読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「PERSONA5 the Stage #3」(主演:猪野広樹)

2022-01-23 14:57:31 | 音楽・映画


(”心の怪盗”として活躍する左からモルガナ、奥村春(菅原りこさん)。写真はネットより)

今回ご紹介するのは舞台「PERSONA5 the Stage #3」(主演:猪野広樹)です。

-----内容-----
自身に課せられた“更生”のため、そして悪しき欲望から人々を救うため―――
“心の怪盗”となった主人公は、腐った大人たちをどう改心させるのか!?
謎とスリルあふれるストーリーが、爽快感たっぷりのバトル・アクション、友情を育み、絆を作りながら成長していく少年少女の丁寧な心理描写と共に描かれる。

-----感想-----
PERSONA(ペルソナ)は国内外で人気を博している日本発のテレビゲームで、本舞台はゲームシリーズ5作目の舞台のパート3となります。
私が初めて「ペルソナ」というテレビゲームを知ったのは、子供時代の1999年~2000年にかけて「ペルソナ2 罪」と「ペルソナ2 罰」が発売された時で、ゲームはしませんでしたが作品概要に興味を持ったのは覚えています。
新鋭の女優、タレントとして活躍する菅原りこさんが出演するということで舞台に興味を持ち、昨年12月19日に行われた横浜大千秋楽公演のアーカイブ配信を見てみました
人の心の奥底が描かれ、アクション、歌唱、ダンスも登場する多彩な舞台を興味深く見させて頂きました




(一番右の主人公(猪野広樹さん)と主要登場人物達)




(心の怪盗団の、上段左から主人公”ジョーカー”(猪野広樹さん)、”スカル”坂本竜司(塩田康平さん)、”パンサー”高巻杏(御寺ゆきさん)、下段左から”フォックス”喜多川祐介(松島勇之介さん)、”クイーン”新島真(石塚朱莉さん)、”ナビ”佐倉双葉(福田愛依さん)、”ノワール”奥村春(菅原りこさん)。それぞれにコードネームがあります。)

「ペルソナ」という言葉は、以前より臨床心理学の流派の一つ「ユング心理学」をモデルにしていると感じていて、本舞台を見た時にペルソナの他に「シャドウ」という言葉が登場したのを見て確信しました。
ユング心理学においてペルソナは「周囲に適応し、上手く付き合って行くために付ける仮面」、シャドウは「心の中に抑圧している、自身の認めたくない部分」となっていて、テレビゲームでは「ペルソナ」を「心の中に眠る別人格が、伝来の神や悪魔の姿となって出現した特殊能力」とし、「シャドウ」は心理学とほぼ同じ定義をしています。
上記写真を見ると心の怪盗団は「仮面」を付けているのが分かり、モデルとなった言葉の名残を感じます。

物語は大きく「前半」と「後半」の二つに分かれ、前半は佐倉双葉、後半は奥村春が重要人物として登場します。
主人公は公演の度に名前が変わり、横浜大千秋楽公演では赤瀬望となっていました。
「心の怪盗」とは何なのか気になりましたが、舞台を見て行くと「悪い人の心の中(パレス)に入り込み、悪の心を成すものを盗み去り、その人物を改心させる」という怪盗だと分かり、面白そうだなと思い興味が高まりました



物語前半

主人公のバッグの中から「全会一致で決めた大物だけを狙う。吾輩達怪盗団の掟だからな」という声が聞こえてきて、声の主は猫の姿をしたモルガナでした。
モルガナは元々は人間だったらしく、元の姿に戻るために怪盗団に身を置いているようです。
主人公は全編を通じてどこか影のある雰囲気を出していて、カリスマ性があり良い演技だと思いました。




(学生バージョンの7人)



(上段左から三島由輝(田村升吾さん)、明智吾郎(佐々木喜英さん)、新島冴(茉莉邑薫さん)、下段左から奥村邦和 (松本寛也さん)、佐倉惣治郎(森山栄治さん)、モルガナ(声の出演:大谷育江さん))

国際的ハッカー集団「メジエド」が日本の怪盗団に「偽りの正義を語るのをやめろ」と脅しのメッセージを発し、メッセージを受けて怪盗団の次のターゲットはメジエドにしようとなります。
この時点での怪盗団メンバーは主人公、坂本竜司、高巻杏、喜多川祐介、新島真、モルガナです。

「怪盗団の戦略的広報(メンバーではないが怪盗団に好意を持っている)」を名乗る三島由輝が大手ハンバーガーチェーン「オクムラフーズ」でくつろいでいると、奥村春が「あの、ペットボトルの蓋、良かったら私にもらえます?」と謎の言葉で話しかけてきます。
菅原りこさんの言葉の抑揚の付け方が、2020年2月に舞台「罪のない嘘 ~毎日がエイプリルフール~」で見た時より明らかに上手くなっている気がしました
ペットボトルの蓋をリサイクル会社が引き取ってくれてワクチンに換えられるとのことで、新型コロナウイルスの影響が依然としてある今タイムリーな話題だと思いました。

主人公のSNSにアリババという者から「君は怪盗だな?心を盗んでほしい人間が居る」とメッセージが来て、さらに「改心が成功すればメジエドの情報を渡す。君達が望めば片付けることも可能だ」と言ってきます。
ターゲットの名前は佐倉双葉とのことで、「やらなければ君の名前を世に晒し通報する」と脅しても来ます。
怪盗団は「佐倉」が主人公の居候する喫茶店「ルブラン」のマスターと同じだと気付き、佐倉双葉とどんな関係なのか聞いてみようとなります。

検察官の新島冴(真の姉)が佐倉惣治郎を訪れて、「若葉」という双葉の母親のことを聞こうとします。
「認知訶学(訶は摩訶不思議の訶)が精神暴走事件と関わっている疑いがある」と謎のことを言っていました。
新島冴が去った直後、主人公が双葉のことを聞くと佐倉惣治郎はなぜ知っているのかと動揺していました。
また、高校生探偵の明智吾郎が怪盗団の前に現れ、怪盗団の捜査チームに加わることになったと言い、怪盗団メンバーを疑っているのが分かりました。
物語の進み方がミステリー調なのでどんな展開になるのか引き込まれる面白さがあります。

モルガナが「パレスは強い欲望によって歪んだ認知が具現化したもの」と言います。
怪盗団メンバーは「アリババの力を借りるために佐倉双葉のパレスを盗もう」という意見になります。
また、佐倉双葉は母親が車道に飛び込んで亡くなったのは自身のせいだと思っていることを知ります。

佐倉双葉のパレスに行くと「シャドウ」が出て来て暗い雰囲気をしていました。
パレスは簡単に盗れそうではなく怪盗団はピンチになり一旦現実世界に戻ります。
やがて佐倉双葉が一人で歌う場面になり、何もかもを諦めているような表情の絶望感が凄かったです。




(佐倉双葉(福田愛依さん))

怪盗団は再び佐倉双葉のパレスに行き、敵も出て来てバトルアクションになります。
敵を倒しながらパレスの奥に進んで行くと母親が亡くなった時の記憶が明らかになってきます。
喜多川祐介の「忘れたくて記憶を隠したのか」という言葉は印象的でした。
心の奥底に閉じ込めてしまいたいのはとてもよく分かります。
私はパレスの「核心」に迫って行くのが怖いと感じました。
佐倉双葉自身がその記憶を無くしてしまいたいと思っていて、心を楽にしたいと願うのもよく分かります。

喫茶店「ルブラン」での佐倉惣治郎のくせ者感満載の演技も面白かったです。
「ん?誰かに見られているような」が何度も登場し、「マスクを付けた人達に見られてるような」「また横浜に来てねって思ってる人達に見られてるような…」とお客さん達のことを言っていて、舞台ならではのアドリブだと思いました。

高巻杏が佐倉双葉に言った「助けてほしいって自分から伝えるのはそんなに簡単じゃないんだよ」という言葉は印象的でした。
弱さを見せるのを恥と感じたり、あるいは相手に迷惑になるのではと心配したりして、なかなか伝えられないこともあると思います。




(新島真(石塚朱莉さん)。かなり利発なキャラで、怪盗団の会話を常にリードする活躍を見せていました。)

もう一度佐倉双葉のパレスに行くと、シャドウとはまた違う「佐倉双葉の認知が生み出した怪物」が登場し、物凄い強さで怪盗団は苦戦します。
佐倉双葉もパレスに入ってきて、母親の死の真相に気付きます。
そしてついに覚醒の時を迎えます。
「自分の目と心を信じて真実を見抜く!」
それまでの抑圧された演技から一気に激情へと変わり対比がとても印象的で良かったです



物語後半

主人公、坂本竜司、新島真、高巻杏、三島由輝の5人は秀尽(しゅうじん)学園という同じ高校に通っていて、ハワイに修学旅行に行きます。
ハワイに来て1分くらい経った時に主人公と三島由輝で話す場面があり、三島由輝が「修学旅行も終わりだね」と言うと、主人公がサングラスを外して「もう終わりか!」とあまりの尺の短さに驚愕しながら言っていたのが面白かったです。

修学旅行から帰ってきて、佐倉双葉を仲間に加えた怪盗団の次のターゲットは株式会社奥村フーズ社長の奥村邦和にしようとなります。
しかし賛成の坂本竜司と反対の喜多川祐介で意見が割れ、坂本竜司が引き下がるとモルガナが苛立ちます。
坂本竜司がついモルガナにきつく当たりモルガナも怒って怪盗団を出て行ってしまいます。

怪盗団が奥村邦和のパレスに行くとロボットが出て来て早くもバトルになり、「シフトは厳守。嫌なら辞めろ。ただし手当無し」と言っていて、それが奥村邦和の認知だと坂本竜司が言います。
さらにロボットがやられて倒れると管理者ロボットが「廃棄」と言い、「社長から見た奥村フーズの社員だ」と主人公が言います。
奥村邦和がブラック企業の経営者なのがよく分かる場面でした。




先に進もうとする怪盗団に「お待ちなさい、あなた達」と言い怪盗姿の奥村春が登場し、モルガナも登場します。
モルガナが「お宝を狙って来たのなら、尻尾を巻いて帰ったほうが良い。お宝は我輩と、この美少女怪盗が貰うからだ」と言い、奥村春も台詞を言いますがその場面が面白かったです。
奥村春が「いいですか、立派な怪盗とは…あなた、どう考えてるんです!」と主人公に言うと、「俺のような正統派なイケメンのことを言う」と言い格好良く仮面を外します。
主人公が「惚れるなよ!?」と言った時の奥村春の反応に会場から笑いが起きていて、面白いアドリブ場面だったと思います。




新手の敵が出てきて怪盗団が一旦引くと言って撤収しても奥村春はおろおろしていて、モルガナに「逃げるんだよ!」と言われると慌てて逃げていて戦いに慣れていないのが分かりました。
また奥村春は奥村フーズ社長奥村邦和の娘でもあり、その人が父親のパレスに怪盗として侵入してきたということです。

現実世界に戻り、奥村邦和と春で話す場面になります。
奥村邦和は春を有力議員の息子と政略結婚させようとしていて、娘を自身の勢力を拡大するための道具としか見ていないのが分かりました。
春が下を向きながら「精一杯、務めます」と言っていたのが印象的で、言葉と対照的にとても悲しそうでした。




(奥村邦和と春)

奥村春が一人で歌う場面になり、とても上手いと思いました。
声に張りがあり、腹の底から出ているのがよく分かり、昨年8月の「辰巳真理恵 菅原りこ 追川礼章 SPECIAL CONCERT」での経験が生きていると思いました。
ソプラノ歌手辰巳真理恵さんとの共演は得るものが大きかったと思われ、良い歌唱の師に巡り合えたのではと思います。

モルガナと奥村春で話す場面になるとそこに婚約者がやって来ます。
「僕の、フィアンセからの電話はすぐに出ろ!」と言い乱暴に奥村春の腕を掴み、態度の横柄な人だなと思いました。
モルガナが立ち向かいますがやられてしまい、高いハッキング能力を持つ双葉によって家を突き止めた怪盗団がやって来て何とか事なきを得ます。

再び奥村邦和と春で話す場面になり、勝手に春を一週間後にフィアンセの家に迎えてもらうことにしていて春は驚愕します。
春が怪盗団のみんなに相談すると、喜多川祐介が「君の父を改心させれば罪人の娘というレッテルが一生付きまとうんだぞ?それでも良いのか?」と言います。
春は「他人の不幸で成り立つ幸せに甘んじたら私もお父様と同じだから」と言い、決意を固めていました。

和解したモルガナが帰って来た怪盗団と春は再び奥村邦和のパレスに行きます。
やがて奥村邦和とフィアンセの「認知上の存在」が現れ、二人揃って春のことをまるで「物」として扱っているようなことを言います。
ここからの場面が凄かったです

