近青春小説を読みたい心境の私にはピッタリな作品でした^^

翔の過去の話で、8月末に行われる全国高校チアリーディング選手権、通称「サマーカップ」というのが出てきました。
このサマーカップが行われるのは国立代々木競技場の体育館で、私は毎年チアリーダー達の姿を見かけています。
同じ時期に原宿では「スーパーよさこい」があって、それを見に行くと自動的に全国大会に来ているチアリーダー達の姿も見かけるというわけです。
何だかこの小説を読んでいたら私も代々木体育館で行われるチアリーディング全国大会を見てみたいものだなと思いました^^
そう思わせてくれる楽しさがこの作品にはありました。
特にラストが圧巻で、あれを読んでいたら2分30秒間の躍動をぜひ生で見てみたいなと思いました
人は苦悩を突き抜けて歓喜を勝ち得る。
色々な偉人の名言を言うのが好きな溝口の、本人が最も気に入っているこの言葉。
まさにこの言葉のようなラストでした。

チアとは、戦うスポーツではない。世界でたったひとつだけ、人との関わりの中で生まれた競技であり、誰かを応援するという姿勢が評価されるスポーツだ。
これもまた、すごく良い言葉でした。
誰かを応援する姿勢が評価されるスポーツ、素晴らしいなと思います


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

靖国神社 みたままつり2014 後記

2014-07-20 21:37:25 | ウェブ日記

私が今年の「靖国神社 みたままつり」に行ったのは、13日の午前中でした。
初日の早い時間帯ということもあり空いているかなと思ったのですが、意外にも結構人が来ていました。
日曜日ということで早い時間帯から足を運ぶ人が多かったのだと思います。


みたままつりは「光の祭典」の呼び名を持つくらいで、メインは夜となります。
昼間のうちに来たのは、空いているうちに懸雪洞(かけぼんぼり)を見たかったからです。


境内にずらーっと並ぶ懸雪洞。
夜はこの懸雪洞もライトアップされます。


こちらは能楽堂での奉納古武道。
迫力のある打ち合いでした。


歩いていて、今年も若い人の姿が多いことが印象的でした。
私が帰った14時30分頃にはかなり人も増えていたのですが、中学生や高校生のグループも多数見かけました。
やはりお祭りは若い人が沢山いたほうが活気が出て良いなと思います^^
靖国神社に眠る英霊の方々も、お祭りの華やぎを楽しんでくれたのではないかと思います。


宮城縣護国神社から奉納された七夕飾り。

ツイッターでは「若い人達は祭りの意味を分かっているのか。ただ騒いでいるだけじゃないのか」という意見を見かけたりもしましたが。。。
私は若いうちはそんなに考えていなくても問題はないと思います。
この靖国神社に来て縁日を歩くことが、祭りの華やぎとなり、自然と「みたま」への慰霊となっています。
そして歩いていると自然と何かを感じさせてくれる神聖さが、ここにはあります。


夏祭りらしく浴衣でも着て、友達と縁日を歩いて、そして良かったらぜひ来年も来てほしいなと思います。
この献灯された大量の提灯の意味にも、今まで知らなかったとしても縁日を歩いているうちに気付くかも知れませんし、知っている友達に教えてもらえるかも知れませんし、後で祭りのことを調べたりした時に気付くかも知れません。
そうやって脈々と受け継がれていくものだと、私は思います。


※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その2」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その3」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その4」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「プラネタリウムのあとで」梨屋アリエ

2014-07-20 17:23:12 | 小説
今回ご紹介するのは「プラネタリウムのあとで」(著:梨屋アリエ)です。

-----内容-----
友人の眞姫に誘われて、美香萌は同級生の川田歩と眞姫の兄の4人で鉱物採集にいく。
心の中で小石を作ってしまう秘密の体質を持っている美香萌は、石に詳しい川田のことが少しずつ気になっていく。
ある時、眞姫から川田が好きだと聞かされて―(「笑う石姫」)。
他にも別世界へ誘う3作品を収録した、美しくも切ない珠玉の短編集。

