晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『サラエボの花』 80点

2007-12-07 14:25:48 | (欧州・アジア他) 2000~09

サラエボの花

2006年/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ

重いテーマを必死に生きる日常で伝えた

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

’95ボスニア紛争終結後12年を経て、必死に生きる母と娘の交流を描いたヒューマン・ドラマ。若手女流監督ヤスミラ・ジュバニッチが脚本を手掛け、’06ベルリン国際映画祭・金熊賞受賞作品。
エスマ(ミリャナ・カラノヴィッチ)は娘サラ(ルナ・ミヨヴィッチ)の修学旅行費用を工面できず、クラブのウェイトレスで夜中まで働くことに。父親はシャヒード(殉教者)と信じていたサラは、証明書があれば安くなるというが娘には言えない出生の秘密があった。
サラエボのグルバヴィッシャはセルビア人によるムスリム人迫害があった地区。民族浄化のもと衝撃的な組織的・計画的集団レイプがあり2万人の女性が戦争被害者となっていて、類似映画に「あなたになら言える秘密のこと」がある。重いテーマを現地出身のジュバニッチ監督は、怒りを持った反戦映画となるのを抑え、女性の尊厳を取り戻すための再生への道のりを描いた静かなドラマに仕上げた。
エスマ役のミリャナ・カラノヴィッチは「パパは出張中」「ライフ・イズ・ミラクル」でお馴染みだが、抑揚のある演技は流石。娘役のサラは奔放ななかに希望を持って前向きに生きる、実年齢(16歳)より幼い少女を好演。
娘が母親に銃を突きつけたり、唯一父親似という髪を刈り上げるなどのクライマックスを経て、親子の葛藤から感動のラストシーンまで2人の交流を丁寧に描き切っている。反面、クラブの用心棒との交流や男達の存在が類型的で中途半端な気がした。