春「私自身も、会社のために浴して育った娘。会社のための政略結婚なのだと一度は受けました!でもこんなの話が違います!」
この時点で言い方がかなり上手くて驚きました。
最後の方になると金切り声で叫ぶような言い方になっていて、声に怒りや切迫感が強く出て、やはり以前より明らかに演技が上手くなっていると思いました。

春「お父様個人の野心のために、この男のおもちゃになれと!?」
邦和「(悪役丸出しの顔で)なあーーにを今さら。お前など最初からその程度の価値でしかないわ!」
フィアンセ「飽きるまで、たーーっぷり遊んでやるよ!」
「下の下(げのげ)ね!」
この言い方が吐き捨てるように言っていてかなり上手く、相当稽古したのではと思いました。
後半の「下ね!」は一瞬「溜め」を作ってから言っていて、吐き捨てる雰囲気が非常に良く表されていました。
声もそれまでの可憐な高音の声から低めの力強い声に変わっていて、その差がとても際立っていて上手かったです。

怒りが限界を迎えた春の「ペルソナ」がついに完全に目を覚まします!
ペルソナ「ミラディ」が春に話しかけると、春は「心はとうに決まっています!」と力強く言います。
「心は」はゆっくりとドスを効かせて言い、「決まっています!」は速く力強く言うという特徴があり、一つの台詞の中でのスピードや抑揚の変化が印象的で良かったです。




(奥村邦和、フィアンセとの対決)

春「さようなら!お父様!私はもう、あなたには従わない!」
怪盗団、春と敵達のバトルになり、春が物凄く強くなっていました
新島真が「これが、春の本当の力!?」と驚愕していました。
斧を地面と水平に敵に向けて突き出して構えながら、段の高い位置から低い位置に降りて行く場面がかなり上手かったです。
姿勢も洗練されていて、緊迫感と凄味が出ていて「隙がない」という言葉がピッタリで、まるで時代劇の「殺陣(たて)」で侍が刀を敵に向けて構えながらゆっくり歩いている時のようでした。
まさかここまで演技が上手くなっているとは驚きました。
最高に良かったです

みんなでダンスをする場面もあり、途中から春がセンターポジションに出てソロでダンスをして目立っていました。
動きが指先まで洗練されていて非常に上手かったです。





奥村春のペルソナの力の開花に、菅原りこさんの女優としての開花が重なりました。
この先さらに飛躍して行くと確信する素晴らしい演技を見せて頂きました。
声がよく通り細身でスタイルも良く、雰囲気がとてもステージ映えするという高い素質を持っているところに演技力も上昇著しい今、才能完全開花の時を迎えていると思います。
歌唱力、ダンス力、演技力の3つを備えた菅原りこさんならではの幅広い活躍の道を歩んで行けると思います。
現在21歳で今年11月に22歳を迎え、このくらいの年齢から大きく名を上げた女優には仲間由紀恵さん、有村架純さん、松岡茉優さんなどいくつもの例があるのも心強いです。
お芝居を作る人達の目に留まり良縁を得る場面も増えて行くと思われ、これからの益々の活躍がとても楽しみです


「PERSONA5 the Stage #3」、パート3から見ても十分楽しめる面白い作品でした。
たくさんあるアクションシーンや、それまで抑圧されていた人が覚醒を迎える時など見ていて気持ちが盛り上がる場面がいくつもあり、さらにはアドリブ満載と思われる笑える場面もたくさんあり、シリアスもユーモアも豊富に備えた素晴らしい舞台になっていました。
悪い人の心の「パレス」に入り込み、悪い部分を形作るものを盗み去って改心させるというのも面白く、いずれパート1から全作品を通しで見てみたくなりました。
今年はぜひパート4が上演され、素晴らしい舞台をまた見られたら良いなと思います


-----菅原りこさん出演作品、コンサートの感想記事-----
「罪のない嘘 ~毎日がエイプリルフール~」三谷幸喜
辰巳真理恵 菅原りこ 追川礼章 SPECIAL CONCERT


-----関連記事-----
「山口真帆 1st写真集 present」
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「ショコラの魔法」(主演:山口真帆)
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「ショコラの魔法」(主演:山口真帆)

2021-06-20 13:01:21 | 音楽・映画


(「ショコラの魔法」のポスター。写真はネットより。以下同じ)

今回ご紹介するのは映画「ショコラの魔法」(主演:山口真帆)です。

-----内容-----
美しき魔女ショコラティエ・哀川ショコラが作るのは、食べるだけで願いが叶う不思議なチョコレート。
ある日、哀川ショコラの元に聖蘭学園に通う女子高生が訪れる。
その女子高生は、「チョコを食べた者は、お代としてその者の“一番大切なもの”を奪われる」という危険な契約を聞かされるが、彼女は契約を受け入れ、チョコを食べる。
そしてその日から、聖蘭学園内に次々と謎の事件が起き…。
一方、学園の新聞部に所属する飯田直はそれらの事件を追う。
直は事件に隠された闇深い欲望と、チョコの謎に迫っていくが…。

-----感想-----
少女漫画紙「ちゃお」に不定期連載されている「ショコラの魔法」(著:みずの梨乃)の実写映画化で、原作は今年第66回小学館漫画賞を受賞しました。
映画に興味を持ったのは、女優の山口真帆さんが主演すると知ったのがきっかけでした。
山口真帆さんはかつて新潟県を本拠地とするアイドルグループで活動していましたが2年前に卒業し、「研音」という芸能事務所に移籍し女優に転身しました。
移籍の際の「研音」のコメントは「令和という時代に合った情報発信力を評価」というもので、これからの時代を担う存在として非凡さが高く評価されていました。
今回の映画初主演はそこから女優として歩んできた2年間の集大成であり、一つの重要な区切りになる気がしてぜひ観に行きたいと思いました



(哀川ショコラ役の山口真帆さん)

どこかの人里離れた森が映し出され、ミステリアスな雰囲気で始まりました。
やがて入口に「Chocolat noir」(ショコラノワール)と書かれた、一見すると洒落ていますが雰囲気はかなり不気味な洋館に辿り着きます。
洋館の主、哀川ショコラが登場していよいよ物語が幕を開けました。
食べれば願いが叶う代わりに1番大切なものを失う怖いチョコと、チョコを売る魔女が登場するホラー要素もあるダークファンタジー映画と知ってはいましたが、冒頭から想像以上に怖さを感じました。



(飯田直役の岡田結実さん)

聖蘭学園高等学校2年生で新聞部部長の飯田直は学園内に流れる噂「食べれば何でも願いが叶うチョコ」に興味を持ちます。
しかし「願いは叶うが高い代償を払うことになり、中にはチョコを食べてビルから飛び降りた子もいる」とありました。



(仁科愛利役の桜田ひよりさん)

2年生で美術部の仁科愛利が描いた絵が全国美術展で最優秀賞を受賞します。
後輩の1年生、水無月花音が「絶対に最優秀賞を取ってください。そのためなら何でもします」と言っている場面があり、もしやこの後輩が先輩に最優秀賞を取らせたいばかりにチョコを食べてしまうのかなと思いました。
しかし物語が進むともっと凄まじい展開が待っていました。



(水無月花音役の畑芽育さん)

沢村という学園一のチャラ男が行方不明になる事件が起きます。
直は事件の真相を突き止めようとしますが、西尾猛という同級生に「お前では無理だからやめておけ」といったことを言われて憤ります。
猛は嫌な奴に見えますが頭は良く、直が追いかけている事件の謎に直よりも早く辿り着くことが何度もあったとのことです。
直は沢村の消息を追うべく聞き込みをしていきますが、何者かに後を付けられていて足音が迫ってくる雰囲気が怖かったです。
そして直の元にショコラからの「招待状」が届きます。
どうやらショコラは何かの願いを強く持っている人のことが分かり、その人の元に招待状を送っているようでした。



(西尾猛役の中島健さん)

人里離れた森の中を直が歩く場面があり、霧も出ていて辺りが不気味でさらに音楽も怖かったです。
ショコラの住む洋館「ショコラノワール」での場面になる時は必ず怖い雰囲気になるのが印象的でした。
やがて直がショコラノワールに辿り着くと、ショコラが「ようこそ、ショコラノワールへ」と静かに淡々と言い出迎えます。
直が最近のわだかまりを口にすると、ショコラがチョコを出して願いを叶えてあげようとしますが、同時に「お代はいただくわ。私のチョコは高いわよ」と怖いことを言います。
チョコを見て考え込む直がどうするのか、とても気になりました。

ショコラ役の山口真帆さんは話す時の声がミステリアスだなと思いました。
そして話し方は穏やかそうに見えますが、実際には「冷たさ」が漂っていると思いました。
人間を人間として見ておらず、自身のモルモットとして見ているような冷たさを感じ、心の奥底を見通すような微笑も印象的で演技力が着実に上がっていると思いました。

猛が直に「お前なんかに事件が解けるわけねーよ」と言うのは、直の身を案じているように見えました。
するとやはり、直は聞き込みをするうちにある女性から凄まじい嫉妬による憎悪を向けられて窮地に立たされます。
その場面も怖く、超常現象的な怖さとはまた違う、嫉妬でそこまで狂気じみたことが出来るのかという人間の心の怖さを感じました。

全国美術展で最優秀賞を受賞した仁科愛利は進路も順風満帆でしたが、この人の笑い方を見て怖さを感じ、裏があるなと思いました。
愛利が美術室で遭遇した体験は恐ろしいものでした。
私はまず愛利ととある「絵」のシーンでギクッとなりました。
音楽もこちらに打ち込んでくるような響き方で、客席で思わず身じろぎしました。
さらに美術室はまるで脱出不可能な永遠に続く地獄のような様相になり、愛利が恐怖しているのと同じように見ているほうも恐怖しました。
日本を代表するホラー映画「リング」の貞子が井戸から出てきて対象を呪い殺す時を彷彿とさせるようなシーンもあり、まさかここまで怖い映画だとは思っていなくて衝撃的でした。

やがて愛利にどういったことがあったのかが明らかになります。
ここにも人間の嫉妬が絡んでいて、嫉妬に狂う人間は時として感情に任せて一線を越えてしまうのだなと思いました。

「お待ちなさい。あなたからはまだ代償を頂いていないわ。言ったはずよ、私のチョコは高いわよ」
最後はショコラもかなり怖くなり、怒っているのが分かりました。

「黒き闇に堕ちて行きなさい」

「ショコラノワール」にはカカオ・テオブロマ(綱啓永さん)という得体の知れない人物も住んでいて、「しかし人間というのは欲深い生き物だな」と言っていました。
嫉妬のような感情に支配され、欲深く他人よりも自身が何かを手に入れようとすると周りが見えなくなり、気が付いた時には手遅れとなります。
そうならないように、自身が抱いている感情と向き合い、感情任せに動かずに気持ちの整理をする力を身に付けるのは重要だと思いました。





(最近の山口真帆さん)

山口真帆さんはこの2年間でアイドルの顔から女優の顔になってきた気がします。
高校や大学からプロ野球選手になった人などによく見られますが、人は新たな環境で顔の雰囲気が変わることがあります。
最近は充実感が伝わってくるような表情を目にすることがあり、良い雰囲気だと思います。

主役ではありますが役柄上頻繁に登場するわけではない山口真帆さんを、岡田結実さんが準主役の立ち位置で映画全編に渡って登場し強力に支えていました。
岡田結実さんは演技も良かったですが顔立ちの凛々しさが印象的で、女優として良い個性だと思いました。
後半は桜田ひよりさんもかなり存在感が出ていて、山口真帆さんと同じ「研音」所属で年齢は今年度19歳と若いですが女優歴は長く、演技も上手かったです。
こういった人達の支えによってショコラの淡々としたミステリアスさが際立ったと思います。



(新潟の先行上映で舞台挨拶時の山口真帆さん)

6月18日の全国公開に先立ち、16日に新潟県で先行上映が行われました。
大都市東京ではなく新潟で先行上映というのが、山口真帆さんの「義理」への熱い思いを感じて良いなと思いました。
新潟を本拠地とするアイドルを卒業後、女優として2年間歩んできた姿の集大成を、新潟の人達に真っ先にお見せしに来てくれたのではと思います。
この姿勢は非常に好感が持て、今後のさらなる飛躍を決定付けた気がしました
義理を大事にする人には周りの人達も義理を持って接してくれると思います。


山口真帆さん本人の努力も当然凄いですが、それとともに「研音」という芸能事務所も凄いと思いました。
移籍の直後、当時は全国放送のニュースやワイドショーで連日報道されていたので、ワイドショーなどに出演してさらに知名度を上げる手はいくらでもありました。
しかし「研音」はそれをしませんでした。
最初はモデルやグラビアのお仕事を中心に活動して、その間にじっくりと演技の稽古をしていったのだと思います。
その後少しずつドラマや舞台に出演するようになり、ついに映画初主演となりました。
地道な歩み方ですが「王道の歩み方」でもあり、私は女優としての活動を長期的に見れば大正解だったのではと思います。
今回の主演が今後への大きな糧になると思われ、これから先どんな活躍を見せて行くのかとても楽しみです