-----感想-----
物語は以下の四編で構成されています。

第一話 笑う石姫
第二話 地球少女
第三話 痩せても美しくなるとは限らない
第四話 好き。とは違う、好き

どの作品も主人公は中学三年生。
この短編集は「プラネタリウム」という作品の続編に当たるらしく、たしかに前作で何かがあったんだろうなと思われる箇所が何箇所かありました。
それでもいきなりこの作品を読んでも比較的スムーズに読むことが出来ました。
四つの短編いずれもファンタジー要素が含まれているので、好みは分かれるかと思います。
私的には可もなく不可もなくという感じでした。

私が読んだ中では「笑う石姫」が一番面白かったので、それについてご紹介します。
主人公は岩舟美香萌(みかも)。
一番の友人ではないものの最近仲良くなったという葛生眞姫(くずうまひめ)。
そして眞姫が想いを寄せる川田歩。
この三人が物語の中心にいます。

冒頭で美香萌、眞姫、歩、眞姫の兄の四人で、埼玉県秩父市の大滝というところに鉱物採集に行きました
眞姫の兄が歩の家庭教師をしていて、今度二人で鉱物採集に行くということになり、眞姫も行きたがって、美香萌を誘って一緒について行くことになったのでした。
その鉱物採集に出かけた時の眞姫のやり方が、読んでいてすごくムカつきました。

眞姫は美香萌に「山に行くなら長袖長ズボンが基本だよ」と助言をしていました。
そうしていざ当日、美香萌がアドバイスを守って長袖長ズボンで来てみると、当の眞姫は小さな半袖Tシャツとショートパンツという格好で登場。
人には長袖長ズボンを薦めておきながら自分はラフで洒落た感じに決めてくるというこのやり方、美香萌は理由が分からなかったようですが、私は読んでいてすぐにピンときました。
川田歩の気を引きたいのです。
もう一人がいかにも山歩きな地味な格好で、それに対して自分がお洒落で可愛い格好なら気を引けるという計算が働いたのだと思いますが、このやり方は最悪だなと思います
「君に届け」のくるみちゃんが思い浮かぶような計算高き性悪女ぶりでした。
そして「君に届け」がそうだったように、この手の策略を巡らせる人の恋愛は大抵成就しないもので、川田歩は眞姫には興味なしのようでした。
むしろ興味があるのは美香萌のほうで、この後日の川田歩と美香萌のやりとりから、歩が少なからず美香萌に好意を持っていることが分かりました。
美香萌のほうも歩に興味を持ち始めていて、二人が付き合い出すのは時間の問題のように見えました。

眞姫もそれに気付いていて、そして何とかして二人が付き合うのを阻止しようと、策略を巡らせます。
自分が振り向いてもらえないからと、川田歩の意中の人を持ち前の計算高さでぶっ潰そうとするのは、心が醜すぎやしないかと思います。
ついでに指摘すると「逆恨み」でもあります。

ただ中学三年生の頃となると、こういうのはよくあるかも知れないなと思います。
よくも悪くも貪欲に突っ走る時期で、これもまた青春の1ページではあります。
願わくば眞姫にはフォースの暗黒面にばかり頼らないで、もう少し真っ当なやり方で進んでいけるようになってほしいと思いました。


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その4

2014-07-18 23:54:11 | フォトギャラリー
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その2」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その3」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

みたままつり2014の「寄せられた言の葉・絵画」シリーズの最終回となります。
「その4」では絵画も言の葉も印象的なものが沢山出てきますので、最後までぜひ楽しんでみてください
写真は全てクリックで拡大されます。


