晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『天使と悪魔』 80点

2009-05-30 17:01:14 | (米国) 2000~09 

天使と悪魔

2009年/アメリカ

ノンストップ・ミステリーを観光気分で楽しむ

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

ダン・ブラウンのベストセラー「ダビンチ・コード」シリーズをロン・ハワード監督が再度手掛けた話題作。続編といっても原作はこの作品のほうが先だったので前作を観ていなくても充分楽しめる。
ヴァチカンでの教皇選びの最中、400年前の秘密結社・イルミナティが有力候補4人を誘拐。8時から1時間毎に一人づつ殺害すると予告。さらにスイスから盗んだ<反物質>でヴァチカンを爆破される危機。この危機を救うためハーバード大ラングドン教授(トム・ハンクス)とスイスの科学者ヴィットリア(アイェレット・ゾラー)がロマ市内を奔走する。
宗教と科学の対立を背景にガリレオの「真実の図表」がキーワードとして進行するが、歴史ミステリーというよりノンストップ・エンターテイメント作品。おまけにローマの名所・旧跡を辿り、観光気分に浸れる。
ヴァチカンの撮影許可は限られるなか、セットとCGを駆使した映像美は遜色ない素晴らしさ。ハンス・ジマーの音楽とともに重厚さを失っていない。
T・ハンクスは探偵のように謎を解き、目まぐるしく市内を駆け回って事件を追い、とても爽快な気分にしてくれる。共演のA・ゾラーはアシスタント役の域を出ず、活躍の場がなくて気の毒だった。
盛り上げてくれたのはカメルレンゴ(法王代行)のユアン・マクレガー、ヴァチカン親衛隊長ステラン・スカルズガルド、コンクラーベ(教皇選考)進行枢機卿のアーミン・ミューラー=スタールなど個性的な俳優たち。荒唐無稽なところもあるが、あら捜しをせず138分の長さを感じさせないテンポに流れを委ね、面白さを堪能したい。


『黄色いロールスロイス』 80点

2009-05-13 15:04:19 | 外国映画 1960~79

黄色いロールスロイス

1964年/アメリカ

豪華キャストでお洒落なオムニバス・ドラマ

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

テレンス・ラディガンの脚本をアンソニー・アスキスが監督。’30年代ヨーロッパが舞台で、黄色いロールスロイスの10年の変遷をモチーフに大人のラブ・ロマンス3話に仕上がっている。
何しろ豪華なキャスティングで第1話がジャンヌ・モロー、第2話がシャーリー・マックレーン、第3話がイングリッド・バークマンというタイプの違うヒロインたち。J・モローは公爵夫人で結婚10年目にプレゼントされたロールス・ロイスで部下と不倫。S・マックレーンはアメリカの元レジ係でギャングの情婦。ヨーロッパの文化遺産にはまったく興味がない。I・バーグマンはアメリカの未亡人で社交界の花形。正義感に目覚めると命懸けで夢中になる。
第1話・相手役のレックス・ハリソンは気位が高い公爵で、若い奔放な妻に嫉妬心を掻き回される。第2話アラン・ドロンは貧しさから這い上がるためには女性を煽て捲くるプレイボーイながら案外純なところも。第3話オマー・シャリフは祖国愛に満ちたユーゴの反ナチスの闘士。
役柄がイメージにぴったりでキャスティングが決まってからストーリーができたのでは?と思うほど。MGMが英国で製作したためアメリカから見たヨーロッパのお国柄が窺えて面白い。その分ご都合主義なところもあって、ストーリーは予想通りで平盤なのが残念。
豪華キャストに負けないロールスロイスの変遷振りが見られるのが最大の見所かもしれない。


『昼下りの情事』 80点

2009-05-08 14:00:45 | 外国映画 1946~59




昼下りの情事


1957年/アメリカ






終わり良ければ全て良しのロマンチック・コメディ








総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
85点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