-----山口真帆さん登場作品の記事-----
「山口真帆 1st写真集 present」
「DIVER-特殊潜入班- 第二話」


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「るろうに剣心 最終章 The Beginning」(主演:佐藤健)

2021-06-14 18:30:10 | 音楽・映画


(緋村抜刀斎と雪代巴。写真はネットより。以下同じ)

今回ご紹介するのは映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」(主演:佐藤健)です。

-----内容&感想-----
人気漫画「るろうに剣心」(原作:和月伸宏)を映画化したシリーズの最終作です。
この作品は「るろうに剣心」の主人公緋村剣心(佐藤健さん)が幕末の動乱期に反徳川幕府勢力の長州藩(現在の山口県)で「人斬り抜刀斎(ばっとうさい)」となって京都に行き、幕府側の要人を次々と暗殺していた時代が舞台です。
その時代に抜刀斎は左頬に十字傷を負い、後にトレードマークになりますが、この作品ではなぜ十時傷が出来ることになったのかが描かれています。
「スターウォーズ」という有名映画でフォースに安定(平和)をもたらす者と予言されたアナキン・スカイウォーカーがなぜ暗黒面に堕ちてダース・ヴェイダーになったのかを描いたのと通じるものがあり、謎が明らかになる話は興味を引きます。

Beginningは始まりという意味で、シリーズ最終作にして「るろうに剣心」の物語の始まりでもあります。
そして最終作にして私が劇場で観る初めての作品となりました。
先日ネットでこの作品の特集を読み、十字傷誕生に大きく関わる重要登場人物の雪代巴(ゆきしろともえ)役の有村架純さんが素晴らしく似合っていて、これはぜひ観に行こうと思いました



(雪代巴。有村架純さんのこの雰囲気を見て一気に映画への興味が強まりました。)

雪代巴という悲劇的な役のイメージと有村架純さんが醸し出す雰囲気がピッタリだと思いました。
また今作は悲しきラブストーリーにもなっていて、今まで「るろうに剣心」を知らなかった人が観ても十分興味深く観られる内容だと思います。


1864年(元治元年)1月、幕末の動乱に揺れる京都を舞台に物語が始まります。
冒頭からいきなり抜刀斎の殺陣(たて)が凄まじかったです。
対馬藩の敵達を前に「新時代のため、あなた方には死んでもらう」と言ったかと思いきや、次の瞬間から物凄い速さのアクションが始まり次々と敵が倒されて行きました。

暗殺仕事の後、現代の歴史の教科書で「維新三傑(明治維新立役者の中でも特に優れた三人)」と称される長州藩の重要人物、桂小五郎(高橋一生さん)と話す場面になります。
その時に抜刀斎が「人斬り抜刀斎になって半年」と語っていました。
桂は最近幕府の力が増していて「壬生(みぶ)に現れた狼」が特に強いと語ります。
桂の他に高杉晋作(安藤政信さん)も登場していて、幕末に実在した重要人物が登場すると気持ちがワクワクします



(抜刀斎と話す桂小五郎)

抜刀斎による対馬藩大勢暗殺の惨劇の舞台を壬生の狼、新選組が検分しにやって来ます。
三番隊組長の斎藤一が「誰の仕業だ」と誰にともなく問うと、一番隊組長の沖田総司が「この太刀筋にこの人数、言うまでもなく人斬り抜刀斎でしょう」と返していて、表向きは秘密にされている抜刀斎の存在を既に新選組は知っていました。



(新選組三番隊組長の斎藤一(江口洋介さん))

抜刀斎が居酒屋で静かに酒を飲んでいると、同じ店に巴がやって来ます。
その時の巴の澄ました表情とゆったりとした所作がかなり良く、超然とした存在感を放っていました。
抜刀斎は酔っ払いに「酒をつげ」と絡まれていた巴を助けてあげます。

居酒屋からの帰り道、抜刀斎の前に忍び装束を着た男が現れ「抜刀斎だな?」と言い襲いかかってきます。
秘密のはずの抜刀斎の存在はどこからか漏れ、刺客に狙われるようになっていました。
抜刀斎は男を斬り殺しますが、その時にお礼を言おうとして後を追いかけてきた巴が大量の返り血を浴びます。
「惨劇の場では血の雨が降ると言いますが、あなたは本当に血の雨を降らすのですね」と静かに淡々と言っているのが印象的でした。
巴は血の雨の雰囲気に当てられ倒れてしまい、抜刀斎は長州藩士がアジトにしている宿に連れて帰って介抱します。
翌朝抜刀斎は巴に「みなが安心して暮らせる新時代のために人を斬っている。武器を持っている敵が対象で、市井(しせい)の人を斬っているわけではない」と語りますが、ならば私が刀を持てば斬るのかと反論されます。

巴が一緒に祭りを見に行ってくれないかと言い二人で見に行きます。
その時に巴が「平和のための戦いなど本当にあるのか」と問い、これも印象的な言葉だと思いました。

また今作は悲劇を描いた作品でもあり、明かりが全体的に薄暗いかもしくは暗くなっています。
抜刀斎も巴も口数が少なく淡々と話すタイプなので、照明の暗さはこの作品がどんな作品なのかを表すとともに二人の雰囲気にもよく合っていました。



(人斬りとして暗躍する抜刀斎。佐藤健さんはかなりのはまり役だと思います

やがて「池田屋事件」が起きます。
史実において維新獅子達が倒幕のための密会を開いているところを新選組が襲撃して壊滅させた有名事件です。
飯塚という桂小五郎の側近から池田屋襲撃の知らせを受けた抜刀斎は現場に急行しますが、その途中で逃げた維新獅子を追撃していた一番隊組長の沖田総司と遭遇して戦いになります。
アクションが凄まじく、殺陣の凄さは「るろうに剣心」映画シリーズの大きな特徴だと思います。



(激闘を繰り広げる抜刀斎と新選組一番隊組長の沖田総司(村上虹郎さん))

巴が寝ている抜刀斎に毛布を掛けようとしたシーンは良かったです。
常に澄ました表情で他の人からは「愛想がない」と言われている巴が毛布を掛ける時少し微笑んだように見えました。
しかし直後、気配に気付いた抜刀斎が瞬く間に刀を取り刃を巴の首に突き付けます。



(抜刀斎に敵の襲撃と思われて斬られそうになる雪代巴)

斬られそうになり、巴に初めて動揺が走り恐怖に引きつった声が出ますが、それ以上に抜刀斎も信じられないものを見るような驚愕の表情で自身の手元を見ていました。
一体自身は何をしているのか、とんでもないことをしてしまうところだったと表情が物語っていてかなり良い演技だと思いました
抜刀斎は「市井の人間は斬らないと言っていたのにこの有様だ。(このままでは殺してしまうかも知れないから)出て行ってくれ」と言いますが、巴は恐怖しながらも抜刀斎に近寄り、「もうしばらくおそばに居させて頂きます。今のあなたには、狂気を収める鞘が必要です」と言います。



(雪代巴を斬りそうになって悔やむ抜刀斎と、恐怖しながらもその場に留まる巴)

このシーンが凄く良くて、怖いという感情は表情に出て、この人のそばに居たいという感情は座ったままジリジリと間合いを詰める態度に出て、この人のそばに居たい感情が何とか勝ったのが上手く表されていました。
佐藤健さんと有村架純さん、両者揃って高い演技力が発揮された今作最大の名シーンだと思います

池田屋事件以降、新選組の勢いが増し、長州藩士がアジトにしている宿にも藩士潜伏の情報を聞きつけたようで捜査をしにやって来ます。
間一髪のところで抜刀斎は巴を連れて逃げ、守ってあげていました。



(雪代巴を守る抜刀斎。佐藤健さんの醸し出す雰囲気と刀の構えが凄く良いと思います

徳川幕府との戦いが激化し、長州藩は劣勢に立たされていたため、抜刀斎と巴は桂から京都の外れにある農村でしばらく2人で夫婦に扮して暮らすように言われます。
桂は巴に「形だけで良い」と言いますが、巴の方は「そんなことを言わなくて良いのに」といった感じの無表情で佇んでいました。
しかし抜刀斎は「出来れば形だけでなく共に暮らそう」と言い、すると巴は微笑んで「はい」と言っていて、それぞれがお互いのことを想っているのがよく分かりました。

農村での暮らしでは巴が再び寝ている抜刀斎に毛布を掛けるシーンがあり、今度は起きずに眠っていました。
抜刀斎が巴に気を許しているのがここでも分かりました。
ある晩、巴が鏡を見ながら涙を流す場面があり、なぜ泣いていたのか最後に明らかになりますが、原作を知っていると表情だけでも自身の境遇と抜刀斎への想いの板挟みで泣いているのだろうな、とすぐに想像がつくくらい印象的な涙でした。



(農村で暮らす抜刀斎と雪代巴。その様子はまさに夫婦でした)

巴が抜刀斎に「あなたは近頃、よく笑うようになりましたね」と言う場面があり、その時の言葉の雰囲気がとても優しいと思いました。
最後の「なりましたね」の辺りで声量を少し弱めていて、それでいて同時に温かさが滲む言い方でかなり上手いと思いました

しかし温かい雰囲気は長くは続きませんでした。
闇乃武(やみのぶ)と呼ばれる徳川幕府側の暗殺諜報組織が動き出します。
長州藩士の中にかねてから存在が囁かれていた裏切り者がいて、闇乃武と結託して抜刀斎暗殺を企てていました。

巴の弟の縁(えにし)が農村にやって来て、巴はどうしてここが分かったのかと驚きます。
縁の話を聞くうちに巴は何が起こっているのかを悟ります。

その夜、巴は抜刀斎に実家は江戸にあるなどの自身の生い立ちを話します。
10代の頃に「るろうに剣心」の漫画を読んだ時は分かっていませんでしたが、人が突然生い立ちを話したりするのは何か心境の変化があった時の可能性が高く、映画が佳境を迎えているのがよく分かる場面でした。
また抜刀斎は巴に「新しい時代が来たら、人を斬るのではなく人を守れる道を探したい」と言います。
巴は抜刀斎の思いを聞いて「はい」と穏やかに言っていて、序盤では反論していたのが「はい」になったのが良いなと思いました。
先に眠った抜刀斎の横で巴は自身の短刀を手に取り、思い詰めた顔になります。
その最後、抜刀斎を見て悲しそうに微笑んだのが印象的で、出向いた先で生きて帰って来られそうにないのを悟っているのだと思いました。
巴は一人で自身と関わりのある闇乃武のアジトに向かいます。



(闇乃武のアジトに向かう雪代巴)

翌朝抜刀斎も長州藩の裏切り者の謀略によって動揺した心境でアジトに向かいますが、様々な罠を仕掛け地の利を得て戦う相手達を前にボロボロになります。
そんな中、巴が窮地の抜刀斎を助けに来ますが…
スローモーションで描かれた場面を見て「巴さん…」という心境になり目にじわりと涙が浮かびました。
結末を知っていても涙が浮かぶのは抜刀斎役の佐藤健さんと巴役の有村架純さんの作り出す世界観がそれだけ凄かったのだと思います。
闇乃武との戦いの後、「じゃあ、行ってくるよ、巴」という寂しそうな言葉とともに、抜刀斎は新しい時代のために再び徳川幕府との戦いに向かって行きます。


この作品を観て、紛れもないラブストーリーだと思いました。
元来どちらも愛想がなく、さらには意見も違っていて恋愛には程遠い関係だった二人が、段々と心を通わせていく様子はとても良かったです。
二人揃って口数が少ない分、表情や所作、間から伝わって来るものがたくさんあり、特に巴が抜刀斎の方を静かに見る回数がたくさんあったので、どういった心境なのかに思いを馳せながら見ました。
悲劇のラブストーリーになるのが分かってはいても、せっかく心を通わせたこの関係が終わらないでほしいと願わずにはいられないような良い雰囲気で、観に行って良かったと思う素敵な映画でした。
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「黒い羊」(山口真帆さん、菅原りこさん、長谷川玲奈さん卒業公演Ver)

2019-11-24 21:13:39 | 音楽・映画


(山口真帆さん、菅原りこさん、長谷川玲奈さんの卒業公演「太陽は何度でも」にて、「黒い羊」歌唱時。衝撃的なステージでした。)