----- 靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その4 -----


その4は拝殿に近いこの辺りの作品がメインとなります。


地球と太陽系の星と、拡大して見ると「国際会議ステーション」と書いてあります。
画家・市川章三さん。


金魚とおたまじゃくしとカエル
グラフィックデザイナー・平松都代子さん。


ゆりの花。
画家・中村威久水さん。



彫刻家・石黒光二さん。


アヤメの花。
画家・井上明敏さん。


画家・岡正三さん。


富士山を望む風景
画家・高橋由さん。


群馬県の赤城覚満淵(かくまんふち)。
画家・阿部晶子さん。


森を歩く鹿
画家・浅野とし子さん。


「裏もなし 表もなし ただこころからの おもてなし」
書家・荒牧菁峰さん。


靖国の社にねむり給う 英雄の霊に捧ぐる歌
   歌
国のため 何にぞ惜まん 若櫻
涙皇しく 散り行くものかな

特別縁故・荒井慧(けい)さん。
84歳とありますので、まだまだ長生きして「懸雪洞(かけぼんぼり」も奉納してほしいなと思います。


染織家・石田万介さん。


画家・新澤淑子さん。


「忠魂不滅」
書家・清水正尚さん。


花火
画家・山田三耀さん。


画家・岡田和子さん。


「平和」
書家・高砂京子さん。
和を○で表しています。


画家・鶴岡山路さん。


画家・彦坂美保子さん。


弘前ねぷた絵師・津軽錦絵師・三浦呑龍さん。


染織作家・森岡功さん。


「感謝 今ここにある幸せは あなたたち英霊のおかげです」 
”英霊七福人”
画家・杉浦正さん。
今こうして日本という国があるのは、先の大戦で日本のために戦ってくれた英霊の方々のおかげです。


染織作家・木戸源生さん。


「繁栄の礎は先人への感謝と敬意にあり」
作家・北康利さん。
世界中どこの国でも、当たり前のことです。
中国韓国及び日本のテレビ局・新聞社の反日圧力に負けず日本の首相として靖国神社に参拝し、先人への感謝を示した安倍晋三首相を私は偉いと思います。


「大慈大愛」
イラストレーター・菅ナオコさん。


「氣愛」
お笑いタレント・よしえつねおさん。


「万民太平の幸」
女優・葛城奈海さん。


「強く生きる」
プロレスラー・里村明衣子さん。


「軍神祭る社に勇み駒」
講談師・一龍斎貞花さん。


湯沢七夕絵灯篭絵師・石川巳津子さん。



画家・南雲正井さん。


「天壌無窮」
重要無形文化財保持者・陶芸家・井上萬二さん。
天地とともに永遠に続くという意味です。


「大義悠久」
陶芸家・南雲龍さん。


「忠節」
特別縁故・滝沢幸助さん。
ツイッターの「@com_chan」さんに読み方をご教授頂きました。ありがとうございます。


画家・如月爽人さん。
夜空へと舞い上がっていく光の粒が神秘的です


「四方の海 みなはらからと 思ふ世に など波風の たちさわぐらむ」
漫画家・畠奈津子さん。


「忠恕」
書家・松川玉堂さん。
自分の良心に忠実であることと、他人に対する思いやりが深いことという意味です。


画家・小林妙彩さん。


「大和のこころ とこしへに」
外交・安全保障研究家・鈴木邦子さん。


鶴川流花押宗家・望月鶴川さん。


江戸凧絵師・岸田哲弥さん。


「天天向上 花紅 柳緑」
染織家・中村經子さん。


「やっぱり私も 日本人で良かった」
皇室評論家・高清水有子さん。
私も、日本人で良かったと思います。
四季折々の美しい、良き国に生まれました


「夜桜能」
宝生流能楽師・田崎隆三さん。


「外圧に 屈するなかれ わが桜 気高く咲きて 英知促す」
工学博士・佐藤準一さん。
外圧とは靖国神社参拝にクレーマーのごとく因縁をつけてくる中国と韓国のことです。