ビリー・ワイルダーとI・A・L・ダイアモンドの名コンビによるオードリー・ヘップバーン主演のロマンチック・コメディ。
チェロを学ぶ音大生アリアンヌ(A・ヘップバーン)は好奇心旺盛なパリ・ジェンヌ。私立探偵の父クロード(モーリス・シュバリエ)は名うての大富豪プレイ・ボーイ、フラナガン(ゲーリー・クーパー)の浮気調査中。
隠微な題名とはウラハラに、ワイルダー監督はパリを舞台にアリアンヌの純粋な娘心をイキイキと描いて、この作品でヘップバーンを大スターへ確立させた。自らもロマンチック・コメディというジャンルを切り開いて、「お熱いのがお好き」(59)「アパートの鍵貸します」(60)と続くヒット作でこの位置を不動のものにしている。
オードーリーは実年齢28歳ながら、背伸びした二十歳そこそこの役を違和感なく好演、チェロを片手にした後姿や表情のアップはファンをトリコにした。
対するG・クーパーはケーリー・グラントに断られ廻ってきた役だが、当時闘病中のせいか56歳より老けて見え、従来の好漢振りとは違う役に居心地が悪そう。しかし夢のようなこの物語が、年齢差のハンデを乗越え、返って治まりの良い結果となって現れた。
老優M・シュバリエは「うつぶせに寝る女性の87%は秘めた恋をしている」「小魚を水に返して下さい」など名台詞を連発し存在感たっぷり。
ホテル・リッツを舞台にしてジプシー楽団が奏でる「魅惑のワルツ」に乗せながら進行するお洒落なラスト・シーンは最大の見所。終わり良ければ全て良しの作品は、途中の粗さを全て帳消しにしてくれる。






『グラン・トリノ』 85点

2009-05-02 16:20:49 | (米国) 2000~09 




グラン・トリノ


2008年/アメリカ






「生と死」をストレートに描いたヒューマン・ドラマ








総合★★★★☆
85



ストーリー

★★★★☆
85点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
90点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
85点





現在のアメリカ社会を背景に、心温まるエピソードを交えながら「生と死」をストレートに描いたヒューマン・ドラマ。ニック・シェンクの脚本を気に入ったクリント・イーストウッド最後の主演作と噂されていて、監督も務めている。
「グラン・トリノ」は70年代フォードのヴィンテージ・カー。組み立て工だったポーランド系アメリカ人ウォルト・コワルスキー(C・イーストウッド)は妻を亡くし息子達とも疎遠になり、ひとりで愛犬と暮らしている。50年代のアメリカに誇りを持ち続ける孤独な老人には自宅の芝生と星条旗を大切にし、ビール片手にぴかぴかのグラン・トリノを見るのが唯一の楽しみ。
白人至上主義で、軽口を叩き合う親友はイタリア系床屋のマーティン(ジョン・キャロル・リンチ)だけ。黒人を「クーン(穴熊)」東洋人を「米食い野郎」日本人を「イエロー・モンキー」と差別用語を平気で言い放つ。朝鮮戦争の帰還兵で心に傷を持つ彼は、若い神父ヤノヴィッチ(クリストファー・カーリー)にも懺悔を拒否し、「神学校出の何も知らない童貞」呼ばわり。
ところが隣に越してきたマイノリティ、ラオス・モン族ファミリーの少年タオ(ビー・バン)と姉スー(アーニー・ハー)との思いがけない交流で、風変わりな友情が芽生えてくる。
「ミリオンダラー・ベイビー」以来、久々に俳優業に取り組んだ78歳C・イーストウッドをその気にさせた起承転結のはっきりしたオーソドックスなN・シェンクの脚本が素晴らしい。ミネソタで働いていた頃のヴェトナム戦争帰還兵とモン族ファミリーを知る彼の実体験が活かされている。
監督のイーストウッドは登場人物を決して疎かにせず、一人ひとりを丁寧に描いてヒューマニズム溢れるホーム・ドラマのよう。「憎しみの連鎖では、何事も解決しない」というメッセージに見終わる頃知らず知らず涙していた。ジェイミー・カラム(1コーラスだけイーストウッド)が唄うエンディング・テーマがいつまでも頭から離れない。