今回ご紹介するのは「黒い羊」(山口真帆さん、菅原りこさん、長谷川玲奈さん卒業公演Ver)です。

-----内容&感想-----
「黒い羊」は2019年2月に発売されたアイドルグループ欅坂46の8枚目のシングル曲です(音源は1月に公開)。
白い羊の中に一匹だけ居る黒い羊が、毛色が違うことで疎外されながらも、誇りを持って生きて行くことを歌っています。
私はこの曲を5月18日に行われたアイドルグループNGT48の山口真帆さん、菅原りこさん、長谷川玲奈さんの卒業公演「太陽は何度でも」で初めて知りました。
何の偶然か歌詞が山口真帆さんが受けた仕打ちそのものになっていて、アンコール前の最後の曲で「黒い羊」が歌われ、強烈なメッセージを放つ衝撃的なステージだったため、強く印象に残りました。
「黒い羊」の歌詞に沿って、感想を書いていきます。




(山口真帆さん、菅原りこさん、長谷川玲奈さんの卒業公演「太陽は何度でも」にて歌われた「黒い羊」。)




(写真はネットより。以下同じ。)




信号は青なのかそれとも緑なのかどっちなんだ? あやふやなものははっきりさせたい

夕暮れ時の商店街の雑踏を通り抜けるのが面倒で 踏切を渡って遠回りして帰る

放課後の教室は苦手だ その場にいるだけで分かり合えてるようで

話し合いにならないし 白けてしまった僕は無口になる


NGT48が放課後の教室のような、まとまりのないだらけた、退廃的な雰囲気なのだと思います。
予想では2018年4月に北原里英さんというグループの礎を築いた偉大なキャプテンが卒業してからそうなったと思います。



この歌詞から、「僕」はだらけた馴れ合いの雰囲気が嫌いと分かります。
そして山口真帆さんも、何もかもあやふやにするような、締めるところを締めないだらけた雰囲気は嫌いなのだと思います。
その雰囲気を直そうとして話し合いをしようとしても、だらけた人達からは煙たがられ、「この人達はどうしようもないな」と思ったのではと思います。
9月冒頭に公開された暴行事件直後の音声データには、山口真帆さんが西潟茉莉奈さんと太野彩香さんの人間性が以前から酷いものだったと憤っている場面があります。


言いたいこと言い合って解決しよう なんて楽天的すぎるよ

誰かが溜め息をついた そう それが本当の声だろう


この歌詞は、山口真帆さん在籍時のNGT48が話し合いができる状態ではなかったのを表しています。
言いたいことを言い合っても、相手がだらけた雰囲気のままで良いと考えている限りはどうにもならないです。
「誰かが溜め息をついた」は、NGT48がため息をつくような雰囲気だということです。




黒い羊 そうだ 僕だけがいなくなればいいんだ

暴行事件の被害者なのに卒業に追いやられた山口真帆さんの胸中そのものです。
NGT48では西潟茉莉奈さんと太野彩香さんが、「警察に取り調べを受けたが私はやれとは言っていない」という旨の弁明をツイッターでしたことから、暴行事件への何らかの関与及び犯人グループとの親密関係が強く疑われています。
特に親密関係のほうは暴行事件直後の音声データから決定的です。
警察に取り調べを受けたということは、少なくとも犯人達が2人にやれと言われたと取り調べで自供し、警察が裏取りをしてみると西潟茉莉奈さん、太野彩香さんと犯人達との親密関係が浮かび上がったため、警察署に呼び出して取り調べになったと考えられます。
西潟茉莉奈さんと太野彩香さんには、暴行事件への何らかの関与及び犯人グループとの親密関係について、きちんと説明する責任があります。

また第三者委員会の報告書によると、NGT48の複数のメンバーが特定のファンと私的交流している(繋がっている)ことが事実認定されています。
ところが運営の株式会社AKSは、西潟茉莉奈さん、太野彩香さんという暴行事件への何らかの関与及び犯人グループとの親密関係が強く疑われるメンバー、特定のファンと私的交流している複数のメンバーのことを「不問」にすると宣言して守る一方で、山口真帆さんには鬼畜のようなことを次々する異様な対応をしました。
白い羊達(暴行犯罪を呼び込むようなだらけた雰囲気を肯定する人達)が主導権を握るグループに山口真帆さんの居場所はなく、出て行くしかなくなりました。




そうすれば 止まってた針はまた動き出すんだろう?

山口真帆さんがNGT48を出て行けばNGT48はまた活動できるようになると、運営の株式会社AKSと西潟茉莉奈さん、太野彩香さん、荻野由佳さん、加藤美南さんなどのメンバー達(暴行された山口真帆さんを一切気遣わなかったメンバー達)は考えていたのだと思います。
ただしこの考えは間違っていて、既に最悪になっていたNGT48のイメージは山口真帆さんを追い出したことでより一層最悪となり、世間からは猛批判を浴びました。


全員が納得するそんな答えなんかあるものか!

反対が僕だけならいっそ無視すればいいんだ




(反対が~のところから、記事冒頭のgif動画の場面になります。山口真帆さんを虐げている人達は、私には西潟茉莉奈さん、太野彩香さん、荻野由佳さん、加藤美南さんなどのメンバー達に見えます。)

反対とは第三者委員会の報告書でも事実認定された、NGT48の複数のメンバーと特定のファンの私的交流(繋がり)のことです。
特定のファンは「厄介」と呼ばれる素行不良で有名な人達ですが、お金をたくさん使ってくれるので運営にとってもメンバーにとっても利益になり、その利害関係での結び付きだと思います。
山口真帆さんのツイッターでの告発時の文章(下記ツイート群の上から4つ目、5つ目)から、繋がりが横行するグループにあって山口真帆さんは繋がりに反対していたので悪質メンバー達から迫害され、ついに西潟茉莉奈さん、太野彩香さんとの親密関係が強く疑われる特定のファンに襲われる事態になったのだと思います。








みんなから説得される方が居心地悪くなる

特定のファンと繋がっているメンバーが何人も居るため、運営及びそれらのメンバーから「お前も繋がれ」と説得(強要)されたのではないかと思います。
暴行事件直後の音声データから、運営と犯人グループの蜜月関係も強く疑われています。
真面目な活動をしたい山口真帆さんのようなメンバーにとって居心地の悪いグループだと予想されます。




(山口真帆さんの目の前で彼岸花が踏み潰されるシーン。こういった恐ろしいメンバーが何人もいるのだと思います。)


目配せしている仲間には僕は厄介者でしかない わかってるよ

本来は特定のファンと繋がらない山口真帆さんこそが全うなアイドルですが、運営及び繋がっているメンバー達から見ると、繋がりに反対する山口真帆さんは厄介者ということです。
私は相手が犯人グループの人でなくても私的交流していたらアイドルとは呼べないと思います。




白い羊なんて僕は絶対になりたくないんだ

白い羊とは特定のファンと繋がっているメンバー達のことです。
山口真帆さんは絶対に繋がらないという強い意思を持っています。
暴行事件直後の音声データに、犯人の釈明を聞いた山口真帆さんが「あなたたちが関わっているビッチと一緒にしないでもらえますか」と憤り、犯人が「一緒にして悪かった」と言っている場面があり、「アイドル」という活動に誇りを持っていることがよく分かります。


そうなった瞬間に僕は僕じゃなくなってしまうよ

繋がった瞬間に自身が自身ではなくなるという非常に強い信念を感じます。
山口真帆さんのアイドルとはどうあるべきかの根幹の考えだと思います。
特定の人と私的交流していたらアイドルとは呼べないと考えていて、まさにアイドルの鏡です。




まわりと違うそのことで誰かに迷惑かけたか?

繋がらないことが誰かの迷惑になるのか?という問いかけです。
繋がっているメンバー達から見ると、NGT48では繋がることが正義なのだから、繋がらない山口真帆さんは悪だという発想なのだと思います。


髪の毛を染めろと言う大人は何が気に入らない?

反逆の象徴になるとでも思っているのか?


これは通常なら、学校で校則を破って髪の毛を茶髪等に染めている人に、反逆の象徴だから黒髪に染め直して来いと言っている解釈になります。
ところがNGT48は特定のファンと繋がっているメンバーが何人も居て運営も「不問」にするという異様な状態のため、通常とは違う解釈になります。
周りはみんな茶髪等に染めていて(繋がっている)、一人だけ黒髪のままでいるので(繋がっていない)、グループの主流への反逆の象徴だということで「お前も茶髪に染めろ(繋がれ!)」と言っているのだと思います。




(山口真帆さんが集団から仲間外れにされているシーン。こういったことも横行していたのではと思います。)

自分の色とは違うそれだけで厄介者か?

山口真帆さんが特定のファンと繋がっていないという、それだけで厄介者扱いされないといけないのか?という問いかけです。
本来は繋がっていない人こそが全うなアイドルです。


Oh 自らの真実を捨て白い羊のふりをする者よ 黒い羊を見つけ 指を差して笑うのか?

この場面は何度聴いてもゾワッとした気持ちになり鳥肌が立ちます。
白い羊は特定のファンと繋がっているメンバー達のことで、黒い羊は山口真帆さんや、山口真帆さんに寄り添って一緒に卒業した菅原りこさん、長谷川玲奈さんと、卒業公演に駆け付けた7人(村雲颯香さん、角ゆりあさん、小熊倫実さん、日下部愛菜さん、渡邉歩咲さん、高沢朋花さん、高橋七実さん)などのことです。
他には西村菜那子さんが山口真帆さんから駆け付けた7人と同格の信任を得ており(ツイッターで山口真帆さん支持を明言していて、卒業公演には何らかの事情で来られなかったのではと言われています)、黒い羊なのだと思います。



(右から高橋七実さん、高沢朋花さん、角ゆりあさん、小熊倫実さん、日下部愛菜さん。「黒い羊」は山口真帆さん、菅原りこさん、長谷川玲奈さんとこの5人の合計8人で歌いました。)




(卒業公演後の写真撮影にて、前列左から長谷川玲奈さん、山口真帆さん、菅原りこさん、後列左から小熊倫実さん、日下部愛菜さん、村雲颯香さん、角ゆりあさん、渡邉歩咲さん、高沢朋花さん、高橋七実さん。
AKSからの参加禁止圧力に屈せず卒業公演に駆け付けた後列の勇気ある7人は「安心安全7」と呼ばれています。)




(「安心安全7」は山口真帆さんが命名し、名前の由来はNGT48には山口真帆さんの告発時の内容や、暴行事件直後の音声データの内容から、犯人グループとの親密関係が強く疑われる恐いメンバーもいるので、この7人は確実に安心で安全ということだと思います。)


「自らの真実を捨て白い羊のふりをする者よ」は二通りの解釈があり、両方とも当てはまる気がします。
一つは、かつては「黒い羊」で全うなアイドルだったのに、今はグループの主流に抗えず特定のファンと繋がって「白い羊」のようになったメンバーを示唆しているという解釈です。
そのメンバーが、繋がることを悪とも思わない生粋の白い羊と一緒になって黒い羊を指差して笑っていることを示唆しています。

もう一つは、特定のファンと繋がってはいなくても勇気が出なかったり保身を考えたりして山口真帆さんに寄り添わず、卒業公演にも駆け付けなかったメンバー達という解釈です。
山口真帆さん、菅原りこさん、長谷川玲奈さんの卒業公演には運営から参加禁止圧力が掛かっていて、運営及び特定のファンと繋がっているメンバー達から睨まれるのが分かっていて駆け付けるのは勇気が要ったと思います。
この卒業公演は勇気や義のあるメンバー、ないメンバーを浮き彫りにしました。

私は駆け付けなかったメンバーにもそれなりに勘の良い人はいると思うので、歌詞が自らに当てはまることに気付く人はいると思います。
他人事にして遠巻きに見ていれば何とかなるだろうというのは間違いで、見ているうちにグループは滅亡します。
NGT48で活動を続けたいなら、今からでもグループの正常化を目指す気持ちは持ってほしいです。




それなら僕はいつだって それでも僕はいつだって ここで悪目立ちしてよう

この歌詞はどんなに指を差されて笑われようと、決して山口真帆さんは特定のファンと繋がったりしないという誇りが表れていると思います。
白い羊たちのように特定のファンと繋がるくらいなら、1人になろうと全うなアイドルとしての誇りを貫くという強い気持ちを感じます。


山口真帆さんは「研音」への移籍発表直前のインスタグラムで次のように書いています。



(一文目の「白い羊たちと黒い羊。」は、このステージで白い羊たちの中に1人だけ黒い羊が居るという意味です。)


「黒い羊」という曲は、周りからどれだけ馬鹿にされたり仲間外れにされたりしても自身の信念は決して曲げないという誇りを歌い上げています。
山口真帆さんも勇気づけられたと思い、そしてインスタグラムに書いた「伝えたいもの」はまさにこの誇りだと思います。
1月8日の告発から5月18日の卒業まで戦い続けた山口真帆さんを支えた希望の歌として、私はこれから先忘れることはないと思います。


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「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番」(ピアニスト:石井楓子)

2019-09-09 20:13:37 | 音楽・映画


今回ご紹介するのは「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番」(ピアニスト:石井楓子)です。

-----曲調&感想-----
ロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフの曲は、日本の私のような一般層ではフィギュアスケートの浅田真央さんがバンクーバーオリンピックで「前奏曲 鐘」、ソチオリンピックで「ピアノ協奏曲第2番」で演技をしたことが有名です。
第4番まであるラフマニノフのピアノ協奏曲の中で、第2番と第3番はコンサートで演奏されることも多く、名曲の評価を得ています。
そして第3番は世界にある全ピアノ協奏曲の中で最も演奏難易度が高いことでも知られています。
私は石井楓子さんというピアニストによる演奏が好きなので、その演奏動画を元にご紹介します。
動画は音が小さめなので、聴かれる方はボリュームを上げて聴くことをお勧めします


(ピアノを演奏する石井楓子さん。写真はネットより)


曲全体の印象

この曲は真っ白い雪の世界が透き通るような水色や青で照らされているかのような雰囲気があります
そしてピアノの音色が非常に華やかで綺麗でドラマチックであり、私はその音色に凄く引かれます。
聴いていると新たに良いと思う箇所が次々と出てきて何度でも聴いていたくなる曲です



第一楽章(~18:01)

冒頭のピアノの演奏はややひっそりとしていてもの悲しく、そしてその中に気高さを感じます。
このメロディはクラシック音楽で「主題」と呼ばれるメロディで、しばらくするとまた登場する、その楽章の中心となるメロディです。
主題の終わり際、「溜め」を作った演奏をしてから最後にもの悲しさが溢れ出して流れて行くような演奏が私は特に好きです

主題の後、ピアノは一気にスピードを上げ、いよいよ本格的に曲の世界観を表現するぞという雰囲気になります。
オーケストラはのびやかで雄大さを感じる演奏でピアノを盛り立てていて、その雰囲気が良いです。
曲のスケールの大きさが予感されます。

ピアノの音色を聴いていると、「硬さとともに軽やかな弾みをも感じる音色」になることがあります。
硬い音を出すのはそれほど難しくないと思いますが、そこに軽やかさを入れるのは全く違う性質なので難易度も上がり、そういった演奏に表現力の高さを感じます。

やがて冒頭に登場した主題がもう一度登場します。
やはりひっそりとしたもの悲しさ、気高さを感じ、そして引き寄せられる音色です。
ピアノの主題演奏が始まる直前に演奏される、弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)による静かに繰り返し唸るような演奏も印象的で、「これは冒頭に登場したあの音色だ」と分かります。

主題の後、ピアノの演奏がどんどん力強くなっていき、かなり激しくなり、最高潮を迎えると緊迫した鬼気迫る演奏になります。
オーケストラも緊迫した演奏で寄り添い、第一楽章きっての見せ場だと思います。

しばらくゆったりとした演奏をしてからピアノの独奏場面に入り、その演奏が次第に力強さを増し、やがて非常に力強くなります。
硬い音での演奏ですがその響きには情熱も感じ、ドラマチックさがあります。
先に登場した第一楽章きっての見せ場の魅力が「緊迫感」なのに対し、こちらは「情熱」が魅力な気がします。
このピアノ独奏場面も第一楽章きっての見せ場だと思います。

ピアノが独奏を続けていく中で、一音一音を猛スピードで演奏する場面があります。
そして猛スピード(速さ以外の表現をするのが難しくなる)なのに柔らかさ、滑らかさがとてもよく表されているのは凄いことだと思います。

3回目となる冒頭の主題の演奏になります。
1回目の時に「溜め」を作った演奏をしてから最後にもの悲しさが溢れ出して流れて行くような演奏が好きと書きましたが、その場面は高音から低音に向かって「ドシラソファミ」のように一音ずつ下げていく演奏をしています。

主題の後のトランペットの「パーッパカ パッパッパッパー」という演奏が格好良く、気高さ、誇り高さを感じます
ピアノがキラキラキラーッという星が煌めくかのような演奏をしているのも雰囲気が良いです。



第二楽章(18:24~28:50)

もの悲しさを感じる音色で始まります。
オーボエ(縦笛に似た見た目の管楽器)の硬質感のある甲高い音色が目立ち、やがてヴァイオリンなどの弦楽器も悲しい音色で続きます。
ピアノが入る直前に演奏される、非常に伸びを効かせた悲しさと雄大さを感じる演奏が印象的です。

第二楽章主題の凄く印象的なピアノメロディが登場します。
低音から高音に向かって「ドレミファソラシド」のように、ゆっくりと音を上げて行く場面があります。
優しく甘い音色で、神秘的な雰囲気もあり、とても引かれます
ピアノを支えるオーケストラは風がフワーッと沸き起こるかのように、ピアノの神秘さが際立つ演奏をしていてそれも良いです。
この場面はあまり間を置かずにもう一度登場します。
今度はピアノは音を高めにし、オーケストラは1回目が風がフワーッと沸き起こるようだったのに対し、今回は風が勢い良く吹き抜けて行くような演奏になっています。
全体として1回目よりも胸に迫ってくる聴こえ方になります。

ピアニストは左右の手で全く違うリズムの演奏をすることがよくあるのが凄いと思います。
片方の手はポロロロロと軽やかに演奏し、もう片方の手は力強く演奏をする場面があります。
力強い方の演奏が比較的ゆったりと弾いていることもあり、それぞれの手が全く違うリズムの演奏をしているのが強く意識されます。

同じメロディを繰り返し情熱的に演奏しながらどんどん力強くなって行く場面があります。
最高潮になると、そこから派手さや華やかさと共に安らぎも感じるメロディになります
作品世界に光が差すような明るさに、また幸せが辺り一帯に広がっていくような雰囲気に笑みがこぼれる音色で、これも見せ場だと思います

第二楽章主題の凄く印象的なピアノメロディが3回目の登場をします。
直前に笑みがこぼれる音色で気持ちが華やいでいたところにこの演奏が来て、今度は落ち着いて透き通った気持ちになります

ピアノがスピーディーで軽やかな演奏をしてから、一気に階段を上って行くような演奏になります。
「タンタカタンタンタカタン」というような響きの演奏を繰り返し、音を次第に大きくしているのでこちらに向かって押し寄せてくるような勢いも感じ、その雰囲気に引き込まれます

冒頭の第二楽章主題の凄く印象的なピアノメロディが登場する直前に演奏された、非常に伸びを効かせた悲しさと雄大さを感じる演奏が再び登場し、そこで第二楽章が終わります。



第三楽章(28:50~43:34)

突如としてそれまでとは曲調が変わり、第二楽章から間を置かずにそのまま第三楽章になります。
速いスピードで助走を付けるような演奏をしてから一気に全体が激しい演奏になり、緊迫感も漂います。
その中で途中からピアノが特に目立ち、冒頭のこの場面最大の見せ場になり、階段をどんどん上って天まで駆け上るかのような演奏になります
第三楽章の主題でもあり、終盤に形を変えてもう一度登場します。

天まで駆け上ると、今度はオーケストラがトランペットを中心に威厳を感じる演奏をします。
その中でピアノが物凄い速さでキラキラと光の粒が弾けるような演奏をしているのが良いと思います
さらに、その次の寄せては返す波のような演奏も好きで、魅力的な音色が次々と現れます。
その後は派手さ、煌びやかさの余韻に浸るような穏やかな演奏が続きます。
ただしずっと穏やかではなく、激しさが顔を覗かせたり、軽やかになったり、ひっそりしたりと、変化に富んでいます。

やがて曲調が変わり、また盛り上がる予感がします。
満を持して冒頭に演奏された主題が再登場し、また階段をどんどん上って天まで駆け上るかのような演奏になります。
今度は少しゆったり目で、そして力強い演奏です。
寄り添うオーケストラもどんどん演奏の迫力を上げて盛り上げて行き、音色にドラマチックさも漂わせていて、いよいよ協奏曲がクライマックスに向かうことが予感されます。

再び寄せては返す波のようなピアノ演奏になった後、駆け上った天上界で楽しく舞踏しているような演奏になります
「タンタカ タンタカタンタンタン」というピアノのリズミカルな演奏が特に良いです
楽しく舞踏しているような演奏の最後、盛り上がっている場面なのに音色に少し寂しさを感じるのも印象的で、楽しさが終わらないでほしいなという気持ちになります
第三楽章きっての、音色にドラマチックさ、美しさを感じる場面です。

やがていよいよ終わりが近いと分かる曲調になります。
トランペット・ティンパニ(太鼓が複数あるような楽器)とピアノがお互いを呼びかけ合う演奏を繰り返した後、今度はヴァイオリンなどとピアノがお互いに響き合う演奏をします。
ピアノと響き合うヴァイオリンなどは凄く伸びやかで力のある演奏をし、さらに非常に力強くなります。
ラフマニノフの曲は「巨人的」と評されることがありますが(音の響きのスケールが大きいということだと思います)、それがよく分かる場面です。

最後は凄くドラマチックで、音が唸りを上げます
そこからピアノが物凄いスピードで演奏しながら音階を下げて行き、最後の「タン!タン!タン! タンタカタン!」の「ラフマニノフ終止」という演奏で曲が終わります。



私はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を2018年12月12日の「広島プロミシングコンサート」で初めて聴きました。
井伏晏佳(はるか)さんというピアニストが演奏し、クラシック音楽を聴くようになって日の浅い私でも神秘的な魅力を持つとても素敵な曲なのが感じられました。
長い曲で、今回ご紹介した動画の演奏時間は約43分ありますが、魅力的な音色がたくさん登場し長さを感じさせないです。
聴けば聴くほど魅力を感じる名曲なのでこれからもたくさん聴いていきたいと思います



関連記事
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「プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番」(ピアニスト:尾崎未空)
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「チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」(ソリスト:川本冴夏)

2018-12-17 19:35:57 | 音楽・映画



今回ご紹介するのは「チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」(ソリスト:川本冴夏)です。

-----曲調&感想-----



(2018年10月14日、「一楽章f未完成 FLUTE VIOLIN CONCERT」にて談笑する川本冴夏さん)

記事冒頭の動画は2018年3月31日、広島県東広島市の西条にある「東広島芸術文化ホール くらら」で行われた「市民交流コンサート2018」の時のものです。
「ヴァイオリンソリスト(ソロ演奏者):川本冴夏さん、オーケストラ:ALL東広島」でピョートル・チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」を演奏しています。
「一楽章f未完成 FLUTE VIOLIN CONCERT」で演奏を聴いたのがきっかけでネットを見てみたらこの動画があり、聴いてみて良い演奏と良い曲だと思いました。
この動画の演奏を元に、「ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」のご紹介をしたいと思います。


冒頭はオーケストラによるゆったりとした安らぐメロディで演奏が始まります。
00:22~00:25くらいの車のエンジンがかかるようなメロディで何かが始まる予感がしてワクワクします

00:54からヴァイオリンソリストがソロで演奏を始めます。
それまでのオーケストラの演奏を引き受けるような形でとても自然に始まっているのが印象的です。

01:14からオーケストラも再び演奏を始めます。
ソリストを中心にゆったりとしたメロディでの演奏です。
01:55から02:15にかけてソリストが一際高い音で演奏し、この音が凄く綺麗で聴き入りました

02:52からかなり盛り上がり、どんどん音が上がって行きます。
音が喜びに満ちていてとても嬉しそうなのが良いです。
そして綺麗な音色で、私はこういった音色が好きです
オーケストラとソリストが呼応して同じ音色を音階を上げながら6回繰り返しているのも印象的です。
同じ音色を何度か繰り返す手法はこの曲で何度も登場します。
凄く高い音まで上がって行き、03:05で一気に喜びが爆発したように弾けこの場面がとても好きです

弾けた後はソリストが高い音からどんどん音階を下げて低い音まで行きます。
低い音まで下がったところでゆったりとした演奏になり、この部分が03:05で弾けた場面からの「音の底」の部分なのかなと思います。
盛り上がりきった後を受け持つ大事な場面のような気がします。

ヴァイオリンの弾き方にも注目で、高い音と低い音で弓の当て方が違います。
高い音の時は縦に弓を当てているのに対し、低い音の時は横に当てています。

ゆったりとした演奏を2回繰り返します。
2回目の繰り返しの時の03:58から04:11頃の物凄く高い音での演奏がかなり良いと思います。
どんどん音が高くなり力強さも上がっていき、綺麗な音色の中にもの悲しさも感じ、こういった音色にも心を引かれます。