「出征の 兵士を送りし 日の遠く 無人の駅に 風の声聴く」
神職・宮崎義敬さん。


イラストレーター・かやなるみさん。


「ゆく川の流れの如く あるがままに生きる
滝に落ち岩に砕け 汚水によごされても
太陽で浄めていただく
合流してやがて大河となり
多くの使命を果し 天に還る」
特別縁故・鮫島純子さん。


「烈風と 怒涛なぎたる 南洋は 海空もやして 英霊しずめぬ」
ニュージーランド治安判事・神谷岱劭(たかよし)さん。


「ひたすらに 晴れきたりけり 海の面に 鳥ただひとつ とほくかがやく
  硫黄島にて 折口春洋歌」
元仙台市長・梅原克彦さん。


画家・芝岡聡史さん。


「英霊の皆様、あの戦争で私達を護って下さってありがとうございます。」

今から13年前、ミャンマーの遺骨収集(収容)に行ったときのことです。
そこには、インパール作戦で戦った元兵士のご年輩の男性がお二人参加されていました。
ある日、戦友が沢山沈んだというイラワディ川に行ったとき、お二人が戦争当時の心境を話して下さいました。
「私は本当は戦争に行くまでは死ぬことが嫌だった。でもここビルマで
とうとう銃撃戦になって敵さんの弾丸が私の頬をかすめたんだ。
その時急に、私の背中の後ろに両親や祖父母や全ての日本人がいるように感じたんだ。
ここで自分が敵を食い止めて、皆を護るために命を落とすのであれば、それはとても幸せな死に方だと思ったんだ。
不思議だなあ。あんなに死ぬことが怖っかったんになあ」と。
もう一人の方はそれにこたえ、
「ほんまやったなあ。わしらはみんなそんな気持ちで戦っとったなあ。
日本人を護れるちゅうことが、あんときのわしらの希望やったし、喜びになっとったなあ」と仰いました。
私は、今ご存命の兵士の方々、そして戦死された英霊の皆様がそのような気持ちで戦われていたことを初めて知り、
涙が止まりませんでした。
私達の命を護って下さった皆様にずっと感謝していきたいです。

ジャーナリスト・佐波優子さん。


というわけで、今年の靖国神社みたままつりの「寄せられた言の葉・絵画」シリーズ、これにて終了となります。
4回に渡ってお付き合い頂き、ありがとうございました。
今年も沢山の良き言の葉や絵画に巡り会うことができました。
もし来年も機会があればぜひ「みたままつり」に行きたいと思います


※フォトギャラリー館を見る方はこちらをどうぞ。

※横浜別館はこちらをどうぞ。

※3号館はこちらをどうぞ。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その3

2014-07-17 23:30:35 | フォトギャラリー
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その2」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

「寄せられた言の葉・絵画」の「その3」では序盤から中盤にかけて歌手・ミュージシャンなど音楽家の方々の作品が多数登場。
今年は例年以上に音楽家の方々からメッセージを感じる作品が寄せられていたように思います。
色々な作品がありますので、楽しんでみてください。
写真は全てクリックで拡大されます。