04:27~04:32頃にかけてのメロディは胸に迫る音色で涙腺が緩みそうになります。

私はこういった音色が心の琴線に触れるのだと思います。


どんどん音が高くなり、力強い演奏にもなります。
04:39頃~05:00頃にかけての物凄く高い音での演奏の部分は心の叫びのようにも聴こえ、気高さやドラマチックさも感じます。

05:10から音階が下がっていき、05:15で一番下がったところから一気に高音に行き、そこからソリストとオーケストラの呼応が始まり6回繰り返されます。
この回数は02:52~と同じです。
また05:10~05:15はヴァイオリンの演奏を見ていると弾き方がどんどん縦方向から横方向に変わっていっているのが印象的です。

ソリストとオーケストラの6回の呼応が終わった直後、05:28からフルートが演奏を始めます。
05:38までヴァイオリンの弾き方と相まってとてもドラマチックな雰囲気になっているのが良いです

05:45からソリストが物凄い小刻みでの演奏を始めます。
さらに05:57から小刻みでの演奏がギアの上がった音色になり聴いていて気持ちも盛り上がります
スピードもかなり速く、この部分を演奏するのは特に大変なのではと思います。

06:07で小刻み音を引き取るように伸びやかな演奏になります。
短い時間小刻み音で演奏し、伸びやかな演奏で引き取るのを音階をどんどん上げながら5回繰り返します。
音階が上がり切って物凄く高い音になったところで、太鼓がドンっ!と鳴りソリストの演奏が鬼気迫るものになります。
オーケストラとの全体での演奏に迫力とともに不穏な雰囲気も感じ、この部分はとても引き込まれます。
この鬼気迫る演奏は4回繰り返されます。

そこから06:29~06:33にかけて導火線に火が灯っているような演奏になります。
そして一気にソリストの音が高く力強くなり、その最高潮で一旦演奏を止め、06:39からオーケストラ総動員での演奏になり、特徴的な盛り上がるメロディを2回繰り返します。
この時の盛り上がりが凄く、ソリストが離れているためそれを埋めるためにオーケストラが総動員になっているのだと思いました。
そしてこの曲を見るとソリストがかなり疲れるのが予想され、時折休むタイミングが必要だと思います。

8:08からソリストが演奏を始めます。
9:00頃から9:28頃にかけて同じメロディの演奏が6回繰り返され、何かを決断するかどうかで足踏みしているような雰囲気を感じました。
9:29から一気に曲調が変わってドラマチックな雰囲気と鬼気迫る雰囲気を併せ持った演奏になり、小刻み音を使っていてスピードも速く、それが4回繰り返されます。
4回目の最後に一気に高い音での力強い演奏に変わり最高潮を迎えて演奏を止め、同時に9:36から再びオーケストラが総動員での演奏を始めます。
06:39~と同じ特徴的な盛り上がるメロディですが今度は少しゆったり目の演奏になっています。

10:20でオーケストラの演奏がクライマックスを迎え、10:25にかけてとても迫力のある演奏をします。
そしてその演奏に呼応して10:25からソリストが演奏を始めます。
「タン、タン、タン、ターン!」というどんどん音階を上げながらのソリストの演奏の後、オーケストラが迫力のある演奏で呼応するのが2回繰り返されます。
10:34からの3回目でソリストの演奏の仕方が変わり、そのまま独奏に入ります。

10:52に「ポロロン」とピッチカート(指だけでポロンポロンと弦を鳴らすこと)をしているのがそれまでの迫力のある演奏との対比になっていて印象的です。
11:16~11:22頃にかけてヴァイオリンの音が水が湧き出て流れるように出ているのが印象的で、弾き方が上手いなと思います。
11:54~12:00頃にかけて怪しい屋敷を探検しているような特徴的な音を出していて、ヴァイオリンはこんな演奏の仕方もあるのかと思いました。

12:19頃から12:40頃にかけて同じメロディでの演奏が8回繰り返され、8回目の最後、演奏が激しいものに変わります。
12:57頃で演奏の激しさが峠を越えて少しゆったり目の演奏になります。

13:20にオーケストラが再び演奏を始め、とても穏やかで優しい雰囲気です。
13:32までソリストがソロ演奏の一番最後の時の「音を震わせる弾き方」を続けているのが印象的で、その震える音とオーケストラの穏やかで優しい音色がとてもよく合っています
オーケストラが寄り添っているように聴こえます。

13:56からソリストが2:00頃からの演奏と同じメロディで演奏し、今回はより華やかさを感じる音です。
14:54~14:56のとても高い音での唸るような音はその後の演奏に向けて「さあ行くぞ!」と言っているように聴こえます。
そして14:56から15:06にかけてオーケストラとソリストが同じ音色を音階を上げながら6回繰り返すのがもう一度演奏され、15:07で再び喜びが爆発したように一気に弾け、今回のほうがさらに弾けている感じがします。

弾けた後、凄く高い音からどんどん音階を下げていき15:26で一番下がります。
ゆったりした演奏を2解繰り返した後、16:00から16:45にかけての物凄く高い音での演奏が凄く良いです
弾き方にもかなり情感がこもっています。
やはり綺麗な音色の中にどこか悲しさも感じ、そして私はこういった派手な音色と相性が良いのが分かりました。
聴いていてとても引き込まれます

ソリストとオーケストラの呼応が6回繰り返され、17:20からソリストが小刻み音での演奏を始めます。
05:45~と同じメロディでの演奏ですが今回の小刻み音は一気にギアを上げるよりもじっくり上げるのを重視しているように聴こえました。

17:42~17:55にかけて短い時間小刻み音で演奏し、伸びやかな演奏で引き取るのを音階を上げながら5回繰り返した後、17:56から18:05までの盛り上がりが凄いです
ソリストもオーケストラも物凄く力を込めています。

18:06~18:10の導火線に火が灯っているかのような演奏の後、18:05で序盤での同じメロディの時と演奏の仕方が変わります。
18:16頃から18:22頃までどんどん音が上がっていきます。
18:37~18:52の音色には物凄くドラマチックなものを感じ、明るさと気高さを併せ持っているように聴こえました。
そして圧倒的なラストを迎え、音色と演奏の迫力、凄さに強烈に引き込まれました


今回初めて、普段小説の感想記事を書く時と同じ形でクラシック音楽の感想記事を書いてみました。
最初に書いたのがこの曲で良かったと思います。
聴けば聴くほど魅力的な曲で、音色の華麗さ、美しさにとても引き込まれます。
気持ちを明るくしてくれる素晴らしい曲で、ぜひこれから先も弾き継がれ、聴き継がれていってほしい名曲です
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「ちはやふる 結び」

2018-03-18 23:24:50 | 音楽・映画


今回ご紹介するのは映画「ちはやふる 結び」です。

-----内容-----
いつも一緒に遊んでいた、幼なじみの千早・太一・新。
家の事情で新が引っ越してしまい、離ればなれになってしまうが、高校生になった千早は、新にもう一度会いたい一心で、太一とともに仲間を集め、瑞沢高校かるた部を作った。
「新に会いたい。会って『強くなったな』と言われたい。」
創部一年目にして、全国大会に出場した瑞沢かるた部だったが、千早は個人戦で史上最強のクイーンに敗れ、さらに強くなることを部員たちと誓った。
あれから二年―、かるたから離れていた新だったが、千早たちの情熱に触れ、自分も高校でかるた部を作って、全国大会で千早と戦うことを決意する。
一方、新入部員が入り、高校三年最後の全国大会を目指す瑞沢かるた部だったが、予選を前に突然、部長の太一が辞めてしまう。
動揺と悲しみを隠せない千早…。
千早、太一、新は、再びかるたで繋がることができるのか?
今、一生忘れることのない最後の夏が始まる。


-----感想-----
※「ちはやふる 上の句」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「ちはやふる 下の句」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。

3月17日に上映が始まった映画「ちはやふる 結び」を観に行きました。
気持ちが沸き立つ物凄く良い青春映画で衝撃的な完成度の高さでした

「お願い、誰も息をしないで」という千早の心の中の言葉で映画が始まります。
この一言で一気に気持ちが澄み渡り、強烈にスクリーンに引きつけられました
高校二年生のお正月、綾瀬千早(広瀬すず)は若宮詩暢(松岡茉優)と我妻伊織(清原果耶)によるクイーン戦の札ガールをします。
札ガールは対戦の様子が分かるように、掲示板上で対戦の進みに合わせて札を移動させていく人のことです。
千早はクイーン戦挑戦者決定戦で伊織に惜しくも敗れていました。
詩暢が伊織を倒しクイーン戦三連覇を達成します。



名人戦は周防久志(賀来賢人)が原田秀雄先生(國村隼)に勝ち五連覇を達成し、永世名人になります。
「もうやることはない」と言い引退を宣言する周防に観戦していた綿谷新(新田真剣佑)が「まだ辞めないでくれ!」と頼み、周防はあと一年だけ現役を続けると言います。
周防は賀来賢人さんによって小さい声でボソッと話すのと超然とした仙人のような雰囲気が上手く表現されていました。
そして千早は名人戦、クイーン戦の後、新に「好きや、千早」と告白されて放心状態になります。



瑞沢高校かるた部は千早達が三年生の春を迎え、前年に一人も部員が入らなかったため気合を入れて新入部員を勧誘しますが、入部したのは筑波秋博(佐野勇斗)と花野菫(優希美青)の二人でした。
筑波は新入部員勧誘時の体験かるたで千早と対戦した時にいきなり凄い速さで札を取り千早を驚愕させ、千早も本気になって取り物凄い速さでの取り合いになり、見に来た新入生のほとんどはドン引きして帰ってしまいます。
菫は太一が目当てで入部しました。
体育館での各部活紹介の時に望遠鏡を使って各部活の男子達を見ていて、隣にいた女子から「ガチ勢だ」と言われていたのが面白かったです。



福井県の藤岡東高校の新も全国大会で千早と戦いたくてかるた部を作ります。
かなりの精鋭メンバーが集まり、中でも新を「あにい」と慕う新入生の我妻伊織は千早を破りクイーン戦に出場した人です。
新が「頼みがある」と言うと伊織は「言いたいことは分かる」と言い新が頼む前から入部してくれると言います。
すると伊織も「ところであにい、私も頼みがあるんよ」と言い、何と「私と付き合ってくれんか」と言います。
新に全く迷わずに「ごめん好きな人いるんよ」と言われ、淡々と「秒殺か」と言っているのが面白かったです。
この掛け合いは何度もあり、「ところであにい」が出ると即座に「ごめん好きな人いるんよ」が出るのが分かり、次第に言葉を出すタイミングが早くなっているのも面白かったです。

名人戦、クイーン戦の日に千早が新に告白されたことはかるた関係者によってどんどん広まっていました。
大江奏(上白石萌音)と千早がそのことを話していたのを聞いた菫は太一と付き合いたいばかりに、新が千早に告白したことを太一に話します。
そうすれば太一が千早を諦め、自身が付き合えるかも知れないと思ったようです。
太一は「俺、関係ないから」と言っていましたが実は動揺していました。

全国大会出場をかけた東京都大会の日、太一が退部したことが明らかになり衝撃が走ります。
動揺しながらも千早達は何とか戦っていきます。
しかし重要な北央学園戦で、高慢で周りを見下しチームプレイを無視していた筑波が致命的なミスをしてしまい、あと一歩のところで敗れてしまいます。
部長の太一不在で戦った瑞沢高校は苦しみながら何とか全国大会の出場権を得ます。
新のチームも全国行きが決定します。



東京都大会の後、「どうして辞めるのよ!どうして!」と詰め寄る千早に太一は「千早のためにかるたをやってきたけど、もう無理だ」と言い去っていきます。
「千早のことが好きだが恋は敗れた。こんな精神状態ではもうかるたはできない」とは言えず、何とか絞り出すように言ったのがその言葉だったのだと思います。

太一は東京大学かるた部の周防名人に弟子入りします。
「もう無理」と言ってはいましたが、かるたと一切関わらないくらい嫌いにはなっていませんでした。
周防と太一が中華料理屋でご飯を食べ、会計の時にお金を出そうとする太一を手で制して周防が全額払うと格好をつけたものの、いざ財布を開けたら中身が全く入っていなかったのが面白かったです。

千早が原田先生に太一のことを相談すると、原田先生が印象的なことを言います。
「それがまつげ君なんだよ。自分のことは構わず、他の人のために尽くす。自分がボロボロになってでも」
この言葉を聞いて、千早は太一が千早のために、かるた部のために、どれだけ尽くしてくれていたかを思い返したのではないかと思います。
太一が力強くかるた部を支えてくれていた時の幻影を見て「その太一が今はいない…」と切なくなっている場面が何度もありました。



それでもかるた部は千早を中心に再びまとまり、全国大会目指して特訓します。
高慢だった筑波もチームプレイの重要さが分かり、チームに馴染んでいきます。
自身より弱い奴の言うことは聞かないという態度だったのが、西田優征(矢本悠馬)、駒野勉(森永悠希)、奏の言葉も尊重するようになります。
菫も当初は太一目当ての入部だったのが、次第にかるたと向き合うようになっていきました。

そして高校最後の全国大会の行われる夏の近江神宮に行きます。
瑞沢高校も藤岡東高校もどんどん勝ち上がり、ついに決勝で激突します。
新の「ごめん好きな人いるんよ」が千早のことだと気づいている伊織にとって千早は今や新を取り合う恋敵で、決勝の前に千早を意識して「負けられんな」と言っていました。



全国大会決勝ではネット中継の解説の人がぎっくり腰になってしまい、居合わせた詩暢が代わりに解説を頼まれます。
丁重に断ろうとする詩暢に解説の人が「あの方との競演でもか」と言った場面が面白かったです。
まさかの人物の登場に詩暢が大興奮していました。

周防が太一に凄く印象的なことを言います。
「君を見ていて分かったことがある。周りの人のために頑張る人は、誰よりも強い」
これは原田先生が言っていた言葉とつながっていると思います。
自身のことで手一杯な中で、周りの人のために自身のこと以上に尽くすのはとてつもなく疲れると思います。
それをやっていた太一こそ誰よりも強いと、周防は見極めていました。
この言葉に心を動かされ、背中を押された太一は新率いる藤岡東高校との全国大会決勝に駆け付けます。



頭を下げ謝る太一に千早が何も言わずに自身がかけていたたすきを外して太一に渡す場面が良かったです
たすきは顧問の宮内妙子先生(松田美由紀)が作ったもので、千早は太一のたすきをかけて戦っていて、自身のたすきは懐に持っていました。
去って行った太一のことを「去ってもかるた部に存在している」という思いで一緒に戦っていたのが分かる場面でした。
太一が戻った布陣で藤岡東高校と激突します


瑞沢高校かるた部最後の夏を素晴らしく爽やかに描き切っていたと思います。
終わり方が凄く良く、明るく沸き立つ気持ちで観終わりました
なかなか決められずにいた千早の進路も最後の最後に最高の形で答えを見せてもらい、エンドロールの和風の絵にも描かれていたとおり、まさに「結び」な最後だと思います。
こんなに終わり方の素晴らしい映画は初めて観て、これはぜひ多くの人に観て頂きたいです
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「スター・ウォーズ エピソード8 最後のジェダイ」

2017-12-17 13:51:21 | 音楽・映画


今回ご紹介するのは映画「スター・ウォーズ エピソード8 最後のジェダイ」です。

-----内容-----
世界的な人気を誇る『スター・ウォーズ』シリーズの新たな3部作の第2章。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』後のストーリーが展開する。
『LOOPER/ルーパー』などのライアン・ジョンソンが監督と脚本を担当し、前作に引き続きデイジー・リドリー、ジョン・ボイエガやマーク・ハミルらが出演。
レイがルーク・スカイウォーカーから知らされる真実や、ダース・ベイダーになろうとするカイロ・レン、レジスタンスたちの新ミッションなど見どころ満載。(シネマトゥデイより)

-----感想-----
※「スター・ウォーズ エピソード7 フォースの覚醒」の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。

昨日、映画「スターウォーズ エピソード8 最後のジェダイ」を観に行きました。
お昼過ぎに映画館に行ったのですが、昼間の時間帯のチケットは売り切れていて夕方の時間帯も残り少なく、改めて人気の高さを感じました。
開場前にはスターウォーズを見に来た人達の行列ができていました。

映画が始まり、壮大なオープニング音楽とともに銀河をバックに物語がどんな状況から始まるかの説明文が流れると、凄くワクワクした気持ちになりました。
エピソード8では銀河系の支配を狙う最高指導者スノーク率いるファースト・オーダーにレイア・オーガナ将軍率いるレジスタンス(反乱軍)が劣勢に立たされています。

冒頭の銀河を舞台にした艦艇、戦闘機入り乱れてのファースト・オーダー対レジスタンス(反乱軍)の撃ち合いのシーンが大迫力であっという間に物語に引き込まれていきました。
このシーンは「エピソード3 シスの復讐」の冒頭を思わせるものがあり、その迫力に凄くワクワクしました。
まるで自身が戦闘機に乗っているかのような臨場感があります。
この大迫力の撃ち合いからフィン達の重要任務の話やレイとルーク・スカイウォーカーの話に展開していく流れが美しく、ワクワクしながら見ていました。
「エピソード7 フォースの覚醒」で負った重傷から回復したフィンはローズというレジスタンスの整備士と知り合い、レジスタンスの命運がかかる重要任務のためにドロイドのBB‐8を連れて一緒に行動します。
カジノの国での緊迫感がありながらも時に笑いのある二人の立ち回りが面白かったです。
BB‐8も大活躍しました。

カイロ・レンはやはりレイのことを知っていました。
予想以上に詳しい生い立ちまで知っていたのが驚きでした。
「お前の両親のことも知っている」と言っていて、語られたレイの両親は予想外なものでした。
さらにレイもカイロ・レンの生い立ちを詳しく知っていました。
二人はフォースでつながり、別々の場所に居ても話せるようになっています。
なのでレイは話をするうちにカイロ・レンから直接聞いたり、フォースで感じ取ったりしながら生い立ちを知ったようです。
このフォースによるつながりはレイがカイロ・レンによってフォースの暗黒面(ダークサイド)に引き込まれてしまう気がして見ていてハラハラしました。

レイは伝説のジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーにフォースを教えてくれと頼みますが、最初ルークは断ります。
また、「レイアからの頼みです。ファースト・オーダーと戦うためにあなたの力が必要」と言っても「私はこの島で死を待つのみ」と言っていて、全く協力してくれる気配がなかったです。
なぜルークがこんなに頑なになってしまったのかとても気になりました。
それでもレイは諦めずに立ち去ろうとするルークについて行きます。

やがてルークから語られる、カイロ・レン(ルークの弟子の頃の名前はベン・ソロ)との間に何があったのかの真相は驚きのものでした。
かつて「エピソード3 シスの復讐」でオビ=ワン・ケノービがフォースの暗黒面に堕ちた弟子、アナキン・スカイウォーカー(ダースヴェイダー)を倒すと決意した時のような歴史が繰り返されました。
ルークはスノークによってフォースの暗黒面に引き込まれたベン・ソロの説得に失敗し、二人は訣別の時を迎えます。
ルークは「ベンの中に広がっていたフォースの暗黒面は想像を遥かに超えていた」と言っていました。
またレイのフォースの素質について「これほどの逸材は私が見た中で過去にただ一人、ベン・ソロだけ」と言っていて、やはりカイロ・レンは前作では精神不安定な印象がありましたがフォースの素質は抜群に高いのだなと思いました。

マスター・ヨーダの登場は嬉しかったです。
ルークの背後に緑色の小さな姿が浮かび上がった時心の中で「おお!」と歓声を上げました。
かなり年をとったルークのことを「若きスカイウォーカー」と言っていて、さすが約800歳まで生きたヨーダだと思いました。
ヨーダのひょうきんな言動が面白かったです。
ルークの島にあるジェダイの大切な書物を「カビ臭い書物など忘れてしまえ」と茶目っ気たっぷりに言っていて、少ない登場でしたが抜群の存在感でした。
そしてルークは自身が書物を燃やそうとしてヨーダに「ジェダイを終わらせる時が来たのです」と言っていたのに、いざ燃やそうとすると躊躇います。
さらに躊躇うルークを尻目にヨーダが燃やすと凄く慌てていて、本当はジェダイの何もかもを嫌いになったわけではないのだと思いました。
「レイの期待には応えられない」と弱気なルークにヨーダが「失敗も話してあげればそれで良い。失敗こそが重要」と言っていたのが印象的で、ジェダイとて完璧ではないのをヨーダはしっかりと受け止めているのだと思いました。

レイア率いるレジスタンスの幹部アミリン・ホルドはとても印象的でした。
意識不明の重体になったレイアの代わりにレジスタンスの指揮を取るのですが、ファースト・オーダーに対する戦い方が弱腰に見え、好戦的なエースパイロット、ポー・ダメロンは「もっとマシな指揮をしてくれ」といったことを言い不信感を募らせていました。
しかし弱腰と思われたホルドは最期が凄かったです。
まるで神風攻撃のようでした。
その最期は、この人は弱腰なのではなく常に味方を無駄死にさせずに生き残らせようとしているのを強烈に感じる場面でした。

カイロ・レンとレイ、そしてファースト・オーダーの最高指導者スノークの三者には意外な展開が待っていました。
そこからカイロ・レンとレイに新たな戦いが始まります。
カイロ・レンは「ジェダイもシスも反乱軍も全て滅びるべき」と言っていて全ての破滅を求めています。
レイは一時はカイロ・レンを説得しようとしましたが聞き入れてはくれず、放っておけば破滅をもたらすのは確実でもはや戦うしかないです。

ホルドの最期はレジスタンスの好戦的なエースパイロット、ポーの意識を変えます。
ルークとカイロ・レンの戦いになった時、「俺たちも行こう」と言うフィンに「違う、ルークは俺達を逃がそうとしてるんだ」と言い冷静に退却の判断をしていました。
レイアがポーに求めていたのがまさにこれです。
どんなに勇敢なパイロットでも味方の犠牲も厭わず突っ込んでいくのでは駄目で、指揮を取るには全体の戦局を見て時には退く勇気も必要ということだと思います。
冷静に退却を判断するのは今までのポーにはなかったことで、その姿を見てレイアもポーの成長を感じていました。
退却の際にレジスタンスのみんなが将軍であるレイアを見た時、「なぜ私を見るの?彼(ポー)に続いて」と言っていました。
この場面を見て「エピソード9」ではポーが次期将軍になっていそうな気がしました。
そして退く勇気を身につけたポーと対照的にフィンは命を捨てる覚悟でファースト・オーダーのキャノン砲を破壊するために特攻していきました。
ホルドの最期が強烈に思い出されるシーンでした。

ルークとカイロ・レンの戦いでカイロ・レンが勝ち誇って「レジスタンスはここで終わり。そしてジェダイもここで終わりだ」と言った時のルークの言葉が良かったです。
「素晴らしい。お前の言葉は”全て間違っている”。レジスタンスは今日新たに誕生する。そして俺は”最後のジェダイ”ではない」
若きレイをジェダイと認め未来を託す言葉でした。


今作は終始ファースト・オーダーに対しレジスタンスが劣勢で追い詰められていて、「エピソード5 帝国の逆襲」を思わせるものがありました。
そして物語は後半で大きく流れが変わりカイロ・レンとの新たな戦いになっていきます。
とても面白かったのでレイが次作でカイロ・レンとどう向き合うのか、物語がどんな結末になるのか注目しています。
コメント (2)
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「先生! 、、、好きになってもいいですか?」

2017-12-10 17:50:02 | 音楽・映画


今回ご紹介するのは映画「先生! 、、、好きになってもいいですか?」です。

-----内容-----
「俺物語!!」などで知られる人気漫画家・河原和音の大ヒット少女コミックを、生田斗真&広瀬すず共演で実写映画化。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」などのヒットアニメを手がけてきた岡田麿里が脚本を担当し、「僕等がいた」でも生田とタッグを組んだ三木孝浩監督がメガホンをとった。
弓道部に所属する女子高生・島田響は、クールで生真面目だが実は生徒への愛に溢れる世界史教師・伊藤貢作に恋をする。
生まれて初めて誰かを好きになった響は、伊藤に対し自分の気持ちを率直にぶつける。
伊藤はそんな彼女に惹かれながらも、教師という立場から一歩を踏み出せずにいたが……。(映画.comより)

-----感想-----
「鋼の錬金術師」を観た後、まだ時間があったのでもう1つ映画を観ようと思い、その日の上映一覧を見た時にこの作品が目に留まりました。
全くタイプの違う映画で、「鋼の錬金術師」がシリアスな展開が多いファンタジー映画なのに対し、こちらは高校を舞台にした恋愛青春映画です。



島田響(ひびき)が南高校に入学するところから物語が始まります。
響は河合浩介、千草恵と仲良くなり、部活は恵とともに弓道部に入ります。
私も高校時代は弓道部だったのでこれは親近感を持ちました。



弓道部での活動は響達が二年生の時代に詳しく描かれていました。
伊藤先生への想いで心に迷いがある時、的に矢が当たらなくなっていた描写は心情が凄くよく分かり、迷いのある状態では型も崩れ、矢も当たらないです。
自校の体育館が工事のため、一時的に南高校の弓道場を間借りしている北高校の弓道部部長、藤岡勇輔に心の迷いを見抜かれていました。



二年生になったある日、恵が関矢先生という人を好きになり下駄箱にラブレターを入れますが、何と間違って伊藤先生の下駄箱に入れてしまいます。
伊藤先生のことを毛嫌いしている恵は響にラブレターの奪還をお願いし、響が伊藤先生のところに取りに行きます。
これをきっかけに少しずつ、響は伊藤先生のことを意識するようになっていきます。



何気なく窓の外を見て伊藤先生がベンチで寝ているのを見つけたシーンでは、響のおっとりとした雰囲気がよく表れていると思いました。
そして広瀬すずさんは何かとお騒がせすることもありますが、やはり可愛らしいなと思います。
常に活発な恵と浩介に対し、響は「うん……」のようにおっとりとした受け答えをしていることが多いですが、たまに大胆な行動に出ることがあります。
この時は授業が始まっているのにベンチで寝ている伊藤先生を起こすため、2階から英語の辞書を投げつけていました。
お腹に命中して伊藤先生は起きましたが、後で辞書を響に渡した時、「お前な…当たりどころが悪かったら死んでたぞ」と言っていて、これはそのとおりだなと思います



高校を舞台にした恋愛青春映画なので、高校の敷地内、特に校舎内でのシーンが多かったです。
高校生が先生を好きになるのは、中学生の私が教育実習の先生を好きになったことがあるくらいなので、比較的よくあるのではと思います。
ただし教師と生徒という立場上、教師は特定の生徒に好意を持ってはならないとされています。
仮に両想いだったとしても、世間が許さずにバッシングする風潮があります。



伊藤先生役の生田斗真さんは今まであまり演技を見たことがなかったのですが、今回見て上手いと思いました。
静かで気だるげで、それでいてよく面倒を見てくれる一面もある伊藤先生の姿は、独特な「間」が漂っていて、響はそこに引きつけられたのかも知れないと思いました。
物語が進んでいくと響は伊藤先生に「好きになってもいいですか?」と想いをぶつけますが、伊藤先生は自身の「教師」という立場を理由になかなか振り向いてくれません。



この作品は恋愛青春映画らしく、誰かを好きになる人が多く、そして「告白」をする人が多いのが印象的でした。
浩介は美術の中島先生のことが好きで告白しますが、「子供には興味ない」と言われ相手にしてもらえません。
中島先生は伊藤先生のことが好きで告白しますが、断られてしまいます。
そんな時、伊藤先生が他の生徒よりも明らかに気にかけている響を見て嫉妬を燃え上がらせ、響と二人になった時を狙って強烈な言葉を浴びせます。
中島先生役の比嘉愛未さんは演技力が高かったです。
しゃべり出す前から響に嫌味を言うのが分かるくらい怖い雰囲気が出ていてゾッとしました

そんな中島先生に浩介が「響のこと、苛めないでやってくれませんかね?」と言う場面はとても印象的でした。
そして中島先生の嫌な一面を見ても依然として好きな気持ちが変わらず、なおも告白をしようとする姿を見て浩介は心の底から中島先生のことが好きなのだなと思いました。
この想いは成就してほしいと思いました。



文化祭で響達のクラスはウェディングの仮装をすることになり、男子はタキシード、女子はウェディングドレス姿になります。
この日は響と伊藤先生にとって運命が大きく変わる一日でもありました。



文化祭当日の屋上で、花嫁の仮装をした響が伊藤先生に「いつか結婚したいです」といった内容のことを言う場面があります。
私の右隣で見ていた若い女性グループが明らかにキャーキャー言いたいのを堪えながら観ているのが伝わってきて面白かったです。
記事内の一番最初の写真の真ん中の場面で、まさしくキャーキャーな場面でした。
そしてこの日を境に、「伊藤先生と2年の島田響が恋愛関係」という噂が先生にも生徒にも、学校中に広まってしまう事件が起き、二人は窮地に立たされます。
「教師と生徒が付き合ってはいけません」という「倫理」との、避けては通れない対決になったなと思いました。

全ての責任を一人で負い、高校を去ろうとする伊藤先生に浩介が「お前はこのままで良いのかよ。響の想いはどうなるんだ!」と熱いことを言っていました。
ふさぎ込んでしまった響に恵も「響はこのままで良いの?想いを伝えなきゃ!」と言っていました。
最後どうなるのかとても気になりました。


私は爽やかな青春小説が好きで、青春映画とも相性が良いようです。
今回は原作も知らず、全く前情報がないまま観てみたのですが楽しく観ることができました。
青春のきらめきは良いものだと改めて思いました
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「鋼の錬金術師」

2017-12-09 17:58:51 | 音楽・映画


今回ご紹介するのは映画「鋼の錬金術師」です。

-----内容-----
2001~10年に「月刊少年ガンガン」で連載され、テレビアニメ版も大ヒットを記録した荒川弘の人気コミック「鋼の錬金術師」を実写映画化。
物質の構成や形状を変化させて新たなものに作り変える「錬金術」が存在する世界。
幼い兄弟エドワードとアルフォンスは、死んだ母を生き返らせたい一心で錬金術最大の禁忌である人体錬成を行なうが失敗し、その代償としてエドワードは身体の一部を、アルフォンスは身体全てを失い鎧に魂を定着させた姿になってしまう。
数年後、国家錬金術師の資格を得たエドワードは、失った身体を取り戻すため、絶大な力を持つという「賢者の石」を探す旅に出る。
主人公エドワード役を実写版「暗殺教室」シリーズにも主演した「Hey! Say! JUMP」の山田涼介が務め、ヒロインのウィンリィ役を本田翼、エドワードたちの良き理解者である若き士官マスタング役をディーン・フジオカがそれぞれ演じる。
監督は「ピンポン」の曽利文彦。(映画.comより)

-----感想-----
「何かを得ようとするならそれと同等の代価が必要」これが錬金術の基本である「等価交換の法則」です。

エドワード・エルリックとアルフォンス・エルリックのエルリック兄弟は、幼くして母親を亡くしてしまいます。
父親は行方知れずで母親と三人で暮らしてきたエルリック兄弟にとって、母親の死は受け入れがたいものでした。
二人はもう一度母親に会いたい一心で、錬金術の禁忌「人体錬成」を行って母親を蘇らせようとします。



「水35L 炭素20kg アンモニア4L 石灰1.5kg リン400g 塩分250g 硝石100g 硫黄80g フッ素1.5g 鉄5g ケイ素3g その他少量の15の元素」
これが科学によって明らかになった、大人一人分として計算した場合の人体の構成成分です。
錬成陣を描き、陣の中に人体の材料を置き、いよいよ人体錬成を行おうとした時、弟のアルフォンスが「本には”絶対にやってはいけない”と書いてあったのに、大丈夫なのかな」と不安を漏らします。
しかし兄のエドワードは「大丈夫だよ。それに、もう一度母さんに会いたくないのか?」と言い、アルフォンスも「会いたい」と言い、二人はついに人体錬成に踏み切ります。

ところが、人体の材料を全て揃え「等価交換の法則」で成功すると思われた人体錬成は失敗してしまいます。
エドワードは精神世界のような場所で「真理」と呼ばれる存在と対峙し、人体錬成の代償として左足を奪われてしまいます。
さらにアルフォンスは体全部を奪われてしまいます。
「真理」との対峙から元の世界に戻ってきた時、エドワードは左足を失う重傷を負い、アルフォンスは存在自体がなくなっていました。
それだけの代償を払って錬成されたのは人の形をしていない不気味なものでした。
何としてもアルフォンスを取り戻そうとしたエドワードはもう一度「真理」と対峙しますが、取り戻せたのはアルフォンスの魂だけで、今度は右腕を奪われます。
右腕と左足を失い血まみれの状態で、エドワードは部屋にあった鎧にアルフォンスの魂を定着させます。
錬金術の禁忌「人体錬成」を行った代償はあまりに大きく、エドワードは右腕と左足を失い、アルフォンスは鎧の姿になってしまいます。

やがてエドワードは史上最年少の12歳で国家錬金術師の資格を取得し、アルフォンスとともに「賢者の石」を探す旅をするようになります。
賢者の石は「等価交換の法則」を無視してあらゆるものを作り出すことができる絶大な力を持っていて、エドワードはこの石の力を使ってアルフォンスの体を取り戻そうとしています。



映画の冒頭は山田涼介さん演じるエドワードが賢者の石を持つ悪徳神父を追いかけるところから始まります。
イタリアの街を舞台に撮影されたこのシーンはスピード感と迫力が印象的でした。
悪徳神父は賢者の石を使って次々と攻撃をしかけますが、人体錬成の禁忌を犯して「真理」と対峙した結果錬金陣無しでも錬金術が使えるようになったエドワードも果敢に応戦します。
劣勢になった時、二人を追いかけてきた鎧の姿のアルフォンスが助けてくれました。
エドワードはついに悪徳神父を捕まえますが、騒ぎを聞きつけた軍東方司令部の「焔(ほのお)の錬金術師」ロイ・マスタング大佐達が現れます。



ロイ・マスタング大佐はディーン・フジオカさん、リザ・ホークアイ中尉は蓮佛美沙子さんが演じていました。
エドワードは悪徳神父との戦いで街を破壊したことで連行され、マスタング大佐に説教されます。
佐藤隆太さん演じるマース・ヒューズ中佐、小日向文世さん演じるハクロ将軍も登場しました。
ヒューズ中佐はエルリック兄弟の良き理解者としての良い人の雰囲気が出ていてとても良かったです。
ハクロ将軍も良い人の雰囲気があり、アルフォンスの体を取り戻す手がかりになるかも知れない「ショウ・タッカー」という錬金術師のことを紹介してくれます。
しかしハクロ将軍には裏の顔がありました。
そして本田翼さん演じる幼馴染のウィンリィ・ロックベルもやってきて、悪徳神父との戦いで右腕の義肢、「機械鎧(オートメイル)」を壊してしまったエドワードに怒っていました。
ウィンリィは腕の立つオートメイル技師で、エドワードの右腕と左足のオートメイルを作っています。



エルリック兄弟とウィンリィは「綴命(ていめい)の錬金術師」ショウ・タッカーを訪ねます。
ショウ・タッカーは人語を話す合成獣(キメラ)の研究をしている国家錬金術師で、二年前に一度だけ人語を話すキメラを生み出すことに成功しています。
大泉洋さんが演じていて、かなり上手いと思いました。
キメラの合成がなかなか上手く行かず、このままでは国家錬金術師の資格が剥奪されるかも知れなくて困っている様子が上手く演じられていました。
ショウ・タッカーは二年前に奥さんに出て行かれ、現在は娘のニーナと犬のアレキサンダーと暮らしています。
一見良い人に見えますが、ショウ・タッカーも裏の顔があります。
原作の有名シーンの、エドワードに人語を話すキメラの真実を見破られた時の



「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」のセリフも聞くことができました。
国家錬金術師の資格を維持するため、人の道に外れた恐るべき錬金術を行っている真の姿がありました。



物語が進んでいくとともに、ホムンクルス(人造人間)と呼ばれる謎の存在がエドワード達の前に現れることになります。
左からグラトニー、ラスト、エンヴィーです。
悪役としての活躍が目立っていたのがラストで、かつて軍で賢者の石を生成していて現在は隠れて暮らしているドクター・マルコーを見つけ出して殺害したり、軍内部の恐るべき秘密に気づいたヒューズ中佐を襲撃したり(最後にとどめを刺したのはエンヴィー)、マスタング大佐に重傷を負わせたりしていました。
妖艶な雰囲気を漂わせた演技力が凄く高く、一体誰が演じているのかが気になりました。
そして映画の最後のエンドロールにラスト役は松雪泰子さんとあり、こういった役をやるイメージがなかったので驚きました。

映画の終盤はオリジナルの物語で、裏でホムンクルスと通じていたハクロ将軍がホムンクルスを裏切り、自らの野望のために賢者の石を使ったことで大混乱が起きます。
その混乱の中で、アルフォンスやホークアイ中尉に大混乱の足止めをしてもらっているうちにエドワードとマスタング大佐でホムンクルスと対決します。
ホムンクルスは賢者の石から作られた人造人間で、体内に核として賢者の石を持っています。
殺されても賢者の石の力ですぐに蘇る恐るべき人達です。
ホムンクルスとして登場した三人が誰によって生み出されたのか、どんな目的で動いているのかがほとんど描写されないまま物語が終わったので、もしかしたら続編を作るのかも知れないと思いました。


私は原作が好きですが、今回は原作度外視で事前情報がほとんどないまま、誰がどの役をやるのかも知らずに観に行きました。
原作度外視で観ると楽しめるかと思います。
もし続編を作るならラストが言っていた「鋼の坊やは大事な人柱候補だもの」の詳しい内容などが描かれると思うので、どんな描かれ方をするのか観てみたいと思います。
コメント (4)
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