----- 靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その3 -----


「夢」
大相撲 横綱・白鵬関。


「生きることに必死」
大相撲・遠藤関。


「静」
歌手・ペギー葉山さん。


「俺の人生(みち)」
歌手・畠山みどりさん。


たんぽぽ。
歌手・菅原都々子さん。


「よろこべば よろこびごとが よろこんで よろこびあつめて よろこびにくる」
歌手 こまどり姉妹・長内敏子さん。


「喜びの毎日をすごしたい
花や草を見ても ありがとうと言いたいです」
歌手 こまどり姉妹・長内栄子さん。


「静恩」
歌手・あべ静江さん。
力のある字ですね。


「一期一会」
歌手・青山和子さん。


「謹んで英霊に捧ぐ 平和への願い」
歌手 二代目東光軒宝月・歌川二三子さん。


「やすらけし
すめ大神の日のもとに
くもが重なる
にほいめでたく」
作家・歌手・合田道人さん。
それぞれの頭の文字をつなぐと「やすくに」になります。


「縁」
歌手・青山るみさん。


歌手・岩本公水さん。
「20」の意味が気になるところです。


「愛に生る」
歌手・佳山明生さん。


「はまなすの花赤き オホーツクの磯にして
時は夏雲白く 思う事遥かなり」
歌手・安藤まり子さん。


「昔から誠というこの言葉好きだな~」
歌手・妻吹俊哉さん。


「民謡はふるさとの応援歌」
民謡・原田直之さん。


「愛する者を守りぬくため 僕らは命を投げ出せるだろうか
この手に握る平和という名の剣をかざして戦うのだろうか
生まれくる前の我 それは今ここに眠る英霊か
真白き鳩が舞い降りるたび さわぐ梢の間真昼の月
迷える小径たどりついた地で 遠い兄のような声を聞く
ああ君我の代わり生きよと
さまよう心呼び戻した地に 優しい姉のような声を聞く
ああ君 死にたもうことなかれと」
歌手・宝野アリカさん。


「自由でいる不安 自由でいる覚悟 その苦しみが 誰かを守る」
ミュージシャン・キリトさん。
Angeloというロックバンドグループのリーダー兼ヴォーカルで、毎年「懸雪洞(かけぼんぼり」を奉納してくれています。
女性ファンが多いようで、毎年このぼんぼりの前では熱心に見入る女性ファンを見かけます。


「平和」
ミュージシャン・ガラさん。


「今があることに感謝」
ミュージシャン AK LIVE・市川博樹さん。
昨年の「靖国神社 みたままつり2013 寄せられた言の葉・絵画 その1」のラストに登場する写真を思い出す言葉でした。


「笑顔は種 未来へのバネ!」
ミュージシャン AK LIVE・KOUSAKUさん。


「今という 時を越えた 恋文を ありがとう」
歌手・sayaさん。


「夢」
俳人・山名愛三さん。


画家・ツバキアンナさん。


「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵。
画家・矢形嵐酔さん。


画家・網本幸子さん。


梅の花とウグイス。
画家・杉本績さん。


「ソ連抑留 御霊鎮魂」
特別縁故・山田秀三さん。
富山県慰霊碑奉賛会会長とのことです。


戦艦。
画家・菅野泰紀さん。


ステンドグラス作家・飯出佐恵さん。


「ひとつ拾えば ひとつだけきれいになる」
実業家・鍵山秀三郎さん。


富士山
画家・小倉睦子さん。


颯爽と走る馬
画家・小倉茂山人さん。


「ガダルカナル戦跡に詣ず
船上よりいくさの島をかえりみつ
み魂鎮めの法螺吹きならば」
小田玉瑛さん。


画家・河野未美さん。


アジサイ。
画家・桜井圭子さん。


「夏は来ぬ」
画家・土屋淑子さん。


アヤメの花。
画家・野瀬香葉さん。


「靖国の 桜となりし わが友と 会わむと云いつ 父の逝く」
書家・平井俊子さん。


「天地(あめつち)に きざし来たれる ものありて 君の春野に 立たす日近し  皇后陛下御歌」 
特別縁故・桑原美智子さん。
※「君の春野に」は、御歌の原文では「君が春野に」になっています。

ツイッターアカウント「@com_chan」さんに判読のご教授を頂きました。ありがとうございます。


毎年こけしの絵画を奉納している人です。
画家・荒井美代子さん。


彩り豊かなバラの花
画家・小林健一さん。

というわけで、「その4」へ続きます。
「その4」はかなりインパクトのある作品がいくつも登場するので楽しみにしていてください


※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その4」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

※フォトギャラリー館を見る方はこちらをどうぞ。

※横浜別館はこちらをどうぞ。

※3号館はこちらをどうぞ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする